IS to family   作:ハナのTV

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無謀なまでのある意味シリアスな回です。


36

ホテル桃源郷のドアを出て、多少ズキズキと痛む頭を押さえながら俺とアカネは二人そろって、雲一つない、どこまでも青い空の中、いつにもまして輝く太陽の元へと躍り出た。

昨日の夜は終わったと思えた惨劇がさらに凝縮されて戻って来たという散々な結果だったからだ。

 

「まさか、戻ってくるとは思いませんでしたよね?」

「いやあ、全く」

 

雷こそは堕ちなかったが、血みどろに近かったのは確かだった。ヴィンセントは鈴によって朱に染められ、ユーリは簪からの口撃によって真っ白にされていた。

だが、この時の俺たちの不幸などこの際小さなものだった。

 

「まさか、ミサキが気に入るなんて思いませんでしたよ・・・」

「オットーさんだったか? 髪の毛白くなったよな・・」

 

その場で、娘のミラと一緒に来ていたダグラスさんはミサキ・ホーキンスと三人で和気あいあいと話して、意気投合してしまいミサキが事務所にマネージャーの意見も通さずに電話し、彼の会社と提携をすることにした。

その結果、しばらくオットーさんはただでさえ扱いに困る核爆弾をもう一つ抱えることとなったのだ。

 

俺からの話を聞いて彼は太陽光にさらされたヴァンパイアよろしく、灰になっていった。

付け加えて、来月娘のミラもオーデイションを受けるそうな。

核爆弾をもう一つ抱える可能性がまた一つ増えたというわけだ。

 

「とにかく、ミサキも笑っていて私は良かったと思いますよ」

「マネージャーは泣いていたろ?」

「・・・自分のアイドルのために泣けるなら本望じゃないですか?」

 

俺は頭を掻きながら、少し考えて自分を無理やり納得させた。

 

「ま、そういうのもアリか」

「そうです。他人のことも考えるのも結構ですが、今日は・・・」

 

アカネは少し長くなったセミロングの黒髪を風に吹かせながら、俺にの手を取った。

普段から大型のライフルの銃床を握りしめているにもかかわらず、彼女の手は柔らかく温かいものだった。

「私との時間だけを考えてくださいね?」

 

少し頭をもたげてからのほほ笑みは俺にとっては反則レベルの物だった。メガネのレンズの向こう側にある優しい瞳から、ノースリーブのシャツからでる二の腕に、長く鍛えられた足、それら全てが醸し出す彼女の纏う空気は春の風のように心地いいものだった。

 

「ああ、わかってるさ。」

 

手にほのかに力を込めて握り返すと、アカネも少し反応を見せる。ほほを少し桃色に染める姿はいつもの凛とした姿からはあまり想像できないが、それが可愛い。

俺にとっては彼女はいつも心の支えだったかもしれない。

 

Rインダストリーに入社して、数日後に知ってしまった事実。あのゴミ捨て場に捨てられていた俺の私物は俺自身が家族の中ではどんな存在だったのかをよく体現していたと思う。

 

あのころは俺は家族はまだ俺のことを想っているものだとばかり思っていた。Rインダストリーに送ってたのも俺の将来を想っての行動だと。

そう思っていた、嫌、そう思いたかったのだろう。

 

彼女があの時いなければ、俺はただの魂の抜け殻に成り果てていたことだろう。

 

『・・・そんな顔をしないでください。 人生なんてコイントスと一緒。今日は出る目が悪かっただけです。』

 

彼女の言葉は正しく、俺の人生はこの半年で今までコインの裏しか出てこなかっただけなのだと気づかされた。

 

もっというと、表が出るまで戦うのが正しいと気づいた。

 

そう考えていると手を引っ張られた。

アカネが何かを見つけてはしゃいでいる。

 

「弾! 見てください! ブギーおじさんのホットドッグですよ!」

「マイクさんの食ってた奴だな。 買うか?」

「当然です! めったに出会えない出店ですからね」

 

引っ張られながら走っていき、誰よりも早く並べた。

まだ、午前中で昼前と言うことで誰も来るとは思ってなかったようで、周りからは先を越されたことでため息を吐く者もいる。

 

「おじさん、ホットドッグ二つ。 マスタード多めで」

「二つでいいのか?」

 

出店の親父はニヒルな笑みを浮かべて言った。

 

「どうせならジャイアントサイズ一つ頼んで、一緒に食べたらどうだ?」

「いや・・・それは・・」

 

いきなりのハードルの高い注文に戸惑っていると、アカネが身を乗り出していった。

 

