IS to family   作:ハナのTV

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休日の話 ついでに次回への布石も少しだけ


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「本当に行かないのか?」

 

ホテルのような豪華な寮の一部屋で一夏は俺に聞く。一夏はせっかくの日曜なので、一緒に遊びに行かないか、と聞いてきた。親友の誘いという事で行きたいと思わないでもないが、行場所が問題だった。よりによって五弾田食堂。いつぞやの出来事もあって俺は行こうなんて気になれなかった。

 

「悪いな。仕事があって忙しんだ。また今度な」

 

適当な理由を作って、誘いを断る。愛想笑いも忘れずに答える。

 

「そうか。また今度な」

一夏は残念そうな表情をして、その場を離れた。その後ろ姿を眺めて扉を閉める。一人溜息を払う。

 

――――俺も変わったのかな

 

不思議と寂しさは感じなかった。これでもRインダストリーに入ったころは家族から何の連絡が来なかったことに寂しさや孤独感のようなものを感じたというのに、今は何も思わない。思っても友達の誘いを断ってしまって申し訳ない、その程度のモノだ。

 

玄関に背を向け、ベッドへ向かう。今日は嬉しいことにいつもの訓練は無く、一日完璧にフリーだという事でどうするかゆっくり考えていると、またしても扉を叩く音がした。

 

すぐさま、向かい扉を開けると、そこにはタイトジーンズにノースリーブの黒いポロシャツを着たアカネがいた。珍しく薄く化粧もしてるように見えた。

 

「アカネ、どうしたんだよ?」

「お出かけしましょう、弾」

 

帰って来た言葉で俺は目をパチクリと瞬きする。

 

「今日はフリーですよね?せっかくですから、映画とか見に行きませんか?」

 

バッグから割引券を二つ出して、誘うアカネを見て俺は少し戸惑った。

 

「いや、暇だけど……いいのか?俺が、俺と出かけて」

「何か護衛がいれば会社も文句は言いませんし、それに今暇なのは弾だけですから」

 

護衛。ソレはアカネ自身の事を示している。アカネは専用機持ちで、三人組の中で唯一の対IS戦闘を想定された機体を所持している。機体名「ハ

ヤブサ」。何でも昔の日本軍の戦闘機の名前が由来らしい。

 

ユーリの機体マーダーをそのまま大きくして胸部装甲を厚くしたモデルで、特徴点としては脚部があげられる。

 

「進化した翼」と言われる程で、脚部そのものが大型のスラスターとなっているのだ。またバックパック式と呼ばれる方法で背中にあらゆる装備をつけれるのも言わなくてはならない点だ。ついでに言うとアカネの物はマークスマン用で頭部がモノアイの単眼である。

 

その見かけは想像以上に恐ろしいものだ。そんなものを持った人間が護衛として付くのだ。誰だって文句は言わないだろう。

 

最もSPさんもいるという話だが。

 

俺以外が暇でないのは知っている。ヴィンセントは会社の人と仕事の話があるらしく、学園にいない。ユーリはルームメイトの簪の手伝いをすると言って忙しくしている。

 

確かに同年代で暇なのは俺だけだ。

 

「それとも……嫌ですか?」

 

俺より少し背が小さいアカネが上目づかいで俺を見る。見ると、美人で反則的だった。多くの人が振り向くことだろう。かく言う俺もその一人だ。彼女にお誘いを受けて嫌がる理由などない。

 

「いや、そんなことは無い。むしろ嬉しいくらいだ。行こう」

「ありがとうございます。では行きましょうか」

 

こうして俺は学園の外へと駆り出された。学園から出たとき、外はいつも以上にまぶしく思えた。

 

 

 

 

モノレールに乗り、絶海の孤島のような学園から出た俺達二人は大型のショッピングモール レゾナンスへとたどり着いた。季節はもうすぐ夏という事もあり、外は暑く、ギラギラと照らす太陽の光が恨めしいほどだった。店内に入った時、心地よい冷房の風を感じて文明の利器をほめたたえた。

 

「クーラーもこういうときは悪くないですね」

 

