IS to family   作:ハナのTV

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とりあえず、暇ができたので、ほんの少し投稿します


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ほんの15分前まで、俺は順調だった。

目標まで、残り2kmというところで、俺は自らが駆る打鉄のセンサーに反応する期待をとらえた。海岸線沿いを飛んでいた俺にとって、この遭遇は最初、おかしく思えたが、教師の一人の機体の打鉄ということを確認して、海域封鎖の担当の一人がコチラを不審に思ってコンタクトを取りに来たのかと予想した。周りに聞かれないようにプライベートチャンネルを開き、会話を試みた。

しかし、返答は突然の火砲による襲撃だった。

「何をするんだ?! 俺はIS学園の・・・」

機体を翻して教師と向き合う、すると、そこには異様な姿があった。打鉄の人の部分が水銀のような液体金属に覆われて、かろうじてヒト型を保っているが、それは形が崩れてグロテスクになった泥人形のような、嫌悪感しか浮かばないおぞましいものだった。

誰がどう見ても、普通ではない。

教師の打鉄は手に持ったアサルトライフルで、三点バーストでリズムよく弾丸が打ち出される。

海面すれすれの機体を右に滑らせて、これらの弾丸を回避していく、水しぶきが勢いよく上がる中、軽機関銃を呼び出して、トリガーを引き絞り、先ほどまで、視界にあった打鉄に向けてフルオートで連射するが、すぐに手ごたえがないことに気付く。

動物的な勘で気づき、機関銃のストックで後方からの打鉄が振り下ろすブレードをいなした。ストックの角の部分がへこみ、相手も、少し、ぐらりと揺れ動いたが、すぐさま、長い脚でけりつけてくる。一回目を頭部に、二回目を腹部へと攻撃され、痛みに呻きながらも、俺は後方へと後退しつつ、アンダーバレルの擲弾筒で、打鉄を撃って、爆炎が広がる中を機体の光度を上昇させて、頭上に徹甲弾の雨をベルトマガジン一つ分の降らせる。確かな命中した感触を感じつつも、センサーを駆使して爆炎の中の打鉄を探す。

どこから来るか、予想しつつ、打ち切った機関銃をしまって、戦斧を取り出して、感覚を研ぎ澄ませる。

すると、煙の中から、あらわれる物体がセンサーで感じ取り、それに向かって瞬時加速で飛びついた。振りぬいた戦斧が正確に、飛び出てきた打鉄を叩き切ったかのように思われた。

しかし、切ったのは打鉄の肩の盾だった。浮遊のアンロックユニット故にこびりついているシールドエネルギーをセンサーで感じ取ってしまい、俺はまんまと、そのデコイにはまってしまったのだ。

かつて、セシリアとの戦いに使った俺の戦法とほとんど変わらない手品に引っかかったことを悔やむより先に大きくスキのできた俺に打鉄のブレードが襲い掛かる。

背中を切り付けられ、シールドエネルギーが削り取られる。

「畜生・・・!」

振り向きざまに打鉄の顔に当たる部分を殴りつけ、スラスターによる加速を乗せたはいっキックで、ブレードを蹴飛ばす。宙に浮いたブレードに意識が向かった打鉄はスキができて、攻撃には絶好の機会であった。ヒート化させた戦斧を両手で構えて、その胴体部分を叩く。液体金属があたりに飛び散り、中に見えた、ISスーツの教師に向かって、刃を押し当てた。暴走しているとはいえ、ISには搭乗者を守る絶対防御がある。これを故意に発動させることで、相手のエネルギーをゼロにして、短期決戦をかけるのが俺の最善の策だったからだ。今惜しいのは時間だ。液体金属の装甲に阻まれつつも、ISスーツに刃を当てることができた。

これで、戦いは有利に向かう、そう思った俺の耳に声が響いた。

いや、それは声とは言えなかった、動物の鳴き声のような、体の芯から震え上がるような、死の淵に立った人間の悲鳴だった。そして、その悲鳴を出しているのは目の前の教師だ。

「え・・・・」

刃をどかして、後退する。相手は自己修復をしているせいか、すぐには向かってこなかった。普段の俺なら、ここで、さらに追撃を加えただろう。だが、今の俺にはできなかった。

