IS to family   作:ハナのTV

109 / 137
パロデイ多めです


ロック・ユー

楽しい楽しいランチの時間、女子高生は雑誌に恋にファッションと話に花を咲かせ、男どもはちょいとゲスな話題で盛り上がったりする至福の時間。

 

美味しいご飯を食べることで今日の職務や勉学に精を出すための活力を生み出し、食後にコーヒーを飲んで一服、煙草をくわえて深呼吸なんて方もいるだろう。

 

ただし、それは楽しいランチに限った話だ。嫌な上司や先輩と席を一緒にすることや、階級が自分よりはるかに上の場合、またはあまりにも高嶺の花すぎるほどの美人な異性がいると、これが中々楽しめない。

 

つまり、一緒に食べる人間が誰か、という事も重要なファクターであるという事である。緊張やストレスで食べ物がのどを通らないからだ。

 

「少年、何を食べたい?それに君たちもだ。今日は私が奢ろう」

 

目の前のいかにも紳士で優しそうな彼こそが俺の今抱えている問題だ。ジョージ・ダグラス。愛しき一人娘の為に働くアメリカ人のお父さんだ。彼は前回、俺と出会って何かと親切にしてくれている。

 

何でも、俺と出会ったことで再就職が決まり、海外出張もあるが娘さんと暮らしていて幸せらしい。彼の勤務態度は極めて真面目で、評価も上々。どんな人相手にも等しく貴賤なく接する彼はまさに紳士と言える。

 

だが、俺は知っている。それは怒らせなければ、の話であると。

 

一緒にやって来たヴィンセントが肘で俺をつつき小声で問うた。

 

「おい、本当に彼がヒャッハーな御仁なのかい? 僕にはそう見えないけど」

「そりゃ、手榴弾のピンを抜かなければ、可愛いって言うのと同じだぞ。ヴィンセント」

 

あまり上手い例えではないが、俺がそう言うとヴィンセントは成程、とは口にしたものの、納得のいっていない顔をしていた。その反面ユーリは警戒心を露わにしている。

 

「奴は危険だ。俺の勘がそう囁いてる」

「君まで、何を言っているのやら」

 

流石は、根っからの兵士だけあって、気付くのは早いようだ。ユーリは既にダグラスさんの本性を見抜きつつある。

 

「どうした? 何か好きな物を注文しなさい。何でも構わないから」

「そ、そうですか?」

「そうとも」

 

白く磨かれた歯がキラリと光った。素敵なナイスミドルの男がする柔らかい大人の笑みはマイクや大場先生のようなガサツな大人や、山田先生のような童顔では決してみられない顔だ。

 

俺達はダグラスさんのご厚意に甘えて、プレートランチを注文し、席に着いた。ヴィンセントはやはり、いい人だ、と呟いていた。

 

「今日は実にいい日だな」

 

ダグラスさんはそんな風に言って、俺達を見る。

 

「恩人の君だけでなく、弾少年のお友達にも会えた。こうして、娘やミサキさん意外と楽しい食事をするのは久しぶりな気がするよ」

 

穏やかそうに笑って、コーヒーの入ったカップにミルクを注いだ。スプーンでかき混ぜて、語るダグラスさんの顔は終始にこやかだ。

 

「そうなんですか?」

「そうとも。君たちの様な子供は最近珍しいのかな。あまり大人と話したがらなくてね」

 

ヴィンセントが自前のコミュニケーション力を発揮し、彼と会話をしだした。ダグラスさんと話す彼は気さくで、大人に対してちゃんと敬意を持って話していた。

 

このまま、上手い事行ってくれれば、俺はそう願った。頼むから何も起こらないでくれ、と心の中では十字を何回も切っていた。

 

しかし、髪はそんな俺を知ってか知らずか、試練をお与えになられた。

通りかかった女子達が身を乗り出して話していたヴィンセントの後頭部にトレイをぶつけたが、何も言わずに通り過ぎようとしていた。

 

後頭部を軽く抑えるヴィンセントを見て、ダグラスさんは一瞬コーヒーカップに入れたティースプーンを止めて、先ほどの女子を呼び止めた。

 

