高度一万メートル上空からの景色というのは、白い雲が大海のように広がり、その景色が続くばかりで何の変化も感じられなく、意外とつまらないものだ。
サービスで受け取った氷の入った冷たいウーロン茶を飲み、ほっと一息をつける
「向うに着くまで大分時間がかかりますし、寝ていてらどうです?」
隣の席に座るセミロングの綺麗な黒髪にメガネを掛けた、アカネがアップルジュースのお代りを注文しながら提案する。あの事件で負った怪我も治り、いつも通り整った顔立ちで話しかけてくるのをみて嬉しく思うものだ。
「そうは言ってもなぁ・・・」
これが、旅客機のファーストクラスなら俺も座り心地のいいシートに身を任せて流れてくる静かなクラシック音楽に酔いしれながら眠りにつけただろう。しかし、いくら設備が豪華でCAが美人。隣にアカネがいるという最高の状況にもかかわらず、実は大型の軍用機に乗っているという事実は隠しようもなく。雰囲気も何もかもぶち壊しにしてる。
C-17と呼ばれる輸送機の改良機。途中ハワイで給油して、目的地のシン・シティを目指すというものだ。こうなってしまったのは俺たちがそれぞれ専用機たるISを所持しているからというのが主な理由だ。検査には引っかからないだろうが、旅客機に持ち込めるわけもない。軍用の兵器を平和な場に出してはいけない。「実は私、旅客機に40mm機関砲を持ち込んでいます、犯罪ですか?」など言えるわけはない。常識と言えばそうだが、それにしても軍用機には遥かにミスマッチの内装に改造されているのが違和感だらけだ。小さなシャンデリアにバーカウンターすら作られている。
なんとなく落着けないが、こんな機体でも、寝息を吐きながら眠ることのできるユーリを見ると流石だと思わざるを得ない。
「誰の趣味なんだ?」
アカネに訊くと、彼女は人差指でヴィンセントを指さした。バーカウンターに座ってこれでもか、と盛られたパフェを頬張っている。
「納得だな」
「でしょう?」
ヴィンセントの悪趣味は今に始まったことではない。以前、彼が自前の拳銃を布で磨いているのを見たことがあった。彼の愛用のコルトガバメントは鏡のように磨かれたシルバースライドに金の装飾を施し、グリップにダイヤを埋め込んでいるもので、非常に目立つものを使う。
一度、本人にそれは趣味なのか、と聞いたとき奴は
「もちろん。特注のオーダーメイドさ。値段もそれなりにしたけど。」
と輝く笑顔で返してきた。世界中どこを探しても軍用拳銃にこれほどの装飾を施すのは彼だけだろう。
ユーリなどに言わせれば、撃って当たればいいものに、何のために装飾を施すのかと物申すだろう。
アカネから聞いたことがあったが、彼女曰く、人の趣味はそれぞれと言ってm14も付けるスコープをカタログで眺めて、目を輝かせていた。
こうして見ると、良くも悪くも変わり者だらけなのだと認識する。
その中で俺はどう見られているかは知りたいようで知りたくない。
ふと、そんなことを思いながらヴィンセントの方を見る
彼の背中を見ながら思う。彼の誘いに乗ってここまで来たということに。
それは三日前のことだった。
夏休みに入ったはいいものの、ヴィンセントからの指示もなく黙ってベッドに寝そべっていた。本当なら実家に帰って、のんびりと過ごすなどの選択肢があるのだろうが、契約金、もといリフォーム代欲しさに身売りされた身としては、そんなことはこっちから願い下げだった。そんな嫌な思い出を思い出してる時、扉が開かれてユーリが入って来た。私服でチノパンにポロシャツという出で立ちであるが、雰囲気や体格から非番の傭兵にしか見えない男が開口一番に言った言葉は準備しろの一言だった。
嘘や冗談を言う彼ではないことを知っているために、言われたとおりに準備し、学園の玄関に出たところで、どこへ行くのかを聞かされ、そのままここまで来てしまった。
目的は機体のオーバーホールにデータ回収。そして俺たちのスキルアップだ。
シュミレーションではなく、機体を使った模擬戦。それは間違いなく必要なものだ。
福音戦で気づかされた未熟さを払しょくするために俺たちは本社のあるシン・シテイに向かう。俺達の訓練は未だ終わりを見せていない。
あのレジスタンス達も実家に帰らず、学園で訓練するという話だ。彼女らが動く中、皆が動く中で俺だけが黙っているわけにはいかない。