悲鳴を上げた中の教師のことが頭にこびりつく。搭乗者を守る絶対防御が発動していない、たったそれだけのはずだ。しかし、それは大きな問題だった。

つまり、相手を倒すということは、殺すということになるからだ。

怖い、恐ろしい。 その思いが俺を支配した。顔に汗が流れ、動機が激しくなる。

今まで、ラウラの暴走のときすら感じなかった恐怖が俺を襲った。

相手が動き出し、凶刃を突き立てようと、急接近してくる。

とっさに反応して、盾で受け止めて、蹴って距離を取り、蹴られた向うは先ほどのライフルで射撃を再開しだす。相手は防衛本能に従うまま、正確に乱射してくる、

それは、競技などで見る射撃ではない、戦闘の恐ろしさを具現化した、頭部などの急所を狙う明確な殺意ある攻撃だった。

恐怖と思考に頭が回ってしまった俺に前段を回避する余裕はなく、次々と被弾していく。

戦斧を構えて、相手と俺は並走する。

しかし、その手は震えている。かつてない経験におれは完全に震えていた。

殺さなければ、殺される。それを本能で悟っていた。

しかし、それを実行に移すのは容易ではなかった。

今まで、IS学園の箱庭の中で、幾度となく、戦ってきた。そこに今のような恐怖を抱かな方のは、俺の甘い考え故だったのだと気づかされた。絶対防御があれば安全、とよく言っていたクラスメイトを内心バカにしていたこともあったが、俺も同じだったのだ!暴走したラウラのときですら、感じなかった恐怖。俺は今までの戦闘をゲーム何かかと勘違いしていただけに過ぎなかったのだ。俺はなんて馬鹿なんだ。こんな簡単なことを忘れて、一人、達観した大人のような振る舞いをしていたが、現実はこうだ。俺は今まで、本物の戦場に立ったことなどなかったのだと、思い知らされている。

 

押し寄せる思考の中、スラスターに偶然当たったことで俺は現実へと引き戻された。

運悪く、エネルギーが誘爆し、まだ余裕のあったはずのシールドが大幅に削られる。

「しまった!」

黒煙を上げながらも、片方のスラスターで、陸のほうへと逃げながら、軽機関銃をコールし、再装填する。震える手で、いつもより、うまくいかなかった。

重心が過熱しているのに、気づいて、海面に銃身を押し当てて、冷却し、構える。

後退している、俺に対し、相手は弾丸を打ち切ったライフルを投げ捨てて、小型のコンバットナイフを持って、突進してくる。

回避行動すらみせない、直線的な突撃。死の危機に瀕した旧日本軍の万歳突撃のように、遮蔽物も何もない、空間を飛んで、接近してくる。

軽機の照準に相手を完ぺきにとらえる。あとは右手の人差指に力を込めるだけで終わるはずなのに、トリガーにかけた指にためらいが生じる。

撃つか、撃たないか・・・死ぬか、生きるか、

撃てば、俺は生き残る。建て前的にも、正当防衛で非難されることは少ないだろう。

しかし、殺すという言葉は、あまりに重い。

たった一つしかない命を奪うのはどんな理由にせよ、あってはならないのだと、良心が俺の行動にブレーキをかけてくる。そして殺した後、俺が俺でいる自信もない。日常や倫理から踏み外すという行為を俺がしていいのか・・・?

目の前を見る、打鉄がすぐそこまで来ている。あと、三秒もしないうちに俺をとらえるだろう。

とらえられたら、最後機動力のない今の俺では切り刻まれて嬲られるだけなのは想像に難くない。

それでも、迷いが消えない。俺はスローモーションの世界の中、脳裏に浮かんできたイメージが視界に映るような、そんな錯覚が起こる。いわゆる、走馬灯だろうか。

オールバックの御曹司、いつも鉄仮面の男、中学の悪友、専用機に対抗しようと結成された彼女たち。そして、メガネを掛けたやさしい彼女。

彼女の一言が耳にささやかれた。彼女がその場にいるかのようなリアルさで。

「一緒に歩けと言ったからには、よろしくお願いしますね?」

あの時の言葉が鼓膜を刺激した。

もしかしたら、それは悪魔のささやきだったかもしれない。俺を生かして、そのざまをみたがる醜悪な悪魔の誘いだったかもしれない。俺はそのとき、生きたい、と願った。

俺は指に力を入れた。超至近距離で発射されていく大口径弾の嵐が完ぺきに打鉄をとらえた。穿たれていく、打鉄、液体金属と、装甲が散って金属のかけらが宙を舞い、その次に、真っ赤な液体が後を追うようにはじけ飛ぶ。

