IS to family   作:ハナのTV

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夏休みも終わり九月になって、紅葉が見える季節となった。IS学園正面玄関へとつながる道をいつものメンバーと歩きながら俺は思い出していた。

 

ほんの半年前の時のことを、だ。

 

四月、紅葉の代わりに桜の花びらが舞っていたあの頃、今のようにラプターのような専用機も無ければ、大した腕もなかった。期待の新星と言えば、聞こえはいいかもしれないが、ハッキリ言って素人そのものだった。

 

そんな自分があのころ此処でのし上がって見せると何の根拠もなく息まいていたものだ。

 

元々IS学園に歓迎されているような人間でもなかったくせに、だ。

最初はモルモットがいいところで、下手すればバラバラにされてホルマリン漬けのサンプルになるはずだった人間が大企業で訓練して随分とデカくなったつもりだったのだろう。

 

そんな自分を思い出していると背中がかゆくなってきた。今思えば、相当恥ずかしい屋だったに違いないからだ。

 

 

「立ち止まってどうしたんです?」

 

アカネが俺の方に振り返って聞いてきた。セミロングの黒髪を風になびかせて、チャーミングな瞳をこちらに向ける。

 

「いや、昔を思い出してな。あの頃はまだ弱かったな~ってさ」

「初戦で結構な戦果だったじゃないですか?」

 

アカネは歩く速度を遅くして俺の隣に着き、そんなことを言ってくる。

 

「まあ、そうだったかもな」

「でも、あの頃から大分変ったんですから、いいじゃないですか? アレを見てくださいよ」

 

そういわれてアカネが指さす方を見ると彼女の言わんとすることが分かった。

目の前では、四月にみられなかった光景が映っていたからだ。

 

鈴がヴィンセントの後ろから忍び寄り、首に息を吹きかけてちょっかいを出している。

ヴィンセントが驚きの声を上げて、ニヤニヤと笑う鈴を追い掛け回す。

 

「待て! この悪戯猫!」

「足遅いのね! ヴィンセント」

 

朝から、元気なもので、二人して猫同士のじゃれ合いのように走り回っている。

仲のいいことだ。出会った当初は険悪そのものだったとは思えない。

 

そもそも、タイプからして違うのだ。ヴィンセントは言い方悪くすれば、偏屈、口減らず

鈴は歯に衣着せぬ言動をする、いわば、じゃじゃ馬娘だ、中国的に言えば、{弓腰姫}といったところか。その二人が仲良くできているのだから、相当変化したと言っていい。

 

さらに視線をずらすと、ユーリと簪が目に入った。身長差がかなりあるので、その後ろ姿は例えるなら、美女と野獣か、クマとリスだ。

 

「・・また、よろしくね。ユーリ」

 

簪が微笑みと共に言うが、ユーリは表情を変えずに短く、「ああ」とだけ答える。

普通なら、女の子の方が不愛想だ、と言って不機嫌になりそうなものだが、簪はユーリの心理を完ぺきに把握しているのか、笑顔のままユーリを見ている。

 

老成した夫婦は互いのことを言わずとも理解できるというらしいが、彼らは十五にしてそれを会得しているらしい。

 

驚くべきことは、アレで互いに告白をしたことがないという。

 

「今見ると、スッゴイ組み合わせですよね・・・水と油どころじゃないですよ。」

「本当にな」

 

俺達は違うと自分たちに言い聞かせるようにも言った。しかし、親切にも現実を教えてくれる人というのはいるものだ。

後方から来た女子の集団、格納庫レジスタンスと言われる乙女たちが通り過ぎながら、毒を吐いていく。

 

「私、アカネちゃんが男の子と付き合うってのが意外かな。」

「全くだ。こんな乙女思考だと思わなかったな」

 

理子と神楽の二人の言葉がアカネの心に打撃を入れた。

 

「どういう意味ですか? ソレ」

 

アカネがワナワナと肩を震わせて聞くと、二人は意地悪そうに笑いながら答える。

 

「だって、アカネちゃん M14は俺の嫁! とか言いそうな人だと思ったし」

「スかした男はもういらないとも言いそうだしな」

 

俺は微妙な顔をするほかなかった。確かに言われてみれば、言いそうなセリフでもあるし、

彼女の普段の言動は男勝りなんてものではない。

 

反論できないでいる俺を一睨みし、アカネは少し涙目になりつつ言った。

 

「弾。反論しなかったことで、後で覚悟してくださいね?」

 

俺は両手を上げて万歳のポーズをして、彼女に全面降伏した。

そして、二人に向き直り鬼の形相へと変化させて全力疾走していった。毒を吐いた二人は脱兎のごとく逃げ、アカネはチーターさながらの快足で追撃に入った。

 

