IS to family   作:ハナのTV

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福音の第一戦目開始です。
長くなりますが、よろしくお願いします


22

臨海学校二日目、午前の間に砂浜に鎮座している打鉄を前にして教師たちと専用機持ち達が教鞭を振るう。

快晴で日差しが強い中、ほとんどの生徒にとって初の飛行訓練を行う。

トーナメントの少し前に歩行訓練と考えれば、飛行訓練は少し早いともいえるが使える機体は少ない。致し方ないとしか言えない。

そんな中でレジスタンス達のメンバーは頭一つ抜きんでている。

授業と学園の流れに乗るだけで満足しなかった彼女たちは鍛錬を重ね、よく習熟した乗り手となりつつある。元々、素質はあるのだから当然といえば当然だろう。

ナギとティナが終えて休憩用の仮テントで飲み物を飲みつつ、話しかけて来た。

「大場先生、どうでした? 私達の飛び方」

「よくできているぞ。トーナメント時より安定した飛び方だ、加減速も中々だしな。

この調子なら、どこかの企業からお誘いでも来るんじゃないか?」

「褒めすぎですよ」

ティナが照れくさそうに頭を掻いてニコニコとする。

「ホントの話さ。君等の上達速度は大したものさ・・・・専用機だって夢じゃないかもな」

「そんな簡単に手に入るわけないですよ。ご褒美のアメじゃないんですから、」

談笑して、砂浜の生徒を見渡す。癒子にさやか と二人が乗り込んで飛行する。

二人の飛行は実に綺麗だが、特徴がある。癒子は重武装を好んで使うためか、癖でややエネルギーを多めに使っている。スラスターから見える噴射炎の大きさで判別できるのだ、

何の装備もしていない今の機体でそれをするのは少しもったいない。さやかは 基本に忠実だ。教科書の図の通りに姿勢をコントロールしている。教える立場の人間としてなら完璧だが、選手としてな、多少遊びがあってもいい。

順調に技術を獲得し、結果も出している彼女たちを見て今アタシが思うのは彼女らに何らかの報酬というか、見返りがあれば、と思うのだ。

それがあれば、もっと上昇していくに違いない。

「何かあればな・・」

一人、椅子に座りミネラルウオーターに口を付けたときだ。テントの中に置いた超小型の野戦レーダーが何かを捉えた。距離にして1.5kmと近く、ここまで気づかなかったことに驚きつつも、飛び上がって駆けだす。

「授業中止! 下がれ!」

打鉄を起動し、強装弾が入った大口径のバトルライフルDMR9を呼び出し、探知した物体が来る方向に構える。

「大場先生!」

山田先生がラファールを纏い、突撃銃を片手に隣りへと上がってきた。

「何か来ます。警戒を!」

すると海面に落雷のような現象が現れ出した。スパークが鳴り、エネルギーを大気中に放出して、その物体が明らかになった。物体はいまだ世界中で成功していない光学迷彩を纏っていたニンジン型のシャトルのようなもので一瞬現実ではなくふざけた夢の一種だと思った。その人を嘗め腐ったようなデザインのシャトルに向かって外部音声で呼びかける。

此方からの発砲は避けて、とりあえずのコミュニケーションをとるのが近代の軍隊の在り方だ。

「こちらはIS学園の教員大場つかさだ。誰かは存じ上げないが、貴機はこちらの訓練場に侵入している。目的と所属等をお聞かせ願いたい。こちらに攻撃の意志は無い。」

返答はすぐには帰ってこない。私と山田先生は人差し指をトリガーガードから、トリガーへと移し、射撃準備に入る。だが、頭の中では交戦に入った場合、我々が不利だという事は明白に思えた。光学迷彩などの次世代の技術を実用化していることから、アタシ達以上の装備を持っている可能性が高い。いわば、宇宙人とのファーストコンタクトのようなものだ。得体の知れない高い技術を持った不明機。戦慄するには十分な相手だ。