俺は叫び、叫びつづけて、引き金から指を離さなかった。すべてが終わるその時まで、フルオートの絹を引き裂くような音がやむときまで、俺は叫び続けた。

すべて撃ち切って、周りを見渡す。何もなくなっていた。ただ、海面に赤いインクの染みができていた。

俺はそこで、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしてらっしゃいますの?」

セントリーガンポッドを除いていると、後ろから声をかけられた。甲高い声からセシリアだとすぐにわかった。

「申し訳ありませんが、今忙しいので、後にしてもらえませんか?」

「相変わらず、口がよろしくありませんのね」

少し早足で近づいてきたセシリアは私のすぐ目の前に立った。すると、彼女はセンサーだけを起動して周りをスキャンし、すぐにしまった。

「何を?」

「あなたがたのお話は聞きました。命令を無視しても出撃する用意があるとか・・」

「それが何か?」

万が一に備えて、手を後ろに回して、ひそかに、護身用のM9を手に握る。

この距離なら、私でも、展開される前に懐に入り込める。

すると、セシリアは機体のデータを取り出して、こちらに見せてきた。

パッケージを交換したようで、強襲用高機動パッケージ「ストライク・ガンナー」とよばれるモデルに変わっていた。

「私のブルーティアーズなら、福音に追随が可能ですし、狙撃も当然。 私もお仲間に入れてくださらない?」

話せば、真っ向から否定されると思っていた彼女から、まさかの提案だった。正直に言うと予想外だ。

「理由を聞いても?」

「私はあなたのような人ははっきり言って嫌いですわ。 射撃の名手ということをメガネを掛けることで隠し、一夏さんを侮辱するような貴方は私が今まで会ってきた人の中で、最悪の部類です。 しかし、一夏さんが戦っている中、自分だけここにいるのには耐えられませんわ。だからです。」

「想い人のためってやつですか・・」

私は彼女の動機に少々、呆れつつも、羨ましく思った。先ほどのヴィンセントに届いた通信、弾からのものだった言葉を聞いて、私もすぐにでも、彼のもとへと行きたかった。

だが、それを隣のユーリがいさめた。

彼は私が私情で動くことを良しとしなかった。彼の判断は当然のものだし、納得のいくものだ。しかし、本心は違う。彼の身に何かあったらと思うと、胸が痛む。

彼のもとへと飛べない、自分を憎みつつ、ただ、無事を祈ることしかできないでいるのだ。

その点、すぐに行動に移せる目の前の彼女が少し羨ましかった。

私でも、嫉妬はするのか、と思いつつも、彼女にこたえる。どのみち、戦力は一つでも多いほうがいい。この際、連携等の文句は気にしていられないのだ。

 

「わかりました。ただし、自己責任でお願いしますね」

「相変わらず、一言余計ですのね」

フン、と鼻を鳴らして見せる。

そう言ってセシリアは去って行った、その背中を眺めて私は一言、つぶやいた、

「可愛すぎなんですよ、アナタは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人海を眺めているボクには今、やれることはなかった。出された命令には従わなくてはならなかったからだ。しかし、ここで、思わぬ提案が出た。送り主はセシリアからで、内容は無断出撃してでも、一夏を助けに行かないかというものだった。

「やっぱり、皆同じ気持ちなんだ」

セシリアの気持ちを汲み取って、彼女のもとへと行こうとした、その時だった。

「シャルロット・デュノアか?」

男の声で僕を呼ぶものがいた。振り返ると、そこにいたのはあのスレートだった。

いきなり、束博士とやってきた世界最悪のテロリストが僕の名を呼んだのだ。

何の理由があって僕を呼んだのか、まるで理由がわからないまま、彼は近づいてきた。

警戒心をあらわにはせず、あくまで理性的に話す。

「僕に何か用でしょうか?」

「・・・・きれいな目だ。アメジストのような、美しい瞳だ。」

「何を言って・・・?」

彼の言いたいことがまるで分らない。しかも、彼の眼は僕を見ているようで、別なものを見ているような、そんな遠い瞳に思えた。

彼は本当に僕に何か用があるのだろうか?

