IS to family   作:ハナのTV

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脱出劇

アリーナを飛び出す最先端の技術が盛り込まれた世界最強の鎧に身を包んだ少年少女に大人達。生身の面子を守るために山田先生の打鉄とイヴァナ先生のラファール、レジスタンス達の訓練機にスレートのラビットが超低空での匍匐飛行をしつつ、上空へと火器を放ち、砲声、銃声、未熟な少女たちの叫び声で奏でられた戦場音楽を皮切りに、遂に決死の脱出劇の幕が上がった。

 

空中を舞う銀細工となったISの群れに早速とパルス弾と曳光弾の黄、緑、青の三色に光る弾丸が襲い掛かり、三機の銀細工を集中砲火で屠った。毎分1000発以上の巨大な質量を持った砲弾の咢が銀細工たちを食いちぎって、中にいたであろうパイロットまでもひき肉にして、地面へと叩き落とした。

 

シールド、装甲を無効化するほどの苛烈な弾幕は地へと落ちて行く機体群にも容赦なく叩き込まれ、人としての形は残すわけもなくまたしてもどこの誰とも知らない人間の命が散らされていく。

 

「……酷い」

 

誰かの声が聞こえたが、俺は無視をした。空に舞う銀と赤の血肉の隙間を飛び、レーザーソードで、回避行動をとって反撃に映ろうとしたラファール型を見つけ出しこちらに気付いていない間抜けな面に俺は唐竹割りを行って、センサーと頭部を破壊し、脇腹に深々と突き刺して、横に切り裂いて戦闘能力を大幅に奪う。

 

開幕にして四機目の撃破の後にDMR9の二つの轟音が鳴って、敵を穿ち俺の退避するための道を切り開く。

 

「弾! 前に出過ぎるな!」

 

大場先生の忠告の後にアカネのハヤブサと先生の打鉄からの援護射撃が行われて、俺を囲おうとした銀細工を遠ざけさせる。俺はバックステップの要領で後退しつつマシンピストルを抜き放ちばら撒きを行う。

 

大よそ正確さとは程遠い射撃に銀細工の群れは一旦後退するが、弾丸そのものに対する恐怖を忘れているらしく、四機が大鎌やバトルアックス、果てはハルバートを持った機体群が殺到してくる。

 

『後方から三機……いや四機! 東、西から5機ずつ! どんどん増えていく!』

 

悲鳴まじりの簪の状況報告が俺達の間に流れ、奥歯を噛みしめた。戦力差は一人で50は落とさない限り覆らないものだ。最初から分かってはいたが、その数の増え方はまさに狂騒だ。ただ殺すと言う意思の元にのみ動く銀色の人形たちはのっぺらぼうな顔を見せつけて、凶刃を振るう。

 

ラプターのスラスターを右へ左へと動かし、バトルアックスと大鎌の振りを捌き、マシンピストルで更に迫りくるハルバート持ちに10発撃ちこむが、全くひるまない。

 

絶対防御が無い故に穴が開いてそこから大量の血が噴き出すが、銀細工は気にすることなくハルバートを叩きつけて来た。長槍の先についた斧刃にあたるわけにいかない、と判断し俺は機体を前に進ませて胴体に柄をぶつけるだけで抑え、組み付いてからのフルオート射撃で首を抉った。

 

皮一枚でつながった銀細工の頭はぶらり、と横に垂れ下ったと思ったら、ラプターの肩を掴みだした。

 

「何?!」

 

首に水銀に似た液体が集まって修復され、グロテスクな銀細工が俺を羽交い絞めにしだしたのだ。俺は内心恐怖を覚えて。右手のレーザーソードで脇腹を何度も何度も刺突し、機体自体を破壊したが、死に体が張り付いて剥がれない。

 

先ほどの二機が迫る。万事休すか、と思われた時俺を救ったのは不可視の砲弾だった、。圧力弐よって形成された巨大なハンマーのような衝撃が弐機を吹き飛ばし、俺に組み付いた機体の腕を青龍刀の払い上げで器用に吹き飛ばして、救ってくれた。