ノイズが少し混じった通信が入る。

「大場先生、撃たないでください。そのシャトルは敵ではありません」

聞こえてきたのは織班先生の声だ。訳が分からないので、聞き返す。

「どういうことです?」

「そのシャトルには・・・」

「束さんがいるのだ~ってね」

シャトルから外部音声が入り、この場にはいささか能天気すぎる声が入る。

束という単語に私と山田先生は顔を見合わせて、互いにどんな顔をしているか見合った。

こんなものを持った束なんて名前の人間は一つしか思いつかない。

シャトルがゆっくりと動き、浜辺に着く。その扉が開いて出てきたのはタイトスカートにYシャツの上に白衣を着て、頭にウサギの耳を模した飾りを付けた女性、篠ノ之束 その人が出て来た。その後から無精ひげを生やした、少し疲れた印象の男が出て来た。

男は砂漠迷彩の野戦服を着ており、足にホルスター等を付けていた。

あまりに異色すぎる二人の後ろから、またもう一人出て来た。不安げな表情で目を閉じている生徒と同じくらいの年に見える少女だ。髪の毛が真っ白で儚げな印象だ。アルビノか何かのようだ。

それらを見て警戒を保ちつつ、砂浜に降り立った。レジスタンスメンバーが駆け寄り、博士たちを遠巻きから見つめる。

「ちょっと、そこの打鉄の人、聞いてもいいかな?」

この場にいる私に束博士が訊いてきた。

「何か?」

「箒ちゃん知らない?」

一年一組の篠ノ之箒の事だろうか、そういえば、彼女は博士の妹だったと思いつつ、山田先生に所在を言うように伝える。

山田先生は伝えるべきか悩んだが、決心して教えた。

「篠ノ之さんなら、そこにいますけど・・」

束博士が目を向けると、生徒たちはぞろぞろと篠ノ之箒から離れてその姿が露わになる。

ISスーツをきて真っ直ぐ博士を見る箒の目には何の曇りも迷いもなかった。

アタシはそれを見て、彼女が呼んだのだろうかと予測した。その予測は間違ってはいなかったことがすぐに証明された。

「久しぶりだね~。箒ちゃん 大きくなったねえ」

「・・・はあ、どうも」

素っ気ない返事をする箒に博士は歩み寄っていき、実の妹を見つめる。

「・・・それより、持ってきたくれたのでしょうか?」

冷たく言う妹の声に、一瞬博士の目つきが変わった気がした。まるで舌打ちでもしそうな顔に見えた。例えるなら、汚いものを偶然見つけて不愉快になったと言ったところか。

しかし、もはや確認することもできず、博士はヘラヘラと無邪気そうな笑みで話す。

「もちろんだよ、箒ちゃんの専用機はちゃんと作ってあげたよ。 束さん偉いでしょ?」

博士はクルクルと妹の周りをまわってそんな信じられないセリフを言い出した。

「は?」

隣りにいた清香が呟いた。そして、その双眸は厳しいものになった。レジスタンスだけでなく周りの生徒もざわついていた。目の前で言われた言葉から察するに箒は姉に専用機をねだったものだと推測される。そして、そのことがレジスタンスの面々に明確な怒りを呼んだ。これが代表候補生なら納得できた。候補生たちに必要とされる努力は並大抵ではないし、実力を国家に認められてやってきているのだから、その権利は当然と言える。

では、弾のような例はどうだろうか? これには確かに批判は存在する。

だが、認めている人間もいる。彼は訓練機で候補生の駆る専用機を倒している実績があり、

その他の試合でも確かな実力を見せつけている。また、元から企業所属だったという事もあり、とりあえず納得できるだけの物はある。

しかし、今回はまずい。納得できるだけの要素がまるでない。箒はトーナメントで勝ち進んだとはいえ、トーナメントではお世辞にもいい試合をしたという印象は無い。

そして入手方法が姉のコネだ。この場にいる生徒皆が納得のいかない顔をするのは当たり前だ。

そして、博士の手から一つの機体が出て来た。まぎれもなくISで、赤く、日本刀に近い形状をした武装が背中にラックされていた。

「これが箒ちゃんの専用機、紅椿だよ! 世界で唯一の第四世代機だよ。」

第四世代。今の第三世代を実験機にするなら、第四世代は、それら実験兵器の完成形と言える世代だ。例えるなら、セシリアのブルーテイアーズのようなビットの遠隔操作の兵器のように、欠点がある新型を実戦投入に耐えうるレベルにまで引き上げたといったところか。