「用がないなら、ボク行きますね。」

なんとなく、危険ではないかと思い、その場を立ち去ろうとする。すると、スレートの口から、ある単語が出てきた。

「昔の    にそっくりだ。よく似ている。」

それはこの場において、僕以外、誰も知らないはずの名前だったはずだった。

それをこの男は知っている。その予想外な事態に僕は振り返ってもう一度この男を見た。

彼はボクを通して 見ているのだと、気づいた。

「どうして・・・・お母さんの名前を・・・?」

「いままで、すまなかった。 俺は約束を果たしに来た。」

「約束って・・?」

心臓が飛び上るように鼓動が早くなるのを手で押さえてボクは聞いた。

「コイツを渡しに来たんだ」

それは小さな古いUSBメモリーだった。ボクはセシリアとのメールも忘れて、彼の話に耳を傾むけていた。

そして、メモリを表示させた。

 

 

 

 

 

「ひどい話だよな? メロウ」

「何がだよ?」

トレーラの助手席に座った相棒に話しかけて、俺は愚痴をこぼす。

「ほんの2週間前にウサギとスレートのテロコンビを見つけて、特別報酬でも来るかと思えば、今度は日本で運送屋だぞ。」

メロウがバックミラーで後ろのコンテナを一瞥して答える。

「会社員のつらいところだな。まあ、これが終われば、しばらくは休暇でももらえるさ。

早いところ、コイツを運んでしまおう。」

今回の俺たちの仕事は簡単なものだ。いつものマンハントや要人護衛、教官役とは違って、

指定された場所に特殊ISを運ぶだけだ。銃火とびかう職場でないだけありがたいが、

あっちへ、こっちへと飛ばされて、俺たちはいい加減につかれていた。

「嫌な仕事だよ。」

「全くな。 ところで、サニーは元気にしているか?」

仕事の愚痴ばかりも嫌気がさしたのか、メロウが話題を変えてきた。

「元気だよ・・・・早く会いたいもんだ。」

前に会ったのは二か月前、それ以降はTV電話でしか話していないのを思い出して、一人寂寥にひたる。

「彼女も寂しがっているだろうさ・・・なあ、ギャンブル。俺が言うのもなんだが、この仕事やめたほうがいいんじゃないか?」

いつものメロウのアドバイスが来たことに苦笑しつつ、俺は答える。

「また、それかよ。 このIS万歳のご時世、ロクな学歴のない元陸軍なんて誰が雇うってんだよ?」

「それはわかるが、いつ死ぬかわからない仕事だ・・・・それに、足が洗える程度の汚れの内に済ませたほうがいいんじゃないか?」

メロウの神妙な顔つきを横目でとらえつつ、おれは天を仰ぐ。

これ以外に稼ぐ手段がない俺にとって、その進言はありがたくもあるが、ありがたくないものだ。

自分でも、いつまでも血で汚れた手でサリーを養って言い訳はないと思っている。しかし、現実上、そううまくはいかないのだ。俺にこれ以外の才はないのだ。

それに、散々汚してきた以上もう遅い話だった。

汚れても・・・汚れなくては彼女と暮らせないのだ。

「今更・・・無理な話さ。メロウ」

「ギャンブル・・・」

その時だった、ふと海のほうへと視線を移すと、何やら小さな影が見えた。それはヒト型でよく見ると、黒煙を上げているようにすら見える。

「何だ?」

目を凝らしてみると、それはだんだんとコチラに近づいてきている。そして、その物体が目算で

400m程の距離になると、それのシルエットからそれが何なのかはっきりした。

「ISだ!」

コチラにふらつきながら近づいてくるのをメロウも確認し、トレーラのブレーキを思いっきり踏んで、止める。ふらふらと飛んできたISが目の前を通過し、無様に不時着した。

アスファルトを削って、地面をえぐり、ゴロゴロと転がってようやくそれは止まった。

「なんで、こんなところに?」

「連絡のあった奴か?」

トレーラから、用心のため、M4カスタムを取り出して、ゆっくりと近づく。

IS相手に何の役に立つか、わからない銃をもってその機体を覗き見ると、

気絶しているのか、意識のない赤毛の少年がそこにいた。

渡された資料にあった男だ。

「様子は?

