IS to family   作:ハナのTV

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実は不幸な人は意外と多いという話です


the others

 

 

The others

 

 

 

 

 

 

コーヒーを一口すする。

インスタントの香ばしくも、おいしくもないコーヒーを飲み私は心を落ち着かせて

仕事をこなそうとする。

 

第12分署、それが私の職場だ。シンシテイでこの場所を知らない警官はいないと言っても過言ではない。

 

多くの警官たちは口をそろえて、言う。「ブラック署」と。何せ担当地域で起きる事件が異質すぎるからだ。

 

これまで起こった事件を例に挙げると、ゴルフバッグをガトリングに 掃除機をスナイパーライフルに改造した訳の分からない殺し屋を逮捕したり、年に二回のペースで吹き飛ぶある御曹司の隠れ家。

 

とあるエンターテイナーもしくはアイドルの来日に起こる暴動の鎮圧、極めつけはホテル桃源郷周辺で起こる暴動の鎮圧に人員を駆り出される始末だ。

 

そして、入ってくる警官はどいつもこいつもトンデモナイ人材だらけと来ている。

神に嫌われた場所と言うべきか、悪魔に魅入られた場所と言うべきか悩みどころだが、

警官に休みはない。

 

今日も日々ストレスで薄くなる頭髪と不逞な犯罪企てる犯罪者と、帰ったら小遣いを減らすと宣告する妻と戦うために私はデスクに座るのだ。

 

「署長、事件です」

「そうか、いつものことだが、何故私の所に報告するのだ?」

「それぐらい察してほしいのですが・・・まあいいでしょう」

 

私の元で事務をこなしてくれる彼女は感情もこもってない声で返し、メガネを掛けなおす

もともと、スタイルの良さで選んだのに、一度も触れてない。

そんなガードの固い優秀すぎる彼女はいつものようにドライに接してくる。

 

「君、偉そうじゃない?」

「オールドシティで爆発物が見つかったとのことです。見つかったのは対戦車用のロケットとか。」

「無視か・・・・そんなのいつもじゃないか」

 

この分署においてはそんなことは些末でしかない。パトロールしていれば、道端でテロリストを見つけられるような区域なのだから。たとえ、ISが不時着したって普段通りで過ごせる自信が私にはある。

 

「隣の署から応援を呼んで、それから消防にも連絡。けが人等は?」

「けが人はいないそうです。それと」

「それと?」

 

事務の娘は少し汗をかいて言った。

 

「ミサキ・ホーキンスが確認されました。」

「全員、出動!! 本書から応援を寄越せ! スワットチームもだ! 一個小隊・・・いや二個中隊だ!」

「そんなにいません」

 

 

署内にアラームが鳴り響き、厳戒態勢となる。デスクで居眠りしていたアイツから、署に来ている美女を口説いたヤツまで警官としての本能が飛び起きたかのように行動する。

パトカーはサイレンを鳴らして発信していき、すぐさま対策本部が設置される。

この間、七分だ。

 

「状況は?」

「対象はマネージャーと友人を引き連れて行動中。メキシコタウンに向かっている模様です」

「被害は?」

「マンホールが吹き飛び、10世帯が停電」

 

その報告に二人の警官がゴクリ、と喉を鳴らして、焦りを表情に出した。

 

「嵐の前の静けさだな・・・」

「ああ、ヤツはまだ本気を出しちゃいない」

 

私は全員に聞こえるように拡声器と通信機を使って、恐怖と戦う警官たち、すなわち私の部下を鼓舞する。

マイクを取って、一つ深呼吸をして口を開く。

 

「落ち着いて聞いてくれ。今回の来日は予想できなかったが焦ることはない。犯罪は常に起こり得るものだ。我々を待ってはくれないし、いつ起こるかも教えてはくれない。

だが、諸君は警察官である以上、これらの被害を最小限に抑えなくてはならない。僧院の奮起に期待する。なお、ミサキ以外の犯罪などの厄介ごとはこの際邪魔なので、全力で取り締まって後顧の憂いにないようにしてくれ。諸君の奮起に期待する」

 

全員が声を上げて、それに呼応する。この分署にはただ一つ誇れるところがある。

それは、検挙率と事故発生率の低さがナンバーワンだということだ。

 

「あと、坊ちゃんの家が吹き飛んだそうです」

 

事務官が思い出したかのように言った。

 

「あっ そっちはテキトーで」

「はい。あと、例の件ですが・・・」

 

