それでは、よろしくどうぞ。
「リサさん赤尾大和さんどうしよう」
「いきなりどうした朝霧」
「どうしたんですか?」
「なあに? お姉さんに教えてよ!」
……次の日、俺は赤尾リサさん大和さんを集めて相談会を開いていた。
それぞれ何があったのか聞いてくれるみんなに、俺はこう言った。
「薫に告白まがいのこと言っちゃった」
「「「え!?」」」
俺がそう言うなり、びっくりするみんな。いや、びっくりするよね。
でも、そんな俺に二人は予想外のこと言ってくるのだ。
「もう薫さんのこと好きっすよね? 朝霧さん」
「いや違いますし!」
「もう告っちゃいなって☆」
「そんなノリで告白できてたら人生苦労してませんよ!」
みんなみんなみんな薫のことが好きなんじゃないかって言いますけど俺の薫に対する印象は普通オブ普通ですからね!
いや、でも「私も翔真のことが大好きだよ」って嬉しそうにはにかんでたんだよなあ、薫。かわいかったんだよなあ、薫。
「……俺、本当は薫のこと好きなのかな」
「そーなんじゃね? 俺は朝霧が瀬田さんと恋人になるの賛成だけど」
「そう簡単に言うなよ……」
「まあ、でもさ。そろそろ答えを出す時なのかもな、お前は。それに、その告白まがいの言葉もお前の本心な訳だろ?」
赤尾のその言葉に、俺はそうだけど、と答える。
でも、変に思わせぶりなことして薫のこと傷つけても嫌だし、俺は一体どうしたら……そんな時。
「や、やあ翔真! 今日は、その……儚い日だね!」
「薫? や、やっほー……」
「……二人とも、ぎこちないなあ」
「ぎこちないっすね……」
──薫が、やってきたのだ。
途端に会話がぎこちなくなる俺。でもさ、薫が来るなんて思ってもなかったし。
「と、ところで! 翔真はみんなと何を話していたんだい? 私も混ぜておくれ」
「あ、いや、その、世間話だよ、ハハ……」
「ちょうど瀬田さんの話してましたよ」
「赤尾ッ!?」
そんな時、赤尾の裏切りによって俺が三人に薫のことについて相談していたことがバレてしまう。
薫はびっくりした顔をして、俺たちにこう聞くが。
「私の話……? いったいどんな話を……」
「そ、それじゃあ俺は失礼しますね!」
「あっ、ジブンもです!」
「それじゃあ……アタシも?」
気づけば、俺以外の三人はしれっと教室からいなくなっていた。
残されたのは、俺と薫の二人だけ。二人だけの教室で、薫は俺にこう言った。
「……みんな、いなくなってしまったね」
「そう、だな……」
「……その、今日はなんだかぎこちなくてすまない。君と何を話したらいいのか迷ってしまって」
「へぇ、薫なのに珍しいな」
まあ、そりゃそうだよね。告白まがいなこと言われて、なんて話していいのかわかんないよな。
うんうん、と納得する俺に、薫はいきなりこう言ったのだ。
「……でも。昨日、翔真が私に言ってくれた言葉がすごく嬉しかったんだ」
「そ、そっか……」
「本当に、君には幸せを分けてもらってばっかりだ。本当にありがとう」
薫が、嬉しそうにそう言うから。俺まで何だか嬉しくなる。それに……
──俺だってさ、薫にたくさん救われてるよ。
俺は、ねえ、薫。と彼女の名前を読んでこう話し始める。
「俺、結局厨二病も克服できなかったし、だからといって何も残せてない。でもさ、そんな俺でも、そのままでもいいって、薫は教えてくれた」
「……翔真」
「どんな俺でも俺、なんだよな」
『どんな君も君だよ』あの日、薫が言ってくれた言葉を、思い返す。
ああ、今思うのもなんだけどさ、やっぱり、薫に出会えてよかったな。薫と過ごせて前よりも笑って過ごせるようになった。
「……大好きだよ、薫」
「……っ!?」
気づけば、口が勝手にそう動いていて。でもまあ、実際その言葉に偽りはないし。
ってえ!? いや、たしかに薫のことは大好きだけど、やっぱこれって告白……
「え、あ、これは、その、なんていうかさ、つい、出ちゃったって言うかその」
「しょうま……?」
「ご、ごめん! ちょっと俺、用事ができたから行くわ!」
「……行かないで」
どうしたらいいのかわからなくて、一旦ひとりになって冷静になろうとしたが、それと同時にぎゅっと薫に手を引かれる。
ど、どうしよう!? 俺、一体これからどうしたら……
じっと俺を見つめる薫の潤んだ瞳が愛おしくて、抱きしめたくなるな〜、なんて現実逃避をしながら俺は考える。
いや、ちょっと待てよ? っていうかさ、そういうこと思っちゃうってことはさ。
──やっぱ俺、薫のこと絶対恋愛的に好きだよな!!!???