アカネが涼しい風を体全身で受け止め、感慨深そうに言う。

 

「冷房が苦手なのか?」

「普段はあまり使わないですからね、だるくなるのが嫌で」

「いつも運動しているのに、暑くないのか?」

 

俺の言葉に反応し、アカネが意地の悪そうな笑みを浮かべた。

 

「おっ ついに訓練を運動と言えるようになりましたか。流石です。次からはメニューを倍増して」

「タンマ! 今の無し!」

 

俺が慌てて訂正するのを見て彼女はどっと笑った。固そうな人に見えてからかうのが好きな所がアカネにはあるのだ。そこが可愛くもあると俺は思う。

 

少し歩き、モール内のパンフレットを開き、映画館の場所を確認した。七階にあるらしく、そこに向かう事にした。二人こうして並んで歩いていると他人からどう見えるのか、俺は一瞬考えた。

 

以前も同じことを考えたが、あの時は初めての女の子と一緒にお出かけ、という事で俺が想像したが、今回は相手がアカネだからという事で考えていた。それが親友として、なのか あるいは別の意味として そう思ったかどうかは今は分からなかった。

 

考えても見れば、ルームメイトと言うこともあって一番、付き合う時間が長い人だ。そのためか、俺はアカネのことが気になっている。しかし肝心の彼女がどうなのかはわからないことが少し恨めしかった。

 

上へと続くエスカレーターに乗りながら、俺は隣の彼女を眺めていた。

 

 

 

同じ時間の別の場所。第五格納庫では前とは違った光景が広がっていた。男だけのむさ苦しい雰囲気が和らぎ、数名ではあるが、女子生徒がいた。彼女らは整備科の生徒たちと第五格納庫の住人達は打鉄弐式の改良に頭を捻っていた。

 

ファーストシフトを完了し、機動そのものできるようになったが問題は山積みだった。

 

当初、持ち主の簪は武装の使用ができれば、後はどうにかなると考えていたが、いざ見てみると、それ以前の問題だった。

 

弐式の試作のスラスターを分解してみると強度不足で、あてにならないパーツがぎっしりと詰め込まれた代物で。マイク達曰く、ゴミ箱と間違えている、と言わしめるほどの出来栄えだった。

 

他の駆動系もわざわざ新規設計してたらしく、その整備性の悪さは想像を絶するものだった。これを改良すべく、整備科の生徒たちと協力して元の打鉄とパーツを共通のモノにして、機動性を打鉄のスラスターを4基、小型にした物を装備させることによって、整備性の向上と機動性の確立を成功させた。

 

その他のパーツも共通の物にして、早い話、弐式は出力を大幅強化した打鉄と化していた。そして現在、武装をどうするかと言う所まで来た。しかし、それもまた困難だった。

 

「荷電粒子砲に50発近いミサイルを同時に発射にマルチロックだぁ? やってらんねえな」

 

マイクが設計図を見て、両手を上に上げる

 

「マルチロックは一応作っては見たんですけど上手くいかなくて」

 

簪がプログラムをマイク達に見せる。その反応は様々だ、よく作ったと感心するモノから無理だ、と嘆くモノまで多岐にわたった

 

「ロックはできても、これじゃあ、ミサイル同士でぶつかるわよ」

「48発同時に誘導は無理があるな」

「時間があればいけるかもな。五年くらいあれば」

 

皆が同時に深いため息を吐く。

 

マイクがじっと画面を見て考える素振りを見せる。

 

「だが、同時に多数をロックすること自体はできてるし、コイツを捨てるのはあまりにもったいない。さて、皆の衆、どうしたもんかね」

 

手を叩いて、この場にいる全員にアイデアを募集しだした。その中には俺も入っているようだ。

 

「単一ロックにするのは?」

 

整備科の生徒が言う。

 

「それこそ、ミサイルのぶつかり合いが起こるわよ。48発も独立して誘導

するなんて無理よ」

 

もう一人が反論したので却下される。少し考えたヘンリーが手を上げる。

 

「なら、ミサイル以外はどうだ? 背中にチェーンガンのような実弾兵器とかよ」

 

