IS to family   作:ハナのTV

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中間話その2
インダストリー組のお話


パニックルーム

 

日頃の鍛錬は欠くべきではない、これは全ての人間にあてはまるはずだ。この国の中年やら学園内の女子ときたら、カロリーたっぷりの菓子を頬張りながら雑誌で楽に痩せる方法などを探している有様だ。

 

全くもって信じがたい。肉体を研磨することで、美と精神の安定が得られるというのに。日頃の鍛錬を怠らないから大抵のことでは取り乱さない鋼の精神を持つことができるのだ。

 

今日も欠かさず行い、己を律することができた。後は部屋に戻り、トレニーングの続きと趣味のナイフ磨きを行うだけだ。大場先生から渡された鍵を握りながら、俺は独り思う。

 

ついでに部屋に戻る途中、トレーニングで熱がこもり、汗が流れ、不快感から制服の上着を脱いでYシャツの袖をめくる。

 

何故かわからないが一部の女子が目を輝かせているのに気付くが無視する。部屋の前に着くと中に人の気配がした。弾か、ヴィンセント、それか織班一夏だろうと予測した

 

仮にも女子高なのだから、男女で同じ部屋にすれば、あらぬ噂がでるだろうし、女子なら誰だって見知らぬ男との同棲など望まないはずだろう

部屋を開ける、この時ノックをしなかったのはルームメイトが男子だと思ったのと少し世間知らずだったからかもしれない。

 

部屋の中にいたのは水色の髪をしてメガネを掛けたよく言えば大人しそうな、悪く言えば暗い女子がベットに腰掛けていた。ノックしなかったせいか、驚いた顔をしている。

 

そして段々と彼女の表情が段々驚きから恐怖へ変わっていくのがわかる。

冷や汗を流し口を酸欠した金魚のようにパクパクと開いたり閉じたりしている。少し過呼吸になりぎみなのも見て取れた。やがて眼を閉じて倒れた、どうやら気絶したようだ。

 

―――――落ち着け、ユーリ。状況を整理して行動するんだ。

 

何故か知らないが、遠い日の記憶が蘇る。だが実際その通りなので深呼吸をして落ち着いて行動する。部屋の外に出て、偶然目の前を通りかかった女子を捕まえる。

 

「そこの君、手を貸せ」

「えっ何何?!」

 

出来るだけ強く落ち着いた声で言ったつもりだが彼女は狼狽している。

「君の名は?・・・答えろ」

「あ、相川清香ですっ。」

 

名前を脳裏に刻み、笑顔を心がける。ヴィンセントからの秘策だ。

 

「では相川、協力してくれ、いいな? まず俺が保険医を呼ぶ、その間君は中で倒れている娘を介抱してほしい、いいか?」

「いいけど……何で倒れて」

 

事情を説明するにも、俺にもわからないため、いつものように対処する。

 

「その質問には答えられない。とにかく頼む。でなければ」

 

手遅れにかもしれないと言おうとしたが遮られた。

 

「わかった!わかりました!。いいから、お願いだから早く行って!」

 

そこまで言うと涙目になりながらも了承してくれた。事情も聞かず見ず知

らぬ俺の頼みを聞いてくれるとは日本人は心が広い。

 

「感謝する」

 

慣れないが、笑顔で謝辞をする。この完璧な応対は我ながら会心の出来だろう。

 

その場を後にして、保険医を呼ぶ。それにしても疑問が生じる。何故、彼女は震えていたのだろう。

 

まるで、尋問され命乞いする哀れな捕虜ではないか。廊下を走り曲がり角に差し掛かった時、目の前に拳が飛んできた。不覚にも気絶した。

 

 

 

 

「まあ、事情は聞いたが君の弁明を聞こうか。ユーリ君」

 

拳を叩きこんだのは大場先生だった。職員室に連れてこられ、説教を受けていた。その場にもう一人いた。マイクが憮然とした表情で大場先生を見ている。

 

「俺はあの場で適切に動いたつもりですが」

「ガチムチな男に迫られて、脅迫されれば誰だって怖いわ! 馬鹿が」

「おい、ンな事どうでもいいから俺たちの部屋をだな」

「それより、何故俺が女子と相部屋なのか、説明願います」

 

すると扉が開き、もう一人入ってくるヴィンセントだ。

 

「先生! 僕の部屋がマイクと同じなのは何故ですか?」

「うるさいなぁ!何でアタシに厄介事ばかり来るかなぁ!」

 

大場先生が地団太を踏んで机の上の饅頭と煎茶をやけ食いする。よほどストレスが溜まっていたらしい。咽たのをマイクがさすっていた。

 

「そもそも、部屋割りだのは千冬が担当しているって聞いたってのに何故

お前が来るんだ?この学園の管理はどうなってんだ。」

 

