苛烈な十字砲火の中を、俺たちは駆け抜ける。耳元にパルスライフルの弾丸が掠めて、神経に直接響くような嫌な音で、戦慄する。
目の前には楔形の隊形を組んだバルドイーグルが火力を前面に出して、こちらの行動を押さえつける。
「散らばるな、密集しろ! ばらけたら、手籠めにされる!」
ヴィンセントの指示の元、三機で固まり、グレイイーグルの火力とハヤブサの射撃精度の高さで対抗する。俺のラプターは軽機関銃とアンダーバレルのランチャーでこれらの合間を補完する。
包囲網を抜けたユーリは敵機の後方から、いわゆる嫌がらせを行う。ダガーナイフとショートカービンで敵機の集中力を乱していく。
だが、ここで敵機は数の多さを利用し、三機をマーダーに向かわせる。
一見戦力分散の愚に見えるが、戦力差は三対一で変わらない。むしろ適切な配分と言えるだろう。
数の上で不利なら、どうすうるか。答えは各個撃破しかない。
「アカネ、弾。十秒後に全火力をもって敵に楔を打ち込め!ユーリ、分断させたら、はぐれたやつに集中! Ready?」
「任されて!」
「このままじゃ、潰されるもんな!」
「了解だ」
グレイイーグルが肩部ハッチを開く。得意の機関砲も用意し俺とアカネの前に立つ。
一番装甲の厚いイーグルが盾役を買って出るのだ。
その陰に隠れて、パルスライフルを俺とアカネは呼び出し、そのタイミングを待つ。
ボルトを引き薬室に装填し、心地よい作動音と共に攻撃の意思を表明する。
「撃ち方ぁ!」
マイクロミサイルと曳光弾、パルス弾、さらにミニバルカンまで放つ、文字通りの一斉発射だ。凄まじい数の薬きょうと、ミサイルの噴射炎があたりに広がる。地面は先ほどまで、土の色を見せていたのが、金色一色に塗りつぶされていく。
並の兵器では再現不可能な濃密な火力。だが、敵機のバルドイーグルはこちらの動きを読んでいた。9機のうちの二機が大昔のファランクスを思い起こさせるほどの大盾を展開し、これらの火力を受け止めに来た。機関砲とパルスライフルを受け止めて、後方の二機がミサイル等の大型の弾頭を撃ち抜き、迎撃する。
分断されると思われた敵編隊は迎撃と防御で、隊形を維持し、攻撃のチャンスを与えなかった。
突撃しかけたマーダーは後退して、三機のバルドイーグルと射撃戦をする。
ふりだしに戻されこの作は失敗となる。
敵機の行動はかなり理にかなったものだ。
横目で戦況を見る。俺たちと離れた場所でマーダーが一機に仕掛ける。
カービンの銃弾を後退とロールの合わせ技で回避するバルドイーグルの死角を突き、
ダガーナイフを投擲。あっさりと打ち払われるが、がら空きになった脇腹めがけてヒートナイフを突き出す。バルドイーグルはライフルのストックを犠牲にすることでこれを防御し、残った二機が銃剣による刺突攻撃でマーダーを追い払う。
マーダーにとって厄介なのは一機に切りかかれば、残った二機に背面を狙われることにあったユーリを相手にする三機は包囲するのではなく、三機ひとつでまとまり、格闘戦に入れば、すぐさま手が届く距離を維持しながら戦闘をする。
イレギュラーとなる奇襲と攪乱の名人であるユーリをすぐに倒すのではなく、自由な行動を封じ、長期戦にて消耗させ戦力としての働きをなくす。
徹底的に無理をなくした堅実な戦法だ。
奇をてらわず、火力と数の差ですりつぶす。
実際、専用機としてこちらは火力でどうにか拮抗している状態だ。
ヴィンセントが大雑把に撃ち、アカネと俺で正確に狙っていくが、盾持ちとその援護組で
決定打にならない。さらに意地の悪いことに後方に位置する五機のうちの一機はDMR9、すなわちアカネと同じマークスマンで、正確な射撃で俺とアカネの攻撃を阻害する、それどころか、ときに直撃させることすらある。
ジャンケンで言うところの引き分けを何回も繰り返されているようなものだ。違うのは、弾数に限りがあり、弾数では向うに分がある。撃ち合い続ければ、こちらが早く限界にきてしまう。そうなれば、無抵抗の羊だ。容易く喰われる。
この場合、俺たちに与えられる唯一の利点は時間だ。この時間内にできるだけ早く回答を生み出さなくてはならない。
