IS to family   作:ハナのTV

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truth for us

エレベータを降りた先にあったのは格調と伝統があるような図書館のような部屋だった。

膨大な本にファイル。レコードのような物から、LD 光ディスク、USBに至るものまで情報の詰まった媒体にあふれていた。

ロイが歩き、奥にあった扉をあけた。そこにはショーケースの中に納められたヴィンセントのものより大きいグレイイーグルがあった。

 

「これが我々の初の機体 ヒトで言うならアダムに当たる機体だ。名前すら与えられず、ひたすらに研究のために使われてきた。」

 

ガラスに手を触れ、グレイイーグルに似た機体を眺める。その装甲には無数の傷が残っていた。その様子は永い眠りについたように見え、哀愁が漂っていた。

名前もなく、ひたすらに実験されてきたであろう機体がようやく眠りにつけたように思えた。もちろん、俺はその様子を見てきたわけではないし、どんなことをしてきたのかも知らない。ただ、二度と光をともすことも無いカメラアイはひびが入っておりながらも、レンズが磨かれているのを見て愛着があったことと、この機体のおかげで、俺たちがいるのだと思うと、ただの旧型と見ることはできなかった。

ロイが椅子に腰かけて長い吐息を吐いた。

 

「さて、始まりから話そうか。私たちの夢が崩れ去ったその日からだ。」

 

 

 

 

 

 

まず、世の流れから説明しなくてはならない。

十年も昔、世界中のネットにハッキングが行われた。経済、軍事に至るまで行われた大規模なサイバーテロはあらゆる災害を起こした。その中で最も印象強いのが白騎士事件だろう。サイバーテロによって偽の情報が国々を駆け巡り、どこからともなくミサイルが日本に向けて発射された。自衛隊が迎撃に奔走し、在日米軍も協力したがそのミサイルの数はあまりに多すぎて、事件の始まりはあまりに急だった。世界中が哀れな東洋の民のために神に祈ったとき、救世主が現れた。それが白騎士と呼ばれるISだった。白騎士は全てのミサイルを迎撃し、そのついでと言わんばかりに、在日米軍、自衛隊、中国海軍、米海軍等の部隊に攻撃を行い、その力を見せつけた。なぜ、そうなったのかは私たちも詳しくは知らん。一説には各国が白騎士を拿捕しようとしたため、とあるが、真相はわからずじまいだ。

 

そして、その後にタイミングを計ったかのようにISを発表する者たちが現れた。

彼らはISを発表し、世界各国に売りつけた。その中に篠ノ之束もいた。だが、彼女は異色だった。売る者たちが兵器としての有用性を示す中、彼女だけが宇宙開発のため、と主張していた。彼女は学会で三か月粘り続け、国連の会議にも直談判をしていたが、その後白騎士事件の真犯人とされ、指名手配を受け、姿を消した。

 

こうして、世にISがはびこるようになった。あの凄まじい戦闘能力を目にした人々は誰もがその力を欲した。女性にしか使えない欠点はあるものの、核に代わるクリーンな抑止力として期待されたのだ。核では地球規模で深刻な環境破壊を起こし、その非人道性も非難される。だが、ISならこれらの条件に縛り付けられることもなく、紛争の鎮圧にも手軽に使うことができると当時の馬鹿どもは考えた。

 

経済の停滞で遅れを取っていた米国では最初に始まったのが、ISに対する予算をどこから持ってくるか、だった。量産の方法を他国より先に手に入れるには膨大な予算が必要となる。

 

人材に資源、土地に、研究所で使われるボールペンに至るまで、予算を作る必要に迫られた。まず、切られたのが宇宙への有人飛行とうの宇宙開発だ。一回のロケット発射に、数十億ドルと飛ぶ有人飛行はこの時、ただの金食い虫にしかなかった。

人材はISに回され、必要のないものは全て切り捨てられた。

 

次に軍事だ。ISは搭乗者の育成から、一機での戦力として考えた場合の他の兵器との差は大きなものだった。戦闘機や戦車の搭乗員より格段に簡単に操作でき、桁違いの能力を持つISの前に既存兵器や兵士たちは次々に社会に放り出されていった。大規模な軍縮を行っても、戦力は減少しないと誰もが考えた。この影響によって軍需産業は大打撃をこうむり、いくつもの社が首を吊る羽目になった。

 

