俺の毎日を平凡にしてくれ   作:イソギンチャク

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どうも、イソギンチャクです。いつもご愛読ありがとうございます!
読者の皆様のおかげでUAが1000回を超えました!ありがたい気持ちでいっぱいです。
今回の話も楽しんでいただければ嬉しいです。
それでは、よろしくどうぞ。


至って平凡じゃないデート

「瀬田、俺はお前を許さない。デートすることによってNFOやる時間が潰れた」

 

「す、すまない翔真……でも、どうして君はあの日デートすることを断らなかったんだい? 私はそれが気になってしまって……」

 

「あそこで断ったらノリ悪い奴とか、悪評が立つでしょ。俺はどうにしろ目立ちたくないんだって」

 

「そうなのかい? そう、なんだね……」

 

 ── アタシを納得させるために一回二人でデートしてみてよ!

 

 リサさんにそう言われた次の日曜日。俺と瀬田はショッピングモールに来ていた。

 

 俺、本来なら今日はNFOだけして引きこもろうと思ってたんだけどな。運命がそうさせてくれなかったんだよな。

 

「でも、私と君がデートすることになったのもまた儚い運命……それならば楽しもうじゃないか、今日という尊い一日を!」

 

「……あんまりはしゃぎすぎて目立たないでよ。ただでさえ俺君のファンの子に嫌われてるしそれでデートなんてバレた日には存在消されるから」

 

「そうかい? それなら私が子猫ちゃんたちに君の儚さを伝えよう! そうしたら子猫ちゃんたちも納得してくれるはずさ!」

 

「そんなわけないでしょうが! 余計俺へのヘイトが悪化するやつじゃんそれ!」

 

 俺がそう言っても未だハテナマークを頭に浮かべる瀬田。ほんと、無自覚って恐ろしいよ……

 

 仮に瀬田がファンの子たちに翔真はとても儚い友人だよ! って言ったとしても絶対火に油状態になること間違いなしだ。それは避けたいところだけど……

 

「それで、これからどうしようか? どこか行きたいところはあるかい? 翔真」

 

「別に行きたいところとかはないけど。別に俺趣味とかな」

 

「今、そこのブースでお化け屋敷やってまーす!思い出作りにいかがですかー!」

 

「行くーーーーー!!!!!」

 

 隣で瀬田がどうしたんだい?! ってびっくりしてるけど今はそんなこと関係ない。俺は今すぐ、お化け屋敷に行きたい。

 

 ……そう、そうなんだ。こう見えて実は俺、ホラーが大好きなんだ。

 

 これは拗らせてなかった時拗らせてた時関係なく、小さい頃から俺はお化けとか怪奇現象もろもろが大好きで。

 

 だってお化けって、いろんなロマンあるじゃん! 怪奇現象とか、ワクワクして楽しいじゃん! だからかな、羽丘の七不思議にも興味がある。

 

 隣で瀬田もぶるぶる震えてるし楽しみで震えてるんだろうな! 俺にはわかるよ!

 

「しょ、しょしょしょ、翔真? き、君はなんだかとても嬉しそうだね、私も見ていて嬉しいよ、だけどその、デートでいきなりお化け屋敷はハードルが高く」

 

「そんなことないよ! きっと楽しいって!」

 

「ふ、フフ、なんだか今日の君はこころみたいなことを言うね……」

 

「こころさん……? ってことはもしかしてそのこころさんもお化けが好きなの!? それなら是非仲良くなりたいな!」

 

 俺がそう言うと、そうだね……と青い顔で笑う瀬田。きっとお化け屋敷が楽しみすぎて顔が空の色になっちゃったんだろうな!