軽機関銃で、三点バーストで、敵機に応射していると、ヴィンセントの声がレシーバから聞こえた。
「アカネ、パルスライフルのまま待機してくれ。指揮官機を狙い打つ。」
「了解、ですがどうやって・・・」
「ユーリと弾次第だな。ユーリ、センサージャックで敵機全体にジャミングを掛けろ。
弾、僕の合図とともに、敵部隊の中央五機のところへ殴り込め、援護は僕がする。」
指揮官機を狙う。それがヴィンセントの出した勝利法だ。敵機の数が多いなら、脳を潰せばいい。数が多いだけ混乱が大きいと見込んだためだろう。
それをワンポイントで潰すためにアカネの一撃必殺に近い狙撃で確実に倒さなくてはならない。指揮官機を見つけるのは簡単そうで、難しい。この場合はユーリと交戦している三機をまず除外できる。戦場の全体を正確に知りえるための位置にいなければ、的確な指示はできない。
相手はPMCオペレーター、つまり陸戦中心の兵士だ。絶対に、兵士時代の経験から、意表を突くようなポイントから指示は出さない。
当然、盾とその援護組が除外され、残りは五機。このうちのどれかだ。
絞り込むにはこちらが動く必要がある。
「いいか、カウント行くぞ!」
ラプターのウィングスラスターに火を入れる。チャンスはそうない。瞬時加速だけでは足りない。ライフルを仕舞い、ナイフとレーザーソードのみの、武器の重量すら軽くして
コースを思い描く。
狙うは中央。下降をして、敵機の死角に入り込み、防衛線を突破。下からアッパーを掛けるように急上昇して、五機のいずれかに攻撃、そして急上昇と円のような軌道を描き、帰還。イメージでは成功する。そう信じて、カウントに耳を傾ける。
「3.2、1 Go!Go!Go!」
ジャミングがかかり、敵部隊に一瞬の乱れが生じる。そこに無誘導ロケットと機関砲の弾雨を浴びせかけて意識をグレイイーグルへと集中させる。
盾を持った二機が前に出て、これを防ぎ、やはりもう二機が援護者射撃で寄せ付けないように動く。射撃のタイミングで合わせて、突貫。下方へ潜り込んで、四機の壁を突破し、中央の2機がパルスライフルをフルオートで頭を押さえ、DMR9を構えた一機が、スコープを覗く。DMR9はパルス弾と比べれば低速だが、口径の大きさでそのストッピングパワーはピカイチだ。
だが、忘れてないか。それをよく使っている乗り手がコチラにいることを。
「それなら、私も持ってるんですよ!」
後方から、同じライフルを持ったハヤブサが、発砲しマークスマン役のバルドイーグルの頭部に直撃させる。すぐさま、パルスライフルに切り替え、そのスキを埋めるようにして俺はガーランド型のパルスライフルを一クリップ分三機のバルドイーグルに撃ちこみ、
グリップが排出されると同時に息つく間もなくグリップを装填し、ショルダータックルで中央の一機を吹き飛ばし、残る一機に仕掛ける。
「大将首か?!」
パルスライフルを仕舞い、レーザーソードの光刃を形成、エネルギ―で構成された暴力的な光を叩きつける。
「弾、右だ!」
ユーリが叫んで、カメラアイで右を確認すると、光学迷彩で隠れていた一機が銃剣付きのライフルを構えているのが目に入る。胴体をひねり、鈍く光る銃剣を回避したが、ストック部分を腹にたたきつけられる。
嘔吐感に襲われながらも、ソードで反撃し、ライフルの銃身を溶断し、左手に持っていたナイフで頭部の右側を吹き飛ばす。
すると、敵部隊の一機が動揺したのか、ユーリから目を離してしまう。
心なしか、グレイイーグルとハヤブサへの弾幕も薄くなった。
それを見逃すほど、ヴィンセントは節穴ではない。
「アカネ、指揮官機はソイツだ! マークする。一撃で決めろ!」
全機にデータが送られ頭部の右側面を吹き飛ばされた一機にマーキングされる。
HMD内でソレを確認しつつも、俺は後退せずにその場にとどまる。
「弾、撤退しろ!」
「無理だ、逃げれば狙われる!」
「ったく! 」
