IS to family   作:ハナのTV

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間話 2

アフリカ大陸。かつては列強の暴力の前に為すすべもなく蹂躙され、鉱物資源から奴隷という名の人的資源を吸い上げられてきた、この大陸の国々はISができてからというもの、

かつて彼らを蹂躙した者の末裔たちを脅かしている。この大陸の国々にはほとんどISがいないと言うのに何故か?それは皮肉なことに列強諸国が不要と言って切り捨てていった物、兵士 火器、戦車や戦闘機 そして大勢の技術者や識者たちがそろって、この大陸になだれ込んできたからだ。

そのせいで、この大陸の国々の生活や政治形態まで一新された。中にはGDPが三倍近く上昇した国さえある。今までISがあれば、世界の秩序を制御可能と思っていた欧米諸国はこの早すぎる成長に恐怖さえした。

ISは全世界で五百未満しかいない。その数の少なさで世界を維持できれば理想的だったかもしれない。しかし、現実はいつだって理想の反対を行く。恐ろしいほどの数に膨れ上がった通常兵器をISで抑えるという甘い考えは通用しないのだ。

Rインダストリーも、こういったアフリカの国々やイスラム圏、東欧のISをもたない小国に通常兵器とPMCオペレーターを商品にして桁違いの利益を貪っている。

そして今、ダイアモンド鉱山で有名なこのアフリカ某国政府の貴賓室で私は高官たちと話している。今起こった問題についてだ。

「アルフレッドさん、事態はあまりよろしくない方向へと向かいつつある。先日、お宅から購入したプレデターが飛行試験中に民兵組織を発見したのです。」

メガネを掛けたインテリ然とした彼は白黒の写真を見せる。

そこには旧式の装甲車から、軽トラックに重機関銃を載せた物、そして貧者の武器で武装した民兵の長い行列があった。

「彼らは我が国のダイアモンド鉱床に向かって進軍を続けているのです。我々としては一刻も早く、この無法者ども排除したいのですが・・・」

「わかっています。近々つくられるアフリカ諸国連合の成功のためにいたずらに軍を動かしたくないのでしょう?」

高官は深い息を吐いてメガネを付け直す。

「話が早くて助かります。この鉱床は国境付近にあるので、悪戯な軍事行動は避けたい。

・・・・そこで貴方のPMCに依頼したいのです。」

アフリカ諸国は今こそ一つになるべき、人種が入り混じる我らが平和に貢献することが人類の恒久的平和への道である。そのスローガンの元 続々と集まって来たアフリカ人たちの結束を実らせるために軍事行動を避けつつ、圧倒的に叩き潰す武力を行使する。そのために我々がいると言えるのだ。

「成程、話は承りますが・・・・それほどの部隊となると、とてもとても多額の資金が必要となりますな・・・人件費に弾薬と戦争は金がかかりますから」

「用意はしております。我が国のダイアモンド鉱床の一つの利益配分を6対4でいかがでしょうか?」

6対4、つまり主導権をこちらに譲るに等しい利益配分だ。

「大きく出ましたな。」

「アルフレッドさん、あなたが利益を第一にしている。ですが、我々は理想を第一としている。それに、どの道ダイアモンド鉱山はあなたのような大企業がいなければ経営できないものだ。

即刻お答えいただきたい。 引き受けていただけますか?」

頭の中で損得勘定をする。報告のあったIS学園での機体の損傷や使用弾薬の補給、それらにまつわる費用の数々を回収する必要があった私にとって魅力的な提案と言えた。

何も費用はIS学園に言っている彼らだけにのみ払われている訳でないのだから。

「わかりました。受けたまわりましょう。今後もわが社を御ひいきに」

互いに握手をして、この会談を無事成功させた私は携帯で電話を掛けた。

企業随一の暴力機構を呼び出すために

 

 

 

 

 

 

 

アバとナハンは仲の良い兄弟だ。数年前に民兵たちにさらわれる前から、少年兵として戦う今も仲良く生き残って来た。鉈を持った司令官の指示に従い鉱山へと進軍していく。

「兄ちゃん、俺達また人を殺すのか?」

「そうだろうな。 でも、逃げられはしないよ。」

悲しい現実、逃げられないという事実に兄弟は暗い表情を見せる

数年前にも脱走した子供がいたが、子供はつかまり、首に灯油を入れられたタイヤを付けられて燃やされたのを思い出す。結局、自分達は暴力の前ではこんなにも無力だという事を思い知って日々を生き残っている。