ピクリと私の耳が反応して、詳しく聞く必要に駆られたので事務官に問いただした。

 

「来ているのか?」

「ええ、そのようです。」

 

この非常時に何と迷惑な時期に来るのだと憤慨しつつ、私は詳しい情報を聞く。

 

「特徴は?」

「白髪が混じった四十代の男で紳士然としているそうです。体型はスマート。くたびれたボストンバッグに武器を入れているとのことです。」

 

「そんな親父はどこにでもいそうだがなあ、それじゃわかならないよ」

 

まるで特徴のないのが特徴の様な奴だ。そんなくたびれた親父はどこにでもいる。

不景気で女尊の時代なら、なおさらだ。

はあ、一つため息を吐いて窓を見る。全く、世の中は忙しい。

 

 

 

 

 

 

税金が安い、もしくはかからないという理由でトレーラーハウスに住む米国人は多い。

低所得層など、社会的に立場が弱いものが主に、そう言った家に住むとパパから聞いたことがあった。

 

私はパパにどうして、お金をもっと得られないの?と聞いたら、パパはチャンスがないだけさ、と答えた。

 

では私の場合はどう説明するのだろう?

 

二年くらい前に突然ママがアイツと一緒に私を連れて逃げて、今ではそんなビンボーな人の仲間入りだ。

 

最初こそは大きな家だったけどアイツの組織が潰れたとか、何だとかでこんな生活をしている。

 

私はこんなところに来たくなかったしパパと一緒ならよかったのに、とんでもなく素敵な生活をプレゼントしてくれたママには皮肉口調でも礼を言うべきだろうか。

 

 

クーラーもつかないし、ゴキブリは出てくるし、何よりアイツとママの臭さにはうんざりする。一応学校には行ってるけど、レベルの低い学校で最悪だった。

授業や校舎のではなく、人間のレベルがだ。私立だというのに、何かあれば、ISランクがBとか、Bプラスとかだ。

 

私はそんなものより、ミサキ・ホーキンスのCDやライブの話が重要なのに、そんな話すらできない。大体、このランクとやらで私は迷惑しているのに。

 

私に必要なのは私をわかってくれる親友と、綺麗なシーツとベッド。それとパパだ。

学校でくだらないことで盛り上がって、放課後の帰り道でブランドものが並ぶお店のショーウィンドを見てミサキのようなキラキラした自分を想像し、帰ったらパパの話を聞きながらベッドで寝る。それだけがほしいのに。

 

狭い家の中を通り、冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注ぐ。性能の低いボロのせいか、非常に温くておいしくないことに頭にくる。

 

牛乳と生活に対する不満を口にしていると、ママが帰って来た。

あらゆる心労やストレスが浮き出た顔を化粧で隠しているせいで、最近出てきたゲイシャ集団のようだ。

 

「ミラ! 何してるの?! 宿題は?」

「とっくに終わったよ。あんな問題屑同然なんだから・・・」

 

また、八つ当たりかと思い、ため息が出た。

 

「なら、ママの手伝いしなさい! 」

「ハイハイ」

 

手をぶらぶらと振って返事していると電話が鳴った。私は怒鳴られるより早く受話器に出た。

 

「もしもし?」

 

喉に手を当てて母に声を似せて電話に出る。どうせ、くだらないセールスだろうと思っていたら、驚きの相手が電話の相手だった。

 

『もしもし? ミラかい?』

「パパ! パパなの?!」

 

望外の相手に飛び上って喜ぶ。パパも電話越しに喜んでくれているようでうれしい。

二年もお話したかったパパだ。これ以上の喜びはない。

 

「今どこなの? どうやって見つけたの?」

『シンシテイさ。もうすぐ君と会える。 もう少しだけ待ってくれ、君と話したいこともあるし、プレゼントもあるんだ』

「また、私を驚かせてくれるものとかあるの?!」

『もちろん』

 

もう14歳だというのに、飛び上ってしまった。子供っぽいかもしれないがやりたくなったものは仕方ない。

 

頭の中はパパと会ったらどうしようか、何を離そうかで頭がいっぱいだった。

一緒に帰れるかもしれない、そんな思いも生まれてくる。

しかし、そこにママの手が伸びてきて、受話器を奪っていった。

 

「何すんの?!」

「貴女はむこうにいってなさい。」

「ちょっと!」

 