「じゃあ、それで」

「アカネ!」

 

だが、隣の彼女はあっさりと承諾して見せた。

俺は思わず声を出して抗議したが、アカネの表情は小悪魔を思わせる笑みで意地悪そうに聞く。

 

「いいじゃないですか? こんなサービス滅多にないですよ」

「だからってお前・・・」

「私は恥ずかしくないですから」

 

そう言ってオヤジからホットドッグを受け取った。歩きながら、映画館までの道すがらに一口齧り、その味を十二分に堪能したのちに、どうぞ と手渡してきた。

 

俺は周りの視線を少し気にしたが結局、誘惑には勝てず、観念してホットドッグにかじりついた。

ソーセージとケチャップにマスタードと黄金の組み合わせだけはあって旨い。しかも、ここの出店は人気の自家製ソーセージらしく歯ごたえに味に最高の物だ。

 

「美味しいですか?」

「気に入ったよ」

「それは良かった。」

満足げに呟いてアカネはもう一口頬張った。

それを見ながら俺は言った。

 

「そういえば、前にこういう風に出かけたよな・・・・覚えているか? ラウラとシャルロットが来る前の」

 

アカネは口元をハンカチで拭きながら言った。

 

「ええ、覚えてますよ。映画館に行った時ですね。 私は本当に楽しかったですよ」

「本当か?」

「ええ」

 

彼女は短く応えながら、メガネを少し掛けなおしてその理由を語った。

 

「男の子と映画館言ったのはアレが初めてでしたから・・・」

「意外だな。ヴィンセントとかユーリとか居たろ?」

 

少し首をかしげて、五秒ほど考えてその意見に対して彼女はフフッと軽く笑った。

 

「彼らは・・・なんというか 戦友ですけど、そこまでじゃなかったですね。

そもそも、あそこまで仲良くなれたのも奇跡みたいなものですからね」

 

俺はその話には異議を唱えたくなった。俺が初めて来たときも食道のオカズを取り合って

冗談を言えるような仲だったはずだ。

それに、三年間一緒に暮らしたような物とも言っていた連中がそこまでの仲の悪さでいられるとは思えなかった。

 

「そりゃ変な話だな。俺が来た時には結構仲良かったろう?」

「その前の話ですよ」

 

ほう、と相槌を打ち、俺は彼女に詳しく訊く。

 

「どんな感じだったんだ?」

 

そう訊くと、唸りだした。眉間を抑えて、深いため息を吐きだした。彼女にとっては苦々しい思い出らしく、遠い目で語る。

 

「それはもう、最悪でしたよ。 野望に燃えて、正論しか言わない生意気100パーセントなヴィンセントに、何一つ喋らないくせに、どこか見下してるような態度のユーリと、散々でしたよ。訓練をやっても、バラバラで何度教官の説教と修正を喰らったか・・・」

 

「そんなにか?」

「まあ、ヴィンセントにとっては素性の知らない連中でしたし、ユーリにとってはアマチュア軍団でしたから、そして私にとってはいけ好かない男どもでしたよ。」

 

当時の彼らか、はたまた彼らを嫌っていた自分か、どちらかが原因かはわからないが、吐き捨てるように言う。

あまり愉快でない思い出なのは先ほどからも明らかだ。

 

「変なこと聞いたか?」

 

念のために聞くと彼女ははっとした表情になって答えた。

 

「いえいえ、そんなことはないんですよ。 ただ、あの頃の自分は殴りたくなるってだけですから・・」

「結構、ヘビーだな・・・」

 

さらに聞いていくとアタフタとしだす。いわゆる黒歴史だったらしく徐々に思い出していき、顔を赤くしだす。

 

「ああ、もう。聞かないでください、結構恥ずかしいんですから!」

「いや、スマン。映画館でコーラ奢るからさ。」

 

ピタッと動きが止まり、彼女は少し顔を伏せながら、要求する。

 

「・・・アイスクリームなら」

「クラシックバニラか?」

「・・ええ」

 

了解、とだけ答えて俺は笑う。

そうして、ホットドッグが二人の腹の中に納まるころには目的の建物についてしまった。

全く話をしているとあっと言うまで、楽しい時間と言うのはこうも流れるのが早い。

 

早くなくていい、そう思う。明日死ぬかもしれない命なんてことはないが、この幸せな時間の後に何が来るのかは誰もわからない。

 

インダストリーに入って、俺に突き付けられた出来事の数々はどれもが俺を肯定していたわけでない。

 

