俺の毎日を平凡にしてくれ   作:イソギンチャク

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どうも、イソギンチャクです。突然ですが新衣装の怪盗ハロハッピーが来ません。どうしてでしょうか。あまりにも悲しいので名前を生魚に改名しようか考えています。
それでは、よろしくどうぞ。


至って平凡じゃない過去

「……いつぶりの公園だね」

 

「ああ、そうだな。たしか俺が薫に告白された以来か」

 

「フフ、そうさ。あの時はとても儚い気持ちだったよ……」

 

「俺は気が気じゃなかったんですけど?」

 

 薫に連れられ、やって来たのはいつかの公園で。

 

 公園までつくなり、そのまま二人でベンチに腰掛ける。

 

「それで、話したいことって何? 教えてよ」

 

「ああ、それはね。翔真に、君と出会ったひとりの少女の話を聞いて欲しくてね」

 

「ひとりの少女? それって誰のこと?」

 

「それは……話せばわかるさ」

 

 薫はそう言うと、いつものようにフフ、と笑い、少しずつ語り出したのだ。

 

 俺と過ごした、あの日のことを──

 

 

 「……やっぱりダメダメだな、私」

 

 ……当時、私は自分の在り方に悩んでいた。

 

 臆病な自分を変えるために演劇部に入って、たくさんの役を演じた私。そこで自分とは違うなにかを演じることが楽しくて、楽しくて。

 

 日常生活も少し芝居がかった話し方になったりして、それこそ王子様、なんて呼ばれるようになったけど。

 

 ……どうしても、ひとりになると自信がなくなってしまう。本当に今のままでいいのか、今の私のままでいいのか、と。

 

 今、私が演じているのは憧れの私だ。なりたい私だ。でも、本当の私はそんなことなくて、臆病で、引っ込み思案な、王子様には程遠い人間で。

 

 いわば、今の私は本当の私を偽っているようなものだ。そこに自分らしさなんて、一欠片もない。

 

 だからこそ、きっとみんな本当の私を知ったら私のことを嫌いになってしまうだろうな。本当の私は、あんな風にかっこよくないのだから。

 

 そう思った時、彼はやってきた。

 

「どうしたのだ、そんな憂鬱そうな顔をして」

 

 ──なりたい自分を貫いた人、モーニングフォグくんが。

 

 

「……だから今の私は本当の私なわけじゃないんだ。偽りの私なんだよ」

 

「ふむ、そうなのだな」

 

「……どうしたらいいのかな、私。こんな私じゃ、ファンの子をがっかりさせちゃう」

 

「お前は、色々抱えているのだな」

 

 私は、話しかけてきた彼に勇気を出して今の自分の悩みを告白した。

 

 黒いマントと眼帯をつけた彼は、私の話を親身に聞いてくれて。

 

「……でも、お前がどうしてそんなに悩んでいるのかオレには解せんな」

 

「……どう、して?」

 

「かのシェイクスピアも言っていた。この世は誰しもが役者だ、とな。人は誰しも少しぐらいはなりたい自分を演じている。なのだからお前がしているそれは何ら可笑しいことではない」

 

「ど、どうしてシェイクスピアの言葉を……?」

 

 それでいて、彼は私にこう言った。私がしていることは、何もおかしくない、と言ったのだ。

 

 彼はニカッと笑うと、戸惑う私の頭を撫でてこう言った。

 

「自分らしさなんて自分で決められるものじゃない。だからこそ、お前が生きたいように生きればいい。だって人生は一度きりなのだからな」

 

 ──この先、何年も思い出すような素敵な言葉を。

 

 その言葉に続けるように、彼は笑顔のままこう話す。

 

「ほら、このオレを見てみろ! 理想の自分そのものだろう?」

 

「そ、そうだね……?」

 

「ふふ、そうだろうそうだろう! ……そうだな。名も知らぬ少女よ、この本はお前に託そう。きっと支えになってくれるはずだ」

 

「シェイクスピアの本……もらっていいの?」

 

 彼は私にシェイクスピアの本を渡すと、この本をしかと読み込むといい、と嬉しそうに口にする。

 

 すると、シェイクスピアの本を渡したと同時に、その場を去ろうとする彼。私は彼を呼び止めると、こう聞いた。

 

「あなたの名前を、聞かせてほしいんだ」

 

「フフッ、オレか?」

 

「そう、いつかお礼がしたいから……!」

 

「いいだろう、構わんよ。よーく聞いておけ」

 

 彼はそう言うと、大きくマントをはためかせる。その姿は、まるで大空に羽ばたく鳥の羽のようで。

 

 そんな彼は、太陽のような笑顔でこう言ったんだ。

 

「このオレこそ、エクストリーム霧魔法の使い手モーニングフォグ様だ。この名前、脳髄に刻むといい」

 

 

「恥ずかちい」

 

「そうかい? あの時の私は君がヒーローに見えたよ」

 

「恥ずかちい」

 

「……そうかな?」

 

 薫が過去のことを話し終わった頃には、俺の羞恥心のバロメーターはとっくにバグっていた。

 

 だってさ、厨二病真っ只中のイッタ〜い俺を薫が美談として語るんだぜ? 恥ずかしいにも程があるじゃん。

 

 特にさ、おかしいを可笑しいって言ってるところとか我ながら恥ずかしすぎる。普通におかしいでいいじゃんおかしいだろ。

 

 その場でジタジタバタバタしたくなる欲求を抑えて、俺は瀬田にこう言った。

 

「……あの時の俺、どうかしてたよな」

 

「……君はそう思うんだね」

 

「いやいや、モーニングフォグのこと貶してめるわけじゃないから! あの……その、いい意味であの時の俺がどうかしててよかったってことだよ。そのおかげで、今こうして瀬田が瀬田らしくいられてるわけだし」

 

 ……でもさ、それで救われた子がいるのは、正直嬉しいよ。

 

 こんな俺でも、だれかを勇気づけられるんだって、その、嬉しくなるからさ。

 

「俺はさ、自分らしくしてる薫が一番好きだよ」

 

「……」

 

「あ、あれ? 薫さん? 急に黙り込んでどうしたの?」

 

「……あ、ああ、すまないね」

 

 そんな時、気づけば口から出てきた言葉。

 

 それを聞いた薫は、目を丸くして固まる。驚く薫に、俺はこう言っていた。

 

「まあつまるとこ、俺はどんな薫も好き。可愛いところもさ、かっこいいところもさ、どんなとこも欠けちゃいけない、大切な薫の一部だと俺は思ってるよ。俺で言うモーニングフォグみたいにさ、なんて」

 

「……翔真」

 

「って今すっごいクサいこと言ったな俺! あの、まあ、本心っちゃ本心だけど……いい感じに忘れてくれると嬉しいよ」

 

「ううん、忘れないよ。うれし……かったから」

 

 アレ? 今、なんて? 俺今なんて? にこりと嬉しそうにはにかむ薫を見て俺はとあることに気づく。

 

 ……今の俺の言葉、告白……まがい……?

 

「私も、翔真のことが大好きだよ」

 

「あ、ああ、ありがと、うれしいよ」

 

「そ、それじゃあ! また明日会おう!」

 

 告白まがいのこと言っちゃったからかな、嬉しそうに笑顔で去っていく薫に手を振り、俺はめちゃくちゃ焦る。

 

 ──俺、どうしたらいいんだろう。




今回も読んでくださりありがとうございます!
次回、最終話です!次の話もお楽しみに!
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