IS to family   作:ハナのTV

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訓練編です


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2話

 

契約書にサインして2日後、ロイ・バッカスに呼ばれてRインダストリー社の日本支社に来ていた。

 

40階以上はある大きなビルだった。玄関を通り、受付嬢にロイ・バッカスに呼ばれた旨を話しをすると、四階のオフィスへと案内された。エレベーターを昇り、何ら特別でもないドアが一枚だけ。

 

だけど、その先に宝があるような気すらして、俺は落胆などせず、期待で胸を膨らませてドアノブに手を伸ばした。

 

 

扉を開けると、そこには既に4人の人間がいた。

 

一人はロイ・バッカスなのは一目でわかったが、他の三人は知らなかった。三人とも自分と同じ年ぐらいだろうかと俺は思った。

 

二人は男でどちらも白人だった。片方は身長が自分と同じくらいだろうか? プラチナブロンドの髪をオールバックでまとめ、端正な顔に笑みを浮かべている。

 

もう一人の男は少し不機嫌そうな顔に見えた。身長がかなり高く、坊主頭で服の上からでも、かなり体が鍛えられているのが見てとれた。

 

最後の一人は女子で日本人に見えた。セミロングの髪で赤いメガネをかけていた。硬質な美人で俺好みと言えた。

 

「来てくれて、ありがとう弾君。」ロイが声をかけた。

「いえ、呼んでくれてありがとうございます。」

 

そう答えると後ろの三人の男女はこちらに視線を集めた。

 

「すいません、彼らは?」

 

俺はとりあえずロイに聞いてみた。

 

「君と同じだよ」とプラチナブロンドの髪をオールバックにしてスーツを着た男子が答え、懐から何かを取り出す。

 

ジグソーパズルの角のピースだった。

 

「ヴィンセント・ロックだ。ヴィンセントって呼んでくれ」

「弾だ。よろしく」

 

お互い、挨拶をして握手をした。

 

「ピースを持ってるて事は俺と同じよう学園に行くメンバーなのか?」

「ご名答だ。この角の所のピースを持っている者が計画の遂行者ってことだ。あの二人もそうさ。」

そういって残る二人に自己紹介を促した。

 

「堂上茜。アカネって呼んでください。よろしくお願いしますね。五弾田君」

 

タイトなジーンズとジャケットを羽織った、メガネを掛けたセミロングの黒髪の女子が笑顔で親しみやすい声で自己紹介する。凛とした顔がまた綺麗だ。

 

弾でいい、と言ったのに、彼女は五反田君と呼ぶので少し他人行儀に思えた。

 

「ユーリだ」

 

坊主頭で三人の中で一番背が高い男子が不愛想に自己紹介する。二人は答えて、ピースを弾に見せる。

 

自分と同じ角のピースだった。ヴィンセントの言った通り、彼らは三人は

 

自分と同類なのだと確信した。いわゆる、役者はすべて揃ったということだ。

 

咳払いが聞こえたので、そちらに振り向く。

 

「さて、これでメンバーがそろったので、簡単に説明をしよう。君たち4人にはIS学園でわが社の機体のテストや宣伝をしてもらうことになる。する事はいたってシンプル。自分たち以外のISと喧嘩して勝つ。それだけだ。もちろん、そのための訓練やデスクワークなどもしなくてはならないがね。そのための人材や機材は私たちが全力でサポートする……ここまでで質問は?」

 

そういわれ手を挙げた。

 

「さっきの説明だと、専用機って言うんでしたっけ?それが4つもあることになりますよね? そんなに学園に送って大丈夫なんですか?」

 

俺はすぐに疑問を口にした。ただでさえ数少ないISコアを4つも1つの企業が持つのが不自然に思えた。仮にあったとしても、送りすぎに思えてならないからだ。

 

「それについて、答えるとこうだ。買収と吸収の結果によって私たちは多くのISコアを手に入れたから,余裕があるんだ。またISの研究にあまり熱中してないからというのもある」

「前半はいいとして、後半の説明はどういうことです?」

 

Rインダストリー社の強引な方法での吸収や買収はニュースで聞いたことがあったが、研究費の少なさの下りが分からなかった。

 

「ISの研究というのはバカみたいな予算が必要で、コアを同時に複数研究しようとすると、これがさらに倍になる。しかも研究の成果といえばISが誕生してから10年たつというのに、未だコアの生産方法もわからない」

 

しかもだ、と続けた。

 

「せいぜいが、コアに意志があるかもしれない、程度だよ。あまりにお粗末な現状だ。武装やスラスターも既存の技術の応用で済んでしまい、さらにコアの数が少なすぎて需要が少ない。装備の利益もその開発費と比べれば蚊の涙ほど。ハイリスクノーリターン。金食い虫でしかないのさ」

 

ハアとため息をついてロイが愚痴る。

 

「こういう理由から、研究するのは1つだけにして、残りを別に使おうというわけさ。ちょうど、男性操縦者が三人と高い適正値を持つ女性を手に入れたのでね。操縦者のデータは高く売れるし、コストも控えめということでねえ」

 

のんびりと言っていたが、あくまで利益を求める姿勢は彼らが企業人であることを弾は再認識した。

 

「ところで、人材のサポートとの話ですが、弾の訓練は誰がサポートを?」

 

ロイに感心していると、ヴィンセントが質問した。

一つため息をついてロイは答えた。

 

「ヴィンセント……寝ぼけたことを言わないでくれ・・君たち三人がするんだ」

 

そういうとヴィンセントはおどけて「ワオ」と言った。

俺もつられ「ワオ」と言ってしまった。

 

 

 

 

 

 