今度こそ、やり遂げえて見せる。
太平洋の空中で俺は静かに自分の成功を願った。
空港に着くやいなや、滑走路に降り立ちゲートまで行きパスポートを見せ、係官が滞在目的などを訪ねてくる。何をどういうべきか迷い、Rインダストリーの社員証を見せつつ、
仕事のためだ、と言うと、非常に筆舌しがたい表情を見せつつも入国許可のハンコを押した。高校生が会社勤めするのはそんなにおかしいと言うのか、と文句の一つもつけたかった。しかし、その後にヴィンセントが続くと妙に納得した顔になった。見たところ顔見知りらしい。
空港のゲートを抜けると、ロビーやフードコートに群がる人々の数に驚いた。天下のRインダストリーの城下町の空港だけあって観光客からビジネスマンにと、職種から人種に至るまで様々な人々が行き来している。その分、警備が物々しい。近くを通り過ぎた警備員であろうか。R PMC と書かれたタグをつけて、ベースボールキャップにボデイアーマーを装着し、手にはUMP45を握っている。
「物騒だな。」
そうつぶやくとユーリが答えた。
「最近は男でも女でも、テロを起こすのが増えた。前にリストラされた恨みから、その上司が空港のゲートから出てきたところを3Dプリンターから作り上げた拳銃で射殺したという事件があった。他にも女性権利団体を狙ったテロで銃撃戦になったこともある。」
身近に銃がない日本でも、似たような事件は多い。しかし、銃社会のアメリカほど派手ではない。確かに、銃撃戦やテロが多くなれば、それ相応の警備を着かせるのは当然と言える。俺的には隣にサブマシンガンを持った男が徘徊している空港というのは落着けないと思われる。しかし、ここの人々には、もう日常らしく普通に過ごしている。ベンチに座りながらコーヒーをすすっている若いアジア系のサラリーマンなどがその例だ。
「おかげでPMCとか警備会社は大儲けさ。退役軍人も多くなった最近なら人材にも苦労しないしね。」
ヴィンセントが近くの警備員に話し終えて、戻ってきながら言った。
どうやら、何のためにここで仕事をしているか聞きに行ったらしい。同じ社で、御曹司という立場を使って聞いたところ、母なる慈母の会なる組織が来るらしく、それに警戒しているらしい。彼ら曰く、連中が襲いに来ているかもしれないし、連中が襲われるかもしれない、という風でどっちが正しいか仲間内で賭けをしている、ということらしい。
「嫌な時代だな、全く。だから、女王様みたいなのができるんだな」
「その意見には賛同しますよ、弾。」
そう話していると、もう一人の男が来た。マイクがコーラとホットドッグを持ちながら俺たちの前に現れた。
「遅かったな。昼飯どころか、三時のおやつにまで手を付けちまったよ。」
日本にはない巨大なホットドッグにかぶりつくのを見て、俺は答えた。
「三時のおやつにホットドッグって選択はどうなんです?」
「こっちのホットドッグが好きでな。学園に置いてあったのも悪くはないが、カロリーが足りない。で、どこに向かえばいいんだ?」
そう聞くと、ヴィンセントが一歩前に出てマイクの問いに返答する。
「本社の方を頼むよ。 アルフレッドさんや、ロイに会わなきゃならないんだ。ロストワールドは三日後になると思う。」
「わかった。それじゃ付いてこい。 トラックを回す。」
大きく口を開けてホットドッグをその大きな洞窟のような口に放り込み、コーラの炭酸と共に飲み込んで、空港の玄関にまで陽気そうに鼻歌を歌いながら去って行った。
残された俺たちはスーツケースを片手に、ファーストフード店で簡単な食事を摂り、Rインダストリー社のおひざ元。シン・シティへと足を伸ばすべく、マイクの待つ駐車場へと歩を進めた。空港から出たときの日差しは強く、太陽が眩しくその姿を見せた。旅客機の飛び立つ大きな音と中国語から英語、時には日本語すら聞こえる喧噪をBGMにして俺は初の異国に地にたどり着いたことを認識した。
トラックに乗せられて小一時間弱、シン・シテイの中心街へと降りた俺が見たのは、圧倒的なまでのスケールのビル群と人々だった。俺のようなアジア系から黒人に白人と男女の隔たりなく自己の仕事場へと急いでいるスーツ姿の大人たちに、服を買いに行こうとはしゃいでいる俺と何ら変わらない年頃の女の子に、男子たち。東京とは違ってさまざまな人種が織りなす風景と、未来的デザインの高層ビルに、そのビルを縫うように走るモノレール。空には立体映像で広告と今日の天気を見せてくれる明るいカラーリングの飛行船が飛んでおり、SFじみた巨大な都市は俺を圧巻とさせるには十分すぎた。
