IS to family   作:ハナのTV

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告白

あのハチャメチャな騒動を乗り越え、当日まであと三日となった。

 

扉一枚の向こうへと出ると、冷たくも悪い気分にはならない風が吹き抜けてきた。青々とした快晴の空が広がり、開放感に包まれた。新鮮な空気を肺一杯に吸うことで、気を改め、俺は学園の屋上から周りを見渡した。

 

少し前までボロボロだった庭園も今ではもう何事もなかったような姿を見せつけており、色とりどりの花が目を楽しませた。

 

普段は全くこんな屋上などに来ることは無いのだが、偶に来てみると思わぬ物も見れたりするものだ。といっても今回は一夏に呼ばれたから待っているだけなのだが。

 

「あ、弾君だ」

 

そこへ綺麗なソプラノボイスが俺の耳に聞こえた。弱冠の冷や汗を流しつつも、振り返ると、ミサキ・ホーキンスがそこに居た。

 

世界屈指のアイドルである彼女は現在この場に滞在しており、周りの生徒と体験学習に出たりと楽しんでるようだ。

 

「ミサキか、何で此処に?」

「高い所が好きなの。私、背が小さいから、こういう所にいて、皆を見渡すのが好きなの。それにもう少しでコンサートだからちょっとリフレッシュしたかったの」

 

後、三日も経たないうちに始まるキャノンボールファスト。そこで彼女はRインダストリーの出資でコンサートを開くことになっている。

 

二万人程度のアリーナに今回は何と、その三倍の6万人が詰め寄せてくるのだと言うため、現地では大忙しで場所を作っているという話だ。

 

ミサキは柵に寄り掛かって、その景色を楽しんでいた。幼い子供のようにはしゃぐ姿は小さい容姿と相まって、可愛らしかった。

 

その姿が何となく、昔の蘭と似ていたので、俺は目を背けて、その思いを忘れることに努めた。

 

「ねえ、弾君」

 

ミサキは俺に話しかけてきた。その顔にはおふざけの様子は無く、無邪気な笑顔でもなかった。

 

「何だ?」

「アカネの何が好きなの?」

 

唐突で思いもしなかった質問を浴びせられて、俺は一瞬戸惑った。彼女がどんな意図でそんな質問をしたのか、まるで分らなかった。

 

「どうして、そんな事を?」

 

俺が訊くと彼女は携帯電話を取り出して、操作し画面を俺に見せてきた。そこには10歳くらいのアカネとミサキと知らない老けた男が写っていた。キャンプか何かをしているらしく、男は釣竿を持っており、その腕はロストワールドで見た男たちのように逞しかった。

 

「私のパパとアカネ、それに私の写真なんだ。聞いたことあるでしょ? アカネには救ってくれた人が居るって」

「ああ……じゃあ、アカネの憧れって」

 

ミサキはコクリと頷いて、答えた。

 

「私のパパ。アカネが鉄砲撃つのが上手なのも、話し方が変わっているのもそのせい」

 

写真の男を俺はまじまじと見つめた。優しそうな、それこそ近所に居そうな感じだった。老けた外見を見れば、孫が好きでたまらないお爺ちゃんと言ったところで、ポケットに飴をいつも仕舞っている、そんな男だった。

 

「私はアカネもパパも大好きなんだけど、一つだけ……鉄砲を構えて怖い顔をする二人がどうしても好きになれなかった」

 

アカネのメガネを外し、同じレンズでもスコープの物を覗くときのアカネは確かに普通の人から見れば恐ろしいものだ。

 

その目が捉えた敵を何の躊躇もなく、指先一つで地獄へと送るのだから怖くて当然だ。ミサキにとって、大好きな二人のそんな顔を見るのが辛いのだろう。

 

「パパはお仕事から戻って来たときいつも疲れた顔をしていた。遠い国に行ってた時、私はパパが明日にはいなくなっちゃうんじゃないかって怖かった」

 

ソレは兵士の家族の常だ。明日死ぬともわからない誰かを愛して待つ以外にできることは、ただ祈ることのみだ。

 

「もしかしたら、アカネもそうなるんじゃないかって思うと、怖いの。でも、もし弾君がアカネのいう通りの人なら、怖くないかもしれない」

 

ミサキはアカネの身を案じ、そしてその傍にいる俺がアカネをちゃんと受け入れていて、守ってくれるかどうかを見極めようとしているようだ。

 

「だから、聞きたいの。弾君はアカネの事、どこまで好きなのかなって。アカネのそういう所も含めて好きなのかなって」

「……恥ずかしいこと聞いてくるなぁ」

 