「ちょっと、君」

 

声音は穏やかだが、俺はこの後どうなるかを知っていた。マズイ、と本能がささやく。言うなれば、爆弾の導火線をライターで炙り出したのを目撃したわけだ。

 

「人に物をぶつけておいて、謝らないのは無いだろう。ちゃんと彼に謝罪すべきだ」

「は? 何おっさん?」

 

かちゃん、とスプーンを手放して、ダグラスさんの目つきが鋭くなる。第二段階へと移行しつつある、と思い俺はダグラスさんを抑えようと、彼の肩を掴んで抑えようとしたが、女子は愚かにも唯の親父と思い、挑発する。

 

「何? ただの男が私に何の用なの? 男なんだから、それくらい我慢しなさいよ。唯の親父が生意気に」

 

そこで女は何を思ったのか、ダグラスさんに自身のトレーに置いてあったカップをダグラスさんに浴びせかけた。

 

彼の顔から水滴が滴り、女子生徒の取り巻きが笑いながら、席に着いた。

ダグラスさんの周囲に怒気が生成された。彼は無言でメガネを拭いて、ついでおしぼりで顔を吹いた。

 

そして、静かに彼女の元たちに赴いて行った。俺は走って止めようとしたが、ダグラスさんが俺の肩を掴んでニコリと笑って見せた。本来、笑顔と言うものは狩るときの物だと聞いたことがあるが、その通りだった。

 

女子生徒は笑って追い返そうとしたが、雰囲気が変わっていることに気付きだした。

 

「だから、何よ?アンタ」

「なあ、聞いてくれ。確かに今の時代は女性が優位かもしれない。私達男と違ってISも使えるし、ちょっとはそっと馬鹿っぽくても許されるかもしれない」

 

段々、と早口になっていくダグラスさんの目にはぎらついた物が浮かんでおり、ヒートアップしていく。

 

「だが、人の礼儀は大切なはずだ。たとえ、相手が賢い猿だろうと、トラックに変形する異星人だろうと、言葉を話す物には暴力でなく、言葉できちんと話す。非礼には謝罪を、礼には礼を、ってね」

 

薄く笑いだして、女子たちも若干引き気味になる。ユーリとヴィンセントもマズイと判断し席を立って、ダグラスさんの後ろに着く。

ダグラスさんははあ、と深いため息を吐いて、口調に更に熱が帯びていく。

 

「なのに、何だ? 日本は礼儀正しい国だと聞いていたのに、謝罪は愚か、水をかけて笑うのが文化かね?あの列車に一秒の遅れも許さない勤勉な日本人はどこへ行った? ああ、そうか。ここはIS学園だった。日本じゃないものな、笑えるな」

 

今度は大きな声で笑い出した。もうじきピークを過ぎるはずだ。ここさえ乗り切れば、無事に終わるはずだ。

 

「知らないわよ! いいからどっかいってよ! 男のくせに!」

「大馬鹿野郎!」

 

その一言を皮切りにダグラスさんはプツンと行った。

 

「そうか、なら仕方ない」

 

彼はいつの間にか持っていたステーキナイフをフッと一瞬振ったと思うと、彼女たちの座っている席とテーブルが二つに割れた。

 

「だったら、蛮族には蛮族の対応しないとなあ! こっち来い! 礼儀正しく清く美しい日本人になるようオーバーホールしてやる!」

 

どこからか、モンキーレンチを取り出し、ぶんぶんと振り回す。女子たちは悲鳴を上げて一斉に逃げ、俺達がその防壁となった。

 

「待ちなさい! 頭のねじをしっかりと締めてやるから、待ってと言っているじゃないか!」

大暴走を始めたダグラスさんに皆は一目散に逃げる。最早ISを使える女子の権威は無く、ひたすら自己保身のために彼女らは逃げる

 

「止めに行く」

「よし、GO!」

 

ユーリが飛び出して行くのを見て、ヴィンセントが俺に訊いた。

 

「どうする? 止める? それとも逃げるか?」

 