グレイイーグルがさらに火力を増幅させる。機関砲に残っていた弾薬もついにそこを尽きるが、すかさず、グレネードシェル入りのショットガンで艦砲射撃のようにバルドイーグルの隊列を引き裂いた。俺はそのできた穴から、抜け出すことに成功したが、バルドイーグルが一機、パルスライフルで隙を見せた俺に狙いをつけ、引き金を引き
ウィングスラスターや胴体に損傷を受ける。
「アカネ!」
彼女の名前を叫ぶ。早いところ指揮官機を倒してもらわなくては、こちらの勝機が全て消え失せてしまう。そんな俺の焦りと反して、アカネは深呼吸をして禅のように落ち着いている。構えをより理想的なポーズにして、一発目を発射。盾持ちが前に出てこれを防ぐ。
ボルトを操作し次弾を装填し、再び発砲。またしても、シールドに当たるのみだ。
周りのバルドーイーグルがアカネ機に攻撃を集中させるために包囲を小さくする。
火力面で不利になり、こちらが押され始める。
「右に1センチずらし、そのまま、いい子だから・・・」
深く息を吸い込んで吐き出し、三発目を放った。大口径のパルス弾が、一寸の狂いも無く
当て続けたシールドをついに貫通した。貫通した弾丸は勢いを弱まらせずに指揮官機の頭部の損傷部分を直撃した。
装甲貫通、搭乗者死亡の判定を受けて、指揮官機の動作が停止する。
「・・やった!」
喜びと達成感にあふれた声が全員に届いた。
指揮官機を失ったためか、相手側の隊列にスキが生じる。普通に見ても小さいものだ。
だが、それこそが重要だ。
片手でショットガンの仙台を動かし、排莢をするグレイイーグルから全機に通信が伝わる。
「よくやった。全員反撃だ、弾、僕の後ろに来い、ユーリ、タイミングを見て突撃!僕が分断する。あとはわかるな?」
「任せておけ」
グレイイーグルが加速し、両手に持ったショットガンの散弾と榴弾で敵機に向かって放っていく。俺はグレイイーグルの真後ろに着き、盾のようにする。
同時にマーダーが動いた。三機のバルドイーグルが囲む中、センサージャックを掛けて照準にズレを生じさせてダガーナイフで一機のスラスターを破壊。できた穴からすり抜けた。
あちらが動けば、こちらもだ、バルドイーグルがミサイルハッチを開き、グレイイーグルに誘導弾を殺到させる。グレイイーグルのショットガンで、迎撃していくが爆風を抜けた後に待っていたのは三つの青いマズルフラッシュだ。
グレイイーグルの装甲が破壊されていき、行動は限界点に達しようとしている。
「ヴィンセント!」
アカネの援護射撃が入り、一機のバルドイーグルの頭部を貫通。二機目の撃破となるが、
敵機は指揮官ではない僚機が倒されたぐらいでは動じない。
「死んでろ、間抜け!」
むしろ、戦意向上に使うものすら出る始末だ。
だが、それも少し遅かった。グレイイーグルが突破に成功し、後ろの俺の出番となる。
レーザーソードとナイフの両手もちで、まず盾持ちの背後を着き装甲の少ない首周りの可動部にレーザーソードを突き立て、撃破する。
指揮官機の護衛にあたっていた一機がククリ刀を抜き放ち接近するのを捉え、
すぐさま迎え撃とうとするところに思わぬ障害が発生する。
死に体のバルドイーグルが右腕をつかんでいたため、その場に釘づけにされてしまった。
舌打ちをしながら、ソレを蹴飛ばし崩れた体勢のまま、ククリ等を受けとめ、自慢の足技で脇腹を蹴るも、通じず、足をつかまれて地面に投げつけられる。無様に転がらずに投げられた勢いをスラスターと足の踏ん張りで相殺させるも、敵機に用容赦はない。
カメラアイに映し出されるバルドイーグルが急接近し大に映し出され、ククリを振るう。
ナイフとレーザーソードで受け止めて、近代に似つかわしくない原始的な攻防戦へと発展する。
敵機の技量も高く、一見力任せにしているっているように見えるがレーザーソードを受け止めるときは刀身でそらし弾くといった防御に回るが、ナイフできた場合は半歩下がって、リーチと刃の強靭さで攻めに転じる。
上手く使い分けているところから、相当の使い手だ。
斬り合いに集中していると、HMD内に警告が走る。ロックオン警報だ。
いつの間にか回り込んだ何機目かわからないバルドイーグルが二機、確実に仕留めにくるためにライフルを構えている。
―――――――万事休す、やられる!?
