暗く、湿った部屋。その中で一人の少女がライトで照らされていた。劇場ならスポットライトの様にも見えたかもしれないが、部屋の雰囲気から、そう見ることは出来なかった。
むしろ、処刑台のような相だった。
目を開けて、少女 シャルロット・デュノアは意識を取り戻した。
動こうとするが、手錠によって椅子に縛り付けられた形となっていることに気づく。
さらに体そのものに力が入らないことに気づく。筋肉弛緩剤などが投与されたかもしれない。本来ならIS乗りが持つナノマシンによって無害とされるはずが、全く効果を見せていない。そんなもがく様を見て僕は姿を見せる。
「おはよう、シャルル君。 いやシャルロットちゃんかな?」
「君は・・・」
シャルロットが気を失う寸前を思い出し、睨みつける。
「そう怖い顔しないでさ、話し合おう。いい話があるんだ」
椅子を引っ張り出して彼女の目の前に座る。
「ボクにこんなことして、どうなるか・・・」
「どうにもならないさ」
ポケットから彼女のペンダント、正確には彼女の機体ラファール・リヴァイブカスタムⅡを見せつける。指でクルクル回して遊んでも見せる。
「君には機体が無い、その非力な腕じゃ、抜け出すことだってできやしない。そして・・・
助けもいない。」
「・・・・何が目的なの?」
シャルロットは額に汗を流しながらも冷静になろうと努める。
「商談だよ。 僕らは君を助け、君が僕らの手伝いをする。」
それを聞いてシャルロットは不敵に笑って見せる。馬鹿でも見ているかのような顔を浮かべる。
「お断りだね。ボクには学園が・・・一夏がいる。君たちの助けなんて要らないよ。むしろ君たちは僕に謝るべきだ。学園内でこんな事したなんて知られたら。どうなるかな?」
自信たっぷりに言い放つシャルロット。その姿は勇ましく、また滑稽だった。何をそんなに盲信しているのか
僕は噴出して、腹を抱えて笑い転げた。
「何がおかしいの?」
「君ねえ、それは普通の生徒なら、そうなるだろうさ、でも・・・」
一拍おいて事実を突きつける。
「君はスパイだ。しかも、ハニートラップのようなことまでしようとする薄汚いスパイだ。」
「違う!」
強く否定する。存在そのものかけて全身全霊に。
「ハッ、どう違うんだ? こいつをどう言うつもりだ。」
突きつけたのは彼女の装備だ。彼女の機体は豊富な装備を持つことができることが特徴とされているが、隠されていた機能があった。ホログラムカモフラージュ。何年前かに構想された装備だ。全身をホログラムで覆うことで、景色に完全に同化するだけでなく、外見を変えて別人となり潜入すら可能にするという夢の道具だ。かつてはそれを維持するための電源となるバッテリーが異常に重くなるし、排熱等で装着者が持たないことで廃案となったが、待機状態のISからエネルギーを得ることでそれを可能にしたのだ。
これを利用して彼女は外見を男に擬態したのだ。最初に握手をしようとした時、彼女は躊躇った、それはカモが見せる手と、実際に触る手に大きな差異が生じるからだ。それだけで、確証は完璧に得ることは出来なかったが、弾の連絡によってそれは解決した。
だから、今彼女がここにいるのだ。
「こんな物つけといてスパイじゃないなんて言えないよな?それとも会社の命令で仕方なくって感じかい? だとしても君は罪人だ。」
歯噛みする彼女にさらに畳みかける
「それに君が言っている学園の助けって第21項のことかい? 本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする、だか何だか。無駄だよ、そういうの。」
目を見開いて、驚きを隠せないでいる彼女は途切れ途切れで言葉を紡ぎだす。
「何で・・・?」
「一度、君をさらってフランスの連れていくだけで、学園は何も手出しができなくなる。
また、君は代表候補生。つまり国の代表だ。学園に入る前にサインした書類がたくさんあったはずだ。その中に偶然、君をどうとでもできる契約があった場合、君はこれに同意したとみなされる訳だから、学園は何もしてくれないだろうね。」
時折弑逆的な表情と嘲笑を織り交ぜて彼女の外堀を埋めていく。彼女は今必死に記憶の中からサインした書類を思い出そうとしているだろう。今更だが。
「それとも、一夏君と一緒に三年間解決策を見つけるかい?それもいいさ。子供が大企業相手に何ができるか見ものだしね。最も向うの方が何枚も上手だろうけど」
実際彼女にできることはあまりに少ない。学園の外に行けば、誰かが狙ってくる可能性がある。しかも襲われた時の頼みのISはよりによって、デュノア社製。強制的に停止させられる機構がある可能性がある。よって学園の外から出ることができなくなる。学園にいても表向きは男子として過ごさなくてはなたない。もし他の生徒や教師にばれれば、いったいどれほどの人が味方になるだろうか?特に日本人は集団の中でルールの外にいる者を徹底的に攻撃する。あらゆるものが彼女にとって敵意ある存在に見える。 三年間ずっと怯えながら暮らし、刻一刻と自由でいれられる時間が減っていくのだ。普通なら精神が持たない。立場においても、代表候補生の資格をはく奪されれば、彼女が学園にいる理由は消える。後ろ盾がなくなれば、学費すら払えなくなる。さらに彼女はスパイだ、誰がそんな不発弾のような存在を受け入れてくれるだろうか?まずいないだろう。
仮に女子だと公表して受けいられても、三年後には塀の中だ。
それを突きつけた時、つまり今の彼女は息を荒くし、悲惨な将来を考えてうめき声を出す。
「さあ、考えるんだ。あと三年は考える猶予があるぞ? いや、あとどれくらいかな?
