真相を聞いた俺はエレベーターで元の階にたどり着き、オフィスに戻ると珍しい迎いの人物がいた。ヴィンセントでもなければ、アカネでもない。メンバーで最も寡黙な男。ユーリだった。
「話は聞いたか?」
付け入るスキを感じさせない鉄の面のままユーリは俺に問う。俺にとって彼が来ることは予測できなかった。いつもなら、悪戯な笑みを浮かべて持論を展開するヴィンセントか、俺のことを一番気にかけてくれるアカネと相場が決まっているようなものだった。
だが、来たのはこの男だ。俺は目を丸くさせつつも、問いに答えた。
「聞いたよ。目的も機密も。それがどうかしたか?」
ユーリが観察するような目をして、俺を一通り見ると瞬きを一つした。
「様子に変わりはないようっだな。少しは動揺すると思ったのだが」
「今まで、驚きの連続だったし、こんな時が来るんじゃないかと思ってたさ。」
半分嘘だが、俺は何ともないように振る舞った。
「そうか。」
率直な意見を述べて、俺についてくるように指で仕草をして歩き出す。俺は少し小走りして隣に立った。考えればこの男が自分から話しかけるのは簪以外だと、あまり見ないがした。何を思ってここに来たのだろうか、俺はそんな好奇心でユーリと話をすることにした。
「それにしても、お前が迎えに来るなんて珍しいな。どういう風の吹き回しだ?」
「気になっただけだ。俺たちが機密をお前に言わなかったことで気にしているのでは、とな」
頭を掻いて俺はその返答をした。
「ただの中学卒業の子供に機密を教えるわけにはいかないだろ。そこのところは理解してるつもりだ・・・・まあ、確かに少しショックだけど」
二次関数程度の知識しかない中学卒業生に機密を取り扱う資格はない。それは当たり前のことだ。まして、新入社員でしかないのだから。それに、あの時の俺は精神的に不安定な時期でもあった。突然のIS学園への入学、契約金目当ての五反田家の裏切り、そこに飛び込んできた、望外のチャンス。人生で起きる重大なイベントがたった一か月に凝縮されてくれば、誰だって正常な状態にいられなくなる。そんな俺に機密を寄越さないのは営団と言える。しかし、少しショックだったのも事実だ。なぜ黙っていたのか、という気持ちもあるのも確かだ。
「そうか・・・・強いな。」
「・・・褒めても何も出ないぞ。」
「そんなものは期待していない・・・・しかし今回は違う。」
ユーリが思いがけないセリフを飛ばし、懐に手を入れた。彼は懐から、カーボン製のjケースを取り出し、手渡してきた。渡されたケースを開けると、そこには銀でできた美しい観賞用のナイフが入っていた。「君に感謝を」と英語の筆記体で書かれている。
「これを簪に渡したいのだが、どう渡していいかわからない。教えてくれ」
「女の子にナイフか?」
「・・・・俺にはこれしかない。」
ユーリの頼みにしては随分と可愛らしいものだった。あの福音との戦闘でも、眉を動かすことすらせず、職務に忠実に励んでいた戦士とはかけ離れたイメージだった。
鉄仮面なのは相変わらずだが、その真剣さが妙に笑えてきた。
「おかしいか?」
「いや、クールだよ。」
「ならいい、お前は俺よりセンスはいい。」
「それは褒めてんのか?」
「当然だ。」
ユーリを見て思ったのは「成長」だった。あった当時は自分の真実のみを語ることしかしなかった男が冗談を口にしている。この男は最初、夢などない、と言って自分がなぜここにいるかすらわからない、と語っていた。アカネや、ヴィンセントと違い、プランのためでもなく、何のためでもない状態で、この驚異的な身体と業を磨いてきたのだ。
信念の元で行われる行動こそ最高のモノだという人から言えば、ユーリは許される存在ではない。目的も、夢もないまま、彼は彼自身が言う空っぽという状態で、メンバーの中で最高の格闘戦のエキスパートであるのだから。
ナイフ数本で、福音に張り付き、コピーとはいえVTシステム相手に切り結べるほどの腕前なのだ。
その男が冗談を口にし、俺を気にかけ、あまつさえ、簪に礼の品を渡そうとするほど、人格面での成長を見せている。この男に信念や夢が付与したとき、彼は一体どこまで己を磨けるのだろうか。まだ、底を見せてないとなると末恐ろしく感じる。