 

「ずらかるのよ!」

「すまない!」

「下がりな!」

 

瞬時加速で後退したところをグレイイーグルの散弾砲と機関砲が撤退支援を行い、アカネがマークスマンとしての本領を発揮し、近づく機体を一機ずつ75mm弾のストッピングパワーで頭を押さえつける。しかし、止まらない数の暴力の前に単発のセミオートマチックの狙撃銃といくつかの機関砲では吐き出す弾丸が圧倒的に足りない。

 

迫りくる敵の波を押さえつけるにはセミオートマチックのライフルと機関銃では対処が出来ない。迫りくる大勢の敵に対してはより多くの弾薬を撃ちこまない限り止まらない。敵が指揮官の元で指示を受けて動くのであれば、指揮官を倒せばいいが、銀細工にそんなものは存在しない。かつての福音のウイルスと同じとするならば、ただ破壊の衝動に駆られて走るだけの狂犬と同じなのだ。

 

「……撃ちますわ!」

 

そこに青い閃光が走り、更にレールカノン等も追加された。フレキシブルと呼ばれる偏光射撃と電磁砲で何機かを足止めした。殺す為ではなく当たる場所は武装や肩だったが被弾の際にできる隙を狙って大場先生とアカネが止めを刺す。

 

「無理をしなくていい! 出来ることをしろ!」

「喋る暇あるなら撃て!馬鹿野郎!」

 

命令に怒号、軍事と戦闘経験豊富な女と男が通信機のレシーバーでノイズを発するほどの

声量で言葉を発する。それに続いてイヴァナ機のチャレンジャーライフルの120mm対空用type3弾と山田機の80連装ロケットポッド二基が空中へと放たれて、強引に敵の隊列を割いた。山田機、イヴァナ機、紅椿はここでスレートたちと共に向かうことになるので、コレが最後の援護となる。

 

「援護は此処までよ! 生身組は撤退ポイントに移動する! 幸運を!」

「皆さん、すぐに戻りますからそれまで、頑張って!」

 

おびただしい量の鉄球を放つtype3弾とロケット弾が炸裂して空中に真黒な花火を作り、そこへ大場先生が切り込んでいった。遅れずに俺とユーリが続き、傷つき体勢を整えようとする機体群に実体剣と光刃を突き立てる。

 

「邪魔だ!」

 

一の太刀を平突きで喉を貫通させ大場機の打鉄が返り血で染まる。そのまま横へ振りぬいて腹部を蹴り飛ばし、後ろから迫って来たラファール型のパイルバンカーを剣先でずらし、唾で頭を殴りつけて、かの機体の背部をユーリがちょうどレバーのある位置にナイフを差し込んで、間髪入れず脛骨を抉り取った。

 

「援護する!」

 

片方しか開かないミサイルハッチを開き三発の空対空ミサイルを放ち、二基に群がる機体群の隊列を爆炎と破片、激をしい閃光で分断し二人が下がる隙を作る。フルオートでショートカービンを片手で撃つマーダーに、打鉄大場機が誘導グレネードを三個放って乱れた敵に追い打ちをかける。

 

だが、敵は無力なかかしではなく、誘導グレネードを回避しカービン銃が威力がそこまで脅威でないのを良いことに逆に後退して長銃身のライフルと軽機関銃で射撃戦へと移行しだしたのだ。

 

ユーリは下へ、大場先生は上へと回避し、その間隙を俺がダクトテープと鋼材でマガジンを繋げたアサルトライフルで三発ずつのバースト射撃を三セット行い、後続のアカネ達がやって来てDMR9、スターライトmkⅢなどの狙撃ライフルによる支援が行われる。

 

その場でのファイアファイトは精密さに勝る彼女らの射撃が功を奏した。特に銀細工の頭部をぶち抜き、一匹ずつしとめるアカネの狙撃は熟練のハンターのように退避行動をとる銀細工を鹿狩りの如く、ワンショットワンキルの元に無力化していく。

 

「死神……私は死神……」

 