ミサキは俺のすぐ目の前まで歩いてきて、俺の目をまっすぐ見た。大きな瞳にはただ一つの嘘すら許さないという意思が見られた。

 

心の奥底まで覗こうとする彼女の姿勢はアカネを心配しているからこその物だった。そこに一切の悪ふざけや冗談を言う余裕はない。

 

俺は頬を掻いて、答えた。

 

「そりゃ……そうさ。俺は彼女が好きだ。アカネの事は見てきたつもりだ」

 

一拍開けて話した。

 

「夢は何だっていいはずだ。彼女の夢は君の親父さんのような人をもう一度輝かせたいって事だった。その為に血を流して、流させている時点で確かにアカネは褒められた人じゃないだろうさ」

 

だが、その話には続きがある。話さずにはいられない、大事なことがまだ残っているのだ。

 

「だけど、俺はその彼女に惚れたんだ。気高くて、強くあろうとする一方で、時折見せる可愛らしさにな」

「例えば?」

「前に映画を見に行ったとき、ワンピースを彼女が見ていた時とかな」

 

まだ、今の様な関係ではなかった頃の話を思い出して、俺はミサキに話す。

 

「普段、ライフルをもっとうまく使えるようにって鍛えてるのに、そのせいでワンピースが着られないって拗ねてたのが可愛くてさ」

 

ワンピースを着ることで、筋肉で固くなったところが見えて、可愛くならないのが嫌だ、と言っていた。彼女は一人前のライフルマンであると同時に年相応の女の子であるのだ。

 

ソレは確かに矛盾を感じるし、見る人が見れば、人殺しの癖に、と難癖をつけるだろう。

だが、俺は違った。それこそがアカネであり、どちらかが欠けていれば、別人になる。

 

「俺が彼女が好きなことに不満があるのだとしても、俺はコレを変える気はないさ」

 

そう言い切ると、ミサキはニコリと笑った。先ほどまでの剣幕も消えうせて、天使のごとく純粋な笑顔を見せた。

 

「良かった」

 

彼女は俺の手を握って、一つの願いを述べた。

 

「身勝手だけど、私のお願いを聞いてくれる?」

「何だよ?」

「もし」

 

彼女はそう言って、一つ深呼吸をして言い出した。

 

「もし、アカネが銃を捨てるときになったら、その時はアカネを守って、好きでいて欲しいの。アカネがずっと笑顔でいられるように」

 

アカネ本人に隠れて告げる願いは確かに身勝手なものだった。アカネが銃を捨てるとき、それはアカネが夢を叶えた時か、またはその反対の時だからだ。

 

そして、ミサキにとって全くの赤の他人という訳ではないが、そこまで親密な関係でもない俺に頼み込むにしては、随分と重い内容だ。

 

だが、それがミサキの、アカネの親友としての願いだった。俺はソレに言葉を使わずになずいて肯定した。

 

ミサキはそれを確かめるように見て、ありがとうと礼を言った。

 

「ありがとね、これで私も思いっきり歌える」

 

そんな彼女に俺は一つ問いかけた。

 

「一つ聞いていいか?」

「何?」

「どうして歌うんだ?」

 

俺の問いかけに彼女は腕を天高く衝きポーズをとって言い放った。

 

「アカネに歌が届くから!」

 

世界的アイドルの動機はただそれだった。いつ、どこに居ても、彼女に歌を届けたい、とただその一心だった。それは何とも小さくて、そして深い理由と言えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャノンボール当日となった日は朝から忙しかった。ミサキの護衛として、ピース全員が各自機体をフル装備、拡張領域には小銃や拳銃等が隠されており、モノレールから乗って、会場に着くまでの間、ミサキのファンともみくちゃにされながらも彼女を無事に送り届けた。

 

何処へ行ってもTV局や新聞記者、マスコミ関係者がごった返しになった場所だったが、

途中に何のトラブルもなく、無事に任務を終わらせて、後は試合とコンサートの観戦としゃれ込もうとした。

 

その時間まで多少暇があったので、俺達四人は出店でコーラとアメリカンドッグを狩って駄弁っていた。

 

「にしても、俺達が参加しないってのは何でなんだろうな?」

 

俺は当初から思っていた疑問を口にした。今回、俺達は全員が不参加となっていたから、どういう風の吹き回しなのか気になったのだ。

 

「さあてね。アルフレッドもロイもダンマリさ。多分、レースなんぞで勝ったところで一文の得にもならないって判断したんだろう」

 