契約書にサインして、Rインダストリー社の雇われとなって、3日となり、IS学園に入るまでの一か月と少しの期間をこの日本支社内で過ごすことになった。

 

この建物内で訓練を行い、来るべき日に備えるのと、メンバーとのコミュニケーションなどを目的としたためだ。

 

案内された部屋に左右に二段ベットが二つあるのを見て、彼らと寝食全てを共に過ごすことになるのは簡単に想像がついた。右のベットに私物らしきものがないことを確認して、そこに横になり思考にふけった。

 

――――これから先の事、契約書でも見たが徹底した訓練内容。ISシミュレーターから射撃に格闘、語学、数学などなど。、あるでハリウッド映画の主人公になったかのようだ。

 

これらすべてをこなせる自信などない、5日前の自分なら逃げ出していただろう。しかし、今の俺は違う。自分はダイアモンド原石であり、Rインダストリー社の重要な一部だ。

これまでの全ての評価を覆すために必要な行程なら、全てこなさないといけない。

 

それに、これ以外の道もなかったと思う。何のコネもない定食屋の息子など、せいぜいが実験材料だ。死んで標本として保存はされるかもしれないが、そこに俺を知るものはいないだろう。

 

だが、そんな未来はもう存在しない。Rインダストリー社の男性IS操縦者として輝くことができる可能性がある。俺の未来はここにある!―――――

 

一人、決意と自信を確固としたものにして、拳を強く握る。

目的は決まった。その時、彼ら三人の目的が何か が気になった。

今すぐにでも聞きたかったが、出会って間もない彼らに聞くのは少し戸惑ったので、

 

そのうち聞くことにして、普段より早めに寝ることにする。いい夢が見れるような気がした。

 

 

 

一通りの説明が終わり、弾が帰宅した後、私はヴィンセントと話していた。

 

双方、手にコーヒーカップを持ち、話し合っていた。

 

「need to knowでしたっけ?」

 

ヴィンセントがひとり呟くように言う。

 

「色々と彼に隠し事しすぎじゃないですか?」

「必要なことだ。今の彼は何の変哲もない一般の子供なんだ。君たちのように英才教育を受けてきたわけではない。機密を教えるわけにいかないのは君もわかるだろう。」

 

そう正論を言う私の表情は決して明るいものではない。罪悪感から自嘲するような笑いをする。

 

「僕たちだって子供ですけどね、僕は後に彼が真実を知ったとき、彼がどうするかが出るか心配ですよ。」

「時々君が計画にこだわりすぎているように見えるよ。君たちがこれにこだわるのはよくわかってるつもりだ。だが、本来なら君たちのような子供が」

 

その先のセリフを言う前にヴィンセントはコーヒーを飲みほしてカップを置き、ロイを真正面から見据える。

 

「こだわりますとも……十年前に現れたフザケた発明品のせいで世界中が捨てたモノがある、未知とロマンに化学、そんな夢いっぱいのモノだ。時に戦争の代わりにもなったことだってある。でもソレは台無しにされたんだ、ISのせいで。飽きられたオモチャのように捨てられたんだ、そんな世界なんて認められるわけないじゃないですか。それに子供だから何です? 何がイケない?」

 

15の子供が達観したように語る。

 

「今じゃ、世界中がかわいい娘に死に物狂いの勉強させて、あの学園に入れるのを至上の喜びに感じる……学園の中で友達同士で本物の銃で撃ち合っていることを知りながらね。 それでいて紛争地の母親が子供を少年兵にして喜ぶのを非難する。バカしゃないですか。そんな世の中だから、僕らが必要になる。自然なことじゃないですか」

 

私は黙って聞いていた。ヴィンセントは自分たちの正当性を主張しているのに過ぎないが、こんな社会を作った自分たち大人を責めていると感じずにはいられず何も言えなくなったからだ。

 

「頼む、ロイ。僕たちをチームから外してくれるな。これしか方法がないんだ。頼む。」

 

先ほどまで崩さなかった笑顔がヴィンセントの表情から消えて、懇願する。まだ、20にもなってないヴィンセントが自身の夢も追わず大人たちの計画に若さを費やす様は痛ましいものだった。

 

本来彼の年頃ならハイスクールで自分の夢を語って遊び学ぶのが普通だ。

 

だが、今のヴィンセントが学園に行くのは、夢を見つけたり、叶えるためではない、目的を果たすための仕事や過程としてだ。

 

夢と目的、一見すると同じに見えるが彼の場合は違う。夢はどこまでも続くが、目的は違う。果してしまえばその後は続かない。つまり、彼は子供でありながら自分の未来を見ていないのだ。目的達成の後、彼に残るものが一つでもあるだろうか?大人の汚い部分を見続けて、変性した彼を見て思う。これ程痛ましいことがあろうか。

 

「頼むよ、ロイ」

 

すがるような声で言ってヴィンセントは部屋から出た。

その後、私はヴィンセントの表情を思い起こしていた。彼は大抵笑って過ごしている。

 

先ほどのような表情を見せるのはごく僅かの人間のみだろう。その笑顔が企みや憎悪、弱みにつながる全てを隠す仮面か、これまでの理不尽から己を守るために作り上げた鎧の一種なのかは判断がつかない。どちらにせよ、子供がするようなことではない。

 

これら全てが自分たちへの咎だ。

 

かつてISに立ち向かうことをしなかった自分たちのツケを彼らのような子供に押し付け、それを清算するために彼らを使う・・・これが今の自分たちだ。

 

度し難いほどに厚顔な大人、それがお前だ、ロイ・バッカス

 

ひたすらに自分を恥じた。同時にそんな権利すらないようにも感じた。

窓から見える摩天楼はいつまでも明るかった。

 

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