成長してるのは俺だけでない、皆がそうなのだ。訓練機で挑み続けるレジスタンス達も、自分の欠点を直そうとする先生たちも、メンバーも皆が躍進している。
では、俺は今現在どこまで通じるのだろう、
そう思い立ったが最後試さずにはいられなくなった。
俺はナイフをケースに仕舞い、ユーリに手渡す。ユーリがケースを持ち上げたとき、俺は悪戯半分で、ユーリに抜き打ちでの試しを行った。
片腕が埋まったユーリの懐に入り込み、貫手を首筋めがけて行うが、ユーリは左手でそれを滑らせて絡めとり、腕伝わる回転で俺を打ち倒そうとする。俺は回転しつつも、着地し左手でチョップを繰り出していくが、ユーリはケースを宙に飛ばし、その間で使えるようになった利き手でそれらすべてをさばき、気が付けば、俺の首もとに手が添えられていた。
利き手の動きに集中させておいて、本命は左手だったのだ。
おれが両手をあげて降参すると、宙を舞ったケースがユーリの右手にストンと落ちた。
「相手に利き腕が使えなくさせて、流れるような攻撃は称賛に値するが、この距離では相手の視線で動きが見える。お前の視点はよく動く。故に読まれるのだ・・・出直せ」
「上達したと思ったんだけどな」
「悪いが、俺の勝ちだ。あとでスプライトを奢てもらおう。」
「・・・了解」
ため息一つ吐いて了承した。
まだまだ彼らには届かないかもしれない。
少なくとも、宇宙より手が届く距離にいないような気がした。
それでも、目指してしまう俺は水面に浮かぶ月を手に入れようとする動物と変わらないのかもしれない。
それでも、やりたいと思うのは俺の愚かしさから来ているのだろうか。
例の歓迎会が終わった、次の日にはもう、訓練が開始されるとのことで、シン・シテイからそれぞれの専用機を乗せたトラックとそれを護衛する車両によって構成されたコンボイの中、微妙な効き具合のエアコンが掛けられた車内に揺られて早四時間といったところだ。
眠りこけていると、トラックが止まった。俺がその揺れで起きて周りを見ると、運転席のマイクが社員証を車外の男に見せている。車外の男は二人組で、首にスリングでつられたM4カービン銃のカスタムモデルを見せつけていた。二人が身分を確認し、検問所と思われる場所の通行を許可した。
「どこ向かってるんです?」
隣のマイクに聞くと、マイクは企みを企ててるような含み笑いをして答えた。
「忘れられた化石達の世界。ロストワールドさ。まあ見てな。」
俺はその単語に疑問符が浮かんだ、
ロストワールドと言えば、アーサーコナンドイルの小説だと俺は知っていた。
絶滅したと思われた古代の恐竜が実は生きていて、生息している場所をどう呼んでいたのではなかったか
その冒険小説の本の題名がこの荒野とどう関係しているのか。
俺には予想もできるはずなかった。
まさか、翼竜が飛んでくきたり、トリケラトプスが歩いているわけでもあるまいし、と自分で言った冗談に苦笑していると
空を見上げて、腕時計を確認したマイクがつぶやいた。
「そろそろだな」
突然マイクが指を三本立てた。3.2,1とカウントし、ゼロ、と大きく叫ぶと頭上に爆音が鳴り響いた。
それは普段機体に乗っている俺が聞いたことのないエンジン音だった。空港で聞くのとは違う重低音と、その正体に俺は度肝を抜かされた。
旧時代の遺物とされた航空機。しかも、かなり古いはずの対地攻撃機A10サンダーボルトが主翼に書かれたコミカルな翼竜のイラストと共に飛来してきたのだ。
銀翼が熱砂の太陽光の反射によってきらめき、生きている化石は彼方へと飛んでいった。
ISどころか、現代の戦闘機と比べると低速のはずのソレは機体に乗っている俺でも速いと感じた。ハイパーセンサーによる補助がないためだろうか。
とにかく、これでハッキリしたのがここが何故ロストワールドと言われているかだ。
「ようこそ、ロストワールドへ。 忘れられた兵器と兵士に敬礼を」
マイクが宣言する。双眼鏡で前方を見るように言われて、渡された双眼鏡で見てみると確かにさまざまな化石達がいた。