捕まったらただではおかないぞ、と二人の背中を見つめて俺は彼女らの無事を祈る。

 

アカネが滲み出す雰囲気によって、迫力のあるその背中は、かつてヴィンセントが例えた生体ターミネーターそのものに見えたことは心の中だけに押しとどめた。

 

「何やってんだ、新学期早々。 はしゃぎすぎだぞ」

 

顎鬚を撫でながら、大きく出っ張った腹を惜しげもなく出してマイクが目の前の彼らを見て率直な感想を述べた。

 

「マイクさん、お久しぶりです。」

「ホントにな。 俺お前らと会ったの一か月ぶりな気がするわ」

 

一つため息を吐いて、彼はジーンズのポケットから砂糖でたっぷりコーティングされたキャンディーバーを取り出してかぶりつきつつ、俺にUSBメモリに似た端末を手渡してきた。

 

「こいつは?」

「ラプターに追加される予定のパッケージのデータだ。一応マニュアルも兼ねているからよく読んでおくように。それと、注意しておけよ」

 

マイクは如何にも面白くなさそうに言ってグラサンを掛けた。

不機嫌な表情を隠すためにであることはすぐに理解できた。

 

「教師がかなり入れ替わっている。いけ好かない頭パーなのが増えたから、絡まれると思っておけ・・・全く人をサングラス掛けたカバだのなんだの言いやがって・・」

 

失礼ではあるが、言いえて妙ともいえなくはない。

 

確かに女性からしてみれば、本来太った男と言うのは不快なのかもしれないが、ソレを口に出して言うのは間違いだ。

 

ソレを真正面から言われたところを見ると、厄介な思考な持ち主であることはサルでもわかるというものだ。

 

「ま、でも。俺達いつもハズレ役に嫌われ役じゃないですか? 今更気にしても仕方ないでしょう?」

 

マイクはフン、と鼻を鳴らして俺の言葉に賛同した。

 

「そうだが、それができるのはいい大人だけだ。俺はひねた大人だから聞き流さねえのよ・・・ま、頑張れよ」

 

そう言って去ろうとして、一つ思い出したのか手を叩いて俺をもう一呼んだ。

 

「そうだ、弾!」

「はい?」

「一人だけ期待してもよさそうだぞ」

 

少し下品な笑いをしながら彼は巨体を揺らして校舎へと足を運んでいった。

俺は彼の言う期待と言う意味に何となく期待していた。男があんな笑いをして期待すると言えば、何のことか口に出すのも僭越と言うものだ。

俺も少し二やつきながら校舎へと足を運ぼうとしたところ、アカネが後ろから走って来て俺をつかんで、耳元にささやいた。

 

「浮気は許しませんよ。 わかりましたか? 弾二等兵。」

 

悪魔も裸足で逃げ出すような凍り付いた声でささやかれて俺は一言「了解」 とだけ言った。

 

これじゃ将来が大変だな、と俺は頭の片隅で考えつつも招かれざる客として俺はIS学園の校舎の仲に入っていった。

 

 

 

 

 

 

校舎に入ってすぐに全校生徒が集められて、全校集会が開かれた。最初は理事長のあいさつから始まり、そのスピーチの長さに辟易した。

どうでもよさそうなことを意味ありげに話し、終わったと思えば、思い出したかのように話をしだすのでウンザリしていた。

 

ようやく話が終わり、長かった話が終わったことに拍手をして、俺は一つため息を吐く。

姿勢こそ、あのロストワールドで鍛えられたせいか保てるが、今一精神面ではまだまだ問題があると思うものだ。

 

次に始まったのが、新教師の紹介だった。誰もかれも、ピシッとしたスーツに身を包み訓示を述べていく。彼女らに共通していたのがきつそうな見た目と余計なひと言を加えていくことだ。

 

曰く、例年にない方もいますが。 曰く、本来いないはずの人もいますが、など。

 

ISの万能性を信じて疑わず、それを自身の権威に利用するといった方が多い印象だ。

少数ではあるものの、慣れない場で挨拶をする方達もいたのが救いか。

 

彼女らと付き合うとなると骨が折れそうだ、と内心くたびれた気持ちになっていると、最後の一人が壇上に上がった。

ソレを見て俺はワオ、と小さく言った。

 

嵐の後にきた一陣の癒しあるそよ風と言ったところか。その教師の外見は見事の一言に尽きるものだった。

 