追い払われる直前にスピーカーフォンにして私にも聞こえるようにする。ママは観念したのかため息を吐いて受話器を耳にあてた。

 

「あなたなのね?」

 

ママが聞くとパパはいつもの口調で答えた。

 

『ああ、君か。今ミラと話をしてたのに・・・』

「この子は貴方の子じゃないって言わなかったかしら」

『それはおかしな話だな。離婚届も出していないし、裁判所で親権も争っていない。今もその子は私の子だろう? 違う?』

 

ママは電話の乗っているテーブルを蹴飛ばして吠える。

 

「理屈ばっか並べないで! 無職のくせに! 私たちの元に来たら何をするつもりなの?!お金が欲しいのなら・・・」

 

パパは少し怒った感じになった。こんなママ相手にもそれくらいの怒りで済ませられるのだからパパは心が広い。

 

『なあ、エレン・・・誰だったかな? 名前が思い出せないんだが、超常的な才能やらを持つ人間は現状の法などの枠組みを踏み越える権利を有するって言っていた人がいたと思うんだ。でも、私は思うんだ。才能じゃなくて、例えば・・・最高の愛情を持った人間だって、その権利を有すると。』

 

パパがたとえ話を持ち出してくる。最高の愛情とは私に対してだろうか?

 

『で、人にとって最高の愛って言うのはやっぱり妻や恋人に対するものもそうだけど、子供に対する愛が一番ふさわしいと思うんだよ。そして子供のためなら何だって許される。そう思わないかい? 』

ママの息が浅く、早くなっていく。

 

『もちろんモンスターのように喚くことを言ってるわけじゃない。たとえば、子供がピンチの時とかそういうことを言っているんだ。そこは勘違いしないでほしい』

 

 

「な、何が言いたいのよ?」

 

ママがパパのお話に押されてたじろぐ。さすがはパパだ。口調だけでも圧倒的に強い。

 

『いや・・・ただそれだけさ。私はミラと会いたいし、後君ら二人に少しお話しをしたいんだ。もう少し待ってくれ。ナビによると数分の距離らしい。』

 

穏やかな笑い声がその後に続いた。あれほどの仕打ちを受けても、会話で解決しようとするあたりがすぐに拳が飛ぶアイツとは大違いだ。これが大人の男と言うものなのだろう。

 

『ミラ、それにエレン、待ってくれ・・・・・・・もう少しだ。』

 

ガチャリと電話が切られ、通話が終了した。私はガッツポーズをして、なぜかママは顔を真っ青にしている。

そんな心配するようなことも無いのに、なんでだろう?

 

私は首をかしげて、頭の上にクエッションマークを出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行きつけの店と言うのはいいもので、ここは汚い店ではあるものの、俺達のたまり場となるにはうってつけで仕事の話をする時はいつもここだ。

だが、今日は仕事の話だけじゃない。

仲間の一人が言う。

 

「えらいことになった。俺たちの仲間が吹っ飛ばされた」

「あ? 冗談だろ?」

「ちげーよ! マジだって!」

 

俺は安酒の入ったグラスを傾けながら話を聞く

 

「メキシコシテイのバーのいた連中がギターケース担いだガキにやられたんだって!

デけえマシンガンかついで、ランボーみたいに振り回しったって・・・ 

それだけじゃねえ、仲間の車も変なオッサンにロケットでボロボロにされたって」

 

俺はそれらに話を鼻で笑い、仲間の焦っている顔に付近を投げつける。

 

「バーカ。 んなわけあるかっつーの。 大体、マシンガン持つガキもロケット持つオッサンもいるわけねえだろ。お前騙されてんだよ」

 

「そうかな?」

「そうだよ」

 

この馬鹿、と付け加えて話を進めていく。今日話しているのは仕事と報酬の話だったから早いところ済ませて帰りたいのだ。

 

「で? 報酬はどうなったんだよ? 例の金持のガキの家を吹っ飛ばしてきたろ」

 

あの金持ちのいけ好かない顔をしたガキの別荘を吹っ飛す簡単な仕事だった。爆破する前に色々と失敬できたこともあってあとは報酬をもらって万歳三唱のはずだった。

 

「それが変なんだ」

 

仲間のもう一人が会話に参加して報酬について話す

 

「あのゲイシャどもと来たら、ここで一番ヤバいコーウェンの所に喧嘩を吹っ掛けちまったとか抜かして報酬払えないとか言ってきたんだ。」

 

