IS to family   作:ハナのTV

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はみ出し者

巨大な砲声、リボルバーカノンのコンペンセイターから噴き出る熱いガスが肺の内側を熱し、激烈な反動は刀で栓をされていた傷口から血を噴き出させた。視界と体が真っ赤に染まった私はIS用リボルバー“エンフィールド”を抱え込むようにして仰向けに倒れた。不思議なほどゆっくりに流れる時間、遅れて背中に伝わる痛み、派手な刀傷の痛み、硝煙の香りに血の匂い、そして“恐怖“を私は感じた。

 

あの織斑千冬に、姉さんにこの手で十年の恨みを晴らした。この十年、この顔のせいでまともに生きることもできず誰かの視線に怯えてきた。いつ奴の刺客が来るのか、または私という奴のクローンにいかな関心を抱くのかに。誰かの無関心に耐えて来た。私の顔を見て、“私”と認識する者はほとんどいなかった。誰もかれも表面だけを見て手前勝手な言葉を吐いて“私”には無関心だった。どれ程私が自分を主張しようと、誰もかれも私の顔から連想される織斑千冬を見ていた。

 

そうだ、あの日、私を見てくれた父を殺された日からの人生は私の物ではなかった。父を殺され、模造品として見られてきた私の負の人生も終わる。そうすれば、アイツの元に堂々と会いに行けるかもしれない……

 

柔らかな金髪に綺麗なアメジストのような瞳を持ち、私と同じようで違う、誰かに人生を操られたあの女。何故、彼女に惹かれているのかはわからない、ただ私は彼女に会って話がしたい。もう一度あの笑顔を見たい、だから死にたくない。すでに動かなくなった体をうつろな目で見て私は生きたい、と強く願った。消えゆく意識の中で目を閉じないように命が燃え尽きないよう力を振り絞って……

 

 

「起きろよ」

 

突如として額に痛みが走った。私は驚いて何とも素っ頓狂な声をあげて目をあけた。ぼやける視界が徐々にクリアになっていき、目が光に慣れていくと目の前にオータムがいる事が分かった。タイガーストライプの迷彩ズボンに黒のタンクトップの出で立ちで、切れ長の瞳で私の瞳を覗いていた。何故彼女が? 私はあの時倒れていたはず――回転の鈍い頭を必死に動かし周りを見渡すと白を基調とした部屋で、視界の端に天敵が見えた事で医務室だと理解できた。そして、オータムが居ると言うことは母艦フィラデルフィアの中だと見当がついた。

 

「よう、目覚めたな。どんな悪夢を見ていたんだ?」

「オータム……私は生きているのか?私は……」

「お前、私が天国に行くような奴と思うか?」

 

自信とも傲慢とも取れる台詞をオータムは言った。不敵に笑い、私の頭に手を乗せたと思うと、乱暴に撫でて来た。髪の毛がくしゃくしゃになるのに不快感を覚えて表情を歪ませるとオータムは満足そうに息を吐いて言った。

 

「な? 生きてるだろ? 此処に担ぎ込まれた時は驚いたぜ、虫の息で血液どころか体だって不足してたのに必死になって女の名前を口にしていたんだ。お前にはつくづく退屈しないよ」

「……いやな言い方だ。褒めてるつもりなのか? オータム」

「ああ、悪いな。スコール程言葉選びが上手く無くてな、許せよ」

 

楽しそうにほほ笑むオータムを尻目に私は髪の毛を整え、手で顔や体をペタペタと触って

自分の感触や身体をもう一度しっかりと確認した。その過程で自分がIS用のブレードで貫かれたことを思い出して手術着の下を見た。そこには火傷の跡のような色黒い刀傷があった。大きさから刺し傷と言うより切り傷にも消えないでもなかったが肋骨と肺を抜けていたにもかかわらずよく生きていた、と感心してしまった程だ。胸をなでおろし深く息を吐き出しているとオータムは私に板状の何かを手渡してきた。

 

「何だこれは?」

「チョコレート。とりあえず祝ってやろうと思ってな、スコールからおススメのを、な。おめでとう、マドカ。お前はお前の人生の目的を達成した」

 

子供扱いか、と不満も覚えたが私はオータムからチョコレートを黙って受け取り、彼女の言葉の意味を聞いた。

 

「私はやったのか? やり遂げたのか?」

 

オータムはニヤリと笑った。

 