装填不良を起こしたDMR9のチャージンぐハンドルを引き手動で排莢しつつ、自分に死神だと言い聞かせてアカネは銀細工の中にいたであろう少女を容赦なく撃つ。隣のセシリアは青い顔をしつつも狙撃してるが、狙うのはやはりスラスターや火器だった。それでも、効果は十分ではあるが、いつまで出来るかは分からない中、俺は一瞬出来た時間に安堵の表情を浮かべた。

 

だが安堵に心を落ち着かせるにはまだ早かった。戦場ではいつだって変化が訪れるように突然の事態はいつだってやってくる。俺は後ろから死に体の銀細工が凶刃を振り上げて特攻をかけてくるのに気付き、そちらにライフルを構え引き金を絞ろうとした。

 

「うおおおお!」

 

叫び声が聞こえたと思うと、俺を襲おうとしていた機体を白一色の機体が吹き飛ばした。雪片弐式の刀身をモロに直撃した機体はエネルギーを失ってフラフラと地面へと落ちて行った。それを目を追うことなく俺は助太刀した一夏を見た。

 

彼が俺を助けると言うのは初めての事だった。無論、人生中初めてという訳ではない。俺がこの学園に来てから一夏と俺が話すこと自体が少なくなっていき、敵対に近くまでなっていた。その彼が俺を助けたのに胸に熱いものが込み上げて来た。

 

「一夏!」

「俺だって戦うさ! 今度は自分の手で!」

 

一夏は戦う。その目的は最初と変わらず、仲間を守るために、だ。あれ程離れ離れになった俺達が肩を並べた。それは大きな変化だった。そして、もう一つの事実に気付いた、先ほどまでの戦闘、一夏の叫びながらの攻撃を当てた、ということから銀細工はIS、その動きは今の所代表候補生程度か、それより下だ。

 

恐らくだが、あのウイルスでは戦闘能力そのものは向上しないと見た。戦闘能力は乗り手の腕か、もしくはその過去のデータに基づいているのではないか。そうとすれば、まだ希望が持てる。

 

ISの総数は467機。そのすべてが戦闘用の為に使われていたわけではない。世界大会のための競技用からコアのブラックボックス解明のための研究用、IS学園では打鉄、ラファールなどの練習機だって存在していた。

 

いくら400機近くのISが集まろうとそのすべてが一騎当千ではない。ほとんどが試合以外の実戦を経験したことのないルーキーだ。その点では俺達にいくらかの分がある。この半年間に経験した戦闘は大規模な物ばかり。突破できないわけではないのだ。

 

それに気づいたのか、大場先生が指示を出した。

 

『各機、密集しろ! 相互の援護しつつ中央突破! 織斑、弾、ユーリは遊撃。 他は射撃兵装でダメージを与えるか三人の元に誘導しろ! ただし、深追いは厳禁だ! 数が少ない分コチラが各個撃破されるぞ!』

『了解!』

 

各員が返信して、銃や剣を握り前進する。逆V字型の隊形をとり、一本の矢となった彼らが一斉に火力を掃き出し敵陣を切り崩していく。

 

『鈴、ヴィンセント 面制圧!』

 

 

巨大なショットガンともいえる拡散型龍砲と近接信管のグレネードシェルを込めたオートマチックショットガンが放たれて俺達を囲おうとする敵の集団に大きな穴を形成する。

 

「セシリア、アカネは狙撃支援! ラウラとシャルは撃ちまくれ 頭を上げさせるな!」

 

効果的な狙撃と、砲と弾幕による援護射撃が行われ、その中で陣頭指揮をする大場先生が突撃し、神速の抜刀術で一機を斬り伏せ、時速2000kmを超えた速度のまま、旧カーブをして左右から迫る機体を相手に右側から仕留めにかかって、腹部を貫いて動きを封じ込めた後にピンの抜けた手榴弾を巻き付けて左側に蹴り飛ばし、二機に同時に無力する。

 

そして、散らばった機体を一機ずつ俺やユーリが切り刻み、とどめを一夏の一撃で行うことで確実に撃破する。

 

「簪!」

 