専用機持ちの面々も驚愕し、絶句している。

「何を見ている?」

箒が周囲の生徒に向けて言う。彼女は紅椿を纏い、その感触を確かめている。

そんな妹の様子を見て博士が一つため息を吐きながら、言った。

「ハイハイ、見世物じゃないよ~。不平等って言うけど有史以来人が平等だったことは無いよ~」

「同感だ。お姉ちゃんに頼めばいいだけの人間もいるんだからな。」

そう言ったのは博士と共に来た男だった。意地悪そうに笑って箒の様子を見ている。

その言葉に反応した博士が軽く笑った。

「何だ、お前は?」

箒が怒りを露わにする。自分の事を揶揄した男に向かって睨みつけ、ISの手で指さした。

「思ったことを言っただけさ。 そう怒るなよ、箒ちゃん。」

博士が言うのと同じイントネーションで名前を言って煽る。彼にとっても箒は好ましい者ではないらしいのは見て取れた。皮肉っぽい笑みを浮かべて箒を見る。

「何なのだ? お前は名を言え! それ以上私を愚弄するなら・・」

「俺か・・俺はスレートだ。知らないか?」

突然現れた名前、男は自らをスレートと呼んだ。それは危険な名前だった。アフリカや、中東で殺しまわった白人殺しの男の名前。デルタやSASの襲撃を撃退した奇跡の男

都市伝説とも言われているテロリストの名前をこの男は口にした。

まさか・・・と頭で否定しようとする。質の悪い冗談の一種だと。

だが、その名を聞いた時、ある集団が行動をとっていたのが見えた。インダストリ組だ。

ヴィンセントが端末を操作してその画面を見つめている。彼は一通り見て端末をしまう。

すると、アタシや、山田先生、同じインダストリ組の携帯が鳴り、一通のメールが届いた。

内容は一言。 「ヤツは本物だ。」だった。

送られて来た詳細なデータと顔写真を見て、アタシの脳髄はフル回転して行動をとった。

皆も同じで、一斉に銃器を構えた。アタシは89式小銃を構え、他も銃器を構えて警戒する。

すると、見えないハンマーで殴られた感触が手に伝わり、次に鼓膜に乾いた発砲音が三発聞こえた。89式小銃が砂浜に転がり、他にも、アカネのm14やユーリのAKs74Uなどが転がっていた。

「一応言っておくが、別にテロをしに来たわけじゃない。ちょっくらお願いに来ただけだ・・・後ろの坊主も銃を下ろせ、次は無いぞ」

スレートは陽炎がでているグロックを片手に言った。何の構えもしていない状態から瞬時に早打ち。そして三人の銃器のみを撃つと言う曲芸を見せて こちらの戦闘意欲を失わせ、

自らの無害さを乱暴に表明する。この男がスレートと言われれば納得だ。恐ろしい男だ

。彼の後ろで構えていたヴィンセントがガバメントの銃口を下げた。

その様子を見て、博士が言った。

「さあ、お仕事の話でもしよっか。そろそろ情報がくるころだし」

束が意味深な事を言うと、アナウンスが流れた。

「教員、専用機持ちは直ちに集合! 一般生徒は旅館で待機しろ!」

「ね?」

博士の妖艶な笑みが目に焼き付いた。彼女らは一体何しに来たと言うのだろう。

足で熱砂ともいえる砂浜を踏みしめ、アタシ達は急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

旅館の宴会用の部屋をまるまる使った臨時の司令本部に案内された僕たちに織班先生は任務とやらを言い渡してきた。

その任務の内容とは暴走した軍用IS 銀の福音の撃墜だった。二日前に所属不明機によって襲撃された銀の福音は突如として暴走を開始し、太平洋に飛び、日本へと接近中とのこと、なんともタイミングが良いことで、僕たち、IS学園の臨海学校の期日とかぶり、一番近く、ISを保持してる数が多いとのことで要請を受けたとのことだ。

