IS to family
プロローグ
目の前に広がる一面の赤い地面。火星だか月面だが見分けがつかない場所を俺は永遠と歩き続けている。わかっているのはアフリカのどこか、だけだった。
人生とは退屈も安定もしないもので、俺の人生は2年前、否、事の発端を考えれば8年前になるだろう。堅気の職業でない、かといって裏社会の人間と名乗るのには疑問が残る。
8年前の白騎士事件が起こるまで、俺は研究所、そこで働く研究者の護衛を務めていた。今思えば、あの頃が最高だったと思う。金に友人、女 何でもあった。
しかし、白騎士事件が起こる3日前勤め先は襲撃に会い壊滅。そこから命からがら逃げ延びた。その後、テロリストに雇われて、最初は順調だったが、連中が俺達を襲った奴等だと知って去った。
向うも俺が当時その場にいたことに気づいたらしく追っ手を送って来て……それが二年前の話だ。
それ以来、何人殺したか分からないほど殺し続け、逃げ続けている。
荒れた大地の真ん中で職なしの俺にあるものと言えば銃と酒の空き瓶、バックパックの荷物 もう二か月は洗ってない野戦服だ。しかも体内に酒が無くて、目も窪み、頭痛がする。
これぞ我が人生。酒と失意の底なし沼だ。くだばっちまえ。
しばらく歩くと、マカロニウエスタンにでも出てきそうな古い町に入ってみたが、人の気配が少ない。足元に何かぶつかったと思ってみると頭蓋骨が転がっていた。
大体何が起こったか、想像に難くない。よくある民族紛争か何かだろう。
その証拠と言わんばかりに町の奥のひときわ大きい二階建ての建物。恐らくはホテルだろうが、ゴーストタウンの中で、その建物から、民族音楽とロックを混ぜた、やかましい音楽が外に漏れていた。
いつものようにバックパックからカラシニコフとその弾倉を抜き取り、装填。手榴弾を三個取り出す。昔は給料の為にこういった事をしていたものだが、いまは寝床と酒のために行っている。全くもってどうしようもない屑だ。
前準備の後にペンダントに口づけし、首にかける。幸運のおまじないの後俺は手榴弾のピンを抜き、玄関を開けて投げ入れた。
爆発音と悲鳴が響く。足が無くなったと喚き散らす男や、鼓膜が破れて、のたうち回っている連中に向かってカラシニコフの弾丸を叩きこむ。
一人ずつなんてけち臭いことはせずに乱射、乱射。他人の人生を地獄に叩き落とす快楽に酔っていると静かになった。
フロントは清掃され、穴が開いた死体から下半身をどこかに無くした哀れな男やらが転がるのみとなった。
片付け終わったのを確認し、弾倉を交換。二階へと上がる。階段を上った渡り廊下にズボンも履いてない一人の男が出てくる、何事かと飛び起きたのだろう。
セミオートで5発撃ち、7.62mm弾は彼の眉間に吸い込まれていった。
間抜けに死んだ彼が出てきたであろう扉をくぐると、玄関に隠れていた黒人が後ろから鉈を振り上げ、突進してくる。カラシニコフの持ち方を変え、銃床で、顔面に殴りつける。
鼻が潰れ、血をボトボト流す黒人を銃床で殴打する。
絶命するまで殴っていると、銃床が折れた。
思わず舌打ちをする、いつだったか民兵から分捕った物にすぎないので、古かったのだ。
さらに部屋の奥に進むと、三人の男と、少女がいた。三人は下半身を丸出しにして、両手を上げていた、奥の少女を見ると、うつろな瞳に栄養状態が悪いのか、骨と皮だけになっていた。