アカネが俺を好いてくれているという事がある一方で俺の家族は俺に一片の愛情もない。

鈴や簪、レジスタンス達にピースメンバー、と仲間は増えたが、一夏と言う親友は失った。

力を手にした反面、伴う責任の大きさに嘆くこともあった。

 

このどれもが事実だ。

 

しかし、どれも予想できたわけではない。

なら、今この時間を楽しもうと思うのは必然な流れと言える。明日は何が起こるかなどわからないのだから。

 

 

俺とアカネは談笑しながら、中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄人と言われるだけの名監督だけあって、映画館の中は人であふれている。

劇場内は満員で流石と言ったところか

 

映画館の中で隣の弾は大画面のスクリーンに映る物語に集中する。

画面の中では、かつて娘を失った父親が運び屋として、依頼によって昔の娘と同年代の少女を目的地に運び出そうとするが、運び屋が荷物である少女を娘と同じに見てしまい、苦悩している。

 

仕事か、心か、どちらに従うべきか彼は迷っている。

 

そんな話に弾は夢中になっているようだが、私は少し集中できていなかった。

物語に不満があるわけでも、役者に文句があるわけでもない。

 

むしろ、今の所大満足だ。俳優の演技は素晴らしく、感情移入できるし子役も生意気盛りの子を見事に表現できている。物語も無理のない展開で頭に入りやすい。

気になっているのは彼と この図晴らしい時間のことに関してだ。

 

三年前から、こんな関係はあきらめていた。世界を変えようとする企みに参加しておいて、呆れるほどの訓練に、血で染まった両手。これらを内側に内包している私ができるはずがない、と思っていた。

 

さらに言うと必要がない、むしろ、そんな関係は邪魔だとすら考えていたのだ。

 

 

弾は綺麗だと言ったが、この肉食獣のようなとがった眼が私は気に入っていなかった。

それを隠すためのメガネだ。私の父と言える人がくれた伊達メガネだった。

 

私の本性を隠してくれているのだ。

スコープ越しに相手を睨み付けて、容赦の一遍もなく引き金を引いて相手が地獄に堕ちるのを見守る、そんな本性を

 

弾はそんな本性を知っているにもかかわらず、付き合ってくれている。ヴィンセントやユーリもそうだが、意味合いが違う。

 

ヴィンセントやユーリは私のことは戦友か、盟友だろう。あくまでもピースメンバーの仲間としての意識しかない。おそらく、それが正しいのだろう。

安易な恋愛関係はプランに支障をきたす可能性があると、アルフレッドあたりなら繭も動かさずにいう事だろう。

 

だが。弾との関係をいくら言われようと、私はそれを捨てるなどという事はしない。

これまでも、そして、これからも、私と彼によって問題などを作ることはさせないし、逆に認めさせてやるのが私の望みだ。

 

ピースによっての夢も忘れない。それこそが私の真の目的なのだから。そこに弾を入れたいだけだ。

 

そんな彼との時間は何よりも早く過ぎ去っていく。ビデオの早送りをされているように、だ。

 

それがたまらなく口惜しい。

そして、時間が遅くなってほしい。もっと楽しみたいというのもあるが、それ以外にもう一つ理由があった。

 

私はまだ、弾に言ってないことがあった。それを最後に言おうと思っているのだが、こうも時間が過ぎ去っていくと心の準備もできない。

 

映画も気が付けば、終わりに近づいていっている。

運び屋は荷物である娘を連れだして逃げているが、多勢に無勢でどんどん追い詰められていっている。

ライフル弾を腹に一発貰っているらしく、その表情と自身の経験からどれほどの痛みかは理解できるし、俳優も迫真の演技で映画に引き込まれる

 

荷物である娘は男に戦うな、と言うが彼は聞かない。M16系列のライフルを手に、必死に戦う。

戦っている最中に時々、実の死んだ娘の回想が流れていく。

 

その演出は見事と言えた。

 

やがて、男は力尽きて倒れこむ。その男を娘が背負ようとするが男はやめろ、と叫んでン娘を逃がそうとする。

今の今まで言わなかった、「愛している」とすら言って、娘を逃がす。

そして男の望みは叶えられた。

 

私はそれらを見ながら思う。私は、いや、私たちは映画という虚構の話の中ではあるが彼のように望んだ結末を得られるだろうか、と映画に感動しつつも思ってしまった。

 

 

ヴィンセントにとってはISの没落と、それによって宇宙開発を復活させること

私にとって、かつて私を救ってくれた兵隊たちが賛美されるような世界にすること

ユーリはわからないが、彼にも夢はあるだろう。

弾は自分への評価をひっくり返したい、だったはずだ。

 