「兄ちゃん、神様は何で俺たちにこんなことをするんだろうな?」

「神様だからだろ・・もし人間にやさしい神様なら司令官のような人なんていないよ」

手元の古びたAK47とG3を見て、彼らは思った。こんなものを作る人もいるのだから、と

その時、車列の先頭が爆炎を上げた。何事かと思い咄嗟に草むらに隠れた。

「兄ちゃん!」「黙ってろ」

そして空を見上げれば、そこには彼らが想像もしなかった暴力があった。

8機の対地ヘリ、彼らは知りようもないが、スーパーハインドと呼ばれるフル武装された無骨なヘリは一斉にロケット弾と機関銃を車列に撃ちこんでいく。次々にあの恐ろしかッた大人たちが赤い血しぶきを上げて死んでいく。大人たちは小銃で対抗するが、この火力差には抗えず、毎秒ダース単位で殺されていく。軽装甲車が逃げようと後進しようとするが、途中で止まった。

そこには丸っこい装甲に覆われた ずんぐりむっくりな人型のガトリングを持った兵器が二体いた。その兵器は軽装甲車を両手で持ちあげて横転させ、ハッチを無理やりこじ開けて、中の司令官を引き出す。驚いたことに、茂みから同じものが続々と現れて三十機ほどになり、明らかに場馴れした歩兵達がそれに続く。

「パワードスーツだ!」

そう叫んだ司令官が、ミニガンの掃射を一身に受けて消えた。

そこから先は蹂躙ではなく、虐殺だった。ミニガンが唸り、多銃身のガトリングが回転することで得られた高いレートで発射される弾丸は民兵に襲い掛かり、四肢を吹き飛ばしていく。さらにPMC達のライフルが逃げようとする民兵を一人一人丁寧に撃ち殺していく。恐慌状態の民兵がAKをフルオートで射撃する。PMC達はパワードスーツを盾にしつつ、セミオートで単発で発射していく。正確な射撃に頭を撃ち抜かれて絶命していく民兵たち。スナイパーが狙撃し、ライフルマンが死にぞこないを銃床で殴り、パワードスーツがマーシャルアーツで殴り飛ばし、蹴散らしていく。あまりに踏んだ場数の数が違いすぎる。民間人相手に暴力を振って来た民兵とは違いすぎる。殺しのプロたちについに民兵組織は戦意を失って逃亡を開始した。

一人も生かして返す気のないハインドが旋回して思う存分にその火力を発揮し死体の山を築いていく。その破壊の跡をパワードスーツの連隊が足元の死に絶えの男たちを踏み潰していく。

時には逃げようともがく民兵に対し、ライフルで逃げようとする方向に撃ち、

「逃げてみろ!」と笑い声を上げて遊びだすものまでいた。

戦闘は一時間と掛からず、終了した。しかし、兄弟にとっては長すぎる一時間であり、そして目の前に一体のパワードスーツが立ち止まり、無機質なデザインのカメラでこちらを見ている。

ナハンもアバも銃を捨てて両手を上げた。彼らは祈るしかなかった。目の前のこの巨人がその気になれば、指先一つで自分たちの命を奪えるのだから。

すると、兵器のハッチが開いて中から人が出て来た。

彼はついて来いと現地の言葉で言って二人を連れだした。

神はいるかどうか、わからないが祈りは通じたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

アフリカ特有の大自然の中、PMC、いわゆる傭兵たちが住む基地にハインドやパワードスーツ「ファットマン」が帰還してきた。

その中で俺の姿を見て同僚のギャンブルが話しかけて来た。

「よお、メロウ。また人助けか?」

「ああ・・何か文句でも?」

ギャンブルが自前のM4を弄りながら言う。

「人助けも結構だが、パワードスーツを降りるのはやめろ、その内撃たれて知らないからな。あの中にいれば安全だってのに。」

「言い過ぎだ。ファットマンでも、RPGとかには耐えられないさ。ところで、この後いいか?」

いつものか? と聞いてきたギャンブルにうなずき、彼は一つ息を吐いて了承し、車を取りに行った。俺もギャンブルも元は米兵で共に戦った戦友だ。俺たちはイラン、イラクと戦ってきたが、三年前にお払い箱にされた。俺たちは勇敢なる兵士から失業者に転落しかけたが、この会社に入ってどうにか事なきを得た。

俺達二人は同じ会社で働き、今もこうして以心伝心の最高の相棒としてタッグを組んでいる。

「僕たちをどうするの?」 

背の高い少年が訊いてきたのに俺は答えた。

「助けるのさ」

 

 

 

 

 

 

小高い丘の上に大き目な教会がある。今は夕日が差し込む時間で、陽光に照らされた屋根の十字架とその下で遊ぶ子供たちとそれを見守るシスターたちの姿は平和的で、見る者を和ませる効果があった。