「ああ、お前の“姉さん”なあ……胸にデカい風穴開けて吹き飛んでた。そりゃもう、哀れな死にざまだ。最後は待機状態に戻った暮桜に必死になって手を伸ばして生きようと必死になってたらしいぞ。最期の言葉は“一夏、すまない”だと」

 

オータムのわざとらしい愉快な口調とは裏腹に私はあまり気分が高揚しなかった。成し遂げたはずなのに、何か特別な感情を抱くことも無くただ戦果報告として受け入れているだけの自分が居た。あれ程渇望した結果に私は何ら喜びを見出すことが出来ない事に驚いていた。何故――復讐は達成したはず。これで私の顔はもう私だけの物のはずだ。なのに何故? そんな疑問に私はシーツを握りしめて息を荒くした。

 

「どうした?」

「いや、私は」

「心が渇くか?」

 

誤魔化そうとしたところを彼女は私に的確な言葉で問いかけた。じっと私を見る彼女の双ぼうは私の心を見抜いていた。

 

「言ったろ。復讐なんざ“やったらそれでオシマイ“だと。どうだ? 何か達成感はあったか? 気分が高揚したか?」

 

オータムは急に声音を変えた。諭すような、それでいて冷酷な真実を述べるような低くも優しくもあるトーンに私は顔をあげて彼女の目をじっと見る他なかった。その表情は良く砥がれたナイフのような鋭さが垣間見える顔だった。

 

「私は……!」

「そうだ、お前は成し遂げた。だが人生は長い、そんな事だけで満足できるほどお前は子供でなくなったわけだ。お前は私達といる内に成長していたのさ、復讐するだけで満足するような人間でなくなったのさ」

 

この私の復讐が小さなことだと言うのか。そんな言葉が喉から出かかったが、自分の気持ちという物を見直せば見直すほど、満足していない事実だけが私に伸し掛かる。むしろ、この女の言う通り私は空虚な気分になっていたのだ。この十年を費やした相手が死んでしまえば、それ以上の価値を見出すことができない。今になってこの十年の別の可能性が急に頭に浮かんできて、私の心に穴をあけて広げていくのみだ。

 

「私は……ブリュンヒルデを……姉さんを倒して……」

「そうかもな。だが、あの女がそんな大した奴か? 奴は環境と家族に愛されなくて周りを恨み、それでいて自分の手を必要以上に汚すことを良しとしなかった“普通の女”だ。弟しか愛せない可哀想な女だ。ソイツを殺しても功にはならねえよ」

「可哀想な……女?」

 

私はふとオータムの瞳に映る自分の顔を見た。そこには姉さんとそっくりな顔が映っていた。言われてみればそうだ。織斑千冬は自分の手を汚そうとしてこなかった。白騎士の時も死傷者は出なかった。ピースのメンバーも結局は自分が出撃しないことで無人機や暴走機が片づけてくれることを願っているような女だった。

 

スパルタクが出撃したあの夜もあの女は出てこなかった。IS騒動も結局は周りに任せてばかり、自ら出撃して来たのはスコールが現れて最早自分以外何者も居なくなってからのことだ。

 

そうだ、あの女は手を汚そうとしてこなかった。何故か――それは私には理解できた。弟を、織無一夏を愛していたからだ。愛しているから、血で汚れた手で抱きしめたくなかったのだろう。相手から拒絶されるのを恐れた結果なのだ。ちょうど私がシャルロットとまともに話す事が出来なかったように。だが、理解したところで私はあの女に同情はわかなかった。むしろ、女々しすぎる彼女に怒りすら覚えた。

 

「弟の為に手を汚さなかった、そう言うのか?」

「多分な、どこにでもいる女だったわけだ」

「女々しすぎる!」

 

怒れるまま、私はベッドの手すりを殴りつけた。心拍数を伝える心電図が私の鼓動が激しくなったのを感じ取って、耳障りな電子音を発したので私はたまらず心電図にも拳を打ちつけた。スパークが走って心電図は停止した。そのせいか、やかましく音を鳴らしつづける物だから、頭にきて力任せに床に叩きつけて基盤やプラスチックのボデイの破片をまき散らした。

 

「そんな女のために私の父は死んだのか?! そんな女が私の……この十年恨み続けて焦がれた相手だったのか?! こんな!」

 

