俺の毎日を平凡にしてくれ   作:イソギンチャク

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どうも、イソギンチャクです。いつもこの作品を読んでくださりありがとうございます!
感想、お気に入り、いつもとても嬉しいです!それにまさかの評価もいただけてびっくりしたのと同時にとても嬉しかったです!皆様本当にありがとうございます!
今回の話もお楽しみいただければ幸いです。
それでは、よろしくどうぞ。


至って平凡じゃないきっかけ

「おはよう、翔真!朝から君は儚いね!」

 

「……どうして俺の家の前にいんの」

 

「ああ、それなら子猫ちゃんづてに知り合った赤尾くんに聞いたら教えてくれたよ?」

 

「いろんな意味で赤尾あの野郎……!」

 

 次の日の朝。ドアを開けると瀬田薫がいた。いや嘘じゃないリアルで。

 

 念のため、一回ドアを閉じてもう一回開けてみたが瀬田薫がいる事実は変わらなかった。ぴえん。

 

「せっかくここで会えたんだ。学校まで君をエスコートさせてくれないかい?」

 

「絶対やだね」

 

「……そうかい? それはそれとして、随分と君は家を出る時間が早いんだね。まだ学校が始まる時間の三時間前だよ」

 

「迷うからですけど」

 

 俺がそう言うと、瀬田は何やらキザなポーズを取りこっちを見てくる。こっちみんな。

 

 しかもその視線の先は俺だけではなく俺が住むアパートに向いているようで。も、もしかしてこの子……?

 

「今日は私がいるから出る時間が少し遅くても大丈夫そうだね。それじゃあお邪魔するよ!」

 

「は?」

 

 見事、その予感は的中した。俺の家に上がり込んでくる瀬田薫。やめて!

 

 俺ん家、元々俺自身が親元を離れて一人暮らししてる上学業が忙しすぎて家事になんか手が回らない、つまるところ散らかりっぱなしなんだよ。

 

 って待てよ? 散らかりっぱなしってことはあの暗黒写真も……

 

「うわぁぁぁあぁぁああぁあッッッッッ!」

 

「ど、どうしたんだい翔真?! その……何か私は君の大切なものを踏んでしまったりしたかな……?」

 

「違う! 違うけど! とりあえず一回外出てくれ! 暗黒写真を全部捨てるから!」

 

「あ、ああ……?」

 

 俺は半狂乱の状態で瀬田を家から追い出すと暗黒写真を集めゴミ袋に投げ捨てる作業を高速で繰り返す。

 

 瀬田に漆黒の炎に抱かれるオレの写真とか見られたら社会的に終わるぞ俺。そのままどこか遠いところ……例えばブラジルとかに逃げなきゃいけなくなる。

 

「……ドウゾ、オハイリクダサイ」

 

「だ、大丈夫かい?」

 

「ただし!変なとこ触ったら許さないからな」

 

「あ、ああ……」

 

 今のところ目に見える部分の暗黒書物しか処分していないので、押し入れの中とか開けられたら即刻ジ・エンドである。頼むから触らないでね。

 

 え? そんなもん全部捨ててそうなのにって? いやなんか知らないけど親が月一で実家に残ってた暗黒期の写真を俺に送ってくるんだよいらないのに。だから減っては増えて増えては減ってを繰り返してるんだよな、うちの暗黒写真。

 

「ところで翔真、君は演劇は好きかい?」

 

「……まあ拗らせてた時はよく見てたけど、今はそんなに見てないかな」

 

「そうか、君は演劇が好きなんだね!」

 

「いやいやなんでそうなるんだよ! おかしいでしょ!」

 

 絶賛拗らせ期の時はカッコつけてシェイクスピアの脚本とか持ち歩いてたけど今では好きでも嫌いでもないです!