ヴィンセントが瓶コーラをラッパ飲みしてそんな事を言った。確かにそうかもしれないが、一文の得にもならないは言い過ぎではないだろうか。

 

「ま、グレイイーグルはのろまですし、ハヤブサやラプターも白式程ではないし、マーダーに至っては整備が面倒ですからね」

「俺の機体はかけっこには向かん」

 

アカネとユーリがそう続き、俺は適当な相槌を打って、そんなものか、と想いアメリカンドッグにかぶりつく。

 

「いい身分ね、ヴィンセント」

 

そうしていると、鈴と簪がISスーツ姿で現れた。周りのお客もその姿を見て、注目し黄色い歓声も聞こえて来た。

 

「専用機持ちのくせに、観戦だなんて。仕事しなさいよ」

「悪いね。僕らも働きづめで疲れてね。貧乏暇なし、金持ちは優雅にってね」

 

鈴もヴィンセントも互いに笑いながら、軽口を叩きあっていた。鈴は軽くヴィンセントを小突いて、言う。

 

「ま、いいわ。レースは私が勝つから見ておきなさい。ぶっちぎりなんだから」

「期待してる。君に100ドル賭けてるよ」

 

ハイタッチして二人は笑いあった。あれで、恋仲という訳ではないと言うのだから、驚きだ。会話から、タッチまでタイミングが絶妙にマッチしているというのに。

 

「ユーリ……私、頑張るから」

「俺は君が勝つと信じている」

 

こっちもこっちで、熱い信頼関係が出来上がっている。ヴィンセントが時たま、コーヒーが甘くなると愚痴る時があったが、その訳が分かった気がする。

 

こんな光景見ていたら、たしかに苦味が欲しくなるのも当然という訳だ。

 

「じゃ、またね。コンサート楽しみにしてるわよ」

「またね」

 

二人は手を振りつつ、アリーナの中へと消えて行った。その後ろをIS学園に憧れている制服姿の女子やカメラ小僧たちがちらほらと見えた。

 

同時に異質な者達も目の前に映った。タクティカルパンツに黒いポロシャツを着て、サングラスをかけた日本人ではない屈強な男女が視界に入ったのだ。

 

ポロシャツの袖をみるとRインダストリーPMCというロゴのワッペンが張られており、俺達と訓練を共にしたであろうPMC達がアリーナの周辺で警護をしていたのだ。

 

その中で、白人の二人の傭兵が俺達に拠って来て話しかけてきた。

 

「よお、久しぶりだな。お前ら」

「元気にしてたか?」

 

俺やアカネ達全員が世話になった、PMCのコンビ、メロウとギャンブルだった。

彼らはキャップをして、トランシーバーをポケットに差し込んだまま、やって来た。

 

つまるところ、さぼりに来たのだ。

 

「ギャンブルさん、メロウさん! お久しぶりです」

「そう固くなんなよ、照れるだろ」

 

まさか、この二人が来ているとは思わず、俺は二人と握手をした。再会を祝っての握手だった。アカネもユーリも挨拶をして、二人は機嫌よさそうにしている中、ヴィンセントだけ、腑に落ちない顔をしていた。

 

「よお、御曹司。どうした不景気な顔して。せっかく、彼女もいるんだから楽しんだらどうだ?」

「その呼び方は止めてくださいよ。 ところで、どうしてここに? 貴方方二人は計画に選ばれた特別待遇枠でしょうに」

 

彼のいう特別待遇とは例のピースの計画の事を指していた。Rインダストリーが企む世界の改変。軍事的な面のみでISに勝ちうる最高の発明品のテストパイロットに選ばれたはずの二人は通常のPMCより遥かに良い待遇を受けているはずで、ヴィンセントは不思議に感じたのだろう。

 

貴重な人材をこのような雑務同然の仕事につけるのか、と疑問に思ったのは無理もないかもしれない。

 

そう睨んだヴィンセントだったが、二人は何らおかしな素振りも見せずに、答えた。

 

「ヴィンセント君。君は兵隊を良く知らないな? 特別枠ってのは兵隊同士じゃ嫌われんのさ。仲間意識ってやつだよ」

「その通り、俺達もバイトの小遣い稼ぎと諦めて来ているんだ。全く、日本は湿気がキツくて好きじゃないってのに、なあメロウ?」

 

メロウは「ああ」と答えて見せた。彼らの答えは確かにありそうな話とは思ったが、ヴィンセントはやはり納得しきれてない様子だった。

 