いや、本当は心の奥底ではきっとそう思ってた。多分今までの俺がそれを認めてなかっただけなんだよ。
そりゃあ、薫と話すたびにかわいいと思ってたし、朝起きた時に最初に考えるのは薫の笑顔。
これ、絶対好きなやつじゃん。赤尾にもリサさんにも大和さんにも白鷺さんにも同じこと言われてたのに。
いやでも、だとしても、「俺と付き合おうぜ……」なんて言える勇気はない。
それじゃあ、俺はどうしたら?
……いいや、逃げるな、朝霧翔真。逃げるな、モーニングフォグ。
「ごめん、逃げようとして」
「私こそ、君を引き止めてしまってすまなかった」
「いいんだ、薫が止めてくれてよかった。その、そ、それでさ」
俺がそう言うと、薫は優しい顔で俺のことを見つめる。
俺は、大きく息を吸い込むと薫の目を見てこう言った。
「あの時の返事、今するよ」
「……ああ」
「あのさ、俺、薫のこと、多分……っていうかいや、すごく好き! 薫と会うたびにさ、どんどん薫の知らない部分知ってさ、それが俺は嬉しかった」
俺は飾らない、ありのままの言葉を薫に伝える。薫は、そんな俺の言葉に耳を傾けていて。
俺は、そんな彼女に最後にこう言った。
「で、でもさ、俺もこの気持ちに今気づいたばっかりだからかな、まだイマイチよくわかってなくて……ごめん、なんか変な感じの返事で」
「フフ、たしかにそうかもしれないね。まったく、君は本当に罪な子猫ちゃんだ」
「ご、ごめん……」
「私は構わないよ」
告白した後にこんな言葉を付け足す、どこまでも情けない俺を、薫は笑って許してくれた。
ああ、優しいな、この子。もったいないぐらいだよ、本当に。そう、思った瞬間。
「これから、翔真がもっともっと私のことを好きになってくれればいいんだ」
──薫の唇が、俺の唇に触れていた。
あまりにいきなりの出来事に、混乱する俺。
そんな俺に、薫はさらなる追撃をしてくる。
「……私のファーストキスだよ?」
そう耳元で囁かれた時には、俺の脳みそは沸騰寸前だった。
嬉しさと恥ずかしさとその他色々で何も言えない俺を見て、フフと笑う薫。
ズルいよズルすぎるよこの子! もう好きになっちゃう! いや好きですけど!
でも、それと同じくらいやられっぱなしなのも嫌だ。薫にされたように、俺も薫の唇にそっとキスをすると。
「……お返し」
と言って笑う。すると薫は、みるみるうちに赤くなって顔を手で隠してしまう。
……わぁ、かわいい。すっごくかわいい。思わずにやけてしまう。
薫は、そんな俺を見てずるいよ、と言って優しく笑う。
そのまま二人で笑い合った後、薫は俺にこう言った。
「私と付き合ってくれるかい? 翔真」
「……こんな俺でもよければ」
薫のその問いに、俺はもちろんYES、と答える。
……薫と過ごすこれからの毎日、楽しみだな。
〜
……と一日前は思ってたんだけどなあ。
「は? 薫様の彼氏?」
「薫様に彼氏!? わ、わたし、これからどうしたら……あなた、ブラジルに行きたくないですか?」
「そうそう! ブラジルに行きなさいよ! 穴でも掘って!」
「……うそだ……」
なんということでしょう、恋が実ってウキウキ気分の瀬田薫さんが自分と俺が付き合っていることをファンの子に言いふらしてくれたおかげで俺は学校で超絶肩身が狭い思いをしていたのだった。
もう周りの女の子みんなの目が怖いんですけど。もうすでに朝霧翔真の名前でブラジル行きの飛行機のチケット用意してる子とかいたんですけど。
でも、隣にいる薫ちゃんは俺と手を繋いでニコニコ笑うだけ。かわいいけどさ、俺今君のファンの子にブラジルまで飛ばされそうになってるんだよ気づいてよ。
……ああ、聞こえてますか? 平凡を司る神さま。今から俺は、心の底からのシャウトをします。聞こえてても聞こえなくてもいいから、この願いを叶えてほしい。どうか、どうか……
「俺の毎日を、平凡にしてくれーッ!」
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます!ここまで来れたのは、読んでくださった読者様のおかげです。本当に本当にありがとうございます。
ここで、ちょっとした後語りを……
まず大きな声で伝えたいことなのですが、お気に入り登録、評価、感想、どれもが作品を執筆する上でとても励みになりました! 本当にありがとうございます。すごくすごく嬉しかったです!
初投稿で技術的にも拙いところがあったかもしれませんが、この物語をここまで読んでくださったあなたに、少しでも薫ちゃんの良さが伝わっていればいいな、と思います。
多分また薫ちゃんの話をひょっこり投稿しに来ると思うのでその時はまた読んでくださると嬉しいです。
それでは!