息を荒くして手当たり次第に物を投げつける。ベッドの隣にあった小さなテーブルの上から水が入った瓶が転げ落ちて割れる。そこに映る“織斑千冬の顔が見え、さらに内側の黒い感情がうねりを上げる。忌々しさから爪で顔を引っ掻き自分の顔に傷をつけた。

 

できることなら、もう一度会って殺してやりたい。そんな女のために私がこの十年を陰の中で生き、暗い怨念の炎に身を焦がしてきたと言うのか。

 

「怒るなよ」

「黙れ!」

 

オータムが自分より遥かに立場や力で勝てないことを一切忘れて私は彼女に食って掛かった。

 

「これが私の望んだ結果だと?! 認められるか! そんな普通の女を恨んだだけの十年だったと言いたいのか!」

 

獣のように喚き散らし、怒り猛り狂う私の手をオータムは掴んだ。

 

「離せ!」

 

相手が誰であろうと関係なかった。掴まれた手に力を込め拘束から逃れようとするが、歳と経験の差は埋めようがなく、逃れることが出来ない。衝動に駆られるまま、私はオータムに噛みつこうとまでしたが無駄だった。そんな中でオータムは無表情のままで口を開いた。

 

「織斑千冬が相応の人物なら満足か? だがそれでもお前は満足しないぜ。復讐だけでは人間は満足しない。だが、それの何がいけない? 復讐に囚われたお前は死んだ。お前は復讐以外で欲するようになった。人生ってやつだ」

「……そんなもの!」

 

否定する私の首もとにオータムは顔をそっと近づけて匂いを嗅ぎだした。香水の香りを楽しむかのような女らしい仕草に私は一瞬心地よさを感じてしまったのに自己嫌悪を抱いたが、彼女はそんな私に勝ち誇ったような笑みを見せつけてくるのだ。

 

「いや、嘘だな。女が居るだろう? マドカ」

 

ハッキリと言う彼女に私は反論できなかった。彼女の勘の良さにもそうだが、スコールとの“行為”で見せる美貌を見せる彼女を私は直視できなかったし、女と言われてシャルロットの温かな微笑みを脳裏に浮かべて自分を恥じた。

 

「女、じゃない」

「ほう?」

「友達だ……!」

「プラトニックだな」

 

オータムは薄く笑っていた。まるで大人が子供の恋愛を見て微笑ましく見ているようだ。私はシャルロットに恋しているわけではない、お前とは違う。そう言いたかったが負け惜しみのように感じ、遂に言うことは無かった。

 

「だが、ソイツを考えられるのは重要だ。お前はもう織斑千冬から解放されたと言う訳だ。お前の生き様を偽る奴はもういない。ソイツはこの“亡国で最も重要”だ」

「……お前たちの目的とかいう奴か?」

 

オータムは「そうだ」と答えた。亡国の目的――歴史の創造、エンターテイナー……どれも抽象的な言葉ばかりで私は今一彼らの目的という物を理解していない。悔しいが私は彼らと違ってまだ若すぎた。彼らほど戦って来たわけではない。なぜ、彼らがそうしようとするのか私に完全な理解ができなかった。

 

「私達兵士はいつも加害者で犠牲者だ。誰かの都合でどちらかにされる。非難され、功績と栄光を無に帰される。死んだ仲間に与える小さな勲章すらも、だ。私達が戦った証の全てがどこにも残らないんだ」

 

オータムはベッドの脇に座って語り続ける。

 

「偽りを生きるのだっていいだろうさ。世の仕組みだから、って言って自分を納得することが出来るなら……だが蜃気楼の中のオアシスで生きるかと聞かれてそいつを選べるほど私達は馬鹿じゃない。流した血を無下にできる程私達は残酷じゃない」

 

オータムの視線から私は目が離せなかった。赤くて、人を釘付けにさせる恐ろしくも美しいルビーのような煌めき。彼女の普段の目とは違っていた。あの良く砥がれたナイフのようなギラついた眼光とは違う、例えるならスコールと同じ瞳。あの強烈なカリスマに裏打ちされた宝石のような目をしていたのだ。

 

「戦い終わった後でそれを胸に刻み込んで平和を唱えるのはいい。そいつは少なくとも同じ地獄を見てきたわけだし、ソイツの言う戦争もまた真実の一かけらってのがあるだろう。だが、今はどうだ? 流れた血を誰が記憶している? 私達の功が誰かの功になるか、歴史の汚点にされて風化していくばかりだ。お前と同じだよマドカ。お前は織斑千冬に存在そのものを消されていたように私たちもどこにも存在しない」