俺はそう疑心暗鬼になる必要はないと言ったが、彼は考え込む素振りをして、うんともすんともしなかった。

 

「それにしても、物々しい数の動員ですね」

 

アカネもヴィンセントに触発されたのか、そんな事を言った。彼女は此処に来るまでに同じような服装に人間をかなり見たと言った。

 

「何せ、6万人近い人間が来ることが確定している。オマケにまだ増えるって言うんだからな。近頃、学園で襲撃も多かったから、各国政府もついでに候補生をガードしろとさ」

 

ギャンブルは赤くて小さな箱から煙草を取り出して、ジッポーライターで華麗に火をつけた。煙を吹かして紫煙を満喫してコンサート会場となるアリーナを指さす。

 

「此処の大半がアイドル、ミサキのファンだってのに俺達はフル装備で来てるんだぜ? 日本からも要請があったらしくて、俺達は臭いオタクの世話係さ」

「タバコ吸ってる人が言うセリフですか?」

 

アカネがそう抗議したが、ギャンブルは煙をアカネの顔に吹きかけて、むせさせた。

 

「こいつの良さが分からんうちは兵隊じゃないぜ、アカネちゃん?」

「ギャンブルさん!」

 

俺が抗議すると、彼はおどけて見せた。そして相棒のメロウが代わりに謝罪した。

 

「気にするな。コイツも禁煙に失敗した子供だ。それより、もうすぐでライブだぜ。さっさと行きな」

 

メロウが自分の腕時計を指で叩いて、俺達に時間を見せた。オープン開始まであと残り十分程度であるのに気付かされた。

 

アカネが声を出して、すぐに行こうと言って、俺やユーリ、ヴィンセントの腕を引っ張った。彼女にしてみれば、親友のコンサートは見逃せるわけもなかったからだ。

 

「楽しんで来いよ」

 

そう言って彼らは俺らを送り出して言った。それは素直に喜ばしい事だったが、一つ俺の頭に気がかりなことがあった。

 

さっき見た腕時計がヴィンセントのグレイイーグルの待機状態と似ていた気がしたのだ。

どうしてそう思えたのかは分からなかったが。

 

 

 

 

 

アリーナの特別席、貴賓室と言うほどではないが、広々した場所に入って俺達は目の前の盛況ぶりを見た。

 

アリーナの大画面に映し出されるカウントダウン。電子蛍光版が見せる数字に合わせて、アリーナ中の人々が熱狂的にその数字を読み上げていく。

 

「5! 4! 3!」

 

間もなく開催されるキャノンボールファスト。そのメインイベントの為に彼らは叫んでいるのではなかった。隣のアカネもそうだが、彼らが待ち望んでいるのは数機のISでもなければ、代表候補生でもない。たった一人のはた迷惑でわがままなお姫様を待ち望んでいるのだ。

 

「2!」

 

ステージの中央に小さな者が歩いて行くのがわかる。身長は低く、十五歳にしては幼いともいえる外見の彼女だが、その存在感はこの場において誰よりも圧倒的だった。

 

「1!」

 

最期の数字が告げられて、その少女はファンと共に声を上げた。

 

「ゼロ!」

 

 

 

数十発の花火が上がり、その少女ミサキ・ホーキンスがステージの中央で俺の目の前でとったポーズをして、黒いタキシードを改造したライブ衣装に身を包み、マイクを片手に早速その歌を披露した。

 

鳴り響く歓声に、狂喜乱舞する人々の姿、耳に聞こえるは癒しのソプラノボイスによる歌ではなく、想像とは違った、ハスキーなボイスで官能的な歌詞を圧倒的な才華を見せつけて歌って見せる。

 

歌う時の彼女は見かけでは想像もできない程、色気を出していて、姫ではなく女王という風格が彼女を装飾していた。

 

むせび泣くサックスの音や、刻まれるビート。ジャズ調の音楽を武器にして、観客全員に長い脚を魅せつける様に思わず赤面すら覚えた。

 

「ごらんよ、ステージの端にいるIS乗りの顔、赤面してるぞ」

「セシリアに至ってはムスッとしてるな」

 

ヴィンセントとマイクはそんな事を言っていた。アカネは二人にそんな事より、ミサキを見ろと脅迫していたのを見て俺とユーリは笑った。

 

ミサキが黒手袋をはめた手をかざすと、空中にホログラムが投影されて、金色に光るアゲハチョウのホログラムが現れ、観客たちへと美しく幻想的な蝶々が飛び立っていく。

 