「助けてくれ!、抵抗はしない!」
真ん中の男が叫ぶ。俺に慈悲を求めている。
「お前、白人だろ?お、俺は白人は嫌いじゃないんだ。欲しいものがあるなら、言ってみろ、何だってやる……だから」
卑屈な笑みすら浮かべて必死に生にかじりついていた。先ほどまでお楽しみの最中だったらしく、男は少女を使うか? と聞いてくる始末だ。そんな戯言は今日まで何回も聞いたので、聞き飽きていたが、ここで一つ余興を思いついた。
「なあ、聞かせてくれ。この町で何やったんだ?」
男たちが、戸惑いの表情を見せる。自分たちの予想と違うからだ。
「な、何を言って?」
「自分たちが何をしたか覚えてないのか? 困ったな。そうだ、俺がお前のマネをしてやるから、それで思い出せ」
カラシニコフをフルオートにして弾倉を換え、哄笑を上げて全弾を二人の男に撃ちこむ。
下半身から上半身に向かってなぞるように銃口を動かして、苦痛を与えながら、殺す。
残った男が頭を抱え、恐怖から叫ぶ。神様、神様と喚き散らすのを、俺は笑う。
「こりゃ、悪かったな。せっかく気持ちいことしてたのに、吹っ飛んじまったな。」
空になった弾倉を換えていると、最後の男がどこかにしまっていたナイフを持ち、俺に向かって飛び出してきた。ナイフが俺の懐に入り込んだ。
しかし、ナイフに伝わるのは肉を切った時のソレではない。固い金属にぶつかった時と同じ感触に違いないだろう。
男の顔が恐怖と絶望に染まった。
何故なら男の目の前にいるのはISをまとった白人男性に違いないのだから。
「悪いな。」
俺はその男を横に殴り飛ばした。ISのパワーで殴り飛ばしたので、男は物言わぬ肉塊になった。
静かになった部屋の中で俺は少女に歩み寄った。少女すでには事切れていた。絶望に染まったうつろな瞳は二度と輝きを取り戻すことは無い。死ぬまで、耐え難い苦痛や辱めを受けてきたであろう彼女の目は俺に対してなぜもっと早く来てくれなかったのか、と抗議しているように見えた。
十字を切って俺は彼女を背負った。風船のように軽い彼女と共に下の階へと降りた。アルコールを欲求する体と痩せこけた良心を満足させるために。
砂と埃、血にまみれた汚れた床を踏みしめて聖職者のマネをしていた。
誰もいなくなったバーカウンターで蒸留酒をあおり、喉と体の渇きを癒す。ここにいた民兵もどき共は存外頭が働いたらしく、冷蔵庫が生きてた。おかげでハムとチーズにありつけた。その事だけは連中に感謝だ。最も、もう生きていないが
蒸留酒のビンが空になったので、冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出す。
冷えた缶で顔に当て冷やしていると、突然地面が揺れた。最初は酔ったからだろうと思ったが、いつもの半分も飲んでない事をアルコールに浸かった頭で思い出し、民兵もどきから剥ぎ取ったカラシニコフを手に持つ。
ホテルのドアの向うから足音が聞こえる。だんだん近づき、バーの扉の前で止まった。
扉に照準を合わせた。先手必勝、フルオートで薙ぎ払った。
けたましい銃声が鳴りやみ薬莢が地面に落ちる甲高い音のみが耳に届くが、そのことに違和感を覚える。
――――――手ごたえは?