不可解だ、理解不能だ、などありとあらゆる言葉でIS学園を罵る。マイクは怒り心頭で拡声器を使ったかのような大声で周りに聞こえるように罵る。職員室にいる先生方は当然睨み、大場先生にそいつを黙らせろ、と言いいたげな顔を向ける。

 

大場先生が頭を掻き毟りながら説明する。

 

「女王様は弟君の専用機やらで忙しいんだそうだ。それで暇なアタシの出番さ君たち男子がいっしょじゃないのは弟君のせいさ。弟君は一組の女子と同部屋になってね、何でも幼馴染だから? 組ませようって言ってたかな……それで他の男子は適当に決めてたな」

「ちょい待ち、俺達Rインダストリー社員の部屋はどうなってんだ?」

「空き部屋がないからねえ、どうなるのかな? そもそも、毎回定員オーバーしてるってのに、弟君が入るの決まった後にさらに学園にさらに四人の生徒プラス、あなた方が来て、てんやわんやなんだ。すまないが空きが全くないんだ」

 

言いたいこともわかるが、男子は男子でまとめるべきではないだろうか?

問題が起こった場合どうするつもりなのだろうか?

 

「それはわかりましたが、誰も反対しなかったのですか?男子は男子でまとめることぐらいはできたのでは?」

 

俺が聞くと大場先生はタバコを取り出してマッチで火を付け、一本吸う。吸いなれた煙で心の落ち着きを取り戻し、初めて見たときの眠たそうな目つきに戻る。リラックスしたようだ。

 

禁煙と書かれている職員室で。

 

「この学園じゃあ、織班先生に逆らえないんだよ皆。アタシ一人反対してもしょうがないのさ。どいつこいつも雁首そろえて「女王様の仰る通り」、みたいにさ。全くこっちも好きでこんな所来たわけでないのに何でこんな……いや、すまない」

 

途中から愚痴が入ったことに謝罪する。愚痴にもしっかりと耳を傾けていたマイクもタバコをズボンの尻ポケットから取り出し、ライターで火を付けようとするが火が出ない。

 

見かねた大場先生が火を貸し、火が付いたタバコの紫煙を満喫してマイクが口を動かし始めた。

 

「いきなり来ることになっちまったから仕方ないけどよ、犬猫扱いはさすがにひどいだろうよ?着いたらブリュンヒルデに此処がお前らの部屋だとか言われて、そのまま どっか行やがったんだぜ。たくっ」

「申し訳ない。せっかく講師として来ていただいたというのに」

 

大場先生は深々と頭を下げ謝罪した。それを見たマイクはため息を吐いた。

 

「部屋の件は俺の方はどうにかする。せめて部屋を住みやくするぐらいはさせてくれ」

 

先生は了解した。と短く答える。

 

「俺とアンタは状況が似てるからな。アンタ出張かなんかできたんだろ?出身は?」

「自衛隊だ」

 

その言葉に少し驚いた。日本の自衛隊は規律に厳しいことで有名だったので大場先生がそうだとは思わなかった。現にスーツのボタンを一番上を開けているなど、少しだらしなく見えたからだ。

 

「宮仕えか、大変だな、公務員さんは。」

「来たくて来たわけじゃないってのはお互い様みたいね」

 

お互いに乾いた笑いを出す。シンパシーを感じたのだろうか。先ほどより険悪な雰囲気は解消されている。

 

「一応確認のため聞くが、アンタは織班先生のことが嫌いなのかい?」

「嫌いじゃないさ、ただ見ているとムカムカするだけで。」

 

二人はお互いに見つめ合う。目を見て、互いに真意を探る。

しばらくして握手をした。意気投合というヤツだ。

こうして、後に言う「格納庫レジスタンス」が誕生した。我々が騒動を起こすのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

部屋に戻ると、気絶させてしまった娘がそこにいた。水色の髪の彼女はやはり、怯えているように見える。中々出てこない様子を見ると、あまり男性との付き合いはないのだろう。

 

鞄を置き、ベットに腰掛ける。

 

「ルームメイトになったユーリだ。よろしく頼む」

「か、簪です。よ、よろしく」

おずおずとした様子で答える。

 

「苗字は何というんだ?」

 

そう聞くと彼女に変化が見られた。一瞬傷ついたような、そんな表情を見せ、表情がさらに陰る。聞かれたくないことだったらしい。何か問題があるのだろう。

 

「いや、聞く必要はなかったな。名前で呼んでも構わないか?」

 

コクン、と小さく頷く。名前を呼ぶ了承こそもらったが、彼女は相変わらず警戒している。見ず知らずの男なら自然と言える。

バックから缶コーヒを取り出す。自販機で買ったものだ。缶を彼女に手渡す。

 