チクタク、チクタクと時計は進むものだ。急がないと間に合わなくなるぞ」
腕時計をシャルロットの耳に当てて時計の針の音を聞かせる。今もなお、彼女の人生の猶予期間は減っていることを教える。時計の秒針が進むごとに彼女の未来のキャンパスに一滴ずつ、絶望という名の絵の具が染み込む。
「嫌ぁ!」
手錠を外そうともがいて、椅子がと倒れて彼女は地面に転がった。
それでも尚、逃げるかのように足をバタつかせて見苦しく手や足を動かす。
一通り、暴れ終わり彼女が瞳を絶望に染めて動かなくなった。
それを見て頃合いだな、と感じた。
口調を変えて優しく包み込むような声で俺は彼女に囁く。
「でも、助かる方法があるんだ。 特別に教えてあげるよ。」
涙で腫れた目で僕を見る。僕は指を鳴らしてモニターを部屋の中央に展開させた。
モニターに写りこむのはアルフレッドだ。
「こんにちは、シャルロット。私の名はアルフレッド。Rインダストリーで重役をしている者だ。よろしく。」
穏やかな表情でシャルロットに挨拶し、僕に彼女の拘束を解くよう言った。
僕はその言葉に従い、ユーリを読んで、彼女の手錠を外させた。
シャルロットは手首をさするも、逃げなかった。逃げても無駄だからだと理解せているからだ。
「すまなかった。私の部下たちが手荒な真似をして・・・」
彼女は何も言わずにモニターを食い入るように見る。
「おおっと、本題に入らなければな。単刀直入に言おう。会社を売るのだ、シャルロット。」
「何を言って・・」
間髪入れずにアルフレッドは自身の提案を口にする。
「それだけで全て解決する。君を束縛する会社はいなくなり、君は地位こそ失う可能性はあるものの、普通の少女としてこの学園に正当にいることができる。」
普通の少女。今の彼女にとっては甘い蜜のような魅力的な誘惑だろう。彼女のような人間を攻略するのは難しくない。自分を悲劇のヒロインと思っているようなら、それに見合ったストーリー用意してやればすぐに飛びつく。
「でも、それじゃ多くの人が仕事を無くす・・」
「それがどうした?」
彼女は驚愕と共に顔を見上げて画面の人間を視界に映す
「何の痛みもなく、利益など望むことは不可能だ。しかし、君には正当な権利がある。いままで辛かったろう? 苦しかったろう? 君のお母さんが死の瀬戸際にいて時、社長である父は何をしていた? デュノア社の人間の内、君を憐れんだものは? 君には会社に復讐する権利があると思わないかね?」
復讐、とシャルロットは呟く。彼女の家族の最期まで利用するアルフレッドに僕は少し背筋が冷えた。
「さあ、君の答えを聞こう。」
「ボクは・・・・」
壊れたブリキのおもちゃのようにカクカクとした動作で動き出す。
僕たちは答えを受け取った。
背中を丸めて廊下を歩く、向かいから来た女子達のグループが楽しそうに会話している。彼女たちが俺を見て、挨拶をする。俺も挨拶を返すが、彼女たちの顔を見て心に突き刺さるものがある。俺は友達を騙して、困っている女の子を利用した。シャルルは確かにスパイかもしれないが、確証があったわけでは無い。
彼女だって、あのように笑いたかっただろう。
自室の前に着くと、鈴が部屋から出て来た。彼女はこちらに気づくと、元気であふれた笑顔で一言言った。
「向き合ってあげてね。」
そう言葉を口にし、俺の肩を軽くたたいて去って行った。
アカネの事だろうか? と考え、自室の前に立つ。射撃場での出来事を思い出して、部屋に入るだけなのに緊張感を覚えた。
ノックして彼女の反応を伺う。
「どうぞ」
先刻と違う、いつもの声だった。俺は生唾を飲み込み部屋に入った。
「・・・よお」
なるべくフレンドリーに行こうと思ったが顔が引きつってうまくいかなかった。
「どうも」
顔を少し下に向けながら、彼女も答える。互いに直視せずに、交わされたやり取りに気まずさを覚えながらも、彼女と向き合う形になるように座る。