未だ扉の向こうから気配がする。とんでもない奴が来たかもしれない、と緊張に顔が強張った時、扉が開かれた。
「やあやあ!、こんにちは、皆ご存知束さんだよ!ハロ、ハロー!」
出てきたのはアジア系の若い女だ。まだ20代前半、もしかしたら18くらいかもしれない。
長い髪に端正な顔、豊満なバストと言い、目を引き付ける要素が多いが、一番目を引くのは彼女の格好だ。童話のアリスのようなワンピースにメカニックなデザインの兔の耳を付けてる。アフリカのへき地どころか、どんな場所だろうと場違いな姿に失笑した。
「ねえ、君何でIS使えるのかな、ちょっとバラシてもいい?ねえったら――――」
カラシニコフを持つ俺の周りをちょこまかと周り、好き勝手な事を言い続けている。
「悪いが、医者ならほかを当たってくれ。」
こんな女に付き合ってられない、そう判断し、酒ビンをいくつかバックパックに突っ込みその場を去ろうとする。
「どこ行くのかな~?」
女はバーカウンターの上にあったナイフを俺に向かって投げつける。素人が遊び半分に行うナイフ投げではない、神業レベルの驚異的スピードで迫った。
俺はISの腕だけを部分展開し、防いで腰だめでカラシニコフを女に撃った。腰だめでフルオートなど、弾を無駄に使ってしまうのでしないが、反撃のチャンスすら与えずに彼女を始末したかった。
だが結果は不可視のシールドで弾かれ、7・62mm弾は弾頭が潰れ、鉛玉が無残な姿を晒しただけだった。
「無駄だよ。そんな貧者の武器じゃ、何にもならない。大人しくしてくれないかな?」
それでも構えの姿勢を崩さず距離を取ろうと後退する。
「何者だ?前の職場の幹部か何かか?」
「それは君の事じゃないのかな~? それにさっき言ったじゃない。アルコールで頭パーなの?」
ニヤついて話す女を見る。こちらと視線を合わせず、俺を認識しているかどうかすら怪しい。まるで石ころや人形相手に話しているようだ。こんな話し方をするのは極度のコミュニティ障害化か薬中だけだ。
「何の話だ?」
「鈍いな~、私は束さんだよ? 束さんにかかれば君のこと何でも分かるんだよぉ?君の名前はスレート。32歳。元テロリストで今はアルコール中毒気味のトリガーハッピーの屑ってこと。これでいいでしょ?いいから大人しく言う事聞いてくんない?」
俺の言いようは気に食わないが事実だ。彼女は篠ノ之 束だと言った。なら吹っかけてみる価値はあるかもしれない
「成程、束博士か……男のIS乗りが気になったてか。」
「そうそう、ソイツの出所が知りたくてね。アル中の割に意外と頭回るんだね。」
「こいつは前の前の職場で働く前に勤めていた研究所から逃げる時預かっただけだ。」
首からぶら下げているペンダントを見せびらかす。これが俺のISの待機状態だ。
束はペンダントをじっと見て、雰囲気が変わったような気がした。ニコニコとして何を考えてるか分からなかったのが、マッドな科学者から大切な宝物を見つけたあどけない少女の様に見えた。
「……見つけた」
小さく呟いた声はしっかり俺の耳に届いた。
「誰から預かったの?」
「名前は知らん、日本人だったのは知っているが」
フーン、と相槌をうつと束はペンダントに手を伸ばしもぎ取ろうとする。
だが俺はこれを渡すつもりなどない、俺は彼女の手を掴み、ペンダントから手を離すように言う。しかし、返答は無くお互いににらみ合いとなった。
「返してくんないかな?」
ドスの利いた声が耳に届く。若いのに大したものだと感心する。
しかし、鼻で笑って答える。
「ハッ、お前の物じゃない、これは預かりものだ。 寂しい兔さん?」
その言葉が口火を切った。彼女は開いてる手で顔面目がけ拳を振るう。
頭をずらし避けて、左手で腰からカラシニコフ用の銃剣を取り出して突きつける。
すると彼女の左手から光が見え、気が付くと、その手には青白い光を持つカッターナイフが握られていた。レーザーカッターの一種だったらしく、銃剣がバターの様に何の手ごたえもなく溶断され、ペンダントを掴む俺の右手を銃剣と同じ運命にしようとする。
咄嗟に右手を捻り、打ち倒そうとするが彼女はくるっと回っただけで、見事に着地した。