その時、巨大な発砲音がして、一機が吹き飛ばされる。
さらに、もう一機が首の隙間にヒートナイフを刺しこまれて、暗殺された。組み付いたマーダーがオイルを返り血のように浴びてバルドイーグルを見下ろす。
「これで四機目!」
「いや、五機目だ!」
ラプターの足でひび割れた地面を蹴り、砂と土をすくいあげて、敵の視界を遮り、
ある動作をして、レーザーソードを振るう。すると敵機は攻めに転じた動きをしてククリでレーザーソードともろに激突し、ククリ刀と装甲を切り裂かれ、裂かれた装甲にナイフを突き立て撃破する。
とっさに拡張領域に仕舞い、もう一度左右逆に展開する
相手から見れば、ノーモーションに見える故に動作を誤ったのだ。 ISや機体に乗り慣れてない彼らには想像できない芸当だ。
これで五機目、されど、まだ五機目だ。
指揮官機を失ったはずのバルドイーグル隊だが、統制を取り戻しつつある。
それでも、動くに動けないのは、グレイイーグルの火力によって制限されてるに他ならない。
俺達はグレイイーグルに並び、その砲火に加勢する。
さまざまな弾種が飛び交い、彩豊かな戦場になる。花火のようにきれいでもあるが、これは模擬戦で使っているのは弱装弾とは言え、実弾だ。
ルールに則って戦っているので、死人こそ出ないかもしれないが、けがもするし、そこに漂う緊張感が俺たちを引き締める。
撃破した者のライフルさえ拾って、火力面で優勢に転じた。
一機、また一機と撃破し、数的不利も覆しつつあると思われたその時、後方から無誘導のミサイルが飛来しグレイイーグルに直撃する。
後方にバルドイーグルが一機忍び寄っていたのだ。バルドイーグルは未だ撃墜判定の受けていないグレイイーグルにとどめを刺すべく、銃剣とハンドガンを持ち、爆風の中をかき分けていく。そして、バルドイーグルは突然現れた手によって首をつかまれた。
半壊状態になったグレイイーグルがカメラアイを強烈に発光させて、通信の届かない敵機に搭乗者の怒りを代弁していた。
「殴られ続けるのにはもう飽きたんだよ!」
握力だけで、機体と頭部の信号をカットし、カメラアイから光が消える。
それでも抵抗を続けるバルドイーグルを力任せに地面に三回叩きつけ、両手を組んだハンマーで頭頂部にめがけて全力で殴りつけて、一機撃破する。
「嘗めやがって・・」
口調汚く罵りつつ、ライフルを奪い取り射撃を再開する。
次々と襲い掛かる敵機を撃破し、戦局は決した。
訓練も終了し、自室で待機を命じられた俺たちは死屍累々と横たわっていた。
12機の量産型を相手にして,勝ったとはいえ、ボコボコに撃たれ、蹴られ、殴られてを全身いたるところに受けて、全員がふせっている。
正直、全員待機以外の指令が来た場合、軽い暴動が起こしても許されるくらいだ。
疲労感が大きすぎて一歩も歩けず、普段ならベッドから数メートルもない冷蔵庫が彼方の距離に思えて、歩いていく気になれなかった。
「アカネ、スプライト取ってくれ・・・冷蔵庫にあるから」
アカネは布団に突っ伏したまま、答えない。屍のようだ。
「逝ったか・・・・ヴィンセント」
同じく返答はない。仰向けになって光のない虚ろな目で天井を見ている。例えるなら薬物中毒の現実から意識がかい離したようなもので、我ここに非ずだ。
「・・・狸寝入りするなよ。」
「君、やっぱり男には厳しくない? 」
ごろんと、寝転がって冷蔵庫に這って行き、扉を開けて、力なく缶を投げ、自分も寝転がりながら、それをあおるように飲む。
俺は口を開けて、そこに流し込むだけだ。もはや、口をつけることすら疎い。
「もうあんな訓練は勘弁してほしいな。」
「気が付けば、回り込まれるわ。アカネ並みの射撃の名人はいるわ。ククリひとつで勝ちに来るわ。しかも・・・まだ訓練して一か月も経ってないでアレだからな。」