これら全ての政策によって社会は失業者であふれた。時の主導者たちはそれすらもISで解決するつもりだったのか知らないが、当時はまさに狂気の時だった。

この時、急速に女性に対する権利拡大が頻繁に行われて、過激な集団も少なくはなく、しばし悲惨な事件を作り上げていった。

これらに反発した者たちが、取った行動は「目に目を」、「テロにはテロ」の復讐そのものだった。神も信じない男が自爆テロを女子校や政治家たちに行い、性犯罪なども急激に増加した。中でも、最も記憶に残ったのは6年前の「マリーン・シュート事件」だ。

なんと元海兵隊一個分隊がIS育成の高校に侵入し教師10名 生徒65名を射殺したうえ、

立てこもってモガディッシュさながらの凄惨な銃撃戦を行ったというものだ。

 

話はそれるが、こういった事件で、IS学園は重宝されているのだ。生徒の保護に対する責任問題を回避しつつ、優秀なIS操縦者を育成できるという点でな。

 

実際、この事件で米政府が宣伝した学校の警備を担当した優秀とされた女性兵士たちはイラク帰りの元海兵隊になんの抵抗もできず、全員が始末されてしまい。学校に関与した高官はほとんどが失脚したためだ。

しかし、このような事件が起き続けながらも、尚政府は方針を変えなかった。

そして、歪んだ社会の犠牲者は多数に及んでいった。

解雇された軍関係者や兵士たちは行き場を求めて、かつての敵に媚を売るようになり、社会は犯罪率が激増し、それに反して検挙率は著しく下がった。技術者もそうだった。敵対組織はこぞって、これらを取り込み勢力を拡大し、民族浄化やテロリズムは激化の一途をたどる。世界的な情勢は刻一刻と悪化をしていく。

 

では、この時救世主とうたわれたISは一体何をしていたか。何もしていなかった、いや何もできなかった。

一向にめどすら立たない量産方法の確立に、その数の少なさゆえに戦場に投下するなど、できるわけもなかった。ダイアモンドを火中に投げ入れるようなものだ。

大切なコアに汚れや傷がつくのは避けるべきだと考えた。

 

もう一つの問題は性能面だった。確かに、戦車以上の火力。戦闘機を超える速度と機動性。

既存の兵器を上回る防御能力。どれも兵器としては革新的だった。しかし、それでは足りない。皆が求めたのは白騎士のような戦闘能力だった。通常う兵器を上回るのではなく、

まさしく神のごとく絶対的な力を求めていたのだ。しかし、どう頑張っても白騎士には誰もいたることができていない。福音は作れても白騎士には至らない。

完ぺきに理想の社会は空中で霧のように消え去った。

 

 

このスペックで500機未満、一国での単位で言うと多くても数十機程度。彼らの理想図には全く足りなさ過ぎた。このことで一気に目論見は崩れ去った。それどころか、世界最強のイメージばかりが独り歩きを始めて、女性権利団体を作り上げ、そしてISを持たない国家がこぞって通常兵器と兵隊をかき集めだした。内も外も問題ばかりが増えて八方ふさがりとなった先進国たちは闇雲に量産方法を手に入れたがり、際限なく予算がつぎ込まれていき、そのたびに社会が疲弊していく。それを見て第三世界などの国家群は警戒して戦力と国力の増強に手を伸ばし、最早抑えようのないほどにまで成長している。

世界はもうパンク寸前なのだ。あとは何時決壊するかだ。

もうISで押さえられる時期はとっくの昔に過ぎている。

 

 

 

世界で、こんな問題が起こっている以上、わが国内も悪化するのは当然と言えた。

女尊男卑なる風潮は男性だけでなく、女性にも悪影響だった。例として挙げられるのは、IS適性Bランク以上の人間と、その扶養者には毎年4万ドルが補助金として支払われ、高校までの学費、養育費を政府が負担するという優遇政策だ。

いかなる能力よりもIS適性が求められるようになり、どれだけ、学業やスポーツで優秀であろうと適性が低ければ、評価されない。新たな差別の始まりだった。

適性者が男と、適性のない同性を差別し、適性のない女性たちは自分たちより弱い立場にいるものを攻めはじめ、有色人種への攻撃、つまり肌の色による問題が再び起こった。

 

それだけではない、米国で問題となっている「ISに捨てられた子供たち」だ。

貧民層の住民はこぞって、適性の高い物を求め、盛った動物のように子供を産み、この優遇制度を受けようとした。その結果できた低い子供を路道に捨てるようになり、深刻なまでに孤児が増加した。目を覆うような醜さが社会に蔓延して、我々はもう我慢の限界だった。このような惨状と我々自身に降りかかった全ての災いを払うために我々は動き出した。