「これは?」

「先ほどの詫びだ。良ければ貰ってほしい。」

 

詫びの品として持っては来たが正直言うと、この行為が正しいのかが分からなかった。

 

異国の地というのもあるが、この手の経験が全くないのが主な理由だ。

もしかしたら、不快にさせているかもしれない と思わないでもない。

戸惑いながらも受け取ってはくれた。それを確認して、俺は頭を下げて謝罪の意を表す。その後は何事もなく、各々好き勝手に過ごした。

 

俺はベットに寝そべり、彼女は一心不乱にキーボードを打ち続けていた。

俺が睡眠に入った後もキーボードをたたく音は鳴り続けた。

 

 

 

 

三時間ごとに目が覚める習性を持つ俺は目を開けて、いつも通りに周囲を見渡す。来たばかりの場所は特にこうなる。落ち着いて寝ることができない。

 

ふと見ると、簪が机に伏せているのが見えた。モニターがついたままだった。どうやら作業中に寝てしまったらしい。モニターに目をやると、大きくエラーと表示が出ており、エラー表示の後ろにISの青写真と思わしき図が見える。毛布をそっと彼女に掛け、好奇心ついでに画面を見る。

 

機体名「打鉄弐式」。名前から日本の第二世代型の改良機か何かと予想した。画面には数字の羅列などがぎっしりと詰まっていた。察するに彼女はこの機体のプログラミングをしていたのだろうか?。

 

何故だ? と疑問に思わざるを得ない。日本には多種多様な趣味があると聞くが、これは明らかに趣味で作るようなものではない。本物のISの設計図だ。

 

しかし、どれほどの才能があろうと、所詮は学生。機体の設計、開発など子供に任されるはずもない。才能は経験と努力に裏付けされて初めて有効になる。

 

しかし、15歳の少女にはそのどちらも欠けているはずだ。それとも、彼女は俺と同じ特殊な生まれか何かなのだろうか?

 

彼女はいったい何者なのか、そして何故こんなことをするのか疑問は尽きない。同時にそれが好奇心を強く刺激されたのを感じた。

 

「何故だ?」

 

俺は小さくつぶやく。

 

「それには色々理由があるんだよ~」

「そうなのか」

 

思いもしなかった返答が後ろから来たので相槌をうつ。

どうやら深い理由があるそうだ。

 

 

 

誰だ?今のは

 

 

思考よりも行動が、反射するかのようにバックに飛びついて得物のmp443に手を付ける。初弾を装填し、構えようとするが、侵入者は既にmp443の手をかけ、まるですり抜けるように奪い取り、一瞬で分解する。左手でつかみ、相手の手をひねり上げて打ち倒そうとするが、わき腹に裏拳を叩きこまれ、バランスを崩したところを背負い投げの様に投げられ、マウントをとられ、右手を突き出してきた。侵入者を見ると、その姿に驚愕する。

 

何かの動物の着ぐるみだ。こんなふざけた奴に負けるとは、と歯噛みしてると着ぐるみは間延びした声を発する。

 

「かんちゃんに何をしたのかな~?ちょっと唄ってくれないかな?」

「何者だ、お前は一体?」

 

だが着ぐるみは答えず、力を込めて俺の片腕を捻る。黙れと言わんばかりのようだ。質問以外は認めないつもりだ。

その時、後ろの簪が寝苦しそうな声を出す。

それを聞いた着ぐるみは顔を近づけ、囁く。

 

「悪いけど、また明日ね?」

 

そう言って暗闇に消えた。周りを見渡すがどこにもいない。

バーバヤガが1組にいると知る5時間前の出来事だった。

その後の話だが、気づいたら俺は木に宙ぶらりんに逆さまに吊り上げられていた。

 

皮を剥がされてないだけマシだったかもしれない。

 

 

 

 

 

その何時間か前の別の場所では、

 

 

シャワーを浴び終え、ジーンズを履き、上半身はタオル一枚のみ羽織る。はしたない恰好だと、ユーリが見れば非難するであろう姿で冷蔵庫からライムソーダの缶を取り出して、のどを潤す。私のいつものパターンだ。火照った体を冷やすのはこれが一番だ。

 

幸いにして現在、ルームメイトの弾もいないので好き放題にできる。訓練してからと言うもの、弾は赤髪のロングヘアというパンクロッカーのような外見をしている癖に何かと私の格好にいちゃもんをつけてきた。

 

曰く、勘違いしそうだから、頼むからもっと控えめな服にしろとか。しかし、今は普段、制服だの何だので生活している身なので、大目に見てほしいと思う。

 

私としてはIS学園のこの白い制服を長時間も着ていたくないのだから。

何だってカレーなど食べに行きにくいデザインにしたのか、と思うし、私にとってISなんて

 