大場先生の絶叫の後、空の目として働く打鉄弐式がデータをもとに計算し、その結果を告げる。

 

『進路確保!』

『全機三十秒で渡り切れ!』

 

作られたホールを突き進み、全機が必死にスラスターを吹かし四肢を酷使して少しでも早く向う側へと渡ろうとする。途中、様々な射撃兵装が俺達を襲いシールドを貫通し装甲や兵装の一部を破壊される。

 

頭飾りを破壊されて鈴が短く悲鳴を上げ、そのお返しにと、ヴィンセントが片側のミサイルハッチを開き、二発のマイクロミサイルを発射するが運悪くミサイルハッチに被弾し、発射機構が完全に機能しなくなる。

 

『止まるな! 飛び続けろ!』

『畜生!』

 

大場先生の怒号にアカネの悪態がレシーバに響き、続いてシャルロットの苦悶の声が響く。

 

『シャルロット機被弾! 推力78%に低下!』

 

弐式のデータリンクから発せられる簪の報告は次々と挙げられていく。かくいう俺のラプターも流れ弾の一発が頭部左側面を掠め、カメラアイに障害が発生する。次にハヤブサが増設されたチェストリグに被弾し、DMR9の予備弾倉をやむを得ず二基廃棄し頼りのマークスマンの残弾に不安が生じだし、大場機もついに被弾を許してライフルを損失した。

 

この機動戦ではラウラの停止結界すら使えない。ラファールⅡには昔防御用のパッケージがあったらしいが、デュノア社が潰れてソレもない。防御する方法は二つ、避けるか、撃たれる前に討つか、の二択だ。

 

だが、後者が出来るのはおよそ半分。一夏ですら浅めに切って戦闘能力を落とすだけにしている。先ほどまでの希望もどこへやら、再び自分の胸の内側に死と言う恐怖と不安が生み出されて、汗がフルフェイスマスクの下の顔を濡らす。

 

 

だが、歩みを止めれば死だ。俺はこのまま死ねない。あの金髪の女王様に一発お見舞いし、全てを生産するために今は生き残らなくてはならない。

 

「まだだ! 俺たちゃ、まだ何もやっちゃいないんだ! こんな所で死ねるかよ!」

 

目の前のラファールの亜種に対して回転を駆けた瞬時加速を行って後方に回り込み、レーザーブレードで背中を切り堕ちようとする機体に全速力での刺突を行って撃破。

 

死体からアサルトライフル二丁もぎ取って、ユーリと大場先生に投げ渡す。ラプターの機動性を持って戦場を駆けて、すれ違いさまに次から次へと切り、撃ち、殴り、とありとあらゆる攻撃を喰らわせる。

 

スラスターがオーバーヒート寸前になり、レーザーブレードはあまりに高出力での展開をしすぎて柄が溶解しスパークが走る。左手に持ったヒートブレードは見る影もなく、刃の根元から完全に砕け散っても尚、俺は戦う。

 

「……続くぞ!」

 

そこへマーダーが加勢し、黒い一色のカラスの名を冠した機体が仕留めきれなかった機体の喉元にナイフを喰いこませて、ライフルを至近距離で叩きこむ。

 

「ユーリ!」

「俺もまだ、存分に生きていない!」

 

ユーリも呼応し更なる道を作り出すべく、飛び続ける。赤と青の刃が踊り、敵陣を切り裂いていき、更に黒の刃が加わった。

 

「大人を置いてくな!」

 

片手平突きで一機を捌き、肩の浮遊シールドで迫りくる凶弾から俺達を庇い、その間隙をアカネとセシリアが狙い撃つ。

 

「ありがとう先生!」

「黙って続け!」

 

後方をシャルロットとラウラ、一夏が固める中、俺達は前へ眼へと進み加速していく。誰もが生きるために叫ぶ。生存本能だけではない。まだ十代、二十代、人生を半分も生きていない、強い夢と希望のために死ぬわけにはいかない。

 

