俺の毎日を平凡にしてくれ   作:イソギンチャク

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どうも、イソギンチャクです。クリスマスに始めたゲームに熱中しすぎて薫ちゃんのクリスマスボイスを聞き逃したことをとても悔しく思っています。自分も薫ちゃんに愛を贈られたかったです。
それでは、よろしくどうぞ。


至って平凡じゃない抱擁

「うわやっぱアレやるのすっごい恥ずかしかったし赤尾たち爆笑してたんですけど。もう二度とやらない」

 

「そうかい? 私はすごく儚いと思ったよ。翔真がとても儚い笑顔をしていたからね!」

 

「はいはい、儚いですね儚い」

 

 結局勇気を出してやったモーニングフォグのキャラを全クラスメイトに笑われたその日の帰り道。

 

 俺は瀬田と今日のことについて語り合いながら帰っていた。

 

「まあ、結果オーライだからいっか。ほんとにありがとな、瀬田」

 

「フフ、もっと褒めてくれて構わないよ!」

 

「他人事なのに随分と嬉しそうだよな……まあこう言うのもなんだけどさ。久々のモーニングフォグ、悪くはなかったな」

 

「それなら良かったよ。やはり、翔真が笑顔なのが一番だからね!」

 

 そう言って、嬉しそうに笑う瀬田。ああ、本当にこの子は優しい子なんだなあ。

 

 だからこそ、あの日の言葉が俺は気になる。そう、あの日、彼女が俺にした……

 

「……それでさ、聞きたいことがあるんだけど」

 

「なにかな? 翔真」

 

「……デートした日、たしかに瀬田は俺に告白したよな」

 

「ああ、そうだね」

 

 そう、あの日した告白のことが、どうしても気になって。

 

 もちろん、嘘だとは思ってないし、あの日の瀬田の顔は真剣そのものだった。だからこそ。

 

「……どうして、俺なの?」

 

「どうしてって……どうしてだい?」

 

「そりゃあ……いい男なんていっぱいいるだろうに、どうして俺なんだろうって。仮に俺がモーニングフォグとして瀬田のことを救ってたとしてもさ、それだけで好きになるもんかな。第一、あの頃の俺と今の俺は違うし」

 

「……翔真、私はね」

 

 どうして俺を好きになったのか、気になってしょうがなくて。

 

 そんな俺に、瀬田はこう返す。

 

「人を好きになるのに、深い理由なんていらないと思っているよ」

 

「……え」

 

「少なくとも私は、今の翔真に会って翔真のことをもっと好きになった」

 

「そう、なんだ」

 

 ……瀬田が、あまりにも嬉しそうにそう言うものだから。思わず俺も、反応に困ってしまう。

 

 正直、そんな顔されたらさ、勘違いしちゃうじゃん。ずるいじゃん、そんなの。

 

「あのさ、好きって言われた上あんな風に助けてもらったりとかしたら俺瀬田のことコロッと好きになるよ。単純だから」

 

「……私は、君に私のことを好きになってほしいけれど」

 

「でもさ、俺は瀬田のこと全然知らない。それなのに簡単に付き合うとかは、俺の口からは言えないよ」

 

「……れじゃあ」

 

 でもさ、それは違うよな。瀬田のことを知らずに付き合っても、結局瀬田を傷つけてしまう。

 

 ごめんな、瀬田。俺はそう言って立ち去ろうとするが、瀬田に腕を掴まれる。どういうことかわからない俺に、彼女はこう言った。

 

「……それじゃあ、私のことを、知ってくれるかい?」

 

 

 

「ねえ瀬田薫さん、どうしてそんなにくっつくの?」

 

「どうしてって……翔真だからだよ?」

 

「いやいや俺を理由にしないでほしいんだけど。

 

「私を知ってもらうにはどうしたらいいのか、昨日考えたんだ。そうしたら、まずは君を抱きしめてみると言うことが浮かんでね。ああ、儚い……」

 

 次の日の昼休み。なぜか俺はくっついてくる瀬田を必死に引き剥がしていた。

 

 っていうか離れてよ! 離れてくれよ! いろいろ当たっちゃいけないものが当たってんだよ主に胸とか胸とか胸とか!

 

 瀬田のとある一部分の柔らかい感触とくらくらするような女の子の匂いで俺はもう倒れそうだ。

 

 そんな中、俺の頭の中に浮かんでくる景色に映るのは、少しはだけて今にも肌色が見えてしまいそうな制服姿の瀬田。とろんとした目で俺を見つめる彼女は、そのまま熱っぽい声で……

 

『私を知って……?』

 

いやいや違う違う違う違う違う!

 

 とにかく! どうしてこんなことになったのか、俺は全く理解できないのだが。

 

そんな時、頼れる友人である彼女がやってくる。……が。

 

「お、薫に抱き付かれてるってことは薫とちゃんと向き合ってあげてるんだね。えらいじゃん、アサギリくん!」

 

「そう言うならこの子止めてくださいよリサさん! このままだとあらぬ勘違いが巻き起こるんです!」

 

「えー……アタシは幸せそうな二人を止めたくないなあ……」

 

「本当かい? 私たち、幸せそうに見えるかな?」

 

 絶対わざととしか思えないリサさんの言葉に目をキラキラさせながらそう口にする瀬田。ピュアでかわいいけど離れてくれ。

 

 ほら、見える?そこの物陰で女の子たち話してるから。絶対俺をこの世から消す方法話し合ってるから。

 

「なあにがモーニングフォグよそんなのこの最強空気清浄機で晴らしてやるわ……!」

 

「やめなよレイ! もっとしっかり存在をかき消さないと!」

 

「涼子……そうよね、そうだと思うわ! 早くあのモーニングフォグを霧よりも薄い存在に……」

 

「そうそう! もう薄切翔真にしないとだよね!」

 

 ほら! 俺薄切翔真になりかけてる! モーニングフォグ敵に回されてる!