ヴィンセントは半ばあきれ顔で語る。訓練期間はレジスタンス達と変わらないが、彼女たちとはかなり違う。
彼女たちがISについて万全の教育を受けているために、瞬時加速などの技術が容易く習得できたのに対し、彼らは殺しのプロだ。射撃や格闘術、集団での戦闘はすでに完成されている。あとはそれらをどのように機体に反映させていくかだ。
これほど、末恐ろしい新米もそうざらにはいないだろう。
「あのバルドイーグルって量産機だよな? アレでISに対抗できるのか?」
ヴィンセントは一拍置いて答えた。
「可能だよ。シールドによる防御とグレイイーグルで証明された装甲にハヤブサの推進システム。さらにマーダーで小型化による弊害を確認済みで、これらを統合したアレがそこいらの技術者もどきの機体に負けるわけないさ。」
「武器が拡張領域に仕舞う方式じゃないのも、考えた末か?」
「そうだよ。訓練で戦闘にかかわること以外をできるだけ少なくするためっていうのと、慣れ親しんだ方法の方が喜ばれるのさ。パルスライフルシリーズもそのためさ。一丁で十分な攻撃力を与えつつ、なるべく既存のライフルと同じ作動方式を使うことで白兵での経験をダイレクトに使えるようにする。そんなとこだ。」
携帯端末を使い、そのスペック表を俺の端末に見せる。
スペックとしては尖ったところはないが、ラファールを上回るスペックだ。バックパックやカメラアイの交換で仕様を変更できる点や、インナーフレームで搭乗者の生存率向上と整備性を高めている点も俺たちの機体にみられた長所だ。特に整備性の点だ。これがあったからこそ、福音戦で最低限の能力をはっきできたのだから、採用したのは英断と言える。
俺たちを使うことで、これらの技術が信頼性と実績を獲得している。
それは嬉しいことでもある。訓練で見せつけた性能は俺たちの今までを肯定するものなのだ。いわば、すくすくと育つわが子の成長を見守る親の気分といっていい。
たとえ、純軍事的な生産物だとしても、だ。
俺は寝転がって、プランそのものを実感していた。ようやく完成を見せた量産機。あとはいつ、どのようのして、これを発表するかだ。だが、俺たちの役目は終わってないし、俺たち自身が納得していないことがある。
それは、学園の専用機持ち全員の撃破だ。あの事件以来、俺たちの心に残ったのは悔しみと惨めさだ。自分に技術があれば、と言う悔しみ 全ての功績が無意味にされた惨めさ。
それらすべてを払しょくするのと同時に夢とプランを成就させる。
俺達の望みだ。叶えなくてはならない。
「やらないとな・・・」
一人つぶやいていると、部屋についているスピーカーから声が流れた。
「各員、そのままの姿勢で聞いてほしい。訓練と仕事だらけの毎日をアルコールも入っていないスプライトで我慢している連中がさぞ多いことだろう。
誰だって、たまには泡のでるキレッキレのジュースで一杯やりたいし、つまみに800gのステーキを食べたいものだ。
そこで、今夜1900に小さな勇者たちを祝う会と称して、飲酒を許可する。
近所で狩ったイノシシもある。遅れたやつはその分酒・・・・ジュースがなくなるから遅れるなよ。 以上だ。オーバー」
扉の向こうから、歓声がとどろいた。男女関係なく人の出せる最大の声量で叫んでいるようで、防音性もしっかりしているはずのこの部屋でさえ、それが十分に聞こえた。
窓を覗くと訓練所の射撃場で空中に向けて民兵のようにライフルで爆竹をならす軽さで、喜びを示す者すらいる。
「パーティーだってさ。」
「行きましょう。主役は私達らしいですし」
「・・・主賓がいかなければ始まらんな。」
「お前ら起きたのかよ」
むくりと、屍同然だった二人が起き上がって、ユーリは洗面所へ、アカネは俺の肩に手を回し、一緒に行こうと誘う。俺はその誘いを快く受け入れて立ち上がる。