それだけが俺達の心を支配していた。肉がそがれるかのように装甲が飛び散り、オイルや銀と赤の血潮を飛び散らせて、戦う。焼き付いた銃身のライフル、ひび割れたブレードに銃剣、ナイフ、拳と使える物全てを駆使して道を、未来への道を信じて切り開こうとする。

 

弾丸を全て使い切ったハヤブサがライフルを逆手に持って銃床で敵機を殴りつけ、青龍刀が割れたのをこれ幸いにとした鈴が衝撃砲で破片を即席の散弾砲にして、ハヤブサから離れた銀細工の体半分を消し飛ばす。

 

「まだ死ねるか!」

「死ぬもんですか!」

 

二人の女性は奪い取ったサブマシンガンを持って前面に弾丸をばら撒き道を開こうとする。龍砲はすでにオーバーヒートとなった甲龍は武器を失い、機体の節々から悲鳴のような金切り声をあげても尚主人に尽くそうとする。

 

俺達は汚れに汚れ、泥まみれになっても尚合流地点へと向かう。これだけ死ぬ気で戦って、多くの命が失われているのに空は雲一つない。まるで、自分は汚れ一つない存在だと主張するかのような空のなか、俺は敵を切り裂き、誰かの命と引き換えに自分と仲間達を生き残らせようと必死だ。

 

神がいるなら、俺達を助けろ。悪魔でもいい。天上の住んでいる超常の存在とやらがいるならば、今すぐ俺達を救えと俺は一人叫び、次の、次の敵を相手し暴力性をむき出しにしてただ突撃する。

 

銀細工たちが固まり、一斉にミサイルを放ちだしても、俺はラプターを止めることはしない。アラート表示に、レーダーとセンサーに捕えられた百を超えるミサイル群の中を飛び、バレルロールとフレア、デコイ放出でやり過ごし、追随するそれらを振り切ろうとする。

 

スラスターを強引に右へ、左へと操作するたびに機体と骨が軋み、脳がAIがこれ以上は危険だと警告する。だが、足を止めれば死だ。ならばせめて、飛んで死中に活を求めるほかない。

 

そこへ、アカネのサブマシンガンによる射撃がやって来てミサイル群を潰した。彼女は俺に張り付いて接触通信をかける。

 

「馬鹿! 死ぬ気ですか!?」

「だが、もう少しで!」

「なら、私も行きます!」

 

目の前に映る最後の敵陣を見定める。パイの皮を一枚ずつむくような突破劇もいよいよラストを迎えて、俺とアカネは突貫しようとしたが、その先を大場先生が先行し、片っ端から切り伏せる。

 

「続け!」

 

大場先生が叫び、ヴィンセントが同じく叫ぶ。

 

「続け!」

 

一夏の白式も加わり全機が陣形も関係なく最後の防壁へと進んだ。色鮮やかだったはずの機体群の殆どが黒く、赤く汚れており最早エネルギーすら心もとなくなりつつある中、ただ最後の突破だと信じて殺到した。

 

攻撃、攻撃あるのみ。それ以外の道などない俺達はひたすら目の前の敵機をう撃ち落とし、突き抜けて、そして最後の防壁をついに破ることに成功した。

 

『突破成功! やった! これで……』

 

簪の歓喜の声が木霊し、俺達の前に合流地点とマークされた場所に風景が広がっていた。そこからは崩れた校舎と青い空、島の外である青い海と広がっており、先ほどの戦闘とは打って変わって、穏やかな景色が目に飛び込んで来た。

 

空を見上げれば、まだ太陽が顔を出していて俺達を照らしていた。まるで別世界、太陽からの温かな光は汚れきった機体を照らした。その黄金の輝きの中、俺はセンサーで何かを捉えた。

 

『随分と待たせてくれたわ』

 

声がしたと思うと、大場機が一瞬で動き出し白式の目の前に静止した。

 

「大場先……」

 

一夏が訊く前に彼女が叫んだ。

 

「逃げろオ!」

 

打鉄のブレードごと熱線が大場機の打鉄を切り裂いた。絶対折れることがない事を目的として開発された打鉄のブレード葵は熱戦でいとも簡単に溶断され、打鉄大場機が推力を失って下降していく。