 

 だからかな、シェイクスピアって言葉聞くと過去がフラッシュバックして震えるようになっちゃった。なんなら持ち歩いてた本、誰かに貸したこともあったな……昔の俺。

 

「恥ずかしがらなくてもいいよ、翔真。華のシェイクスピア曰く『輝くもの、必ずしも金ならず』とね。つまり……そういうことさ」

 

「それってつまりどういうことさ?」

 

「とまあ、そうだね。つまり翔真には私の舞台を見て欲しいんだ!」

 

「答えられないから話逸らしたなこの子……」

 

 なんだろう、まさか瀬田がシェイクスピアの名言引用してくるとは思わなかったな。しかも絶妙に見当外れだし。

 

 いや待てよ? 俺、たしか瀬田にシェイクスピアの本貸してたことなかったっけ? ってことはもしかして……

 

 あ、やめよ。この話考えるのやめよ。俺のせいで瀬田がシェイクスピアうんぬんって言い出したとか考えたくない。

 

「ちょうど次の舞台は君が好きそうな異世界ファンタジーものでね……」

 

「異世界ファンタジー……!? いや違う異世界とか俺好きじゃないし」

 

「おや、そうかい? それでも、儚い劇であることは保証するよ。ぜひ君には見にきて欲しい、今の私を」

 

「……今の、瀬田?」

 

 今の私を見て欲しい──瀬田は俺にそう言った。

 

 いやでも、今の私って言われても俺は今の瀬田しか覚えてないし。俺、昔会った瀬田のこととかそんなに覚えてないし。

 

 でも、瀬田がそこまで言うなら見てやってもいいかもしれない。彼女の演劇を、今の瀬田薫を。

 

「で?その演劇っていつなの?」

 

「今日だよ」

 

「え、今日?」

 

「と言うわけでこれから一緒に学校に行こうか翔真!舞台には放課後案内するよ!」

 

 いや、まさかの今日なんかい。俺はそうツッコミたくなるも、ギリギリのところで我慢する。

 

 普通こう言うのって事前チケット渡して、当日来てねってするのが普通のはずなのに。

 

 でもまあ、試しに行ってみてもいいかもしれないな。なんてことを考えながら俺は瀬田と学校に向かった。

 

 ──あ、もちろん女子には道中で睨まれました。

 

 

「異世界サイコー! ……じゃなくて! まあそれなりに良かったんじゃないかな」

 

「相変わらず変なところで意地張るな、朝霧って」

 

「うるさいな赤尾」

 

 ……そんなこんなで時は過ぎ、瀬田の舞台が終わって。

 

 赤尾と感想を語り合っていると、そこに瀬田がやってくる。

 

「今日は来てくれてありがとう、翔真! 君が見てくれていると思うと演技に力が入ったよ」

 

「……そりゃどうも」

 

「あれ、瀬田さんは朝霧のこと翔真って呼んでる? にしては朝霧の方が塩対応だけど……」

 

「フフ、彼はまだ私と話すことを恥ずかしがっているんだね」

 

 いや違うし! 何がどうなれば俺が『薫様と話しちゃうなんて恥ずかしいわ……ポッ』ってなるんだよ。

 

 俺が必死に首を横に振っているのを見て照れ屋さんだね……と自分に酔う瀬田。もう俺瀬田なんか知らないよ。赤尾もういないし。

 

「あ、薫さん! ここにいたんすね! ところで、この方は……」

 

「紹介するよ、麻弥。彼は朝霧翔真、私の友人さ」

 

「いや俺友人とかなんもいってな」

 

「俺はそんな朝霧の友人の赤尾です!」

 

 俺が否定する前に赤尾が割り込んできたせいで、別に友人じゃないしあっちが勝手に俺に擦り寄ってくるだけ、と本当のことを伝えられない。なんか瀬田に麻弥、と呼ばれた女の子も納得してるし。

 

 っていうかこの子、メガネでわかりづらいけどすごいかわいい子じゃん。瀬田はそんなかわいこちゃんにいつも囲まれてるの? うっわ羨ましい。俺もそれくらいモテたいよ。

 