「・・・・スゲェ」
感嘆の声を上げて俺はこの未来都市に魅入っていた
さらに、驚いたのは人々の周りにあるものだ。自立型の掃除をするロボットが空き缶を拾い上げるのも、この都市ならではの光景らしく俺の好奇心を刺激した。
何より驚いたのが道路整理をしている警察官だった。
彼らが使っているのはパトライトをつけた簡易なパワードスーツだったのだ。
静かなモーター音ではあるが力強く二足歩行をするそれは男のロマンで俺の目を楽しませた。
「警察がパワードスーツを使っているんだな」
「うちの社の商品のギアシェリフ。歯車でできた保安官さ。稼働時間20時間の強化プラスチックの装甲で、軽く丈夫!二体あれば乗用車程度の重さなら運べる新商品、僕のお気に入り。」
ヴィンセントの説明を受けながら、機械仕掛けの保安官をもう一度みる。あんな装備はめったにお目にかかれないだろう。
「進んでいるんだな」
「そりゃ、天下の巨大企業ですからね。私たちの機体も皆ここで生まれたんですよ」
「僕もここで生まれている」
「とんだ不良少年作ったものですね」
ヴィンセントの言葉にアカネの辛辣な感想が述べられて、彼は子供の用に口をすぼめ、反撃した。
「男だか、女だかよくわからない君は製造ミスってとこかな?可愛くない」
「何ですって?」
「アカネは可愛いだろ、いい加減にしろよ ヴィンセント」
ヴィンセントの反論につい口を滑らせてしまった。俺が言った言葉にアカネは目をキラキラと光らせて愛嬌の入った声で、俺を「流石です!」と称賛し,
腕に抱き付いた。
対するヴィンセントは苦々しく微笑んでブラックコーヒーを買いに行くと言って敗走した。
小さく舌打ちをしていたが、目の前の彼女のご満悦な顔を見て、気にしないことにした。
その様子を憮然とした様子でユーリが見てつぶやいた。
「簪、こういう時は何というのだったか?」
ユーリは思わずここにはいない者の名前を言って、視点を下げた状態で隣を見て、そこにいるはずの人がいないことに気付いた。普段、簪と共に行動することの多い彼にとって隣にいるものだと思って条件反射で動いたようだ。身長190の彼に比べて、いないことを認識したせいか、小さく息を吐いた。
「ユーリも、デレデレですね。」
「なんだ、それは? どう意味だ?」
「別に」
アカネと俺が同じセリフでからかうが、通じなかった。こんな時でも、この男の鉄仮面は崩れない。どうすれば崩れるのか、と本人に聞きたいほどだ。
そして、彼も俗世間の言葉に疎いところがあり、意味が通じない時がたまにある。
その意味をいつも隣にいるであろう簪に訊くのが恒例と化している。
「全く、どいつもこいつもイチャイチャと・・・」
缶コーヒーをすすりながら、ヴィンセントが戻ってくるのを見て俺は尋ねた。
「お前、鈴と仲いいじゃないか?」
「彼女とは単なる悪友というだけであって・・・」
「その割に二人で食事なんか行ってるらしいな。」
ヴィンセントがピタリと動きを止めて、詰問するような口調に代わる。
「誰に聞いた?」
「さあ、極秘事項ってやつさ。」
意地の悪い笑みを浮かべて返すと、ヴィンセントも同じような笑みを返す。俺も言うようになったものだ。
「で、どこへ行くんだ?」
話を切り替えて行き先を尋ねると、ヴィンセントは話の元を聞くことができなかったために煮え切らないといった風で答える。
「極秘事項・・・・と言いたいところだが正解はアレだよ。」
指さした建物を見る。それはこの町のちょうど中心に位置するビルで他の建物よりひときわ大きく、ここが城下町なら、あの建物が殿様の城といったところだ。
Rインダストリー本社。またの名を「ザ・ロック」とアルカトラズと同じ名前を付けられた巨大な牙城へと俺たちは歩を進めた。
本社の玄関を抜けて、受付嬢にヴィンセントが挨拶をする。さすがは巨大企業だけはあって受付嬢のグレードも世界水準だな、と感心して見ていると、アカネに少し小突かれた。
軽く謝っていると、ヴィンセントが戻って来た。