車をその前に止めると、子供たちが我先にと駆け寄って来た。

ギャンブルが出て、子供たちを抱え上げる。

「よお、元気してたか?」

「ギャンブル! また何か手品見せてよ!」

笑い声を上げてギャンブルは子供たちの頭を撫で、道中で買った板チョコを分ける。

それを眺めていた俺に黒人のシスターがジャスティが近づいてきた。

もう五十歳に近いと言うのに、その足取りは軽やかで若々しくも感じる。

「こんにちは。メロウ その子たちが?」

「ああ、ここで預かってくれるか?」

「それは構いません。ここでは子供を受け入れないなんてことはありませんから・・・

さあ、こっちへ」

二人の少年を別のシスターに預けて、俺とジャスティは礼拝堂に入った。

彼女は振り向いて俺に向かって真摯に言葉を語る。

「メロウ。いつも子供たちを助けてくれてありがとう。あなたのおかげで何人も救われたわ。」

「よしてくれ、俺は褒められるような人間じゃない。」

ジャステイは悲しそうな瞳をした。俺を哀れんでいるのだろうか。

「そんなあなたがどうして・・・兵士なのか、私には理解しかねます。あなたなら、もっとふさわしい場所があるでしょうに・・」

俺は頬を掻きながら、現状と過去を見て、持論を語る。

「ジャステイ、俺はどうしようもない人間だ。ISが出て兵士の任を解かれた後、俺を受け入れてくれる場所はなかった。兵隊崩れの男なんてIS大好きのアメリカ社会には要らないようでな・・・・でもって結局は人殺し稼業だ。」

全てISのせいだとは言えないが、俺のような人間は世界中であふれかえっている。国の為に戦ってきた男、家族の為に働いてきた奴。どいつもこいつも味わいつくしたガムのように捨てられていった。俺の仲間たちは再就職してしぶとく生き残ったが、中には自暴自棄になって暴れまわる奴だっていた。祖国では乱射事件という名の自国民によるテロが急増しているのはここ最近のホットな話題だ。先月は幼稚園に失職した男が半自動ライフルを持って、撃ちまくり

幼児が三十人。しかも全員が女子で、その将来を閉ざされた。

そんな事件を見て 自分はマシだなんて思うのだ。しかも、可哀想だとか、犯人に怒りを覚える等の感情すらわかない。俺はまぎれもない屑だ。

「俺がやっていることは結局偽善さ。自己満足にすぎない。」

人殺ししか能のない俺がISがどうとか、社会がどうとか言える資格ではないのは理解している。さんざん他人に理不尽を振りまいてきて、それが自分に返って来ただけだ。そんな俺が唯一できることは戦場で子供を連れ帰ってくることぐらいだ。

まさに偽善だ。痩せこけた良心を満足させて、自分は屑ではないと言い聞かせるための理由づくりに他ならない。

少しの間俺たちに沈黙が訪れた。ジャステイは胸元の十字架のネックレスを握り、言葉を説きかける

「メロウ。あなたがそう悲観することはありません・・・・実はこの教会にあなたが来る前に三人の男女が来たのです。彼らもまた罪人でしたが、貴方と同じように子供を救い、ここに連れて来たのです。」

三人の男女・・変わった連中もいたものだ。どんな面か見てみたいと思う。

「人殺しという稼業は私は心底嫌いですが、それでも あなた方のような良心を無くさない方もいるのだと私は信じております。私たちは皆が罪人、神はきっとお許しになるでしょう」

「原罪か・・・」

俺はそこにいくつ罪を重ねているだろうか? それを思い目を閉じて十字架に祈りをささげた。

 

 

礼拝堂を出た俺を待っていたギャンブルが何やら、落ち着かない様子でいる。

ギャンブルは俺を車に乗せると、一枚のカードと思わしき紙を見せる

「こいつは?」

「・・・・見てみろ」

受け取るとソレは写真だった。そこには信じられない人物が二人いた。

「おい! コイツは・・・?!」

「ああ、そうだ。最悪な二人が写っているだろ?」

写真に写っていたのは子供たちと笑う篠ノ之束と子供に抱き付かれて困った表情をするスレートが映っていた。

「冗談だろ? 世界最悪のテロリストが二人一緒に行動してるってのか?」

「生憎だが、今日はエイプリルフールでもない、事実だ。基地に戻って報告するぞ。」

「ああ」

アクセルをふかして基地へと急ぐ、大至急連絡しなくてはならない。

バックミラーに映る教会が小さくなっていった。

 

 

 

 

 