彼女が切なそうに、唇を動かすたびに蝶が一つ、一つとはじけて消えて行き、全てが消えた瞬間に一気に盛り上げを見せて、光が辺り一面に拡散し、観客に花びらを降らせる。

 

ファンは皆掴めるはずのない光に手を触れようと伸ばし、消えて行く光を目で追っていく。そうした彼らを今度は蠱惑的に見つめ出すミサキの顔が画面に宙に映されて、ファン一人一人のハートと目を釘付けにした。

 

私を見て、私から離れないで、と歌い、懇願する彼女が本当に伝えたいのは誰か、それを知っていた俺は口笛を吹いて、彼女を称賛した。

 

これは世界で最も大胆な告白とも思えた。アカネ自身が気づいてなくとも、それでミサキには十分なのだろう。ただ、笑って、歌を聞いてくれるアカネが大好きなのだから。

 

そうしてオープニングセレモニーの一曲が終わった。割れんばかりの歓声がアリーナを包み、その時空中にISが舞った。

 

「ISによるパフォーマンスかよ!」

「ミサキもやりますねぇ!」

 

俺達はそう素直に感嘆の声を上げて大騒ぎした。こんな催しまで用意していて、隠すとは彼女も中々粋なマネをするものだ、と。

カラースモークを焚いて、空中でハートの軌道を描く機体群はどこの所属化は知らないが見事な練度と言えた。

 

その様子をユーリが双眼鏡でじっと見ていた。

 

そして、ミサキはマイクを持って観客全員にソプラノボイスで呼びかけた

 

『日本の皆、今日は来てくれて、ありがとう!!』

 

彼女が話すたびに愛してる、大好き、ミサキと叫ぶファンを彼女は嬉しそうに見て、話しを続けていく。

 

『今日はね、私の歌もあるけど、大切なお話があるの! びっくりすると思うけど、ちゃんと聞いてね!』

 

そう言って彼女は何歩か下がっていった。そのパフォーマンスにファンたちも俺もステージの隅にいる一夏たちも戸惑いを見せた。

 

何をする気なのか、分からず俺達は顔を見合わせていると、ステージの中央に白人の初老の男性が立っていた。その男の名前は俺たち全員が知っていた。

 

「アルフレッドさん……!?」

 

ヴィンセントがその名前を叫び、俺達は騒然となった。なぜ、彼がそこに居るのか。何の連絡も受けていない俺達はひたすらに戸惑うばかりだった。

 

『ご来場の皆さま。初めまして、私、アルフレッドという者です。この度ミサキ・ホーキンスさんに本会場にお呼びして披露してもらいましたが、失礼ながらこの場で一つわが社の大いなる発明の発表をさせてもらいます』

 

突然の登場に観客の一部はブーイングや野次を飛ばす物が現れた。それも当然の反応であったが、俺達は違った。

 

なぜなら、その発明品が何なのか、良く知っていたからだ。

 

『さて、ライブの熱が冷めないうちにその製品の紹介と参りましょう』

 

そう言って彼は指を鳴らした。すると、空で編隊を組んでいた機体群がアリーナ目がけて降下して来た。

 

「バルドイーグル?」

 

ユーリがその機体の名前を疑問符をつけて口にした。その機体群がステージの周りに静かに着地して、観客や一夏たちも驚きを隠せないでいた。

 

その機体はバルドイーグルだった。しかし、細部が異なっており、前よりスマートな体型にされ、背部にはラプターで見られたXウィングスラスターが装備されており、折りたたまれて収納されている。

 

『これがわが社の製品バルドイーグルⅡです。この機体の最大の特徴は唯一つ!』

 

バルドイーグルが収納されて中のパイロットたちが姿を現した。TV中継、観客たちの目、そして俺たちの目には屈強な男や女性兵士が身に着けていたことがハッキリと映っただろう。

 

その中にはギャンブルやメロウもいた。

 

『ISではない、ISに似た兵器であり! 男女の隔たりなく使えると言う事です!今日、この場で我々は宣言しましょう! 世界は変わる! この一瞬で、白騎士事件のあの時のように!』

 

その時、十年間、積もりに積もった策略と技術、怨嗟と夢の混合体が世界に披露された。

 

 

 

今年のIS学園の行事はまともに行えない。誰が言ったか知らないが、その通りで、この場で全ての者がキャノンボールファストを忘れてしまうほどの衝撃だった。

 

 




ようやくストーリーが前に進みました。
これがしたくて、更識のイベントを前に消化したのです。

この後は一夏たちとのいざこざをお送りした後、もう一つの家族の視点へと移す予定です。
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