その時、止めに行ったユーリが吹き飛ばされて、床に転がって来た。

彼の持っていたナイフは根元が折られており、彼自身が完全に敗北したのが分かった。

 

「すまん、勝てん」

「よし、撤退!」

 

三人で扉に向かって全力疾走する。一秒でも彼から遠くに逃げなくてはならない。だが、逃げている途中でべたべたにもヴィンセントが果物の皮に足を滑らせて転んだ。

 

俺はそれを一回見て、決断をした。

 

「先行くぜ!」

 

怒らせないように笑顔を作って俺とユーリは扉の向こうへと出て、扉を厳重にロックした。扉の取っ手に角材を挟み、くぎを打って固定して全力で走った。

 

「畜生! 地獄に堕ちやがれ!」

 

その後に、ヴィンセントの罵倒が続き、口にするのも憚られる下品なFワードを連発し、数発の銃声が響いた後、彼の悲鳴が木霊した。

 

流石は、ピースメンバー随一の被害担当者だ。今日もいい仕事っぷりを披露してくれた。

 

 

 

 

 

「もう嫌だ、今日は厄日だ」

 

無事に逃げ出したと思った、その後ヴィンセントからの追撃を受けて、俺はズタボロにされて部屋に戻って来た。彼の痩せすぎてはいないが、細いボデイから出た怒りの力によって、チェーンガンをバックパックから出された時には生きた心地がしなかった。

 

部屋のドアノブに手をかけて、回し中に入るとベッドの上に座り込んだアカネと彼女に膝枕をしてもらっているミサキがいた。

 

遊び疲れたのか、スヤスヤと寝息を立てて寝ている彼女はそれこそ天使と形容するのが正しく思えた。

 

視線を上に移して、制服のあちこちが焦げ付き、破れ、胸の一部や腹筋を覗かせて、メガネの片方のレンズが壊れているアカネを見るまでの話だったが。

 

「……お疲れ様」

「そちらこそ」

 

俺は向かいの自分のベッドに腰掛けて、疲れを癒そうとした。しかし、疲れのせいか周囲に妙な気配と視線があるように思えてならなかった。きっとヴィンセントやダグラスさんのキレ顔が頭から離れないからだろう。

 

心なしかベッドの一部分が冷たく思えた。

 

俺は頭を振って、それを忘れようとしアカネに話しかけた。

 

「寝ていると可愛らしいな」

「ええ、災厄さえなければ、最高の友達ですから」

 

アカネは引きつった笑みで答えた。その様子から随分と可愛がられたようだ。

 

「いや、本当に。あの時、顔に張り付く化け物が卵から出てきたときは死ぬかと思いましたよ」

「お前、何してた?」

「色々と」

 

アカネはほっと一息ため息を吐いて、ミサキの頭を撫でた。撫でられたときにミサキの顔が穏やかになり、アカネの太ももに頬ずりしていた。

 

「アカネェ」

「ハイハイ」

 

寝言でそう言う彼女にアカネは優しく笑って、彼女の髪の毛を撫でる。本当に心地よさそうに寝るものだ、それほどまでに信頼しているという事だろう。

 

「いつから友達なんだ?」

 

俺は彼女に質問をした。アカネも気さくな方だが、ミサキの習性を誰よりも深く知っていることを見ると、かなり長い付き合いではないか、と容易に想像ができた。

 

アカネは微笑みつつ、答えた。

 

「ピースより前、今から7年前ほどですね。切っ掛けは前も言った魔法の鍵でした」

「アイスクリームか」

 

俺が答えを言い当てると、彼女は「ええ」と肯定した。

 

「シンシティの旧市街。レトロなレンガ調の建物立ち並ぶ場所に伝統的なバニラアイスクリームがそうです。彼女と友達になった切っ掛けです」

「凄い友達だな」

 

俺は率直な感想を述べた。

 

「アイスクリーム好きのスーパーアイドルなんて、そうそう出来る友達じゃないだろ? 彼女と話しかけるのも俺はちょっと気おくれするよ」

「話しかけたのは向うでした」

 