「存在しない……」

 

独り言のようにポツリとつぶやくとオータムは頷いた。

 

「そうだ。IS学園のピースのガキ共のようにな。奴らは必死に戦ったろう、だがそれらを織無一夏の功にされて汚名をかぶせられてきた。学園の連中も彼らを排除しようとしてきた。何故か、都合が悪いからだ。特に学園の連中にとって戦わなくてはならないと言う事に目を背け、自分らの臆病さと怠惰を隠すために彼らを非難した」

 

臆病さと怠惰。戦いから逃れようとする臆病と学園が幾度となく襲撃されようとも、その対抗措置を強化しようともしてこなかったのは私も見て来た。確かに短時間で対策を練るのはたやすいことではない。だが、何もしなかったのも事実だ。恐らく現実を受け入れられなかったのだろう。IS神話が終わりを告げた時、死なないはずのスポーツが戦場に変わり、約束された栄光の未来への道は誤れば死が待ち受けるタイトロープへと変わったに違いない。

 

「“戦えば死ぬから戦わない”から “私達は平和を謳うから戦わない”にいつの間にか挿げ替えるんだ。じゃないと都合が悪いからな。そして“今は平和で何も問題は無いから何もしない”に変わり、何もしないで誰かを戦わせる誰かさんの完成だ。世間と何も変わらない。そして、そいつらを政治家だとかが利用し動かすんだ。そんな奴らが私達の戦いを消去して綺麗で空っぽな物を残していく。そんな“自分たち”がいない平和を守るために血を流し、罵倒され、帰る場所すら消されていく、なら私達に残された道は奴らと迎合して死んだ仲間すら忘れてブロイラーみたいな生活をするしかないのか? ふざけんな」

 

ドクン、と胸が鳴った。オータムの話はシャルロットの話とよく似ていた。自分の母を捨てた男に駒として送られ、名を偽り、性別を偽り、自由を得れば罵倒を受ける彼女。それでも社会に規範に従って懸命に生きようとしても、後ろめたさを感じて泣いていた。得られた自由も囲いの中でしか存在しないと言うのだから救いがない。その泣いていた女の子を誰が、どんな事情を知って責めると言うのか。

 

「何もかも忘れて浮世で生きるなんて出来るか。連中と肩を並べて戦友を侮辱するなんて御免だ……なら、どうすればいいか」

 

オータムはアラクネの拡張領域からFNハイパワーを取り出し、私に見せつけた。傷もついていない新品の物。だが、その殺傷能力と用途を知っている私は何を言いたいのか理解していた。

 

「……物を言うのは剣か?」

「いつの時代もこいつが一番だ。一度ぶん殴ることが理解への近道だ」

「私が言うのもなんだが……暴力以外に語る術を持たないわけか」

「その通りさ。『愚か者は経験に学び、賢人は歴史に学ぶ』誰の言葉だか忘れたがコイツは正しい。そして私も含めて大勢が愚か者だってことを考えればたどり着く結論は一つだ、経験するしかない。戦争を、な」

 

浮世の否定。社会に適合できなかった荒くれ者どもと言われればそうだろう。私がそうであるように、忘れることが出来ない頑固で冷酷な手段でしか生きる術を持ちえないのだ。しかし、ここで一つオータムの話を聞いて思うことがある。果たして浮世の連中は彼ら自身が口で言うほど平和的なのか。

 

IS学園の連中がいい例だ。戦うのを否定し人殺しを悪だと断罪するのはいいだろう。だが彼女らは何をしていた? 現状に不満を抱き、外道に染めて守ってもらっている連中を非難する。戦わない――戦えない、怖いならいっそ逃げればいいものを逃げることもしない。自分たちより努力した物を妬み足を引っ張るのが精々だ。

 

そして、自分達の立場がいよいよ危なくなれば平気で織斑千冬に賛同する。何が平和的なものか。人を散々戦わせて非難したあげくに最後は駄々っ子のように暴れているだけではないか。

 

「だとしても……」

 

そこまで思考を巡らせて私は一歩踏みとどまった。いや、踏みとどまれた。利用され続けても決して拳を振り上げなかったシャルロットの姿が一瞬つむった瞼の裏に表れたおかげだった。