「敵機にぶつける程の大口径弾だと重さが凄いことになりそうだな」

 

重量の上昇を理由に却下される。高機動を保ちながら、マルチロックを生かすシステム。

 

難題と言える問題に誰もかれもが頭を悩ませる。

 

「ユーリ、お前はどうだ?」

 

マイクが俺に問う。俺は技術的な話には疎いがアイデアが無いわけでは無かった。

 

「レーザーなど光学兵器ならどうだ。実弾に比べれば、遥かに軽くなる。」

 

「エネルギーがな。敵機にぶつけるとなると、相当出力が」

 

マイクが渋い顔をする。やはり俺のアイデアには無理があったようだ。

すると、簪の顔が悩んでいたモノから変わり、何か閃いたのかが見てとれた。

 

そのアイデアが披露された時、格納庫で歓声が沸き起こった。

 

 

 

 

廊下を歩き、俺と簪は二人、自室へと向かっていた。

 

「しかし、君の発想は驚く物がある。よく考え付いたな」

 

俺の言葉に簪は上機嫌なのか、微笑みながら答える

 

「昔見たアニメであったから。でも、そのおかげで荷電粒子砲「春

雷」は無くさなきゃならないのが残念」

「ISでも、出来ない事はあるのだな」

 

火力と機動性の両立。この理想は叶えるのが難しい代物だ。むしろ不可能と言っていいかもしれない。今回は火力を減らすことでこの問題を解決した。火力が減ることとなったが彼女の発案の前にはそんな問題など小さなものにしかならなかった。

 

これもひとえに彼女の才能とマイク達の経験が合わさった故だ。

 

「帰ったら、またアニメとか見る?」

 

簪がおずおずと聞いてきた。

 

「ぜひ、そうしよう。俺も続きが気になっていたところだ。」

 

俺の答えを聞いて彼女は満足そうにほほ笑む。そして、俺の前に立ち、止める。

 

「だったら少し待ってくれる? 私、部屋で何かお菓子作るから」

 

それを聞いて、俺は素直に従う事にした。彼女の菓子は甘く、何やら落ち着ける味でたまの楽しみとなっていた。

 

「なら、俺は売店へ行く。飲み物もいるだろ?」

「わかった。じゃあ、いつもの時間にね」

「ああ」

 

そんなやり取りをして俺たちは目的地へと足を運ぶ。彼女が炭酸系があまり好みでないことを考えながら、菓子と合う飲み物を考えていると、ふと視線を感じた。

 

いつもの好奇な視線ではなく値踏みをするような視線だ。俺が一体なんなのか、見定める様な視線だった。足を一旦止めて視線を感じる方向へと振り向くと、女子生徒がいた。

 

「やあ」

 

二年生であるリボンを付けたその女子は扇子を持ち、明るく挨拶をしてきた。彼女の見かけを見ると、見覚えのある水色の髪に赤い瞳だった。簪とよく似ている。違うのは、地震と余裕に満ち溢れて、メガネを掛けていないと言う所だろう。

 

「何か用か?」

「あら?せっかく、話しかけたのに、そんな反応だと おねーさん、ちょっと困っちゃうわ」

 

おどけた態度を気にせず俺は最低限の事のみを口にする。

 

「用がないなら、行っても構わないか? 約束の時間に間に合わせなくてはならない」

「用なら、あるわよ。簪ちゃんの事とか」

 

扇子を広げ、口元を隠し目の前の彼女は猫のような好奇じみた目でこちらを見やる。

 

「あなたが何者か調べさせてもらったわ。でも、わかったのはRインダストリー社に所属しているってことだけ。それ以外は何も出てこない」

 

一歩ずつ歩き、近づいてくる。

 

「ハッキリ言って、素性の分からない男が簪ちゃんのそばにいるのは好ましくないの。だから」

「部屋を変われ、という事か?」

先に答えを言うと、正解だったらしく、そうよ、と答えた。

 

簪を親しく呼び、彼女と同じ瞳の色、髪の色 顔つきもどことなく似ていることから、生徒会長 更識 楯無 だと判断した。楯無にとって俺は妹のそばにいる害虫か何かだと言っているようだ。