アカネはミサキを愛おしそうに見つめて、その経緯を語った。

 

「私は彼女の父の家で過ごしていたんです。色々あって、彼らに依存してて大人の世界が私の全てでした。同年代の子は気味悪がって近寄りませんでしたね、そんな時に親しくしてくれたのが彼女です」

 

大人の世界、アカネはそう言った。彼女の憧れたちのいる世界に彼女は居場所を感じ、そこで生活していたのだろう。アカネがライフル射撃に通じてるのも、言葉遣いが丁寧語が主なのも、それが起因していることだろう。

 

もし、十歳にも満たない子がそんな事をしていれば、同年代の子も近寄ろうとは思わないし、親だって近寄らせたくないだろう。

 

そもそも、その時代から既に兵隊は時代遅れの産物と揶揄されつつあったのだから、兵隊の家で過ごす者そのものが忌避の対象であったかもしれない。

 

「最初は私も彼女を避けていましたよ。どうして、そんな近づいてくるのか分からりませんでした。それに鬱陶しい、とも考えていたんです」

 

アカネの口調には自嘲が少し含まれていた。恥ずかしい思い出だった。ミサキと言う親友を鬱陶しく思っていた自分を恥じていたのだろう。

 

ソレは俺が最初マイクさんに対して、とった態度と似ていたと想像した。俺も彼に対して最初はISも使えない男と見ていたのだから。

 

「でも、私が男の子相手に、確か3人でしたか、喧嘩して負けたんです。一人ベンチに座り込んで涙をこらえていると、彼女が少ないお小遣いを使ってアイスクリームを手渡してきたんですよ」

 

アカネの顔が緩んだ。そこからはいい思い出なのだろう。

 

「それが切っ掛けでした。初めは要らないって言ったんですけど、ミサキは友達が泣いているときは隣に居てあげたいからって言ってくれて嬉しくて、初めて同い年の友達ってものに惹かれたんですよ」

 

そう言ったアカネだったが、すぐに言い直した。

 

「いや、正確に言うとミサキに、ですね」

 

そう言って、彼女はミサキをベッドに移して、俺の隣に座り込んだ。ぐいと近づく彼女に俺はどぎまぎした。

 

「お、おい。アカネ?」

 

ミサキが寝ている傍だと言いたかったが、妙につやががった彼女の雰囲気に圧されてしまった。所々破れた制服がそれを更に際立たせていた。

 

「そう、切っ掛けは些細なもの。私も貴方に会って、色々と喧嘩したから今があるんですよ。こんな風に」

 

アカネは抱き付いて、首もとから俺の体に手を回した。もう何度と無くした行為でもあったが、俺は彼女の首もとから匂うラベンダーの香りがした。香水の物だとすぐにわかって、俺は顔を赤らめた。

 

そして、俺も動こうとした時、変化が起こっていた。体が全く持って動かないのだ。それどころか、脱力して関節のない蛸のようにへたってしまった。

 

「……何、コレ?」

 

呂律も上手く回らなくなり、ベッドに伏せた。どうにか力を込めて、見上げるとアカネの顔は黒い笑顔となっていたことに気付いた。

 

「そう、切っ掛けはほんの些細な事。逆もまた然りで、一瞬でブラックになることもあるんですよ? 弾」

「ナ、何イって?」

 

アカネは立ち上がって、ハヤブサの拡張領域からある物を取り出した。それを見て俺は顔を青ざめた。

 

「週刊プレイメイツ軍団vol3 初回限定純ナマバージョン、プレデリアーン、ギシアンマン……成程、今まで貴方方がエロ本の類を見せたことがないと思ったら、まさか、拡張領域に仕舞っているとは……」

 

DVDや雑誌の類が俺の目の前に転がる。そう、俺達ピースメンバーには秘密があった。それはいかに女性であるアカネやIS学園の連中に見つからずにこれらを隠匿するか、での秘密だった。

 

仮にも女子校という神聖不可侵の領域にこれらを持ちこめば、確実に迫害される。それだけなら、まだしも身内にアカネと言うライフルマンがいることを考慮すれば、これらの持ち込み、隠匿は不可能といえた。