しかし、今はどうなのかはわからない。彼らにも変化はある。これは確実なのだから、彼らの夢も変わるのだろう。おそらく根本としての夢は変わらないが、そこに何か杖つけくわえられているだろう。

 

私のように。

 

 

 

 

エンドロールが流れ終わって映画館が明るくなり、観客が出ていく。弾も立ち上がった。

 

「行くぞ、アカネ」

 

そう言った彼の隣に立ち、歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

映画を見て、ゲームセンターへ行き、夕飯を食べていたら辺りは暗くなり、待ちは電灯で照らされている。行きかう車のライトが真夜中を行進している光の列のようにも見える。

 

きっと今ここでラプターを展開し空から見渡せば地上の星ともいえるような素晴らしいパノラマが見えることだろう。

 

そんな大都市の夜を俺とアカネは歩く。

 

「今日は楽しかったですね。」

「ああ、映画もかなりの物だったしな」

 

俺達は二人、今日の出来事について述べていく

 

「流石は鉄人でしたね。カメラワークから演出まで見事でした。」

 

「話も良かったしな。 晩御飯もアタリの店だったし、今日はいいこと尽くしだ。

ロブスターの料理があんなに上手いとは知らなかったよ。」

 

アカネも同意して頷き答える。

 

「ええ、端末のデータの星4つは伊達じゃなかったですね。ちょっと高かったですけど。」

「まあ、インダストリーで働いてるおかげでこういうものにもありつけるっていい話じゃないか。」

「そうですねぇ」

 

Rインダストリーにいる分給料が出ている。休暇に入るまですっかり忘れていた。

通緒に書かれていた額は俺から見れば、巨万の富であったため、俺は彼女と思いきって少し高めの店へと入った。

 

奮発しただけのことはあって大満足だ。

彼女を笑みを見て思う。こうして笑っていられる時が少しでも長く続いてほしい。彼女が俺を支えてくれている、なら俺も彼女を支えられたら、と思うからこそだ。

 

街灯に照らされた道を歩いていると、不意にアカネが足を止めた。

顔を伏せて、表情が見えないようにしている。

 

俺は足を止めて彼女に振り返って訊いた。

 

「どうした?」

 

俺がそう訊いても彼女は返事をしない。口を堅く結んでいるようで、俺は具合でも悪くなったのかと聞こうとして、近寄ろうとすると彼女は待って、と言って手を前に出してバリアーでも遥かのように、距離を置くように無言で言う。

 

「弾・・・・そのままの距離で聞いてくれますか?」

 

アカネはさっきと変わらずに表情を隠して言う。

俺はその様子から、ただ事ではないことを察知して、それに頷いた。

 

「話があるんだな?」

「ハイ。 それも多分大切な」

 

そういうアカネは一つ大きく深呼吸をして、踏ん切りがつかなかったのか、もう一度大きく深呼吸して顔を上げた。その表情からなぜか緊張が見て取れた。

 

「あの、ですね。」

 

上手くしゃべれず、咳払いをしてもう一度話しだす。

 

「その、私と弾が会ってもう半年近くですよね? 最初の時覚えてますか?」

 

まず聞いてきたのは出会いについてに事だった。おそらく前置き話なのだろう。

 

「ああ、覚えているよ。いつものメガネで、俺が{弾}でいいって言ったのに、五反田で通してたな。 初めて見たときの君は堅物そうだったよ。 君は俺のことをどう見てたんだ?」

 

アカネは少し考えて言った。

 

「・・初めて見たとき、頼りなさそうな外見の男の子で少し驚きました。ロイが逸材と言うから、一体どんな変わった奴なのかと思っていたんです。」

 

俺は少しおどけて答える。

 

「手厳しいな」

 

それに対してアカネは目をつむりながら、思い出の日々を語っていく。

俺もそれに倣うかのように思い出していく。

 

「でも、訓練を開始して、貴方の素質には驚かされましたよ。スポンジみたいにどんどん獲得していくんですから、それに貴方は何があっても前に進み続けた。」

 

俺は最初から思い出す。グレイイーグルによる疑似のIS訓練、アカネとの射撃演習。ユーリとの格闘訓練。毎日行われて、IS学園に行ってからもそれは変わらなかった。

家族を失ったりもしたが、彼らのおかげでどうにか立ち直れた。

 

訓練を続けられたのは、ロイの素質の話をがむしゃらに信じ、彼らに慣れると信じて俺を見限った人々を見返してやろうと動き続けた。

しかし、セシリア戦で心が折られる直前まで行った。大勢の人に助けられておきながら、俺は敗北し、評価を改めさせるどころか、悪化したと言っていい。

 