 

「あなたが賢くて助かるわ。早速変わってくれるとおねーさんも手間が省けるわ」

「断ったところで、お前に力づくで変えることなどできはしない。」

「それは自惚れかしら?」

 

彼女の赤い瞳を見る。簪と違い、自信に満ちたものだ。自分にできないことは無い、そんな自信だ。どちらが自惚れているか、と思い 鼻を少し鳴らす。

 

「所詮は、生徒会長だ。それほど権力があると言うのか?」

「私にはあるわよ、権力から実力まで」

 

扇子を広げて扇ぎ、余裕の態度を見せる楯無を俺は微かに笑う。

 

「なら、そうするといい。簪がどう思うか見ものだな。それに今まで、何の助けもしてこなかった姉を今更、迎えてくれるとは思えないな」

 

扇子の動きが止まり、顔が一瞬だがピクリと固まった。

 

「どうしても変えさせたければ、簪を説得させることだ。俺は変わる気はない」

 

明確に宣言し、踵を返し売店へと足を運ぶ。早足で早々にこの場を去ろうとする。

 

「じゃあ、最後にいいかしら? 」

 

またしても引き留められる。鬱陶しく思いながら、振り返る。

 

「どうして簪ちゃんに拘るの?」

「放っておけない、それだけだ。」

 

一言のみ返し、今度こそ、その場から離れる。腕時計を見ると、時間まであまり余裕がない。簪は待たされるのが好きではないことを思いつつ、急いで売店へと向かった。後ろで、蛇のような睨みを聞かせた楯無を置いて

 

 

 

 

 

マイク達の部屋で僕は防音加工が施された部屋でモニター越しに会話していた。部屋は狭く、人ひとり座るスペースのみとなっている。モニターの向こうではロイが広々とした個室で情報を話す。

 

「この時期に、さらに代表候補生が二人か。ちょっと多すぎはしないかい?」

 

僕の疑問にロイは苦笑を浮かべる。

 

「私に言われても困るな、ヴィンセント。大方織班君の影響だろう。」

 

僕は納得しがたいような声を出して書類を見やると、ふと目に入った情報があった。デュノア社の項目だった。

 

「連中も送り込みに来たのか。しかも男ってのは気になるな。」

そのページにはデュノア社の代表候補生について記されていた。シャルル・デュノア。

世界で五番目となる男性適正者。名前からして社長の家柄の者と推測できる。

 

きな臭い、ただそう思った。

 

「今頃になって男性適正者。しかも企業代表ではなく、国家代表候補生。臭いな。どうも」

 

ロイも頷き同意を示す。

 

「メディアも大して取り上げてはいない。調査には時間がかかるが、まず黒と見てみいいだろう。まあ、扱いは君に一任する」

 

ロイの意図をくみ取る。シャルル・デュノアは危険人物だ。ただし、簡単に御することができる都合のいい敵だ、とロイは言っているのだ。企業同士の力なら、デュノア社などRインダストリーの足元にも及ばない。つまり外堀を埋めるのは容易い、後はシャルル君を御すれば、デュノア社を崩壊させる矛となるのだ。ロイ風に言えば簡単なパズルごっこだ。

 

「わかったよ、ロイ。任せてくれ」

「頼んだぞ、ヴィンセント。 ところで」

 

ロイが周りを見渡して、小声で僕に問いかけた

 

「君、休日なのだから、遊んだりしないのか?」

「あいにくと、ウチの同僚たちはイチャついてて、忙しいそうでして」

 

突然の質問に驚きつつ答える。最近の彼らが異性の友達作って、楽しんでいるのを何度か見ていた。弾はともかく、ユーリまですると言うのは予想外だった。こうして考えてみると、自分だけモテない奴という事になるのに気付く。

 

「私が言うのもなんだが・・・その年でそれはツラいぞ。」

 

独身貴族主義を走るロイがそんなことを言い出したのに僕は悔しく感じた。

 

「いいんですよ、僕には仕事がありますし」

「その年で、くたびれたOLのようなことを」

 

ロイはハンカチを取り出し、わざとらしくウソ泣きをしだす。それを見て青筋が浮かぶ。

 