「とういうことで、我々にこのISの撃破または上陸阻止の任務が渡された。各代表候補生は・・」

「待ってください。また、生徒にやらせるのですか?」

大場先生が足音を強く鳴らして歩み寄り問い詰める。

「・・・これは委員会からの任務です。大場先生ご理解を。」

「なら、なぜ私達教師でやらない? 何のための教師だ? 海を見張る案山子になるためにやって来た腰抜けか?」

「・・・・自衛隊だからですか?  そんなに戦いたいのですか?」

「そうじゃない!」

大場先生が織班先生の胸ぐらをつかんだ。あまりの行動に皆がざわついた。

「年端もいかない子供に行かせるのか? アリーナとは違う、本物の戦場だぞ。

専用機持ってりゃ、無事に戦えるとでも?!」

大場先生の剣幕に織班先生は動じている様子に見えない。

ただ、睨み返しているだけだ。

「待ってくれ。大場先生。」

一夏が大場先生に待ったをかけた。

「俺達がそんなに頼りないという事ですか。 俺は、俺たちにはISがある。IS以外ではISは止められないのは先生だって知ってるでしょう?だったら・・」

大場先生が振り返って怒鳴った。

「黙れ、クソガキ! 粋がるんじゃねえ!」

「黙りませんよ。俺達がやらないでどうするんですか! 俺たちが 俺が皆を守って見せます!」

それに続いてセシリアや、シャルロット、ラウラに箒と続いて、義勇軍の大合唱が始まり、

遂には候補生独自の権力まで出されて、収拾がつかなくなった。大場先生の訴えむなしく任務を行うこととなった。

「彼らを止められるものはいませんよ、大場先生。 彼らに任せましょう」

織班先生の胸ぐらから手を離して大場先生は去っていった。それを追うように山田先生が続いた。

命知らずと言うべきか、正義のヒーローと言うべきか 馬鹿と言うべきか と彼らを見ながら思った。彼らにこそ言いたい。そんなに戦いたいのか、と

 

こうして任務は専用機持ちの生徒主体で行われることとなった。一夏達が顔を強張らせて緊張させている中、詳細なスペックを要求しているセシリア達を尻目に僕は手を上げた。

「なんだ、ヴィンセント」

「すいませんが、少しトイレに。」

そう言ってその場を離れて、行くふりをしながら、端末で連絡を付ける。3回コールしたのちに目的の人物が出て来た。

「久しぶりだな、ヴィンセント。何か問題かね?」

アルフレッドがいつもの好々爺のような声をだして訊く。

「お久しぶりです。アルフレッドさん、問題です。お聞き願いますか?」

「詳しく話したまえ。」

僕はデータを送り、作戦の詳細等を伝えて、彼の反応を伺う。僕たちは一応企業の所属だ

上司に連絡、相談するのは当たり前だ。老眼鏡を付けて端末の情報を凝視しているアルフレッドはタッチパネルで画面を操作するごとに眉間に皺を寄せた。

そして読み終わったのか、端末を閉じて老眼鏡を外した。そしてモニター内の老人は結論を述べた。

「単刀直入に言おう。ヴィンセント。作戦への参加を拒め。」

「・・・・理由を聞いても。」

予想は出来た答えだったが、僕は訊いた。

「損得勘定だよ、ヴィンセント。明らかにデータが全て公表されていない軍用機の相手など、血気盛んな連中に任せればいい。参加して、貴重な人材と機体に傷がつくのは耐え難いしな。」

「それでは、ここにいる者たちに被害が出るのでは?」

アルフレッドは薄く笑い、頬杖をついて諭すような口調で言う。

「何か問題でも? 我々プランの目的を考えてもみたまえ。ISの価値が下がれば下がるほど、我々には利がある。我々は黙ってそれを見てるだけでいい。我々に無駄な犠牲も出ないし、連中がへまをやらかせば、それだけ利益になるのだ。これがベストというものだよ。」

言いたいことはわかる。頭では理解できるのだ。プランの目的上、連中の価値は今の打ちできるだけ下がってもらった方がいい。この作戦に参加して無駄な犠牲が出してまで銀の福音を倒すよりはコストは安いし、確実だ。

だが、僕は納得できないでいた。承服できずに言葉にならない声を出す。それを見たアルフレッドが一つ息を漏らして語る。

「ヴィンセント。教えただろう。企業にとって必要なのは利益だ。正義だ、何だは軍人だの政治家に任せておけばよいのだ。・・・・この紙切れをいかに多く所有するか、それが私たちの戦いだ。それにプランが失敗すれば、君たちの望みも消え失せる。それを承知で参加すると言うのかね?」