磨かれて、高級感あふれるデスクに座りながら、私は写真を見る。世界中で指名手配されている二人のテロリストが写っている写真だ。一人はISの生みの親、篠ノ之束。その自由奔放さは常軌を逸している。ただ気に食わないと言う理由で無人機をジャックし、米国と英国のISの研究所を同時に爆撃して壊滅させ、借りた無人機でカミカゼアタックと称して

最寄りの軍事施設に体当たりさせたりする愉快犯で、サイバーテロでは過去類を見ない悪辣さを誇る。そして世界中の国々が草根を分けてでも探している人物だ。彼女の頭にはISコアの製造法が詰まっていると誰もが信じているからだ。

「アルフレッド専務。この男は一体どのような・・・?」

「知らないのか。」

私は説明する。通称スレート。本名は不明。しかし、反アメリカの組織にとっては英雄とも言われている男だ。要人暗殺に武器売買に関わっている容疑が多数あり、デルタとSASの暗殺を三度にわたって迎撃した男。その時、どんな手品を使ったかそれすら分からない程の恐ろしい男だ。

「つまるところ、根っからのキリングマシーンという事だ・・・・全く頭が痛くなるな」

この写真が撮られた教会は基地から25km程、基地のレーダー範囲内でもあり、さらにここら一帯は我が社のPMCがたむろしている場所のはずだ。

にもかかわらず、見つけることができなかったとは・・・

「全く忙しくなるな。」

すぐさま、情報収集とデータの見直し等を伝え、秘書官を退出させる

書類をファイルにしまい、もう一つの書類に目を通す。ピースの計画の進行報告だ。

そこには四番目の機体の完成が記されていた。

名は「ストライクラプター」例の四人目の機体である。

それまでのグレイイーグル、ハヤブサ、マーダーオブクロウ の三機から得たデータを基に作られた機体。グレイイーグルのパワーユニット構造、ハヤブサの機動性、マーダーの運動性と凡庸性を意識したマルチロール機。例えるなら、グレイイーグルが攻撃機、ハヤブサが戦闘機、マーダーがステルス機、そして今回のストライクラプターのマルチロール機が開発された。バックパックと頭部を変えることで仕様を変えられるのはハヤブサの特徴でもあるが,それだけでない。最大の特徴は武装にある。いよいよピースも大詰めを迎えて来た。

篠ノ之束にピースの計画、IS学園といい、人生はかくも退屈する暇がない。だからこそ楽しみがいがあるというものだ。

 

 

 

 

 

 

教会の礼拝堂で掃除をしていると、一人の女性が入って来た。その女性は豪奢な金髪にウェーブさせて、落ち着いた赤い高級そうなスーツを着た、同性の目から見ても美麗な女性だった。だが、見るからに祈りをささげに来たり、懺悔をするような雰囲気ではないことに気づき、私は彼女に近づいて用件を聞いてみた。

「すいませんが、こちらにどういった用件で?」

「いい教会ね。清掃も行き届いているし、なにより子供たちも元気そうな顔で。見ていて微笑ましいわ」

彼女の紅い瞳が教会を一通り観察して感慨深そうに言った。

「はあ、それはどうも。」

「シスタージャステイ、一つ聞きたいことがあるのだけどいいかしら?」

「ええ、何かお困りなのですか?」

ホテルやレストランの場所を聞きに来たのだろうか? それともここに宿泊でもするのだろうか?と普段なら思うが、女性の恰好が恰好なのでソレは無かった。

女性は一枚の写真を取り出して見せる。

それは以前この教会に来た男の写真だったが、彼女の写真に写っているのは雰囲気が違うように見えた。目が窪み、どことなく荒んだ感じだった。

「この男。名はスレートというのだけれど・・ご存じなくて?」

「ああ、この方なら一か月ほど前に来ましたが・・」

瞬間、紅い瞳が鋭くなる。この瞳には見覚えがあった。ギャンブルやメロウのような戦場を生きる者の目だ。私は咄嗟に身構えてしまったが、女性は私を見て柔らかい笑みで言った。

「ごめんなさい、少しこの男には思い入れがあって・・・ところで彼は何か言ってなかったかしら?」

「さあ・・・何も言ってなかったと思いますが」

「そうですか、何か思い出したらこれにご連絡ください。お礼も致します」

名刺を手渡し、そう言い残して彼女は去って行った。

彼女が何者かはすぐに判明した。手元の名刺を見たからだ。

そこにはスコール・ミューゼルと名前とメールアドレスだけ書かれていた。

 

 




黒幕と とある男の社会の見方を書いてみました。
感想お待ちしております。
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