 

 

 

 

 

 

我々がこれに対抗するために、持っていた本物のISコアを極秘裏に研究した。幸いにして我々には資金もあったし、人材もそろっていた。コアとサンプルにラファールを一機購入し、日夜、その仕組みの解明に取り掛かった。量子変換による武装の収納の拡張領域やPICの仕組みは膨大なエネルギーとそれを動力源とする十世代はさきの量子コンピューター数十機をコア内部につくった拡張領域内で稼働させていることによって成し遂げられているのを突き止め、それがハイパーセンサーの正体であることも判明させてきたが、一つ分からなかったのが、コアが何でできているのか、そのエネルギーは何なのかということだった。

未だ、十年かけても一国もISの量産に移行できていない最大のポイントだ。日本や我が国のような先進国家ですら行き詰っているというのに、巨大とは言え一企業が成し遂げられるはずもなかった。

 

我々は三年の研究と中堅国の国家予算に匹敵するレベルの資金を投入して、行き詰ってしまった。動力源が何か、もしくは代わりになる動力源がなければ、我々の目的は叶えられない。大きすぎる損失額に最初は満場一致だった役員たちも難色をしめしだし研究は閉ざされようとしていた。まさに八方ふさがりだった。

しかし、そこに救いの神が現れた。

 

 

 

海底、マリアナ海溝などから、地球の中心に向かって穴を掘り、地層を調査するというのを知っているかね? 何でも、地球の原始の環境に近いマントル付近から生物を発見できれば原始的な生態を知ることができるといった学術的研究があるのだそうだ。

 

わが社も、そういった学問に出資することもあって、その研究にも同じようにスポンサーとして参加していたのだ。それがダイアモンドを超える価値のある物の鉱床とはだれが予想できただろうか。その時、発見された物質が我々の救いの神だった。

その物質は特定の条件下、熱と圧力の下でエネルギーを吸収し続ける特性を持っていた。

そして、すでにため込んでいたエネルギーに我々は驚愕した。この物質は今までの地球の地殻エネルギー、地震からマグマのエネルギーから何からなにまでも全てため込んできたのだ。さっきも言ったように特定の条件下なら、エネルギーを吸収する。科学を応用することで我々にも微量ながらも充電が可能だった。

 

まさに理想のバッテリーだった。我々はこの世紀の大発見を秘匿し、独自の反応炉を利用したコアを作り上げた。

それが君たちの機体のコアだ。一つのコアに使われる物質は約2kg程度。それだけで、ほぼ永久に稼働が可能だ。我々が保有している物質は現在で20t。今までで、200kg使ったがね。この数字を見て、すでに勝負はついたも同然に見えた。

だが、問題がここで浮かび上がった。

 

 

 

我々には二つの要素が抜けていた。料理に塩と水が足りない、そんな重要な問題だ。

どんな兵器にも必要とされている信頼性と、世に認めさせる根拠の二つだ。極秘で作り上げたために、下手に公に出してトラブルを生むのは絶対に避けなくてはならない。

また、この兵器がはたしてISに通用するかは机上の計算でしかない以上、説明が難しい。これができない以上は使うことはできない。兵器として試験もせずに実践に投入はありえないからだ。

現在の世界の常識を覆す以上、誰もが認めざるを得ない根拠が必要とされた。それがなければ、パブリックエネミーとされて我々は闇に葬られる可能性があった。

また、つぎに搭乗者の育成についての問題だった。

君が使ったシミュレーションも物質のおかげで完成したが、本当に連弩が上がっているかなど調べようもなく、本物のIS乗りを使うこともできない我々は大いに悩まされた。

機密の保護を最優先にしている以上、外部の人間を必要以上に取り込むのは危険と判断されたのだ。つまり、必要なのはISを倒した「実績」とシュミレーションの「成果」、そして我々の機体の機密を守る「隠れ蓑」だった。

それらを満たす場所がIS学園だったのだ。

 

 

 

国家代表候補生から、企業代表、一般生徒に至るまで素質さえあれば、専用機を堂々とさらしても、誰も気にも留めない。それが当然となっているからだ。そして、イグニッションプランなどで見られるとおり、実験機を投入し、他国のソレと自由に戦闘できる環境がそこにある。戦闘による証明が可能の唯一の場所だったのだ。