少年に近づいたメロウが脈の有無などを調べているのを訊く。

「大丈夫だ。生きている。」

そういうと、ISが起き上がり、俺たちに立ちはだかった。

俺たちはとっさにM4を構えて、警戒を厳にした。

もっとも、この状態で戦闘すれば、死ぬのは確実に俺たちのほうなのは明白だ。

「くそ! マジかよ!?」

「搭乗者の意識なしで動いてるのか?」

ISがセンサーを動かしているのか、俺たちにレーザー光のようなものをあててきた。

スキャニングだろうか?

すると、次の瞬間には機体は少年を離して鎮座した。

訳のわからない俺たちを置いて、ISは勝手に止まったのだ。

「・・・・ほんと、すごい物だな。

「ああ、全くだ。」

このISはただ単に搭乗者を運んできただけだったのだろうか?搭乗者の意思のないまま動いていたところを見ると、まるで意思のある機械に思えた。

「化け物め」

少年を担ぎながら、俺は敬意と畏怖を込めてISに言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼんやりとした意識の中、目を開けると、二人の男が話しているのが視界に入った。

コチラに気付いてない等で、何やら仕事の愚痴のようなことを英語で話している。

周りを見渡すと 何やら、コンテナのようなもの中らしい。

二人の会話に意識を向けず、ふとその奥を見ると一つのISが鎮座していた。

資料でみたストライクイーグルと同じ形をしていた。

それを見て、唐突にフラッシュバックが起きる。俺が意識を失う直前の光景がよみがえり、

寝ていたのが、椅子だったのが転げ落ちてしまった。

「よお、目覚めたか」

屈強な兵隊というイメージな二人の内の茶髪のほうが、話しかけてきた。

「俺がわかるか、五反田 弾。」

意識の確認をしてきた男の問いにああ、と短く答えて首を縦に振る。

「意識ははっきりしているな。メロウだ、こっちはギャンブル。君への荷物を届けに来たんだが・・・・大丈夫か? 顔色悪いぞ」

怪訝な顔をして、俺を立たせて背中を叩く。

「まあ、激しい戦闘の後じゃ、しょうがないよな? 一服するか?」

ギャンブルという名の金髪の男が煙草を一本ポケットから取り出して、手渡してくるのをメロウが叩き落とす。メロウがギャンブルをにらんで勧めるな、と陰に言う。

肩をすぼめて、おどけて見せるギャンブルが、じっと俺を見始めた。俺は視線をそらして、自分の思考が悟られないように徹した。

しばらく、ギャンブルが物思いにふけるような顔をして、合点がいったのか、ふざけた調子で話しかけた。

「・・・・お前、さては初体験を済ませたのか?」

「こんな時に何を・・・?」

「女とのじゃない・・・殺しのさ、初体験のことだよ」

図星だった。撃って殺してしまった彼女の姿を思い出して、口元を抑える。胃の中のものが食道を通じて上ってきた。吐き出すのをかろうじて抑えて、肩で息をする。

「なるほどね、その様子じゃ・・望んで殺したってわけじゃなさそうだ。」

「誰が・・・好き好んで・・!」

壁を殴りつけて、自分の中に渦巻く、怒りを吐き出す。

「殺すつもりなんてなかったさ! 誰だって、こんなこと望むわけないだろ!目の前で・・・・人が飛び散ったんだぞ! 潰れたトマトみたいになっちゃってさ・・・・

しかも・・・・!」

目の前の男は何ら動じる様子を見せず、煙草を吸いながら、観察している。

「しかも、だ! 自分が生きたいってだけで、殺しちまったんだぞ!

そんな・・・理由で俺は人の人生を終わらして・・・」

「正当な理由だよ」

ひょうひょうとした様子でギャンブルは答えた。至極当然という風に。

「どこが・・!?」

「じゃあ、他に何ができた? 確かに、死ぬ勇気とか、殺さない覚悟なんていうやつだっているだろうさ。でも、そんなのは自己満足だ。そのあとで、殺さなかったソイツがもっと大勢の人間を殺すことだってある・・・だから、自分が生き残るためにも後腐れが起きないように・・・バン!だ。」

手で拳銃の形を作って撃つ動作を見せる。

「そんなの後付でしかないじゃないか!?」

ヒトの生き死にに軽々しく冗談めいていうギャンブルの襟をつかんで食って掛かる。

人殺しという汚名を何とも思わない彼に怒りを感じたからだ。その反面、自分がやったことも思い出してしまい、割り切れない思いが蓄積する。

「それ以外にできることがあるか? 俺たちにできることなんて、頭から切り離していくしかないんだよ・・・・」

正論だった。やってしまった以上、もう取り返しはつかない。時間はさかのぼることはできないし、死者をよみがえらせる方法もないのだから。

だが、過去の問題を割り切ったとして、今後は? 未来という問題もある。

「割り切ったって・・・こんな汚れた手で・・こんな俺が生きてていいのかよ?