懐から取り出した100ドル札を一枚見せながら、アルフレッドは言う。

「世のなか、人の為や国の為、正義の為に戦う者もいる。私はそれを否定する気はない。

だが、私にとって正しい戦いの目的とは金のためだよ。万国共通で誰もが認める価値の為に戦うことこそが至上の正義というものだ。ちょうど核戦争が万人にとって悪であるように、金は万人にとっての正義なのだ。それを踏まえた上で言おう。君たちは私の所属だ。私の正義の元に、命令に従ってもらいたいな、ヴィンセント。」

僕は頭の中で思考する。絡まった糸のようにまとまりがない状態で。

僕はどうすればいいか、いつもなら従って終わりのはずだ。それが正しく、いつも利益を生むのだから。僕も所詮は子供なのだ、大人たちに従うのが正しいはずだ。それをわかっているはずなのに、心は従わない。

前まで絶対の価値を持っていたはずの紙きれが今の僕には無価値にも見えた。

その時、脳裏に浮かんだのはツインテールのアイツの言葉だった。

――――アンタだって自分に正直じゃない

成程、正直にか。僕はその言葉に納得しつつ、彼女に感謝した。

狙うべきは確実な利益か、大博打か。僕の回答は決まった。

そして僕は口を開いた。

 

 

 

一般生徒と一緒に戻った俺は途中、別の教師に見つかってもうすぐ専用機持ちになるという事で、司令室へと行くように言われて向かう事にした。

その道中で午前中に突然現れた篠ノ之束と言う存在を思考する。あれこそが大場先生の言っていた今回の台風なのだろうか。しかし、その後に続いたあのアナウンスを思い出す。

その時、博士は意味深にこの事態を予見していたような口ぶりだった。

他人の手の上で踊らされているような感覚で不愉快極まりないが、今回は間違いなくあの博士が何かしたと見ていい。司令室と書かれた張り紙のある部屋へと入ると、一夏がまず驚いて見せた。