時計を見ると六時半。あと三十分と言ったところだ。
俺は振り返って言った。
「さ、パーテイに行こう。 本当のパーテイだ。」
全員が賛成の声を上げた。
爆発的なテンションの大人たちが、シシ肉の丸焼きをスライスしたケパブのような料理を口に放り込み、ビールで飲みこむ。
二週間ぶりだったらしく、氷のように冷やされたビールを飲むのは彼らにとって至高の幸せらしい。酒の飲めない年の俺にはまだわからないが。
いつだったか、祖父が禁煙した後の煙草は上手いと言っていたことがあったが、それと似たようなものだろうか。
横では、女性オペレーターにちょっかいを掛けようとした男がひねりあげられ、写メを取られたり、ショットシェルの火薬で焼き肉を作る破天荒なものもいる。中央ではメキシコ系の三人がギターをもって歌い、バックミュージックまでそろっていて本当にパーティだった。
「経費でシシ狩りか? 後でアルフレッドの爺様にキレられるぞ。」
「気にするな、正当防衛だよ。で、要るのか?要らないのか?」
「もちろん、いただこう。」
行列に並ぶ俺の前では何やら経費で狩った、狩ってない、の話が起こっており、何とも言えない気分になる。さすがは、大人。大義名分も作成済みだ。
前のオペレーターが列から離れて俺の番となる。
「お一ついただけますか?」
「おう、プランの少年か。任せろ。」
そういわれて皿に置かれたのは前の人より一回り小さいものだった。
「小さくないですか?」
「仕方ない、俺を撃墜したからな。お返しってやつだ。彼女と分け合うといいさ。」
少し意地の悪い笑みを浮かべて、今日の訓練の対戦相手の一人は仕返しを果たしに来た。
どうやら、ククリ刀使いの人だったらしい。
ステーキと彼の器の大きさは完全に比例しており、そのことを皮肉ってやろうかと一瞬考えたが、
白兵では分が悪いため、歯噛みしながら去ることにした。
メンバーの集まるテーブルに座り、そのことを話すと皆、同じ目に会っていた。
「次会ったらもう一回撃墜してやる。」
俺が意気込んでいると、ユーリがそれに予測できる事実を述べる
「次は皿の上に何も来なくなるな。」
「汚い大人ですねぇ・・・」
愚痴を言いながらも、ナイフとフォークを扱い、ステーキを小さく切っていく。
シシ肉は癖こそあるものの、焼き具合がちょうど良く中々の味だ。
それを飲み込んで、ふと何となく隣のアカネを見やる。セミロングの真っ直ぐできれいな髪の毛が風に吹かれている。
こちらの視線に気づいたアカネがほほ笑む。
「何か?」
「いや、見ていただけだ。」
「ステーキなら分けませんよ。」
ステーキの皿を隠しながらほほを膨らませるアカネに俺は多少気障なせりふを言った。
偶にはこういうのもいい。そういう気分だった。
「見ていたのはそっちじゃないよ。」
「・・・・気障なセリフは苦手です。」
そう言いつつも、満更でもない顔をするのが可愛いところと言える。
少しニヤついてると、ヴィンセントが書類をもって現れた。
「イチャついてるところ申し訳ないが、僕らはまだプランの先兵だってこと覚えてくれよ? 仕事はまだあるんだ・・・・・と、説教は置いといて皆さまにお知らせです。」
一つ咳払いをして、ヴィンセントは書類の内容を発表した。
「夏休みの残りは休暇になった!夏の思い出づくりといけるぞ、諸君!」
この日、一番の歓声を上げて、俺は舞い上がった。アカネも同じように飛び上った。
ユーリはほんの少し笑って、楽しみにしているそうに見える。
陽気な音楽を聴きながら、俺たちは踊るように休暇の到来を喜んだ。
少なくとも、この時は・・・
シリアスも終了です。
間話を一つ書いて、初のコメディですので、軽い感じで見てくれると
嬉しいです。
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