だが、隙を見つけた俺は斬られた銃剣を彼女の左手に当てた。溶断されて熱を帯びた刃に当たり、束は熱に顔を歪めナイフを落とす。その後は強引に押し倒し、マウントを取る。
溶断された銃剣を顔面に突きつけ、息を切らしながらも俺は言葉を吐き出す。
「悪いな、俺の勝ちだ。実はコイツを渡してくれた奴とは親睦があってな。守秘義務のため名前は教えてくれなかったが、ソイツとの約束は守りたいんだよ。」
「約束ゥ?」
彼女の顔が変わる、正確には目だ。石ころでも見る様な目から変わったのだ。目の前の俺が何なのか、見定めているようだ。
「そうだ、コイツが反応を示す奴を見つけて、守れって……」
ペンダントを見せ、説明しているっと。ペンダントの内側から光が漏れていた。
すぐさま、ペンダントを開き、確認する。虹色に輝く光を強く発していた。
「まさか、お前が?」
今まで見なかった発光現象が目の前で起こり、目の前の現実を改めて認識する
「そうだね、そうらしいね」
彼女は安堵したような、声を漏らす。今までのふざけた口調とは違う。
目の前の一人の少女のような女は目を潤ませ、歓喜にむせているようだった。
「いい加減どいてくれる?」
「ああ、すまない。」
上からどいて、彼女が起き上がる。服の埃を叩いて落として、ズレた頭のウサ耳を直し、こちらに踵を返した。
「ねえ、ちょっと一緒に来てくれないかな?」
無言の圧力。かつての約束のことの事を指して言っているに違いない。
「約束を果たせってか?」
「他になんかある?」
束のウサ耳が淡く光り、電子音が鳴ると、ニンジンの形をしたロケットと思わしきフザケタ物体が入って来た。ホテルのバーは滅茶苦茶になり、せっかくの酒も全て踏み潰してしまった。だが、そんな事は今はどうでもよかった。
こんな物を呼び出せる以上、俺に勝ち目は無い。最初から俺は負けていたのだ。俺は大人しく指示に従う。そして、思い出した。
彼女の名は篠ノ之束。IS生みの親であり、またの名を天災と言う。
ニンジンの中に案内されると、まず最初に目を引いたのは小さなラボだった。俺が都会を離れて、もう2年経つがそこいらの国を超える性能を持つ機材に溢れていることは明らかだった。反面、居住区はお粗末で、簡単なテーブルが一つあるだけで、その上には無数の破かれた携帯食の包装が転がっていた。
居住区の壁の後ろに気配を感じて覗いてみると、一人の女の子がいた。
彼女はおっかなびっくりと言った感じでそこにいた。目が閉じたままで、中学生か高校生ぐらいの年でアルビノのような銀髪を持ち美しかった。
「クーちゃん、ただいま」
束が女の子に向かって行ってハグをする。
「お帰りなさいませ、束様……この方は?」
目を開いてみたわけではないが、俺の存在に気づいていた。耳が良いのかもしれない。
「ああ、ただのお手伝いさんだから。気にしないで。あと準備よろしく……」
「はいっ」
随分と仲良しに見える。噂では、この女はコミュニケーション能力障害や人嫌いと聞いたことがあったが、意外だった。
「よろしく」
簡単な挨拶をしたが、まるで天敵の声を聴いた小動物の様に奥に引っ込んでしまった。
束意外と接したことが無いと確信する。
「こっちだよ、早く来て」
気づけば、束はさっさと奥に行ってしまっていた。声のした方に行くと、医務室に似た設備の部屋に入った。椅子に腰かけるよう言われ、待っていると、彼女はひときわ大きい注射器を取り出して、ニヤニヤしている。
「何だそれは?」
「腕出して、早く」
「そいつは何だと聞いてるんだ?」
聞くが答えない、するとウサ耳が動いた。次の瞬間に椅子は俺の脚を拘束しだした。抵抗するが、一歩遅かった。機械のアームが伸びて、俺の腕を固定した。
全く身動きが取れなくなり、もがくが例の銀髪の女の子もやってきてさらに拘束を強くされた。
「ハーイ、ちくっとしますよ~」
「よせ、やめろ!!」
問答無用で注射器が突き刺さり、内容物が体内に入る。すると、神経を直接痛みつける様な痛みが内側から外側にかけて全身に走る。注射を打たれると同時に拘束もハズレ、俺は痛みにのたうち回った。その内、俺の過去が走馬灯のように流れだした。殺しの日々、豪奢な金髪の女、研究所のアイツ。そして二人の子供。一人は中学生にも満たない女の子で、もう一人は赤ん坊だった。
――――やめろ、ソレを見せるな!