「弾!? どうしてここに? お前は専用機持ってなかったんじゃ・・」

「この臨海学校中に受け取るんだよ。だから俺も呼ばれたのさ。で、何の騒ぎなのか説明してくれるか?」

そう言うと、ユーリが関係データの入った端末を開き詳細を見せる。

任務内容は暴走した軍用機を破壊あるいは機能停止させるとのことで、搭乗者がまだその中にいるとのことだ。

スペック表を見てみると、流石は軍用機だ、デチューンされた打鉄とは比較にならない。

広範囲を攻撃する粒子兵器などを満載した機動と火力の両立を見事にやってのけている。

この相手を俺たちがやるのだと言う。

「なあ、本当にコレの相手を俺たちがするのか?」

「何か、問題でもあるのか?」

そう訊いてきたのはラウラだった。冷たい目でこちらを睨みつける。しかし、不思議なことに凄みも何も感じない。これはどうしたことだろう。

答えようとした時に、この場にいなかった男ヴィンセントが入って来た。彼はひしゃげた端末を片手に織班先生に向かって明瞭に宣言した。

「織班先生、申し訳ないが、僕たちRインダストリーはこの作戦への参加を拒否する。」

「・・・何?」

この場にいる誰もが驚きを隠さずに動揺した。俺も含めて皆目を見開いてプラチナブロンドの少年に視線を集めた。

「どういうことだ?」

「言った通りです。先ほど、わが社の上司と相談をした結果、わが社が保有する財産である機体とそのパイロットである人材の損失または損傷を防ぐために拒否します。」

事務的な口調で淡々と告げられた社の命令は今のIS学園の教師たちにとって信じられない出来事だった。戦力が大幅に減るからだ。

「この場の指揮官は私だ。そんな事許されるとでも・・・?」

織班先生がどすを効かせてきたが、ヴィンセントはいつも浮かべている微笑みを全く崩すことなく自身の権限を伝える。

「勘違いなさらぬよう、僕たちは貴方の私兵ではない。僕たちはあくまで企業の配架でしかない。」

「待てよ! そんな命令に従ってお前たちは何をする気だよ?」

一夏が怒りの声を上げてヴィンセントに抗議した。彼にとって守ると言う行為から逃げるインダストリーの方針は許せるものでなかった。

「・・・・・自分からは何もしないさ。相手がこっちに来たら応戦する程度だよ。」

「そんな事許されるわけないだろ。力があるのに、人を守らないなんてどうかしてる!」

空気が張りつめていくのを肌で感じる。明らかに場の雰囲気が険悪になっていく。

「それは織班先生に言ったらどうだい? ブリュンヒルデが出ればきっと僕らは必要ないさ。」

「そう言う話をしてるんじゃねえ!自分たちが怖いのを隠すのに千冬姉を使うんじゃねえ!」

馬鹿にしたような笑みで返すヴィンセントに激高する一夏、両者のにらみ合いが続くかと思われた時、思わぬ客人が入って来た。

「おっ 白熱してるね~! 見なよ、スー君 殴り合いになるかもだよ!」

「だから言ったんだ。入りたくないって」

入って来たのはスレートに束だった。客人である彼女は織班先生に近寄っていった。

「何しに来た束」

「アドバイスだよ。ちーちゃん、束さんの話をちょっと聞いてくれない?」

そう言って、一気に独自の作戦を言い出した。その作戦はこうだ。教員たちで海域封鎖して安全な海域を確保し、一撃必殺の白式を紅椿に載せて特攻するというものだ。第四世代の紅椿に装着されている新型の推進器ともいえる展開装甲による加速とスピードを生かして白式で一気に福音に急接近し、一撃必殺の零落白夜で一気に決めるというものだ。

シンプルで明快な作戦。必要最小限の人材で作戦を遂行しようというものだ。

「これならいっくんと箒ちゃんだけでいいし、ね?」

織班先生は無言で考え、結論を言った。

「よし、採用しよう。織班と篠ノ之は準備しろ。」

それを見てスレートは鼻で小さく笑った。馬鹿馬鹿しい者でも見たかのような顔だった。

つまらない喜劇を見て、呆れを通り越して笑いが出たと言ったところか。

「・・・・茶番だな」

そう一人言った言葉を耳にして作戦会議は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

インダストリ組のみを集めた部屋でユーリとアカネがヴィンセントに詰め寄っていた。

彼らは社の命令に納得がいかなかったのだ。

「・・・・本気で社命にしたがうのですか?ヴィンセント。」

「仕方ないさ。命令だ。」

アカネがメガネを投げ捨てて、ヴィンセントの頬を殴る。

転がって壁にぶつかり、口の端から出た血を吐き出してヴィンセントは表情を変えない。

「痛いじゃないか?」

殴ったことに抗議して、ヨロリと立ち上がるヴィンセントに向かってアカネは声を大にして話す。

「私たちだけ逃げろと? ふざけないでもらいますか? 今更、命が惜しくてプランに参加したわけじゃない! それに、あの作戦がしくじれば被害を受けるのはここの旅館の皆なんですよ?それをわかって・・・」

「同感だな。俺たちだけが出撃しないのは納得しかねる。」

ユーリも加勢し、ヴィンセントに対して二人が詰め寄った。もてる戦力を全て投入することこそが、作戦の常識だ。俺もそれに同意して二人の意見に加わった。

「ヴィンセント、社命が大事なのはわかるが、このままじゃ、マズイはずだ。

たった二機。しかも組んで一日も立たないコンビに任せるのはお前だって反対するはずだ。だったら・・」

「なら、話を聞いてくれ。僕だって同じさ。」

ヴィンセントが畳に腰を下ろし、高らかに宣言した

「従うしかないのは事実だ。なら、社命そのものを変えてしまえばいい」

「・・・・どういう意味だ?」

ユーリがヴィンセントの言葉に問いを投げかける。彼の言わんとすることが俺たちには理解できないでいた。

「つまりだ、社が、アルフレッドが僕たちに福音の撃破を命じるようにすればいいんだ。

要はアルフレッドの気を変える特大のジャックポットを狙いに行くしかない。」

「命令に逆らうのはNGか」

「一番手っ取り早いが、僕たちの機体には社からの信号で稼働を制限することができる。それにお役目ごめんにされたらたまらない。だから、あの場ではNoと言うしかなかったんだ。言えなくて悪かった。だが、今からなら話は別だ。お客様を呼んだ。」