小さく深呼吸をして話す
「悪かったよ。 偉そうなこと言って・・・」
「はい?」
「最近、変に自信付けてさ、今の俺ならアカネの事も助けられると思って・・・
でも結局はまだまだだったよ。俺にそんな力もないし、資格もない」
あの時、アカネがボーデヴィッヒを撃とうとしたのを責めた、だが、俺はそれ以上に非道な事をしている。人の事をとやかく言える資格は無い。
そして、それをしないと言う選択肢だってあったのに選ぶことすらしなかった。
「・・・ごめん。」
たったそれしか言えなかった。
自分の語彙のなさに腹を立たせながら、俺は彼女を見る。
するとアカネはメガネを外して裸眼となった。
「弾、私がメガネを掛けている理由って話しましたか?」
唐突な話題に驚きながら、否定する。
「これは貰い物なんです。・・・・私は両親を自然災害で・・・ハリケーンで失いました。逃げ込んだシェルターが
負荷に耐え切れず崩壊して泥とがれきの中に埋もれたのです。」
過去の話。彼女の根幹ともいえる話を一人淡々と話す。
「そこから、私を救ってくれたのは州兵さん達でした。彼らは私を助けてくれました。
家にまで住ませてもらいました。 そこで私は育ったのです。」
ここまでなら、救われた話で終わっただろうが、そうはならなかった。
「その後、米軍の大規模な軍縮が始まり、彼らも放り出されました。でも彼らは恨んでいなかった。そういう時代だから、そう言って自分たちはせっせとRインダストリーのPMC部に入って行ったんです・・・・でも私にとって納得のいかなかったのはその後です。」
俺は彼女が手を握りしめてるのを見て感情を抑えているのを察する。
「彼らの代わりに入ったIS乗り達はどいつこいつも尊敬できるものではなかったのです。
彼らをこき下ろし、相手が男なら市民相手に平気で横柄な態度をとる。軍機にすら従わない。そして事件が起こった。 IS乗りが宿舎に機関砲を放ったのです。」
その話は聞いたことがあった。米国内で起きた軍施設内でISが宿舎を砲撃して問題になった話だ。テレビではIS乗りと一般兵との間での確執が問題と言われていた。
「これが彼らに変わった素晴らしい理想的軍隊の正体だったのです。軍隊が女で構成されれば暴力的でなくなるなんて偉そうなことをいった学者もいるそうですが、実際、そこに女だから男だからの問題は無いのに・・何故彼らの代わりがあいつ等なんですか?・・代わりなら、どうして高貴でいてくれない、どうして恥知らずな奴ばかりなんですか!」
彼女の理想だったのだろう。IS乗りに彼ら以上に素晴らしい人々であって欲しかったのだろう。彼女はIS乗りの軍人が嫌いなのだ。自分の理想の兵士でいてくれなかった彼女たちが憎いのだ。
「でも・・もう私に彼女たちを否定する権利なんてありません。私も引き金を引こうとした・・結局私も同類だったんです。」
自嘲して、何とも力のない笑顔を見せる。
「何が、彼らになりたい、だ。何にもなれはしないじゃないですか」
アカネの考え、そのすべてがわかった。現実と理想はしばし相反するが、彼女の理想はささやかなものだ。これで彼女のボーデヴィッヒに対する行動と最近の彼女の言動が理解できた。しかし、俺は彼女のいう事に納得していなかった。
一点だけ違う所があるからだ。
「違うよ、アカネ」
心に従い、俺は彼女に思いのままを話す。
「お前は撃たなかった。最後の最後で撃つのをやめたんだ。たとえ、無意識でもお前は
その場の怒りを収めて、今それを後悔してるじゃないか。 君は同類なんかじゃない。」
ここまで言って、鈴のセリフを思い出す。向き合え、それを理解して俺は一つの結論にたどり着いた。不意に耳に囁かれたようにソレは降ってきた。
「もう一度向き合おう。戦ってみれば、わかるさ。もうすぐツーマンセルのトーナメントがあるはずだ。 俺は非力だけど、お前の結論が見たいし助けたい、だから・・・・」