 

しかし、これを可能のした英雄が一人いた。我らがメカ二スト兼整備長のマイク、その人である。彼はラウラの暴走後に行われた祝賀会の際、グレイイーグルの拡張領域にその手の類の物を仕舞っていたことをヒントにし、本社にグレイイーグルの拡張領域を予備として注文したのだ。

 

本来、多種多様な火器、弾薬を仕舞い込むために多大なエネルギーを必要とする、この装置を彼は次のように改造して見せた。

 

まず、仕舞うものを考慮して、エネルギー消費量の大幅な削減である。しまうのはせいぜい、全部合わせて五キロもいかない映像媒体や雑誌、USBメモリなどの類であるため、大きめのニッケル水素バッテリーを備えるだけで、ついで本体も制服の内側に隠せるほどに小型化し、さらに光学迷彩をつけれるように試行錯誤を重ねたのだ。

 

これにより、迅速な配置転換、流通を可能とし、人目を盗んで楽しくもゲスい学園ライフを実現せしめた。

 

つまり、超ハイパーテクノロジーの粋を結集させて作った未来のエログッズという事だ。

仮に販売できれば、その手のお客様には間違いなく大絶賛されるだろう。

 

各人でローテーションを作り、俺の番でこの部屋で見つからないように、ベッドの中に隠していたはずだった。

 

「いやあ、ミサキもよく見つけてくれましたよ。まさか、アイスクリームを零したところで見つかるなんて……」

 

高笑いをしたアカネはDVDを踏みつけた。俺は悲痛な悲鳴を上げたが、彼女は笑いながらそれを更に細かく砕いた。

 

「私というものがありながら、不潔ですよね?弾。しかもよりによって、随分と可愛い感じの物ばかり、私じゃ不満でしたか?」

「ち、違う。なあ、落ち着けよ、アカネ。そうすれば……」

「アラ、話は終わり?」

 

そう弁明していると部屋のあちこちから、教師に女子にと姿を見せた。先ほどの視線はこれだったのか、と思ったが時すでに遅かった。

 

「効くでしょう? 私の香水。 特別に作ったトラップ用の特製品よ」

 

イヴァナ先生は愉悦の笑みを浮かべて俺を嗤う。だが、そんな事はどうでも良かった。重要なのは俺は、否、俺達ははめられたという事だ。

 

「さてと」

 

アカネは俺の目の前に立ち、魔王のごとく威風発して俺を絶対零度の目で射抜く。

 

「ま、待て! さっきまでいい話っポイ感じだったじゃないか! 頼むよ、アカネ。助けて……!」

「馬糞野郎」

 

その一言共に俺は意識を刈り取られた。そして、思った。ミサキによる不幸とはこの事だったのだと。薄れてい行く意識の中、俺は思い出していた。あのグッズは確か皆がわかるように名前を書いて小分けしていたな、と。

 

後でアイツらがどうなるのかな、とそんな事を思った。それもすぐにどうでも良くなったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、どうなってんだよ?」

 

無人ともいえる第四格納庫に着いた俺は偶然来ていたユーリとヴィンセントに問いかけた。

ヴィンセントは何故かチェーンガンを手にしており、ユーリは少し肩で息をしていた。

 

「僕も知らないよ」

「ああ、俺も弾にメールで呼ばれただけだ」

 

二人とも俺と同じ理由で来たらしい。先ほど弾からメールがあり、何でも例の物について話があるだとか、で急いでやって来たものの、弾はおらず、いたのは二人だった。

 

「何がどうなってんだ?」

「アレ? 整備長?」

 

そう呼ばれて振り向くと、俺の部下たちがあほ面下げて、やって来た。彼らにも話を聞くと同じようなメールが届いたのだと言う。

 

だが、俺達と同じく、誰もいなかったので困惑しているという事だ。

 

「何がどうなってんだ?」

 

自分の疑問を素直に口にしていると、ヴィンセントが考え込み、その答えを述べようとする。

 

「もしかして、僕らトンデモナイことに巻き込まれているんじゃ?」

「まさか」

 