砲塔を横に向き、坂を乗り越えている車両が砂埃を巻き上げながら姿を見せた。60tを超えるMBTでも世界的な知名度をもつM1エイブラムスパワーユニットの唸りを利かせて、坂を乗り越えて、移動しながら、目標に向けて120mm滑空砲を発射する。距離こそ離れてはいるものの、その大きな発射音は腹の底によく響く。
移動しながらの射撃はいつか見た自衛隊の戦車のように見えた。マイク曰く改造された物のテストらしい。
さらに見回すと、今度はPMCオペレーターたちが銃器を扱っているのが見えた。
よく見るM4からAK小銃、アカネが使うM14によく似た銃器に、さらに対物ライフルを扱っているのが見える。マズルフラッシュと発砲音がそれぞれの銃器から出て、強烈な光と音のけたましいオーケストラになっていた。教本で見たダネルNTW20だ。確か、教本には直撃ならISのシールドに傷をつけることができる稀有なライフルと書いてあった。
あれら全てが、ロイの言っていた切り捨てられた男たちと兵器たちなのだろうか。
戦車に航空機、歩兵たち、そのどれもが戦う力があるというのに、戦ってきたというのに、捨てられたというのか。
普通なら、発狂したっておかしくはない。厳に自暴自棄になった人間は多い。それこそ、「マリーン・シュート事件」のように、世界のすべてを呪って破滅への道の道連れを求めて暴れまわったのが世にはたくさんいる。そんな世界の中、このロストワールドに残った人たちは何を思っているのだろうか。いつか訪れる復讐の時を待ち望んでいるのか。必死に今の時代に合わせようとしているのか。それともただ、食い扶持を求めての行動なのか。
そんな疑問を胸の内にしまいながら、俺はロストワールドへの入り口である最後の検問所を通過した。
施設内に入る。熱く熱された大地から、コンクリートで固められた地面に足をつける、それだけで足が冷えてくれているような気がした。しかし、クーラーが効いている割には、あまり涼しくはない。見渡す限り、筋骨隆々の元兵士ばかりで、女性も少なくはないが、兵隊あがりだけあって、その表情にはやわらかさは感じられない。
そんな環境なだけあって俺達が彼らの横を通り過ぎると、怪訝な顔をする。
なぜ、ここに子供が、と無言で訊いているようだ。
「今日は社会見学だったか?」
こちらを見て、冗談めいて言うPMC達が手を振りながら近づき、キャンデイーを手渡してきた。完全に子ども扱いだった。不満はないわけではないが、無言で受けとる。
「向うから見れば子供か・・・」
「仕方ないですよ。私たちは所詮、殻から出たヒヨコなんですから」
「半年近く頑張ったのにか?」
「半年しか、ですよ。」
あれほど、実戦から訓練もやってヒヨコというのには残念だ。一人前になるにはいくつ俺は修羅場をくぐる必要があるのか。
ここにいる皆はアカネの話によると、最近ので、イラクやアフガン。古いので湾岸戦争やソマリア内戦に参加した古参兵もいるらしい。
「詳しんだな」
率直に問いかけるとアカネは答えた。
「私たちが三年鍛えられた場所がここですから・・・おかげで鍛えられましたが体は固くなってしまいましたよ」
二の腕を見せて、その完成された腕を見る。普段から口径の大きいライフルを使うだけはある。筋肉がついて引き締まっている。本人曰く可愛くないのが少し嫌なんだとか
「そんな君が可愛いのさ。」
「どうも」
笑顔で返されるセリフに、俺も笑って返す。こんな関係が続いて早一か月。訓練で俺が聞耐えられるのと、彼女との仲がもう少し進展するのとどちらが早いだろうか。
そんな訓練と何ら関係ないことも思いながら、宿舎の部屋に入る。以前と同じ、メンバー全員の雑居だ。最初の訓練を思い出して懐かしくも思う。
「また、同棲生活か。ユーリ、頼むからナイフ磨きは夜中にしてくれるなよ」
「ならワックスを少し控えてもらおう。酷く匂う。」
「努力はしよう」
ヴィンセントが手前の部屋のソファベッドに寝そべり、ユーリが自分のベッドに腰掛けた。
IS学園と比べるとレベルは下がるが、それでもビジネスホテル並みの設備と環境がそろっていて、悪くない部屋だと思える。
それぞれの荷物を仕舞っていると電話機が鳴り出した。
受話器を取ると、いつだか聞いたことのある男の声だった。