 

信じられない光景に頭が一瞬フリーズしたが、俺に向けられた殺気に気付き、俺はその迫りくる敵機の斬撃を間一髪で防御した。

 

「よぉ! 生きてた?」

 

視界に表れたISモドキがククリ刀に力を込めて俺にそう言った。まさか、まさかのアンブッシュ、待ち伏せだった。だが、疑問がよぎる。いつ、どうやって? 連中は資材搬入路を潰され地上に出れずにいたはずだと俺は思ったが、すぐに答えが分かった。

 

マーダーを襲うISモドキを見ると、何もない空間から飛び出してきた。その正体は紛れもなく、光学迷彩そのものだった。そして連中もISの待機状態のように持ち歩ける。つまり、彼らはまだふさがっていない人員用の出入り口から出てきたのだ。そして、光学迷彩をかけて俺達を待っていたのだ。

 

ソレを行うだけの時間はいくらでもあった。俺達が反撃の準備を行っている間に彼らは準備し待っていたのだ。

 

今度こそ、俺達に絶望が降りかかった。弾薬欠乏、エネルギー不足。何もかもが不足しており、前に立つのは誰も勝つことが出来ないジョーカーとその精鋭たちだ。

 

「やっぱり人形だけじゃ、力不足ね。つまらないお向かいして悪かったわ」

「ふざけるな……ふざけんな! 畜生!」

 

スコールの笑い声に俺は叫び返したが、俺のラプターは限界に近く、ISモドキ相手にパワー負けして回し蹴りを二回胴体に喰らい、苦し紛れにスラスターを吹かしてククリの止めを躱すことしかできない。

 

他の皆も被弾し、傷つき、倒れる寸前で踏ん張っているに過ぎない。グレイイーグルはなぶり殺しにあうかのようにアサルトライフルの集中砲火を浴びて、装甲を破壊されていき、甲龍もまた同じ目に合わされている。

 

ハヤブサとブルーティアーズは遠距離からの狙撃を回避するのに手いっぱいで狩られる鹿同然に攻められている。打鉄弐式はホーミングレーザーで反撃するが、ISモドキの表面でエネルギーが拡散されて効果をなさない。

 

ラファールⅡは全火器が弾薬ゼロとなり、逃げる以外に手段がない。シュヴァルツェア・レーゲンは全身をナイフで切り刻まれていき、黒い装甲をスライスされて、防御に回るのみ。皆が皆、一斉に狩られていく。

 

その中で簪が言った。

 

「何で……こんなに、無力なの……?」

 

俺は反論したかった。しかし、何もできない。ラプターですら最早限界。機械を失えば後は無力な俺が残るだけ。どうにかならない物か、と願うが俺に残ったのは一本のレーザーブレードのみ。俺はただ抗う以外に何もない。

 

「死ねるかよ!」

「あっそう、なら死にな!」

 

センサーに映る。救援の輸送機の影。それすらも望みにならない中ISモドキが懐に飛び込んで来た。一瞬のスキを突かれた俺にやられた、と直感が走った。

 

「ちょっと~待った~」

 

だが、完璧な隙をついたISモドキが不意に飛ばされた。空中で姿勢を立て直し、その下手人をカメラアイで追った。

 

「なんだ? 化け物か?」

 

そこに居たのは大型のかぎ爪をもったIS、いや少女だ。制服姿で背中から直接羽型の大型スラスターを生やした異形の姿を見せた本音だった。その姿形こそが彼女の本当だと俺は悟り、その少女を見た。

 

「本音!」

 

その名を簪が叫び、彼女は言った。

 

「幸せなら手を叩こう」

 

量子分解を利用してのジャンプ、ISモドキを追撃し、大地へと叩きつけた

 

「ごめんねかんちゃん。遅れて」

 

本音は背中越しに言った。寂しそうな声音だった。

 




お待たせしました。
最近は忙しかったり、色々と野望を抱いてみたりとでなかなか書けなかったため更新できませんでした。

大変お待たせして申し訳ありません。
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