思考の海を漂っていると、ドアの向こうがバタバタうるさく、現実に引き戻された。

 

何やら、こちらへ駆け込んでくる足音が一つ、否二つ。

ヴィンセントの悪戯か何かと思いドアの前に向かうと、ドアは何の予告もなく開かれた。

 

シャワー中に弾が来てはまずいと思い、鍵を開けておいたのがいけなかったが、ノックをするように張り紙を張ったはずだが無視されたようだ。

 

「弾、助けてくれ!!」

 

駆け込んできた男 織班一夏は、勢い余って私に飛び込み、胸に顔をうずめる形となった。

 

胸に伝わる息と体温、恋人ならいざ知らず赤の他人なら不快極まりないものだ。

 

「アレ、何か、柔らかいような、固いような……?」

 

人の胸触って固いと申すか。

 

 

「人の胸に顔をうずめて、言うのはそれだけですか?」

 

気づいた一夏が慌てて離れる、そんな彼をみて、不思議と笑みが浮かんだ。普段は外さないメガネを置いて、彼の弁明を待つ。

 

「いや、これは事故と言うか、何と言うか。そう、不可抗力で!」

 

彼の言訳を聞くにつれ、怒りのボルテージは上昇していく。

 

「それにちょっと固い気がしたから、弾かなって思ったし」

 

また言いやがったな。

 

これ以上の弁明を聞く気がいっきに失せた。

そんな彼を真っ直ぐに見据えて、足をしっかり地につけて構える。

 

「何故、素直にごめんなさいの一言も言えないんですか?・・・・歯ァ食いしばれ!」

 

正拳突きを彼にお見舞いして、扉の外へ吹き飛ばす。女尊男卑など関係ない、普通女の体にお触りしておいて、何のおとがめなしに帰れると思ったら大間違いだ。ましてデリカシーのない馴れ馴れしいヤツなどもってのほかだ。

 

不愉快きわまる。

 

「ああ、不快な奴」

 

踵を返し、部屋の奥で休息しようとしたところ、織班の名前を呼ぶ声が一つ。

 

「貴様、一夏に何をした?!」

 

振り返らずに言葉だけを送る。

 

「デリカシーのない変態野郎が入ってきて胸に顔をうずめたから、鉄拳を与えた―」

 

話し終わる前に、空を切る音が聞こえたので、とっさに身をよじる。

見ると、彼女の手に握られているのは木刀。本気で振り回しに来ていた。

身をよじったのがいけなかったか、ベットに倒れこんでしまった。

彼女は木刀を逆手に持ち、胴体目がけて、突きを放つ。

 

足で蹴り、木刀の軌道をずらして、ベットに深々と刺さる。

抜けなくなって戸惑っているところを組み伏せて、大人しくさせる。

 

「人の話くらい聞けないんですか? それとも木刀を振り回すのがあなたのコミュニケーション法ですか?」

「は・離せ!」

 

バタバタ暴れるのを力を込めて黙らせる。

 

「貴女のツレが不埒な事をしたから、ああなった。いいですね? わかったら、さっさと出て行ってください、篠ノ之さん。ついで織班君のしつけもお・願・い・し・ま・す・ね。」

 

関節を動かせないようにして部屋の外まで持っていき、追い出すことに成功した。

 

疲れて息を切らしながら、洗面台に立ち、乱れた髪の毛をセットする。

ついで、自分の体を見る。引き締まった筋肉質な体。固い二の腕に割れた腹筋、どう考えても今時の女子高生の体つきではない。

 

部活動で鍛えたと言い訳するには少しキツイ。

 

「私の胸が固いですって? 大きなお世話ですよ」

 

次に同じことを言ったらケースにしまったM14ことシャーリーンでぶち抜いてやる、と心に固く決めた。

 

しばらく、一人でコンプレックスに愚痴り、そして愚痴る自分に泣けてきた。

 

―――――私だって可愛く見られたい、のに。

 

これ以上考えていると、どんどんマイナス方向に行きそうなので思考を停止し、切り替えた。もうすぐルームメイトがくるかもしれないことにハッと気づいたので、とりあえず上にオリーブ色のタンクトップを着て待つことにする。ついでにお気に入りのアイドル雑誌、ミサキ・ホーキンスの写真集を広げ、穴の開いていないベットに寝そべった。

 

ルームメイトが来たら事情を説明しよう、寝るところはどうしよう、など疑問を頭に浮かべているとライフルケースがふと、目に入った。

 

「お前のせいなんだぞ」

 

喋るはずのないM14ライフルに向かって口を開く。向うからは当然反論は来ない。

 

可愛くないのはコイツを使いこなしたいと思った自分のせいだと自覚して

いるが、抗議せずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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