「学園組だな? 一時間後に、訓練所Dに集合してくれ。遅れたら、無駄な手足に喝を入れてやるから、そのつもりでな。」
「わかりました。ところで、どこかで会いませんでしたか?」
受話器の向こうで苦笑がこぼれた。
「ああ、海岸沿いでメソメソしてるお前に会った片割れだ、だからと言ってやさしくしてくれると思うなよ。こっちもペイが良くないと困るからな。 じゃあな」
電話が切られたので受話器を置き、振り返ると三人はすでに戦闘準備を完了していた。それぞれが迷彩服を着ている。アカネは上着だけ脱いでパトロールキャップをかぶっている。、ヴィンセントは正しく来ているが、ユーリは上はTシャツのみだ。
「早いな。」
「遅れるとまずいですから・・」
「そんなにヤバいのか?」
三人の先輩は顔を見合わせていった。
「神様や仏を感じるより、むしろ居ないってことに気付くほどさ」
俺は天を仰いで自分の無事を祈った。
「走れ!走れ! ISもパワードスーツなら人とどう違うというんだ?! 貴様の限界が機体の限界に繋がるぞ!根性見せて撃ってみろ!」
M4カービンを手に持ちボデイアーマーや予備弾倉をしまうチェストリグをつけて、走っては、出てきた的に撃ち、出ては撃つを繰り返す。走るたびに体に着けた装備員がガチャガチャと音を立てて、揺れ動き重心を崩しにかかる。転ぶのを防ぐのに足を踏ん張る。そのたびに砂漠の砂に水を垂らすように体力を無尽蔵に奪っていく。
出てきた的が十を超えるころには視点が揺らいで、全く当たらない。
さらに意地の悪いことに、簡易な川を模したポイントに着くと、銃を水に触れさせないように、両腕で高く上げなくていけないという訓練も盛り込められて、腕や足に負荷がかかる。休憩と言われるまでか、倒れるまでか、限界まで走って撃つ、を繰り返す。
こけて、倒れて立ち上がるのにも、体力と罵倒に耐える精神力が必要とされる。
「わざとコケて同情でも引きたいのか!? いいだろう、コースを三周追加してやる!
ハッピーか?!」
泣くことも許されずに、俺は走り続けた。
そんな中、俺よりも長いライフルを担いで、射撃を外さないアカネは流石だ。女性ならではの集中力を生かし、命中させていく様は芸術的だった。
つかの間の休憩の後に行われたのは、徒手格闘だった。
万全なら、多少は抵抗できたかもしれないが、俺は目の前のオペレーターとの戦いに集中できた方ではなかった。1,2とリズムよく襲い掛かってくるジャブを上半身のみで避けろといわれても、途中で足がふらりとして、上半身をうまくコントロールできずにいい一撃を食らう。一応ヘルメットなどをつけて防護しているとはいえ、現役の兵隊のそれはグローブ越しでも恐ろしく威力が高かった。
「もう終わり?」
相手の女性オペレーターが挑発を繰り返す。俺はされる度に立っては立ち向かい続ける。
「まだだ!」
今度はこちらから、攻撃も加えて目の前の仮想的に挑む。
相手はクスリと笑い、指で来いと誘ってくる。
「来なさい、ルーキー」
女性オペレーターは模擬専用のゴムナイフを投げつける。古風な決闘を申し込んできたのだ。受け取って、2回の頭部を狙った刺突を最初にお見舞いするが、相手の熟練した動きは流石だ。最小限の動きで、首を動かしつつも視点を変えるはない。ズルッと蛇のようなしなやかさを持って後ろへと潜り込んで来たのを、模擬ナイフを逆手に持ち替えて、大振りになったが、後方に振る。相手は刃の表面でいなして、俺の腕を上へと跳ね上げた。
ガードが上がり、無防備となった胴体めがけて切っ先が迫る。
俺はバックステップをして距離を取り、弧を描くようなハイキックでナイフを叩き落とした。獲物がなくなったのを好機とみて、逆手に持ったままナイフの刃を首もとへと滑らせていく。
しかし、それがいけなかった。こちらがどこを狙ってくるかを正確に読んでいた相手は腕をつかみ、柔道のような投げ技で俺を打ち倒した。
肺から空気が出されて、せき込んだ俺の心臓の位置にピタリとナイフの切っ先を当てて。デッドエンドとされた。
「よく訓練されてるし、発想も合格よ。ただ、一撃で決めようとしすぎ。機体なら相手の関節を狙っても有効だし、人間なら、それだけで倒せる。覚えておきなさい。」