「ロイが25階のオフィスで待っているってさ。すぐに行こう」
「そういえば、ロイさんに会うのも久々だな。久しぶりに話がしたいよ」
「そうだな、あっちも君と話したいことがいくつかあるらしい」
話とは何だろうか、その話題を予測してみる。初戦でラプターをボロボロにしたことへのお叱りだろうか、それとも福音撃墜任務への失敗についてか。ほめられるにしも、功績と言えば、打鉄でセシリアを倒したということぐらいだろうか。これは褒められてもいいはずだと自負している。他での話題と言えば、機体についてだろうか。打鉄からラプターに乗り換えて、いくつかの相違点に気付かされた。HMDの表示からして、違う。機体の使用かもしれないが、ラプターのFCSは打鉄のそれと比べて高度かつ複雑なものだった。
それに武装の展開もイメージによって取り出す打鉄とは違い、事前に思考が読み取られて、自動で武装を取り出しているような違和感があった。ヒートナイフを取り出そうとしたとき、レーザーソードが出てきたことなどがその一例だ。切り付けるものを出そうと考え、出てきたのがソレだった。
これについては俺自身が訊きたい話題だ。ラプターについての知識を万全にしてこそ安心して戦えるというものだ。自己進化でコロコロと武装が変化するなど言われたら、俺は匙を投げる。
エレベーターに乗り、ロイの待つオフィスへと向かう途中でこれらいくつかの予想を立てて、向かう。俺は限られた時間の中で、ロイとのやり取りを想像し、練習していた。
エレベーターが目的の階にたどり着くと、扉が開き、俺たち以外の会社員も降りていく。
皆が忙しそうにしてる中で比較的ゆっくり歩く俺たちを押しのける会社員たちを横目で見ながら、ロイ・バッカスと書かれたネームプレートが張られている木製の高級そうな風格漂うオフィスのドアを叩く。
「どうぞ」
聞き覚えのある人柄のよさそうな声が聞こえて、俺たちはオフィスへと入った。
入ると、見ていて人を落ち着かせる笑顔でロイが快く迎えた。
「久しぶりだな、諸君。無事に帰ってこれたことをうれしく思うよ。ヴィンセント
髪が伸びたな。アカネ、雰囲気が柔らかくなったな。ユーリも少し丸くなったな。
弾、君も立派に成長した。君達が帰ってきたことを祝って今日は歓迎会をしようと思う。どうだね?」
歓迎会と聞いて、俺たちは沸き立った。考えてもみれば、今までの戦闘を勝ち抜いてきたにもかかわらず祝られることも無かった。代表戦は敗北という結果だったため、仕方ないと言えるが、その後のトラブルでは労わりの言葉も一つもなかった。福音戦にいたっては反省文すら与えられたもので、ぶち切れていた俺はそれを破り捨てた。
そう考えれば、歓迎会をしてくれるだけでも嬉しいものだ。
「それと、ヴィンセント。すまないが弾と二人にさせてくれ・・・・・話をする」
「ついに話すのか。」
ああ、と短く応えた。それを聞いて、ヴィンセントはアカネとユーリを連れて部屋から出た。この場に俺とロイのみとなり、窓から差し込む陽の光がロイを照らし、その目は好々爺ではなく、百戦錬磨の企業人のものだ。初めて会ったとき、レストランで俺を説得するときと同じだ。俺を見極めようとしている。
「さて、君にいくつか話をしようと思ってね・・・君は社に満足しているかね? 機体には?」
カエルを見つめる蛇のように鋭い目つきへと変わったことを見て俺は姿勢を正した。
「それはもう・・・本当に満足しています。 ラプター・・いやストライクラプターは俺の理想の機体で、一刻も早くモノにしたいです。」
「そうかね・・・君はラプター、嫌 私達の機体を見て何か感じなかったかね?」
その様子を見るに求めている回答があると俺は考えた。何を聞きたいのか、それを思考する。彼が聞いたのは機体と会社についてだ。ラプターから社の機体と言い換えたところを見ると、企業の機体には大きな違いがある。
考えたことはなかった訳でない。思えば最初に抱いた疑問があった。それに思い起こせば確かに変わりすぎた点が多かった。
これが解答なのかわからない。ただの冗談を深読みしているだけかもしれない。
だが、ロイの目は茶化しているようには見えない。やってみる価値はある。
「・・・・・感じたことはあります。」
「ほう・・・どんな?」