 

「染まらない者もいるはずだ。周囲と自分の狂気に染まらない奴が……そうだろう? オータム」

「ああ、ソイツは認める。あのピース組やインダストリーの傭兵どもがその一例だ。ま、お前が言ってるやつは女だろうけど……」

 

私は視線をずらし、唇をかんだ。オータムの言葉もそうだが、さっきからシャルロットの笑顔がちらついて、どこか調子が狂う。これが復讐のために生きた私がすることか、と認めることが出来なかったのだ。

 

「ま、つまりだ。同じ兵士でも私らとアイツらで別れるわけだ。奴らは誇りも捨てなかったし法も理性も捨てなかった。そこは尊重する、だがな!」

 

オータムはブーツの踵で床を蹴った。ロングヘアーを激しく揺らしFNハイパワーを握る手に力を込めてグリップを軋ませた。

 

「だからこそ、腹が立つ。戦友の叫びを抑え込んで罵倒され、利用されるのを許容して社会の“悪役”を演じているのが。死んだ戦友との絆を嗤い、泥をかけられているにも拘らずにだ! 自分たちの元に戦いを取り戻そうとしないんだ、力がありながら」

 

自分達が居た証、生き様、感情、それら全てを否定される。これ程残酷で屈辱的な行為は無いだろう。あの日、オータムが私を救ってくれた時に胸に刻み込まれたあの黒い感情がオータムの主張を肯定していた。あの時の私には何の力も無かったが、それでも銃を持った相手とその後ろにいる姉さんにありったけの殺意を込めた。

 

無力でも人は殺意を抱くし、意志を持つ。ならば力を持ち、そんな侮辱を受けながら従い続ける彼らは確かに理解に苦しむ。イーグルで世界を変えると言っても、人は変わらない。

そんなことは十年前の白騎士事件の時でとっくに知っているはずなのに、だ。私ですら嫌な世の中だと感じられる程なのに。

 

「なら、私はどうすればいい? オータム」

 

ここで私は訊いた。そこまで話をしておいて、一応の人生の目標を達成し生き残ってしまった私に何をしろと言うのか。このテロリストの一員で世間的に認められるわけもないクローンの私に。

 

「私はクローンでもう人殺しだぞ。今更浮世で生きられると思うか?」

「それは自分で決めろ。浮世で生きるってならスコールに私が口添えしてやってもいい。言ったはずだ、お前はもう解き放たれた。この先亡国を今まで通り利用するか、つくか、もしくは責任とって織斑一夏に殺してもらうのも自由だ……選択肢はいくらでも与えてやる。だが選ぶのはお前だ」

「私は……」

「頑固過ぎだよ、お前は。織斑千冬は死んだ……私達は歴史の一ページを飾る、お前はどうしたい? マドカ」

 

こんな時に優しい口調になるオータムが憎らしい。きっとこの女のことだ。私が亡国を降りると言えばスコールにそうさせるよう願い出るだろう。良くも悪くも、この女は面倒見がいい。織斑千冬を殺す為の技術と道具を用意してくれても、最後は私に引き金を引かせる――初めて会った時から変わらない。粗削りで美しく、強い。スコールがオータムを一番信頼し、愛するのも頷ける。

 

愛する――そう、この女の生き方の一部分だ。戦場を駆けて戦友と共に行く猛々しさを持ちながら、スコールを愛する女として純粋な一面も見せていた。愛はオータムにとって重要、愛もまた生き様の一つなのだとしたら――私もそう生きられないだろうか。

 

 

考えても見れば、亡国の連中、スレート、オータム、スコール、父……シャルロット。思えば私の周りにも大勢の人間が居たものだ。これまで私は自分の復讐の為に生きて来た。なら、次に私がしたいことは……

 

「オータム」

 

その名を呼んで私は訊いた。

 

「私の機体は……サイレントゼフィルスはまだ生きているか?」

 

オータムは笑わなかった。ただ笑みを消して戦士としての貌を表面に出した。あの時と同じように私を受け入れる気でいてくれた。

 

 

 




今年最後の投稿となります。
中々話が進みにくい本作ですが、完結目指して頑張りたいですね。

次回の話はレジスタンスか亡国一般員か一休みようの日常、いずれかを、と考えております。
もしご意見ありましたらお聞かせください。感想も大歓迎です。

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