その言葉を言った時、部屋に入って来た男女が二人。この場にいる全員が身構えた。なぜなら、お客様とは最悪のテロリスト二人組の束とスレートだったからだ。

彼の言うジャックポッドとは彼らの事を指していたのだ。

アルフレッドという上司を説得させるためのキーとして確かにこれ以上の人間はいないだろう。彼女の技術一つでも手に入れば、何とかなるかもしれない。

「呼ばれてきちゃったよ。プラチナ君。束さん・・・いや私達と取引したいんだって?」

「お初にお目にかかる。ヴィンセント・ロックです。お見知りおきを。」

ヴィンセントが頭を下げた礼をして、二人が席に着いた。俺やアカネはそれをヴィンセントの周りを囲むようにして見守る。

全てはヴィンセントの舌にかかっている。

ここで下手をやらかせば、一触即発の事態だって考えうる。相手は気分次第で国だって転覆させる天災とアウトローの英雄スレートの二人なのだから。

その証拠にスレートは目を束ではなく俺たちに向けて行動を見張っている。

「で? 何がしたいの? 言っとくけど下手な真似をしないでねえ。スー君と私が捻りつぶしちゃうから」

「肝に銘じますとも。さて、お二人にお願いがある。単刀直入に言いましょう。僕たちに協力して頂きたい。」

「理由を聞こうかプラチナ君」

束博士は顔こそ笑顔だが、目は鋭さを増し、ヴィンセントの表情を吟味する。その後ろではスレートが手を握ったり閉じたりを繰り返していつでも、銃を抜けるようにしている。

それを見たユーリが警戒し、手を後ろに組んだ。袖の内側に仕舞った仕込みナイフに気づかれないようにするためだ。

「僕たちは今、命令にがんじがらめになって出撃できないでいる。でも、僕たちにとってこれは非常に従いにくく、どうにかしてこの命令を撤回させたいのです。そこで、貴方がたに協力していただきたい。」

「どんな協力かな?」

目をギラリと輝かせた束を見て、ヴィンセントはニコリと微笑んで余裕を演出した。

「実はたった一つなんですよ。僕の上司と会話して頂きたい」

ヴィンセントの言った協力は新技術を求めるわけでもなければ、束博士の手腕を作戦内に取り入れることでもなかった。会話してほしい。ただ、それだけだった。

あまりにも訳の分からない協力に束博士は首を傾げた。

「おかしなこと言うなぁ 君も。 たしかに安い協力だろうけど、束さんの貴重な時間を使ってまでする事とは思えないなぁ、お土産でもあれば別だけど・・?」

見返りを寄越せと博士は言う。当然と言えば、当然だ。しかし、こちらに切れるカードはあるだろうか?相手は天災。使えるカードはあまりに少ない。どれも効果を発揮するとは思えないからだ。そして話している者以外の緊張感が高まる。会話している二人は常に笑顔だが、その内は誰にもわからない。いつ起こるか分からない決裂の瞬間を警戒し、皆が自分の距離をとる。アカネが、少し距離をとって腕をだらんと下げる。俺もそれに呼応して、彼女のすぐ後ろに立つ。そしてヴィンセントが人差し指を立てて、お土産を言う。

「ありますとも、一つ 高品質なナノマシンの素材。あなた方の中で白い髪の毛をしている女の子。彼女には良質なナノマシンが必要では?」

「・・・・ふーん、知っているんだ。確かにあったほうがいいかもね、でも無くても私にはどうとでもなる。」

次に中指が上がり、二つ目となる。

「二つ。 資金の援助。ハッキングで資金繰りをするのは貴女の貴重な時間の浪費では?」

「ま、それも確かに。でもなぁ」

反応は微妙と言ったところだ。彼女に通用するカードは無いのだろうか?

薬指が上がり、三つ目となった。

ラストのカードは驚きの物だった。

 

 

「三つ目。 ISの軍事的価値の喪失」

 

 

 

ユーリとアカネが目をヴィンセントに向けた。告げられたのは俺にはよくわからない物だったが、二人にとっては重要らしい。その条件を聞いて束博士は目を子供のようにぱちくりとさせた。本当に驚いたと言って様な無邪気そうな驚き方だ。

すると、彼女に変化が訪れた、肩を震わせて声を我慢しようとしている。その様子に首をかしげていると突然狂ったように笑い出した。薬物に漬かった狂人のようにゲラゲラと大声で笑い、その笑いは止まらないように見えた。あの天災が机を叩いて、爆笑をして笑い転げているのだ。