確かに、今まで、酷いことだってしてきたさ、親友を裏切ってある女の子を利用したことだってある・・・でもコイツは重過ぎる・・」

はあ、と一つ大きなため息をついたギャンブルが俺の頭を小突いた。

「いいんだよ、弾。 よく聞け。 お前がやらなきゃ、ほかの誰かが同じ思いになったのかもしれない。だが、お前がそいつを被ることで、そうはならずに済んだ。コイツは誇っていい。会社に入ったその日から力を得たんだろ? なら、そいつを手放したりするな・・・お前の隣にいる連中も、そうやってやってきたんだ。 だから、お前だけ逃げるなよ」

 

「だけど・・」

「戦え、弾。ここで、すべてを無駄にする気か? 努力も仲間も、アイツの思いも。」

「アイツ?」

ギャンブルが指をさすほうへと視線を向けると、そこには打鉄の姿があった。

戦闘でボロボロになって、飛ぶのも精一杯だったはずだ。

意識を失った俺がここにいる理由がようやく分かった

こいつが俺を運んだのだ。何のために? ただの訓練機でしかないこいつが俺を意思をもって運んだという信じがたい現実だった。

「意思があるかどうかなんてわからないが、こいつがお前を持ってきたんだ・・・すげーよなISって」

メロウがコンテナの奥から出てきて、一つのドッグタグを手渡してきた。

打鉄を見る。俺は支えられてばかりだった。

自分から誰かを支えるなんてしてこなかったかもしれない。

なら、彼らのために今、俺にできることは何か?

彼らだけに、この重たい荷物を背負わせないことだ。

俺も、行かなくては

「さて、どうする? くすぶるか、飛ぶか 二択だぞ。人殺しは気の毒だと思うが、だが少なくとも俺たちの世界じゃ、こうしなきゃ救われない命ってのもあるのを知っている。

逃げるか? 戦うか?」

ヒトを殺した重荷が消えるわけではない、誰かのために、と言っても、殺しは殺しでしかない。正義は免罪符にはならないからだ。でも、俺が戦わなくては誰かが苦しむことになる。アカネを思い出す。 彼女は私怨で殺そうとしたことを悔やんだ。ヴィンセントを思い出す。ISを恨みながらも、無人機からそのIS乗りのために戦った。ユーリを思い出す。

彼は決して現実から目をそらさない。彼らは重みを知っているから、行動できるのだ。

俺はいままでの俺を呪う。自分に嘘をついて、甘い世界に浸っていただけだった自分を

どんな時でも殺されない、殺すことのない最高の機械、ISに結局頼っていたのは自分も同じだったのだ。なら、俺は今から本当の現実で戦うべきだ。

俺はタグを受け取った。しっかりと手に握りしめて受け取った。

「やるんだな?」

「やるよ、」

「よし、ハッチ開けろ!ギャンブル!」

コンテナが開いて、日が暮れてきたのか、沈んでいく太陽の光が網膜を刺激した。

海岸沿いの道路で開かれたコンテナから飛び立つ前に、俺は打鉄に近づき、そっと装甲の表面に触れる。

「ありがとう、導いてくれて」

傷だらけの訓練機に愛おしさを込めて言う。

踵を返し、海へと体を向けて、機体を展開する。

全身を装甲で覆い、新たな力その身にかみしめる。これを動かすのは自分だ。これで殺すのも、殺さないのも、自分次第だ。自分の望みを叶えるための俺だけの力。それがラプターなのだ。打鉄と様々な人々の力を借りて、得た力で俺は飛んだ。

背中のX上のウイングスラスターにエネルギーでできた翼、推進器を展開させて、俺は飛んだ。

今度こそ、戦うために

 

 




今回、少し雑な気がしますがとりあえずの投稿です。
また更新が遅れると思いますが、よろしくお願いします。
感想等お待ちしております。
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