彼女に手を伸ばして、手を取ってくれるよう待つ。俺は非力だ、それでも俺は彼女を助けたい。アカネは口元に笑みを浮かべた。
「やっぱり親友って似るものですね。」
そう言って彼女の手が俺の手に触れた。
そして一枚のプリントを出した。それを見て鈴のいきな計らいに感謝した。
「貴方も確かめに行きますよね? 自分が何なのか」
「ああ」
「なら、行きましょう。 一緒に」
カーテンの隙間から夕日の陽光が出て、俺たちの間に差し込んだ。
朝のホームルームで織班先生がトーナメントについて話していたのを思い出す。もうすぐ行われるトーナメントに参加者はすぐにでも書類を提出するように、と。このトーナメントはツーマンセル、つまり二人一組となってトーナメント形式で試合を行う、企業や国に自分の実力を見せたりするまたとない機会だ。しかし、私は空虚な気持ちだった。なんの感情もわかない、興味すら失せていた。私達一年生には関係のない話と言っていいからだ。
ISをまともに動かせるとは言えないし、そもそも専用機だらけの今年では何をやっても無駄だ。勝てるわけなどない私には縁のない話だ。
一つため息を吐く。IS学園に入ったころの熱意や情熱はとうに消え失せた。このまま輝かしかった思い出として残るだけだと思うようになり、最近何もかもが無気力になったいた。
「どうしたの?清香」
私を呼ぶ声がした。現実に立ち返り、私は返答する。
「いや、別に・・・で、何の話だっけ?」
「ほら、静寐が何人が連れて部屋に来てッて話よ。」
鷹月 静寐、クラスでもしっかり者の彼女だ。一体何の話があるのだろう
払しょくできない疑問を持ちながら、彼女の部屋に入ると、鏡 ナギ 谷本 癒子 布仏 本音達、一組の生徒だけでなく二組や四組からも来ている様で10人くらいで所狭しと部屋の中にいた。
「皆来たようね。」
確認するように静寐が言うと見な頷き肯定する。
「じゃあ、話すわね・・・でも、その前に聞くけど、皆最近学園に不満を抱いていない?」
何名かが顔を強張らせたり、視線をずらしたりする。私も含めて図星のようだ。
「OK。じゃあ、本題に入るわ。 私達で今の状況を変えてみようと思わない?」
「どういうこと?」
癒子が尋ねると彼女は答える。
「私達一般の生徒における状況を、よ。週に一回程度のIS実習、中々借りることのできないIS、こんなのじゃ、結果を出すために努力しろって言われても不可能だわ・・・・でも、もっと根本的な問題があるのよ・・・・専用機持ちよ。」
皆が顔を見あい、お互いに自分がどんな顔をしているか見合った。
ほとんどが同じことを考えていたようふぁった。
「専用機持ちには勝てない、この常識にとらわれている限り、私たちは次に進めないわ。
そこで提案があるの。 今度のトーナメントで専用機相手に挑んでみない?」
ざわつき始める私達。専用機を倒す、成程と思う。もし倒せれば何か変わるかもしれない。
倒すことができれば、評価も夢も全てが手に入る黄金の道が切り開かれる。
「でも、私達には実力がないわ・・機体だって・・」
その通り、努力するための場所すら私達には少ないのだ。
「方法ならあるわ、Rインダストリー組よ。」
「弾君の所よね? 何かあるっていうの?」
ナギが上半身を前に出して静寐に近寄る。
「整備課の先輩に聞いたのよ。ISのシュミレーションがあるらしいの。弾君達はアリーナが使えない時はそれで訓練しているって話よ。」
シュミ―レーション、その単語は知っていた。現実に開発した国もあるが、この学園では配備されていない。理由こそわからないが。
「クラス代表戦を思い出して、皆。弾君はセシリア相手にあそこまで行ったのよ。専用機ではないところだって私達と一緒なのに。私たちがシュミレーションを受けることができれば・・・あるいは」
それは希望だった。私達の間に群がる不満という雲を吹き飛ばす一つの希望。
このままでは終われない、終わらせない・・・そんな意地を持った私達。することは決まった。