男のくせに、一夏と比べて、と言われ続けたのは流石に堪えた。

 

だが、それを支えてくれたのも、彼らだった。

 

「あの時のお前たちには感謝しきれないほどの思いがあるよ」

「そうですね。そして、それからも私達は戦い続けた。」

 

脳裏に思い出すのは、ヴィンセントを襲った無人機。彼の執念は恐ろしく、俺にはない物であった。半身を焼かれようが、彼の戦闘意志は耐えるどころか、増大し撃破に至った。そして、仲間も増えた。鈴に簪と、日中の代表候補生が俺達のもとに来るようになるのが普通になった。

 

「でもってタッグマッチのトーナメントだな。 そんな昔じゃないけど、俺はあの時が一番苦労したかもしれない。」

 

アカネは一拍置いてそれについて訊いた。

 

「・・私のせいですか?」

 

俺は頭を振って否定して何故なのかを説明する。

 

「それもあるが、それだけじゃない。あの時の皆が皆、必死だった。専用機を倒して革命をしようとしたレジスタンス達に、鈴と組みだしたヴィンセントに、ユーリもいつもと違った表情を見せたし・・・俺だけがくすぶっているわけにもいかなかった。 何より・・・」

 

アカネの表情を見る。真剣そのもので、まなざしは鋭かった。

 

「助けてもらってばかりだったから・・助けたかった。そう言ったろう?」

 

アカネははっとした表情になった。思い出してくれたようだ。

 

「ええ、ええ。言ってましたね・・・・・あの時は申し訳なかったです。八つ当たりのようなことをして・・」

「いいんだ。俺が本当に心配だったのはその後の暴走機の方さ・・・あれは心臓が止まるかと思ったよ」

 

痛みを思い出したのか、かつて刀を突き立てられた部分を抑えて、彼女は再びあの場面を想いおこすが。彼女は口をとがらせて言い返した。

 

「それなら、弾も同じです。 福音戦の時、何回も死にかけて! なのに、前線に行きたがって! ・・・・心配するどころか、怯えていたこっちの身にもなってほしかったです。」

 

その勢いに押されて俺は後ずさりをして、頭を軽く下げて謝った。

 

福音戦はある意味いい経験だった。力を持つという意味、ユーリの言っていたISも所詮は人殺しのカラクリと言う意味を真に知りえた。

 

俺の手も赤く染まってしまったが、それ自体はもう後悔はしていない。誰かが汚れなければ、誰かを死なせたかもしれなかった状況で神の、超常的な力もない俺にはあれしかできなかった。

 

どうにか大切な人たちは傷つけずにはすんだが、その後は散々だったのも記憶に新しい。

一夏の言っていた殺すべきでないという言葉は確かに正しい。

 

人を殺したいわけでないのだから、殺さないのに越したことはない。

それができるのがISだというのも平時に、もしくは福音の前の俺なら頷いて訊いたかもしれない。

 

だが、それは理想論で最初から戦いに関わっていれば出てこない言葉だ。

結局俺とアイツは違う人間なのだな、と思うだけだ。

 

その時は怒り猛ったが。

 

「私はずっと思ってたんです。トーナメントの暴走騒動から、福音、数々の訓練と経て私の気持ちは嘘ではない、と。でも、それについて、一つ忘れていたことがあるんです。」

 

数々の昔の話を経て彼女は何かを言おうとしている。俺は姿勢を正してそれを聞く。

黙って、何も言わずに

 

「・・・今まで、ソレ以上のことをしてきた私達ですが、こういう時になると緊張しますね・・弾」

 

アカネは歩き出して近づき、俺との距離はほぼなくなった。

そして、メガネを外してポケットに仕舞って彼女は頬を紅潮させて緊張で少し硬い表情で言った。

 

「私は貴方のことが好きです・・・・・・今の今まで言っていませんでした。

私は貴方を愛しています」

 

彼女は言った。精一杯の告白を。

今まで、俺たちは色々な事をしてきたが、直接言ったことはなかった。

 

俺は震える口でそれに答える。彼女の名前を口にする。

 

「アカネ」

 

ただし、言葉ではなく行動で、だ。

 

 

ソレに彼女は目をつむって口元に笑みを浮かべて、彼女も行動によって返答する。

 

携帯の着信が鳴ったことにも気づかず俺たちはずっとそのままでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




上手くいったことを祈っております。
更新遅れて申し訳ありません。
予定がドッと来てしまったので、さばききるのに必死でした。

感想、批評ありましたら、書いてくれると嬉しいです。



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