「もう、切ります!」

 

電源を落とし、グレイイーグル拡張領域に書類を仕舞い、報告室から出る。腕を伸ばし、狭い部屋から出た解放感に浸っていると、玄関の扉が開いた。

 

「あ、いた」

 

入って来たのはツインテールの中華娘、鈴だった。

 

「どうしたんだい、こんな所に?」

 

髪を少しいじりながら僕は鈴に聞いた。

 

「アカネも弾もいないから、暇でさあ。アンタ今暇?」

 

先ほどのロイの話を思い出す。これが俺の女友達か、と思い鈴を見やる。気の強そうな瞳に八重歯、凹凸のないボディライン。何となくため息を吐く。

 

「何か、今失礼なこと考えなかった?」

「いやあ、まさか」

 

大げさな態度を見せて否定する。思ったより、身体のコンプレックスがあるらしい。

 

「まあ、いいわ。私の部屋でカンフー映画祭りやろうと思っているんだけど来ない?」

「ジャッキーは出るのかい?」

「もちろん」

 

それを聞いて即行くと答える。最初こそ苦手だったが、友達として彼女はいい女だと思うようになった。企みばかり考えて疲れる毎日に安らぎをくれる彼女は弾の言う通り、いい女なのかもしれない。

 

 

 

 

 

劇場から出て、俺たちは喫茶店の中にいた。見た映画はSF物で巨大な昆虫の大群と人類の死闘を描いたもので、二人でその話題で盛り上がっていた。

「ラストの海兵隊のスナイパーが生きてたのはよかったですね。」

「ああ、ハッピーエンドで大団円だったもんな!」

 

それぞれで注文した料理、俺がカルボナーラでアカネがハンバーグセットを食べつつも、映画を批評する。

 

俺にとって至福の時間と言えた。アカネと出かけるのは想像以上に楽しく、また驚きに満ちたものだった。彼女の行動一つ一つが新鮮だからだ。

 

映画までの待ち時間中に寄った服屋でアカネはワンピースを眺めていた。俺は試しに試着したらどうか、言ってみたが彼女はふくれっ面で却下した。

曰く「私だと筋肉で固いところが見えて可愛くないのです」とのことだ。彼女の理由と表情が可愛く思えて、つい笑ってしまった。その後でポップコーンを奢ることとなってしまったが。

 

食べているアカネを見る。こうしてみると普通の女の子だ。とても、ISを駆って、自分の目的のためにひたむきに走るようには見えない。彼女の体は普段ラフな格好が多いので目にするが、アスリートのように鍛えられた無駄のない体だった。

 

しかし、今はこうしておしゃれをして、映画の話をしている。恐らくはこちらが素なのだろう。

 

「どうかしました?弾」

「いや、何でもない。ただ少し考えただけだよ」

 

小さい頭を傾げてアカネは聞く。

 

「何をですか?」

「いや、会社に所属して、毎日訓練の日々だけど、こういう日もあるんだなあって」

 

適当に理由を作って、誤魔化す。我ながら嘘が上手くなったものだ、と思う。ヴィンセントの影響だろうか

「仕事ばかりじゃ、滅入りますからね。楽しめる時は楽しむのがコツです。次があるかなんて、わからないですから。」

 

一瞬言葉に陰りがあったような気がしたが、俺はあえて問わず、彼女の言葉を聞く。

 

「ですから今を楽しみましょう。 明日につながる今日を」

「ああ、そうだな。映画の真似か?」

「いいでしょう?

 

今日を楽しむ。思えば最近の俺にとって、明日よりも今日を気にすることが多かった。

 

射撃や格闘、ISの訓練にクラスメイトとの関係、日々の勉強。いつの間にかハードな日々になっていた。だからこそ、こういう日を大切にすべきなのだろう。

 

喫茶店の窓から見える人々は忙しく歩いていた。少ない休日の時間を惜しむように。

 

時計を見る門限の時間に刻一刻と迫っているのに気付き、彼女との時間がもっとあれば、と思い 時計の針を止めたい衝動に駆られかけた。

 

 

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