寮の一部屋で嬉々とする少女がいた。彼女の望み、打鉄弐式の組み立ての工程が終了し、
弐式は産声を上げようとしている。そのことで彼女は歓喜に満ちていた。
今まで彼女を覆っていた霧が晴れ、ようやく陽の目を見ることができる。
「ようやくだな。」
「うん・・・・・ 今度こそ自分で戦うの。もうヒーローは待たない。守られるのも、もうやめる。私がヒーローに・・・!」
彼女を見て、俺は憧れに近い物を感じた。彼女は切っ掛けはどうであれ、自分で道を切り開いた。そして、答えすら出している。
反対に自分はどうだろう。この学園に、その前から、彼らと共に来て何を見つけたのだろうか。今までは従っているだけで済んだが、今は違う。俺は一体何をすればいいのか、分からない。最後の命令は自分に従えだった。だが自分とは何なのか、疑問は尽きない。
「羨ましいな。」
聞こえないだろうと呟いた俺の一言は彼女に届いていたらしく、彼女は振り返った。
俺はそれを見て、独り言のように口を動かす。
「君は強いな、全ての感情を糧にして、ここまで来た。時折、君が眩しいほどに思える。
教えてくれ、どうすれば夢は手に入る?」
我ながら愚かしい質問だと思う。しかし、俺には永遠の謎のように思えた。ロイならば、見つからないピース、というだろう。
「わからない。」
簪は一言言った、そして言葉をつづけた。
「でも、私の夢を作ったのは、あなたなのは確か。それなら一つお願いがあるの。」
懐から一つの紙を取り出す。
「私と組んで、ユーリ。あなたに私の望みがどんなものだったか見極めてほしい。
そして・・・・」
一拍おいて彼女は深呼吸をして宣言した。
「あなたの道を見つけて。 私にそうしてくれたように・・今度は私がヒーローのなる番だから・・・」
交わされたのは小さな約束だった。共に戦え、いつだって俺は戦いで人と巡り合ってきた。
これは運命なのか、そんなことさえ頭によぎる。
俺は一つ礼をして彼女に言う。
「こちらからもお願いする、簪・・・それともヒーローに礼は要らなかっただろうか?」
下手だな、自嘲しながら俺は冗談を言う。
簪は微笑んで答えた。
「礼は要らない、貴方だから。」
第五格納庫にいたマイク達は休憩をしているところだった。整備課の生徒たちとマイク達は輪になって茶を飲んでくつろいでいた。一仕事終えた後の一服。これに優る安らぎは無い。彼らは仕事を終えた。打鉄弐式の完成という仕事を。倉持技研の機体だった、このISは今では打鉄とマーダー・オブ・クロウのパーツを多用して別物となっていた。装甲はハーフスキンという一部を走行で覆われた形となり本人の希望でHMDをヘッドギアに内蔵したモノを作成し、後は最終チェックのみとなった。そのことを全員で祝おうと話していると、二人の男女が来た。来たのは弾とアカネで、話があると言う。
聞こうとすると今度はユーリと簪が来て、次にツインテールの女子と言い争いながらヴィンセントが訪れた
「何でアンタもこっちに来てるのよ?」
「いや、僕の部屋こっちだし」
最後に10人ほどの女子と大場がやって来た。
「・・・非番で休んでいたかったなあ・・アタシの時間・・」
「先生お願いします。」
整備班のみだったはずの格納庫はあっという間に教師に生徒と入り混じる混沌としたん場となった。しかも、全員が全員別々に会話して格納庫内は騒然となる。
「うるせえ、お前ら何しに来た?!」
全員が答えた。
「勝つために!」
と叫ぶヴィンセントと鈴。
「もう一度確かめに」
アカネと弾が宣言する。
「革命よ!」
静寐が拳を挙げて連れて来た皆を鼓舞する。
「夢を見に」
ユーリと簪が答える。
古く小さな格納庫で少年と少女は集まった。
そして、それを支える大人たちもいた。舞台は整いつつあった。
展開が早い気がしますが、とりあえず原作キャラも本格的に介入させる予定です。
どうか、よろしくお願いします