 

 俺は、おばけに会えるという幸せな気持ちのまま瀬田の手を取ると、そのままスタッフさんから二人分のチケットを購入し、お化け屋敷の中に入ったのだった──。

 

 

「呪ってやる……呪ってやる……ッ!」

 

「ひぃっ!?」

 

「ギャァァァァァ!」

 

「わぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 ……お化け屋敷の中に入って、俺はすぐさま瀬田の異変に気づいた。彼女は、俺にしがみついて、離れようとしないのだ。お化けに会うたび、お化けから目を逸らすかのように俺の背中に顔を埋める。

 

 その時、俺はようやく理解した。この子……お化けが苦手なんだ。

 

 瀬田、よく見たらすごい涙目だし、プルプル震えてるし。震えてたあれはお化けに出会える興奮からじゃなくて、お化けに出会う恐怖からだったんだ。

 

「私は大丈夫……大丈夫……だいじょ……うぶ……」

 

「……お化けが怖いの気づかなくてごめん、瀬田」

 

「だいじょうぶ、だよ、翔真。翔真が好きなことなら、私も一緒に楽しみたいからね」

 

「無理しなくていいから。ほら、今から途中退場口探すぞ」

 

 本当に怖くてしょうがないだろうに、大丈夫だと口にする瀬田。

 

 本当に怖い時ぐらい強がらなくていいのに。怖いから外に出たいって、素直に言ってくれていいのに。

 

 そんな瀬田は、途中退場口を探す俺にこう話す。

 

「せっかく君の大好きなお化け屋敷に来れたのに……私のせいで帰らせてしまうのは悪いよ。最後まで一緒に──」

 

「怖がってる人連れながら巡っても、気になって楽しめないしさ。それに、このお化け屋敷は今日で終わりなわけじゃないし。また機会見つけて今度は俺ひとりで行くよ。だから安心して」

 

「……翔真」

 

 俺がそう言うと、瀬田は安心したのか、俺にぎゅっと抱きついて何も言わなくなる。

 

 ええっと……その。いきなり抱きつかれると、対応に困るんだけど。瀬田も女の子だから、あの、彼女の胸元が背中に当たって、それが気になってしょうがない。

 

 でもこれって至って普通の健全な男子高校生の反応だよな!? そ、そうだよね!? そんなことを考えていると、瀬田が口を開く。

 

「……翔真のそういう優しいところは、あの頃と変わっていないんだね」

 

「……あの頃?」

 

「い、いや、なんでも! それじゃあ行こうじゃないか! 外の世界へ!」

 

「って、こんな状態でいきなり走ったりなんかしたら危な──」

 

 そう言いかけた瞬間、バランスを崩して斜めになっていく瀬田と俺。

 

 どうしよう、このまま転んだりなんかしたらお互いに大怪我をしてしまう。なんとか上手く受け身を取って、最悪の事態を避けたい。

 

 でも、俺は華麗な身のこなしなんかできないし、うまくなんとか大怪我を避けるためには、床に手をつく他ない!

 

 そうして床に手をついて体を支えるために前に出した左手には、何やら柔らかい感覚。いや、床、普通だったらこんな感触しないよね……?

 

 そんな謎床の正体が知りたくて、試しに左手を動かしてみると、むにゅむにゅ、と新感覚の触感が俺の手に伝わる。

 

 なんだろう、これ。なーんか瀬田が顔真っ赤にしてるけど……え、真っ赤?

 

「しょ、翔真……君はその……なかなか大胆だね……」

 

「すみませんでした!!!!!」

 

 やばい俺が揉んでたの瀬田の胸だった! さっきまでの俺、女の子の胸触ってたんだ! どうりで柔らかいわけだな〜!

 

 じゃないだろそろそろ本格的に俺ブラジルに逃げないといけなくなるやつじゃん。

 

 俺は瀬田の胸から手を離すとすぐ起き上がり、瀬田から離れて。お化け屋敷を出るなりすぐスライディング土下座を決めた。

 

 

「さっきのことは気にしなくていいよ、翔真。あくまで事故なのだからね」

 

「瀬田……本当にごめんなさい……」

 

 瀬田に土下座を繰り返すこと何十分。私は大丈夫だから顔をあげてくれ、と何度瀬田に言われても俺は謝り続けた。

 

 もし俺が瀬田の胸を触ったとかいうことがファンの子に伝わったら、絶対許されない。存在を消されるどころの問題じゃない。そんなの、絶対嫌だ。

 

 ……それに、やっぱり女の子たるもの、自分の胸を触られるのなんて絶対嫌だろうし。

 

 瀬田は優しいから、大丈夫、と俺に言ってくれているがそれでも謝らないと俺は気が済まない。そんな思いを抱えながら、俺がもう一度謝ろうとすると、いきなり瀬田にぎゅっと抱きしめられる。