突如としてフラッシュバックが消え、痛みもなくなった。
息を切らし、俺は怒鳴る。
「何いれやがった!?」
「ナノマシンだよ、とっても便利な束さん特製のヤツ。 気分は?」
「ああ、最悪だよ!今すぐでも取り除いてほしいな」
束は舌を鳴らし、指でバッテンを作る
「ダメだよ~。君の記憶は覗かせてもらったよ~、確かにアノ人から頼まれたってのは本当のようだね。でも私は君を信用なんかしないよ。君はとても野蛮な人間だからねェ。身に覚えがあるでしょ?でしょ?」
さっきの幻覚はこの女に記憶を覗かれた際のものらしい、人の記憶を無断で見るとはいい趣味をしている。
「さあな? 忘れたね」
「とにかく、いくらアノ人の友達でも君には首輪を付けないと安心できないし、ってことでナノマシンを入れたのだ! 何と、その気になれば苦痛から、死まで自由に与えらる素晴らしい発明品だよ!」
「さすが、博士だ。いい趣味してるよ」
皮肉を言ってやると、頭痛と寒気がして、思わず顔を歪めてしまう、彼女のいう事は本当らしい。孫悟空の頭の輪っかと一緒だ。そんな俺を見て、Vサインすらして煽る。
「どう?どう? 私を守る気になった?」
俺は観念して両手を上げる。
「わかった、俺の負けだよ。で、何をすればいいんだ、束さま?」
フフン、と鼻を鳴らし、彼女は答えた。
「世界中のISを潰す。それが私のオーダーだよ。スー君」
俺は固まった。
何を言っているんだ、この女は? 俺は理解できなかった。科学者としてなら、自分の研究の成果が世に広まったのは喜ばしいはずだ。
この女に常識があるかは知らないが、普通はそういうものではないのか?
世界中のISを潰す、これがヤツの目的だとしても、たった一人か二人で何ができるというのか?
「スー君は気に入らなかった?スーさんがいい?」
釣りが好きそうな名前だけど、とつぶやく束に俺は問いかけた。
「そういうんじゃない、お前いったい何考えてる?」
声を荒げて聞く。真意も何もかもわからん。
「言葉通りだよ、私は本気だよ~。真剣と書いてマジってくらい」
「ふざけんな、そんな事聞いてるんじゃない!」
人を小ばかにしたような態度がいちいち癪に障る。だが彼女の態度は変わらない。くるくると踊るように俺の周りをまわっているのだ。
「束さんは有象無象にISを使われるのに正直もう、ウンザリしちゃった。周りは技術目当ての豚ばっかり、誰も正しく使ってくれない。アノ人の言う通りにしたのに……ま、とにかくお願いを聞いてくれたら君の願いも叶えてあげる。」
クスクスと笑うのを止めない女は一つの名前を口にする。俺が忘れたい記憶の一つ、そのくせに一番欲しいものだ。
「調子に乗りやがって」
記憶を掘り返され、忘却の彼方へ置いた光景が目の前に移る。吐き気すら催すフラッシュバック。俺は怒りを抑えきれず、掴みかかったがナノマシンによる制裁を受け、再び床に転がった。
「凶暴だな~スー君は。しかも意外と単細胞だね。ま、束さんに勝てる人はいないから仕方ないけどね」
しゃがみこんでニタニタと笑い、俺の肢体をつつく。自信と傲慢の区別もついてない発言。だが、悔しいことに、この女にはそれだけの力がある。世の中は一握りの天才で動くと言うが、彼女はその域を超えている。それほどの実力がコイツにはあるのだ。
「で? どうする?」
しゃがみこんで、こちらの様子をうかがう。
「ああ、いいさ。お前の言う通りにしてやる。その代わり条件は守ってもらう。だが、その前に勝算と計画ぐらい教えてくれ」
「最初から、素直にそういえばいいのに」
立ち上がって、近くの椅子に座り込む。
「いいよ、君は今日から束さんの共犯者であり、奴隷君だ。色々教えてあげる。」
彼女のウサ耳が動き、背後にディスプレイが表示される。
現れたのは膨大なデータ。個人情報から企業、国家機密すら表示された。
そして語られる彼女の策に俺は耳を傾けていた。アフリカの僻地から、全てを変える企みが動き出した。
全くもって人生は退屈しない、それは俺だけの話にはならないようだ。
例えば、目の前のデータに載っている赤毛の少年とか。
いかがだったでしょうか? ご感想お待ちしております。