これらによって、誰もが我々を怪しむことはない。公にされるがゆえに誰も不思議に思わない、いわば灯台下暗しだ。

これらの要素に満ちた学園に投入することを決定したのが四年前だ。そして、素質ある三人の少年少女を徹底的に鍛え上げた。

 

ここでいう素質とは適性のことだ。ISだけでなくピースに対する適性だ。ピースには男女で乗れるか否かは生じないが、物質を利用した反応炉からの影響を受けるものと受けない者がいる。原因は不明だが、こうした負荷に耐えられる適性の必要があるための素質だ。余談だが、この素質は男女双方にみられるが、IS適性が高い女性ほどピースの適性は低いという神の悪戯が生じている。

 

 

私としては、できることなら避けたかった。いくら志願もしたとは言え、十二歳かそこらの男女にはあまりに過酷な運命を与えるも等しかった。キリングマシーンを育て上げるように、射撃、徒手格闘 基礎体力作りに、メンタル制御。あらゆる技能を教え込んだ。我々はできることなら代わってやりたかったが、我々に選択肢はなかった・・・・・・

 

 

 

シミュレーションと他の戦闘技能を付与することで、かなりの実力者として育ったであろう彼らを送ろうとしたとき、君が現れた。我々は君を調べ上げ、コンタクトを取った。人格面などの問題をクリアして、問題はピースに対する適性があるか否かだった。

だが、君はそれをクリアしたのだ。

それを知ったのは何時かというと、君がシミュレーションをするためにグレイイーグルに乗り込んだときだ。君は乗り込んだ後、何ら問題なく訓練のメニューをこなし、食事もとった。一か月は何の様態の変化もなかった。あれは君の適性を調べるためでもあったのだ。

だますような方法ですまなかった。

だが、こうして我々は全ての鍵を手に入れて、夢は実現しつつある。

 

 

 

 

君たちが学園に通ってからというもの、あらゆるトラブルが起きた。無人機の乱入やドイツ軍少佐の暴走、そして福音。そのどれもが我々が予想した数値を上回る結果をだした。

機体の性能とシミュレーションによる訓練が有用だと証明されたのだ。

あとは発表を待つのみ。我々の長すぎる数年が報われるのもあと一歩となった。

 

 

 

 

 

 

 

「これらが、私たちのプランの正体だ。軍人、技術者、学者、すべてのISによって夢と誇りを奪われた者たちが手を取り合って行う革命の戦略。君たちが必要とされた理由だ。」

 

俺には衝撃的すぎる内容だった。彼らの行うのはロイの言った通り革命だ。ISの軍事的価値を破壊し、夢と誇りを取り戻す。かつて、白騎士事件を行った者たちと違うのはテロではない革命というところだ。

 

「素晴らしいかもしれませんが、これではただの仕返しにしかならないのでは?」

 

 

だが、一つの疑問が生まれる。これではオウム返しではないだろうか。ISを駆逐した後、また更にISによって夢を描いていた人を地の底に叩き落とすだけではないだろうか。

ロイは答えた。

 

「その回答も君らがキーだ。我々がピースを使えるというだけで君たちをIS学園におくったりはしない。余計なトラブルは御免だ」

 

俺はその言わんとするところを察した。

 

「ヴィンセントやユーリにもIS適性はあるのだ、そしてアカネはIS適性もある程度持っていながらピースを使える稀有な人間なのだ。君の逆のようにな。そして、君たちにはプラン終了後に役目があるのだ。」

「それは?」

 

「ISによる宇宙開発の第一歩として、のだ。我々はかつての連中と違う。我々はかつての痛みを与えるようなまねはしないのだ。」

 

普通なら完膚無きまで相手を叩き潰すのが普通だというのに、プライドと意地をかけて、それをしないという。甘いと言えば、甘い。相手に付け入るスキを与えるのだから。

だが、それでも、復讐心だけで駆られるよりは遥かにマシだ。そこには一定の理性もあるし、気品もある。鉄の心というものだ。

 

「これが真相だ。嘘もないし、空想もない。ただ、痛みと悲しみにまみれた現実だ。

そして、それはこれからも続く・・・・それでも君は来るかね?」

 

俺は迷いもなく答えた。それが俺にとっての真実だ

 

「行きますとも、もう他人というには彼らは俺にとって大きくなりすぎた。俺は彼らとともにありたい。それだけです。」

 

俺にも鋼鉄の心がありますように、と願った。彼らと夢を託してくれた大人たちに弱さを見せないために。

 




説明回です。
正直、矛盾があったりするのでは、と不安です。

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