 

 でも、俺があの子たちに嫌われる理由を作った人は何食わぬ顔で笑うもんですから。

 

「翔真?」

 

「いや、なんでもないよ。後でいくらでも抱きしめてやるから、とりあえず離れて」

 

「本当かい? それは嬉しいな!」

 

「え、いや、あ、それ、本当にやるとかは言ってな、ってもー!」

 

 ああ、恋する乙女(なおイケメン)の扱いは難しいよ。

 

 でもまあ、後でいっぱいこの子を抱きしめれば今ここで瀬田に抱きしめられる状態ではなくなるから、まあいいのか。

 

「……わかったよ。後でたくさん抱きしめてあげるからさ、今は離れて!」

 

「ああ、もちろんだとも!」

 

「抱きしめてあげるって言ったら途端に素直になったなこの子……」

 

「あははっ、アサギリくんやっさしー☆」

 

 リサさんは笑ってるけど元はと言えばリサさんが止めてくれなかったからハグする羽目になったんだからな。

 

 仮にさ、俺がハグしましょう! って気軽に言えるような見た目ならよかったよ。でも俺、これといって顔に自信があるわけでもないし。平々凡々だよ、俺の顔なんて。

 

 ああ、誰もが振り向くようなイケメン、一度はなってみたかったな……瀬田みたいに女の子にキャーキャー言われる人生、送ってみたかったな……

 

 なーんてことは置いておいて、俺は食べていなかった昼ごはんを無理やり口に放り込み、その日の昼休みを終えた。

 

 

「おかえり翔真。さあ、私を抱きしめてくれ!」

 

「嘘だろおい」

 

 長かった授業も終わり、帰り道もちゃんとナビをつけて帰り、家のドアを開けたら瀬田薫がいた。

 

 なんで簡単に不法侵入されてるんですかね。俺の家のセキュリティはガバガバなんですかね。

 

「……どうして俺の家の中にいるの?」

 

「ああ、それはね。赤尾くんがこの鍵をくれたんだ」

 

「赤尾あいつ後で絶対しばく……!」

 

 俺は赤尾が人の住所を言いふらすどころか言いふらした挙句家の鍵まで渡すようなやつだとは思わなかったよ。

 

 まあ、別に瀬田だからいいけどさ。いや、瀬田でもダメだろ人ん家に不法侵入したら。

 

「さあ、翔真!私を抱きしめてくれたまえ!」

 

「……わかったよ……そんなに抱きしめて欲しいの? 瀬田って」

 

「翔真に抱きしめてもらうと、すごく落ち着くんだ」

 

 おいそんな可愛いこと言うなよ! 好きになっちゃうだろ! いや単純すぎか!

 

 いかにも寒すぎる自分ツッコミをして心を落ち着かせるが、キラキラした目でそう口にする瀬田はかわいい他ない。でも……

 

「へ、へー……? そうなんだ。でもさ、やっぱ俺が瀬田を家で抱きしめるのは問題がありそうって言うかなんて言うかさ…」

 

「……抱きしめてくれないのかい?」

 

 そんな子犬のような目で俺を見ないでくれ頼むから! ああ、もうわかったよ! 抱きしめればいいんだよね抱きしめれば!

 

 仕方なく俺はぎゅっと瀬田を抱きしめる。すると、彼女は嬉しそうに俺の腰に手を回してくる。

 

「……翔真の腕の中、あったかいな」

 

「……そう、よかった」

 

「おい朝霧! 大好きな赤尾っちが遊びに来てやったぞー! ……あ」

 

「こんにちは、朝霧さん! ジブンも赤尾さんに連れられてやって来……え」

 

 俺が瀬田の温もりでぽかぽかしていると、開くドア。

 

 そこにいたのは、まさかの赤尾と大和さんの二人で。

 

「「失礼しましたー!」」

 

「待って赤尾大和さんこれは違」

 

「……そうだよ、ただ私たちはこの部屋で抱き合っていただけ……」

 

「瀬田は黙って!」

 

 もうやめてこの子誤解生むようなことしか言わない! 次似たようなこと言ったら今度からは勘違い生成機って呼ぶからな瀬田!

 

 その後、勘違いしたまま気を利かせていなくなろうとする二人を俺は必死に止め、事なきを経た。

 

 

そのまた次の日の朝。俺の席の真ん前に、なぜかこの羽丘学園の生徒会長である氷川日菜さんが立っていて。

 

 どう言うことかわからないまま、俺が彼女に話しかけると、彼女はこう言った。

 

「ねえねえ、君が薫くんの彼氏くん?」

 

……ああ、もう、俺の毎日に平凡なんか来ない気がしてきた。




今回も読んでくださりありがとうございます!
次回もお楽しみに!
ここで少し宣伝なのですがクリスマスイブにちょっとした新作を書きました!もしお時間等あればこちらも読んでくださると嬉しいです。

メリークリスマス、私の王子様

それでは皆様、良いお年を!
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