ハア? とここにいる全員が反応した。コーウェンとはシンシテイの元ヤクザ者の一人だが、最近は堅気になって商売してるくせに未だに昔からの仲間を連れている変人だ。

 

キレらせると、マズイのは「漁礁づくりのコーウェン」の名で知られている。

だが、そんな人間に自分から手を出す馬鹿はいない、外見からヤクザそのものなのだから。

俺は嘘だと確信して怒り、テーブルを叩いた。

 

「ざけやがって! 俺たちを嘗めてるに違いねえ! おい、お前ちょっと行って来い!」

「俺かよ?」

「いいから行って来い!」

 

そう言って仲間はしぶしぶ店を出た。あいつらは所謂女尊主義者だから、嘗めているに違いないのだ。

ここは俺からキツク言う必要がある。

ビール瓶を手に持って店から出る。

 

「おい、もう行くのかよ?」

「ああ、女がうるさいからな」

 

店のドアに手を掛けながら、言う。

 

「特にアイツが連れてきたガキがうるさいんだよ・・・・ああ、それとな。ここいらをウロチョロしてるアイドルを見つけたらさらって来いよ 金になるからな」

 

すると仲間が神妙な顔で俺を見つめる

 

「何だよ?人の顔を見て」

「いや、何だか知らないけど・・・・・なんか俺の本能的なアレがささやくんだよ。逃げろって」

「はあ?」

 

訳が分からないことを言ってるソイツの頭を小突いて俺は店を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会合の場所と使っていた倉庫の中で、俺はひたすら自分を呪っている。

なんで、あんな命令を聞いてしまったのかと。

今の俺は木箱の中に隠れて息を潜めている。そうしないといけない理由があるからだ。

 

何故か? と聞かれれば、それは箱の外の状況が起因していると言える。

右側から話し声が聞こえる。

 

「おい、ゲイシャの仲間は?」

「さっき、そこらにいたんだけどなあ?見つけたらどうする?」

「魚の養殖場に送ればいいんだよ」

「OK、了解だ。」

 

手に持ったサブマシンガンをコッキンぐして靴音を鳴らして辺りを見回っている連中がいるからだ。ゲイシャの組織は本当に手を出しちまったらしい。マズイ、どうすればいい?

 

悲観していると、左側からサイレンの様な音がした。

パトカーの音だ、と確信し助けを求めようと出ようとしたところ箱の隙間から見えたパトカーを見てひっこめた。

     ・・・

まさかの第12分署だ。

 

パトカーから降りてきた警官たちの話し声が聞こえてくる。

 

「たくっ。どこにもいねーじゃんかよぉ 悪者さんがさあ」

「こんな倉庫まで来たのに、誰もいねーしなァ?」

「ああ、逮捕して~ 正義の血がたぎってしょうがねえ!」

 

そう言っている警官たちが手に持ってるのはテイザーガンや警棒の非殺傷武器なのだが、

そこいらの軍人顔負けのプロレスラーのような体系で身長180cm越えである。

口調も警官ではなく、すぐ隣にいるコーウェンの手先の方がまだ紳士的だ。

 

「最近の悪は力がないよなあ。チカラと書いてリキがさあ。 すぐあきらめるし」

「お利口さんだもんなー」

「抵抗してくれれば・・・なあ?」

 

一人がホルスターから熊撃ち用のデカいリボルバーを抜いてバン!と撃つ仕草をすると他の連中はそれを見てゲラゲラと笑う。

 

あれで、死人を出さないというのだ。つまり、死なない程度にはするということではないかと思われる。

噂では、ロビンフッドのリンゴ撃ちのマネをするために使われるとか・・・

 

 

俺は鼻水と涙を流す。止めようにも止められるわけなかった。

 

俺は心に決めた明日からは・・・いや今日からまっとうに生きようと。

悪事に染めるのはもうやめよう。世の中には絶対に勝てない悪がいるのだとわかった。

心を入れ替えて働こう。

そうだ、故郷に帰ろう。帰ってお袋に頭下げて、親孝行をしよう。そして農業をして綺麗な嫁さんでも、もらおう。幼馴染のアイツまだ元気かな?

 

これは悪い夢に違いないんだ

 

だから、神様。お願いします。助けて・・・

 

箱に隠れて祈っていた。首からぶら下げたおしゃれ用の十字架をもって俺はひたすらに祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺の頭上に光が差し込んだ。

 




この結末は次回あたりになると思います。
所謂ちょっと、視点をずらした話です。

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