「そうか、君もか。君たちもか。 ああ、可笑しい。成程、君たちも同じだったんだね、私と・・・・いいよ、二つ目は要らないけど、了承したよ!話すだけならねぇ・・・ 君たちは愉快だなあ、ホントに!」

ウサギは笑い、この場の交渉は上手く言った。だが、この後、アルフレッドが承認するか否かはわからない。俺は一つの疑問を持ってこの場が収まったのに汗をぬぐった。

「これで俺たちは出撃できるのか?」

「まだ、わからない・・・・・・祈るだけさ。」

天に祈るように空を見上げてるヴィンセントは目を伏せている。

賽は投げられた。後は神次第だ。

 

 

 

 

 

 

 

一夏と箒の作戦の為に海域封鎖の為にアタシと山田先生は共に飛んでいた。表向きはそうだが、実際は違う。山田先生がラファールで、アタシが打鉄だが、装備は通常とは比べようにならない物になっている。

持ってきた兵装のほとんどを装着し、武装の山となった打鉄とラファール。

その外見は頑強なものだ。軍用のヘッドギアを装備し、普段むき出しの胴体にアーマーを装着し、ショルダーミサイルポッドにECMグレネード。脚部をターボカスタムと呼ばれるイタリアの改造機のマネをした大出力の物に変更した戦争用のカスタムへと仕上げた。

私達のすることは一つだ。偶然の遭遇を装って福音を撃墜もしくは撃退することだ。

現状で戦力はアタシと山田先生の二人。やれることはやるつもりだ。

「山田先生、すいません。こんなことを頼んでしまって・・・」

アタシは山田先生にせめてもの謝罪をする。彼女は周りの先生に無理を言ってまでついて来てくれたのだ。

「いいんです、大場先生。私が望んだことです・・・・もう嫌なんです。司令室の中で騒ぐだけの自分が・・・生徒たちばかり傷ついて無傷な自分が・・・だから、せめてこれぐらいはしないと・・・・・・戦争なんて大人だけで十分です」

「気負いすぎないでください。貴方のお気持ち伝わりましたから・・・・行きましょう!」

「ハイ!」

スラスターを吹かして、予想進路へと向かう。織班たちの発信まで時間はまだある。

その時間内に全てにカタを付ける。

案山子になるなど、アタシには耐えられない。アタシは自衛隊で教師。盾になることこそ、アタシの存在意義だ。それが山田先生にも伝わってくれただけでも感謝だ。

彼女は指をかすかにふるわせながらも、来てくれたのだ。

その勇気に応えなくては・・

「目標確認! 識別コードX102577 銀の福音です!」

「見つけた!戦闘用意!」

火器の全セイフティを解除し、ミサイルポッドのロックを定める。すると不可解なことに、ミサイルポッドが違う場所、海中の何かをロックオンした。一番近い敵機をロックオンしたのだ。

「何?!」

ロックした対象が海面に出て来た。水しぶきを上げて派手にその姿をさらけ出した。

機体名インフィニティキャット。米軍のラファールの改造機が三機も目の前に現れたのだ。

しかも、この三機は銃器をこちらに向けて発砲しだした。曳光弾が飛んできて、頬を霞んでいく。回避行動をとりながら、状況を確認する。

「大場先生、キャットの中に生体反応確認! 間違いありません、キャットは暴走しています!」

「そんな情報、無かったはずだぞ!」

キャットが前面に出て、銀の福音のしんがりを務めるかのように動き、福音がコース通りに飛んでいく。追撃しようにもキャットが邪魔をして追うことができない。

道を塞ぐかのようにアタシ達の前に立ちはだかり、進路を妨害する。

「大場先生!」

「ああ、押しとおる!」

ポッドのミサイルを放ち、爆炎が空に広がった。思わぬ敵機との遭遇、不可解なキャットの暴走。全ての歯車が狂いだした。いや、もしかしたら最初から狂っていて気付かなかっただけかもしれない。

アタシはトリガーを引いて、硝煙の中に飛び込んだ。

 




この後戦闘になったり、会話パートになったりと忙しくなりますが
頑張って書いていきます。
また、予定が詰まり、更新遅れます。
申し訳ありません
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