ありがたい講釈を受けて、立ち上がるように言う。俺が立ち上がった時、隣では面白いショーが起きていた。ユーリがオペレーターを三人倒し、四人目に入っているというのだ。
流石に自分の土俵に立っているだけあって、その強さはここでも変わらない。
それを横目で見ながら、俺は一人目を倒せるように努力していた。
夜間になって初めて行われた訓練は、仮想空間内の集団訓練だった。俺たちと同じような新入りの四人組相手と戦闘する。昼間に着けた野戦用の装備を持たされて、林の中を全員で歩き敵を発見次第撃滅するというものだ。
シミュレーションを用いられて、仮想空間の緑の地獄を歩いていく。
さすがのリアルティで、高い湿気を再現し、汗で服が張り付いて不快に思った。
数十分ほど歩くと、ヴィンセントが全員に止まれ、とハンドサインを出した。
「何かあったか?」
俺が聞くと、ヴィンセントは姿勢を低くするよう伝えてきた。すると、目の前にライトの明かりが見えた。
「アカネ、距離は?」
「目算で400m程です。」
伏せの状態になったヴィンセントが地図を広げて、場所を確認する。しばし、考え込み指示を出し始めた。
「弾、右手の林にクレイモアを設置して、連中が来るのを待て。ユーリ、敵集団の左に回り込め、位置に着いたら僕とアカネが撃つまで待機し、発砲後はクレイモアの方向へと追い込め。」
「了解だ。」
ユーリが答えると、すぐに林の闇の中に消えていった。アカネがM14の狙撃用のm21を構える。ヴィンセントがミニミ軽機関銃を構えている間に俺がクレイモアの設置に取り掛かった。林の影に隠し、リードを伸ばして起爆スイッチを持つ。準備完了と言おうとしたとき、通信が入る。
「アカネです。弾、そちらに敵集団が接近、ヴィンセント、策は?」
通信の内容を聞いて、ちらりと覗くと、フラッシュライトの輝きが確かに近くまで来ていた。M4カービンのセレクターをフルオートにして、指示を待っていると、ヴィンセントから通信が来た。
「弾、作戦変更だ。クレイモアを起爆して、手りゅう弾でビビらせろ。僕とアカネで援護する。本命のユーリがとどめを刺すまで粘れ。」
「了解!」
起爆スイッチに力を籠め起爆。無数の鉄球が相手チームに襲い掛かった。さらに、手りゅう弾を投げ込み、爆発音と衝撃でビビらせていくと、援護が開始される。
猛烈な弾幕とマークスマンによる正確な射撃で身動きを封じていく。
一人が、走って投げようとするところに、M4カービンの照星で狙いをつけて、発砲。
弦が切れた人形のように一人が倒れこむ。
混乱している二人が撤退を介したところにユーリが合流し、50mもない近距離でAKs74Uによって二人を倒し、俺たちの勝利となった。
シミュレーションが解除されて、教官役の老兵が採点をし、明日はこれよりも手ごわくなる、と一言述べた。
俺はヴィンセントの指揮のもとなら負ける気がしないと、彼に絶対の信頼を持っていたため、怖くは感じなかった。
シミュレーションも終わり、これで今日は終わりかと思いきや、最後の訓練があるらしい。
「最後って?」
「アレだよ」
ヴィンセントが指さしたのは、巨大なドームだった。その外見はIS学園のアリーナを想像させた。東京ドームのように外殻で覆えば、ああなるというのだ。
「本物の模擬戦か、でも高度はかなり限定されるな。」
「そのかわり、広さはある。ちなみに、この訓練なんて言われてるか知ってるか?」
「いや、知らない」
ヴィンセントは意地悪そうに笑って答えた。
「共食いさ。」
俺はその言葉の意味をすぐに理解した。俺の相手は彼らだということだ。未だかつてない緊張感が駆け巡った。初の彼らとの戦闘。それがいかに苛烈になるかは想像に難くない。
月明かりがドームへの道を照らす。古来の剣闘士たちのように、俺は首に下げたラプターの待機状態を握り、決闘場所へと向かう。
一度は望んでいた彼らとの闘いのために
訓練編ともいえる夏休み編。
後三話ほどシリアスして、後はコメデイの予定です。
出てくる銃器、兵器等は自分の趣味ですが、使い方が間違っている等の指摘、
または話の感想、批評あれば、書き込んでいただけると嬉しいです。