 

「かのシェイクスピア曰く、『避けることができないものは抱擁してしまわなければならない』とね。ああ、儚い……」

 

「……WHY?」

 

「君が事故で私の身体を触ってしまったように、私はこうして君のことを抱きしめた。これでおあいこ、だろう?」

 

「……いや、そうはならないでしょ」

 

 急に抱きしめられて戸惑う俺に、突如謎理論をかざしてくる瀬田。

 

 でも、瀬田に抱きしめられるのはまあ悪くないって言うか、あったかくて幸せっていうか、女の子に抱きしめられてる、ってい……いやなんか変態くさいな!

 

「とりあえず、離れて欲しいんだけど」

 

「どうしてだい? 私はもっと君の温もりを感じていたいな」

 

「だからその、なんか勘違いされそうな言い方やめて欲しいんですけど!瀬田にそういうこと言われると、なんていうかその、胸のこの辺がぞわってするの!」

 

「……そうなのかい? 君がそういうなら仕方がないね……」

 

 俺がそう言って、ようやく瀬田は俺から離れる。ここまで、長い戦いだった。

 

 でも、俺から離れる時の瀬田はなんだか名残惜しそうで。そんなに抱き心地がいいのかな? 俺。

 

 そんなことを考えていると、瀬田が俺にこう話しかけてくる。

 

「そうだ、翔真。デートの続きはどこへ行こうか? ただ、本当にすまないが、お化け屋敷以外で頼むよ……」

 

「それはもちろん! でも、急にどこに行くかって聞かれても俺、わかんないしな……」

 

「……それじゃあ、ここはどうだい?」

 

「ここ? それってどこ……」

 

 俺がそう聞くと、瀬田は地図のとある場所を指差してここだよ、と答える。

 

 そう、瀬田が指定した場所は──

 

 

「まさか、瀬田が提案したのが公園だったなんてな」

 

「フフ、この公園には思い入れがあってね。君も来たかったんだ」

 

「思い入れ? それってどんな?」

 

「フフ、それはね。私と君が出会ったのが、この公園だったんだよ」

 

 そう、瀬田に連れて来られたのはまさかの公園で。

 

 瀬田はどうしてか懐かしそうにあたりを見渡すと、俺に向かってそう言ってくるものだから。

 

 ここが瀬田と俺が出会った公園……? だめだ、全然記憶が出てこない。

 

「……そう、なんだ?」

 

「もしかして君は覚えていないのかい? 全く、君は罪作りな王子様だ」

 

「ごめんって……基本的にあんまり思い出したくないんだよ、あの頃のことって」

 

「……そうか」

 

 俺がそう言うと、瀬田はまた少しだけ悲しそうな顔をする。

 

 だが、そんな顔をしていたのも束の間。瀬田は、俺にこう言った。

 

「それじゃあ、これからはこの先もたくさん思い出したくなるような思い出を作っていかないとだね」

 

「……瀬田」

 

「いつかまた、今日みたいに二人でデートしようじゃないか!私がまだ知らない君のことも知りたいし、君がまだ知らない私のことも知って欲しい」

 

 嬉しそうにそう口にする瀬田に、デートじゃなくて普通に友人として遊びに行きたいんですけど、と言うのもなんだか野暮な気がして。

 

 いや、待てよ? 俺今、普通に友人としてって言った? なんか俺、しれっと瀬田薫を友人として認識してない?

 

 まあでも、瀬田が友達っていうのも悪くないかもしれないな。全くして平凡じゃない毎日になる未来しか見えないけど。

 

 そんなことを考えていた、その瞬間。俺の頬に、何か柔らかいものが触れる。それが何なのかわからない俺に、瀬田は。

 

「好きだよ、翔真」

 

 そう言って俺にウインクしてみせる。

 

 って、え? 今俺、瀬田に何された? あの柔らかい感触、なんだった? っていうか、瀬田、今、なんて? も、もしかして、もしかしたら、これって……

 

 そんな瀬田がしてきた頬へのキスと告白に俺が気がつく頃には、もう彼女はそこにいなかった──




今回も読んでいただきありがとうございます!
次回もお楽しみに!
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