俺はそう否定した。光学迷彩にあの小ささ、ちょっとやそっと触ったぐらいではわかるはずがない。俺にはその自信があった。

 

「あの機械は俺の自信作だぞ。光学迷彩発生機をピンポイントで狙わなきゃそうバレねえよ。俺は天才だぞ」

 

俺はヴィンセントの肩を叩いて勝ち誇ったように笑った。俺達に隙はない。万全の対策に練りに練られたローテーションに策謀の数々。人は真に重要な事には真剣になるものだ。

 

「ほう、それは気になるな」

 

その時だった。まさかの大場の声が辺り一面に響き、格納庫の電子ロックがオンになった。そして、上を向けば、高所に大場や山田、イヴァナだけでなく、レジスタンスや鈴に簪までいて、俺達を取り囲んでいた。その手にはm16系統のライフルが握られていた。

 

そして、クレーンで運ばれた隠された宝が俺達のちょうど中央に置かれた。

 

「全員、その場に伏せろ! 全員だ!変態野郎ども!」

「クソ、はめられた!」

 

大場の号令を待つ猟犬のように女子たちは怒気を発しつつも、合図を待っていた。

 

「オ、オイやばいぞ」

「殺される、皆殺しだ!」

 

ヴィンセントや部下たちが悲鳴を発し、ユーリは冷汗を滝のように流していた。大場は自衛隊の迷彩服に身を包み、俺達を見下ろす。

 

「お前たちの蛮行は既に抑えている。無駄な抵抗をやめて、大人しく投稿しろ。そうすれば、少しは楽にさせてもいい」

 

流石の迫力で威圧する大場に対して、俺は一か八か話を持ち掛けることいした。生き残るために必要だからだ。

 

「姿を見せろ、胸男が。まな板がそんなに嫌か」

「……逃がさない」

 

耳元に届く、二人の代表候補生の怨嗟の声を聞きつつも俺は大場に申し開きをした。

 

「なあ、大場よ。俺はお前たちに敬意を抱いている。それに女子校に持ちこんじゃいけないってのも知ってたさ……だからって、こんな事をするのは間違っている」

「なら、今すぐ投降しろ。馬鹿な真似はするな」

 

そう冷たく告げる大場に俺は叫ぶ。

 

「だって、しょうがないだろ! 男だぜ! 俺ら!お前らだってエロい妄想ぐらいしたことあんだろ!」

「Hなのはイケません!」

「やかましい、一番エロいお前が言うな!」

「うるせえ! こっちは上から狙ってんだぞ! さっさと投降しろ!」

 

山田の言葉に反論し、大場が苛立った声でそう命令をする。

 

「そんな命令には従えるか!」

「命令に従え!」

 

続く緊張感。狙われるものと狙う者。男と女の拮抗状態の中、互いに動けずにいた。

そんな問答をしていると、視界の隅に鈴と簪が見えた。

 

「時間の無駄ね……簪」

「分かった」

 

簪はコンクリートのブロックを持ち出して、地面に落とした。その大きな音が合図となり、撃たれたと取り違えたヴィンセントが叫んでチェーンガンを発砲した。

 

その瞬間激しい銃撃戦が繰り広げられた。

 

「構わん! 皆殺しだ!」

 

倒れ行く男達、一人、また一人と倒れる中、秘宝のDVDが焼かれていく。

 

真っ赤に染まったヴィンセントが倒れつつも反撃し、ユーリが脱出口を作ろうとしたところを簪にヘッドショットされる。

 

ヴィンセントが抵抗したためか、一番撃ちこまれていた。

 

大場は「撃ちかた止め!」というどころか、しきりに殺せと連呼し、イヴァナは嗜虐的な笑みを浮かべて楽しむ。

 

 

 

 

 

 

その日、俺達の計略は崩壊し、後に高圧ガス銃のペイント弾で痛く、真っ赤にされたまま、泣く泣くその残骸を片付けることとなった。

 




次回よりシリアスに戻って、あと二回やってこのお祭り編は終了予定です。

ここからストーリを加速する予定ですのでよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。