少し暗めの長い赤毛に彫刻家が彫った女神像のように美しい顔にアカネを超えるバストで山田先生並に見える。程よく引き締まった腰回り、さらにすらりと長い脚。マイクの言っていた期待していい人とは彼女のことだったのだろう。

 

スーツも一見大場先生のようにだらしなく来ているように見えるが、それは自身の魅力を出すための物という事は男ならだれでも気づくだろう。

 

男からすれば、少々刺激の強すぎる見かけだ。そして、同時にスポーツ選手でもない体つきに違和感を覚えた。

 

彼女はIS乗りであるにもかかわらず、だ。あまり鍛えられたという印象はみあたらなかった。

 

そんな彼女に思わず見とれていると、背中に僅かばかり残っていた贅肉をつねられた。

犯人が誰かはすぐにわかったので、俺は痛みに耐えて後ろの人物に謝罪した。

 

「イヴァナ・ハートです。仕方なくこちらに来ましたが、仲良くしてね? 何か悩みがあったらためらわずに来てくださいね?」

 

その声は砂糖がたっぷりと入ったコーヒーのように大人の甘ったるさが込められていた。

ほとんど周りの教師は白い目で彼女を見ているが、こう見ると嫉妬しているように見える。

 

変わった反応を示しているのは、三人だ。大場先生はだるそうな顔を見せて、山田先生は顔を赤らめて、マイクは一人ニヤけている。

 

そんな教師紹介も終わって次に出てくるのは生徒会長らしく、壇上をぼんやりとみていると、そのお姿が見えた。

 

彼女を見て俺は既視感に襲われた。風貌こそ違うが、髪の毛の色に顔つきといい、見たことなある者だった。

 

直接会ったわけではない、ただ更識簪に似ていた。雰囲気は別物でも顔のつくりはよく似ている。

 

「さてさて、今年は色々と立て込んで紹介がまだだったわね。私の名前は更識盾無。この学園の生徒の長よ。今後ともよろしく。 」

 

やはり、想像は正しく彼女は簪の姉であった。簪とは違い自信があるハッキリとした喋り方をする。兄妹であった俺もそうだが、兄弟と言うのは性格までそっくりと言うわけだはないことを再認識した。

 

簪は姉のことをあまり好きではないとユーリから聞いたことがあったがパッと見は嫌われるようには見えないことから、簪も俺と同じく 身内にコンプレックスを抱いていたのかも、と推察した。

 

生徒会長が議題について触れると後ろの電子ボードが変化し、学園祭となった。

 

「さて、今月は学園祭。各自のクラスで出し物を皆で頑張って決めるように。せっかく学園にはいったんだから楽しまないと損よ? 以上!」

 

驚くほど速く話が終わってしまい、全校集会は終了した。

 

生徒会長の言葉は僅か五分とかからずに終了してしまったので、俺は一瞬呆気にとられた。

 

教師の号令が聞こえて、生徒の皆がぞろぞろと自分の教室へと帰っていくのを見て、俺もそれに倣い、頭を掻きながら、回れ右をして教室へと戻ろうとした。

 

その道中にアカネがこっちに来いと手招きをしているのが見えたので、歩幅を合わせて話し合うことにした。

 

彼女は神妙な顔つきをして聞いてきた

 

「あの生徒会長どう思います?」

 

眼鏡のレンズの向こうに鋭い目を光らせる彼女に対し、俺はあの更識簪の姉である生徒会長についての率直な感想を述べる。

 

「ひとまず、学園祭を楽しめって話だな。活発そうないい生徒会長なんじゃないか?」

「警備については何も言ってませんけどね」

 

俺は少し考えて言う。

 

「だから、じゃないか? 物騒なことが多かったし、ここらで息抜きというか、落ち着かせたいんじゃないか?」

 

アカネは少し唸って見せた。

 

「そういうモノですか? 私としては少し物足りないような・・」

「アカネのいう事もわかるけど。戦える人は少ないし、福い・・・・例の騒動だって噂半分にしかとらえないと思うぞ。」

「・・・何だが、納得がいきませんね」

 

アカネはさらに難しい顔をして納得のいかない顔をする。おそらく、一般の家庭から来た俺と退役軍人の元で育ち、俺より長く訓練して来た彼女との違いだろう。

 

不安がらせるべきでないとする俺と情報を少しでも多く伝えるべきだという彼女の考え方の差だ。

 

今の段階でどちらが正しいか決めるのは難しい。

あくまで可能性の話なのだから。

 

はたして、生徒会長の話がどちらがよかったのか、とわかる日が来るのだろうか?