「薫さんに男の子の友達がいる……なんだか新鮮ですね。ジブン、驚いちゃって……でも、薫さんは優しい人ですからきっと朝霧くんとうまくいくと思うっす!」

 

「そうですね……」

 

「あ、紹介が遅れてましたね。ジブンは大和麻弥、上から読んでも下から読んでもやまとまやで覚えてください!」

 

「大和さんですね。よろしくお願いします!」

 

 よし、我ながらパーフェクトだ、パーフェクトに普通の挨拶ができた。

 

 心の中で自分を称える俺の隣で、赤尾は瀬田と大和さんと話をしているようで。

 

「いやぁ、でも良かったよ、朝霧に俺以外の友人ができて! 瀬田さん、大和さん、朝霧は見ての通りこんな奴ですけど仲良くしてやってくださいね!」

 

「フフ、もちろんさ」

 

「もちろんですよ! 朝霧さんだけじゃなくて赤尾さんとも仲良くさせてください」

 

「いいんすか? それじゃあ喜んで! ところでなんですけど……瀬田さんと朝霧はどうして仲良くなったんすか?それ、気になって」

 

 そんな赤尾の質問に対して、赤尾いや、別に仲良くなってないんだけど──俺がそう言おうとした瞬間。

 

 瀬田が、とある爆弾発言をする。

 

「私の部屋で話をしたり翔真の部屋で話をしたりしたら仲良くなれたんだ!」

 

 Noooooooooo!!!!!!!!!!

 

 俺は心の中でそう叫ぶがその言葉は瀬田に届かない。

 

 語弊ありまくりだろその言い方! もう少しまともな言い方あっただろ! 大和さんと赤尾も固まってるし。言葉に困ってるし。

 

「ジブン……詳しいことは聞きませんから……ただ、お幸せに……」

 

「いや、朝霧と瀬田さんがそう言う関係でも……俺はいいと思うよ……」

 

「違うんだ、違うんだって! たしかに部屋では話したけど……お前らが思うようなことは全くしてない! 本当に!」

 

「翔真、何が違うんだい? ただ私たちはベッドに座って話したりしただけじゃないか」

 

 頼むから瀬田は黙っててくれ。今の君は余計なことしか言わないマシーンになってるから。

 

 そんなことを話していると、ギャルっぽい女の子がこっちに駆け寄ってきて。

 

「薫、ってことは彼と付き合ってるの!?」

 

「リサ? ああ、そうだね、彼と私は……」

 

「いや違いますからね!付き合うは付き合うでもそう言う意味じゃなく」

 

「そっかぁ〜! 薫もついに誰かとそう言う関係になったんだ〜!」

 

 ああもう、勘違いが勘違いを呼んじゃったよもう。否定するのも疲れた。

 

 っていうかリサ? さん、どうして抽象的に話すんですかね。はっきり恋人なの? って聞かないと多分この子には伝わりませんよ。

 

「リサ……さん? 違いますからね。俺と瀬田は友人でも恋人でもないですから」

 

「そうなの? 怪しいなあ。アサギリくんといる薫は、なんだか普段より嬉しそうなんだけど。でも、そうなるのって好き合う同士だよね。もしかして二人は秘密の恋人とかだったりしないの?」

 

「だーかーら、俺はこの子のことどうとも思ってませんから!」

 

「ふーん、俺は? ってことはそういうことかな、薫?」

 

 そう言って瀬田の方をチラリと見るリサさん。その視線は何やら意味深で、俺にはよくわからないが何かのメッセージがあるのだろう。

 

 その後、リサさんはにっこりと微笑むとまさかの発言を俺に、いや、俺たちにしてきたのだ。

 

「まあ付き合ってるにしろしてないにしろ、どっちでもいっか。アタシを納得させるために一回二人でデートしてみてよ!」

 

 ──ああ、俺の運命を司る人。俺の毎日は、いつ普通になるんでしょうかね。




今回も読んでいただきありがとうございます!
次回もお楽しみに!
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