楽しげに観察してくる初老の男に俺は舌を動かした。
「まず、投入機数から疑問を得ていました。いくら世界最大規模の企業とはいえ、コアを4つも学園に投入するのは行き過ぎだと思いました。たとえ、金食い虫だとしても、その価値は高いはずなんです。使い方にもう少し気を使ってもいいはずです。」
最初の疑問を述べて俺は説明を、疑問を展開していく。
「ところが、実際に投入している。しかし、その扱いはとても金食い虫に対するソレじゃない。専属の整備班・・・マイクさんを学園に送って、決して整備課に手を触れさせなかったし、惜しげもなく新兵器を持たせているのは違和感がある。」
その疑問にロイは異議を唱えた。
「しかし、新兵器を持たせるのは不自然ではあるまい、誰とて新しい物を試したいものだ」
「なら、普通の試験場で十分ですし、ISに興味ないはずの企業なら、既存兵器に対する兵器だけで利益を得られると思います。」
ISにはISしか対抗できない、と言う。ならば、ISの戦いは専門家に任せて、既存兵器同士の戦闘で優位に立つことができれば、それだけで価値が出る。ISも所詮500未満しかない。ISを互いに保有している国同士で戦争をするとすれば、敵のISを足止めして、敵より優秀な既存兵器の物量で攻めるのも有効だ。戦車や航空機の製造で現在も多大な利益を得ているRインダストリーなら、この程度の利益の出し方は心得ていて当然だろう。
だが、そうはしていない。それどころか、ISを破壊するための威力過剰ともいえる兵器を持たせている。パルスライフルに、センサージャック。 レーザーブレードにマイクロミサイル。どれもこれも威力過剰だ。
「さらに、今のISのトレンドにそぐわない全身装甲に二重のフレーム、ISを信頼していないかのように、つける装備品も多い。」
どの情報も一つ一つはパズルのピースに過ぎないし、俺の手元にはおそらく全てのピースは揃っていない。しかし、ピースが多少かけていても、全体像は予想できる。
それがどんな絵なのかを知ることができる。そんな形のないジグソーパズルを埋めるように俺は一つずつ情報を羅列しつなげていく。
「最後に、俺の仲間の目的です。 ヴィンセントもそうだが、アカネが言っていたんです。
憧れの人がもう一度喝采を浴びる様な世の中にするためって。そして彼女の『いう憧れの人は米軍の兵士達で、男たちのことでした・・・・このプランがこれにつながるとしたら、それはもう確かにISの軍事的価値をひっくり返すというヴィンセントの言葉にも納得がいくんですよ』
「・・・その答えとは?」
俺は一つ深呼吸をして答えた
「俺たちのプランは誰でも使えるISの開発では? そしてソレは完ぺきに軍用を目指したものだ・・違いますか?」
できあがった全体図を俺はコレだと判断した。この回答にロイは満足するだろうか、もしかしたら俺はキリンの絵をライオンだと答えるような大馬鹿な答えをしてしまったのかもしれない、と不安に駆られ、汗が首筋をつたっていく。
そうして黙って様子を見ていると、沈黙を見せていたロイが大きく笑い声をあげた。
ひとしきり笑い、俺の顔を真正面から見つめて立ち上がった。
「流石だ! 私の目に狂いはなかった! 会った当時から予想はしていたが、ここまで成長するとは思わなかったぞ。 その通りだ。君の言う通り、これは世界革命となる土台なのだ! 名はピースと呼ばれる疑似IS。 君たちはこのために動いていたのだ。」
そう言ってオフィスの本棚の赤い本を抜き、緑のホント置き換えると、頑丈そうな扉が現れた。そこに15ケタの暗証番号を打ち込み、網膜スキャンや指紋照合をこなして、扉があいた。そこには小さなエレベーターが出てきた。
「君は機密を知るに足り得る人物となった。君にすべてを教えよう。プランの全貌と君を、君たちを雇用した理由を。 ここにすべてがある。知りたくはないかね?」
俺はロイの言葉に従い、エレベーターに入った。歓迎会とはこのことを意味していたのではないか。ともかく、俺はすべてを知りたい。それを知ったうえで俺は彼らと飛びたいからだ。
エレベーターの扉が閉じられた。
夏休み編です
前半はシリアス調で後半はコメデイの予定です
今回は結構急展開すぎたかもしれませんが。
感想等お待ちしております。
PS 次回は説明だらけかもしれません