来たとしたら、それはアカネが正しかったことになるのだが、

 

そんなことを疑問にしつつ、俺はつぶやいた。

 

「学園祭か・・・」

「弾は楽しみにしてるんですか?」

 

俺は彼女の顔をまじまじと見つめて言った。

 

「俺らって学園祭の取り決めに参加できんのかな?」

 

アカネは両手を広げていった。

 

「さあ?」

 

いわゆる、嫌われ者であるはずの俺たちに意見を聞こうとする者がいるのか。

ただでさえ、分裂しているクラスだ。表面では皆仲良しそうに見えるが、実は違う。レジスタンスとピースである俺たちはクラスから孤立していると言っていい。

 

当然と言えば、当然だ。専用機を持った代表候補生相手に挑んだり、嘗めた態度をとる集団だ。余計な火の粉をかぶりたくないだろうし、普通に見れば、馬鹿な連中その一とその二だ。

 

それに福音の騒動で俺とアカネが先生を殺めたのではないかと言う噂もある。

実際事実なのだが、わざわざ公言する必要はないし、聞いてくる人もいないだろう。

 

それに、もしかしたら織斑一夏と関係を持てると考えている子もいるのだろう。もっとも本人の周りには曲者だらけの候補生であふれているのだけど。

 

俺はこれから起こりそうなことに頭を悩ませて、アカネと話すことで癒しを求めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、今回の学園祭の出し物ですが・・・」

 

教壇の上で一夏が出された案について、異議を申し立てている。それも当然で、出された案は一夏とのポッキーゲームやら一夏の執事喫茶だのろくでもない案ばかりだからだ。

 

正直悪ふざけにしては度が過ぎているし、冗句にしては笑いが一つも出てこない。

そして、当然ながら俺についての物がないのにはもう慣れた。

 

それもそのはずだ。織斑千冬先生の弟で好青年の一夏と違い、俺は一般家庭の長男。ペルシャ猫と雑種の猫を同一視しないのと同じだ。ブランドからして別物と言う女の子らしい発想からこういったことが起きるのだ。

 

俺は椅子の背もたれに身を任せて、後ろを見る勢いでのけぞった。

最早眠ろうかとすら思う。隣のアカネも珍しく欠伸をして、心底どうでもよさそうに一連のやり取りを見ていた。

 

一夏は必死の抵抗を見せて、これらの提案を通らせまいと努力するが、多勢に無勢である以上勝敗は見えているというものだ。

 

しかも、一夏のそばにいる専用機持ち達も薄情なのか、一夏を助けようとしていない。

逆にそれを望んでいるかのようだ。

 

見かねた静寐が救い手を差し向けようと思ったのか、立ち上がってクラスメイトを落ち着かせようと意見具申をした。

 

「皆、ちょっと落ち着きましょう。織斑君も困っていることだし・・・」

 

彼女は特別なことは何も言わなかった。ただ、少し落ち着くように言っただけだ。

しかし、その時俺の耳に届いたのは小さくはあったが、明らかな陰湿なものを含んだ声だった。

 

「何よ、偉そうに・・」

「いつまでも、委員長面しないでよね・・」

 

静寐は困った顔を浮かべたが、聞こえなかったふりをしていた。

明らかな嫌悪の声に彼女は戸惑いを見せていた。

 

彼女たちがレジスタンスのリーダーに反感を抱いているのは明らかだ。彼女たちからすれば、専用機に歯向かうことで成績をあげようとしている「でしゃばりな女たち」だ。

失敗こそすれば、笑い話にできたろうが、彼女たちはとりあえずの成功を果たしているためにこういった陰口をたたくのだ。

 

俺はわざと机を蹴飛ばして大きな音を立てた。ビクリと幾人かが肩を震わせた。

 

「すいません、ちょっと落し物を・・・」

 

俺は筆箱を拾うふりをしながら、周りを見渡す。明らかに恐怖を見せている者から、嫌悪の視線を向ける者までさまざまだ。

 

俺は心底嫌な気分になりつつも、学園の変化に気付いた。最早、最初の仲良しな雰囲気はどこへやら。嫉妬や嫌悪にあふれているではないか。

 

それに一夏はそれに気づいてないようだった。相変わらず忙しそうに反対意見を述べている。

 

ソレを見ると、教室がちょうど真ん中で二分されて明暗を作り出しているかのように思えた。綺麗に境界線が引かれて、教団からだと、クラスの暗いところが見えないようにされている。

 

そんな風にも思えた。

話し合いは何分か続きコスプレ喫茶をすることに決まった。

一応、全員が拍手を送るが、俺はどこか熱のこもらない視線でソレを見ていた。

 

教室を出ようと立ち上がって俺は脳髄を働褪せて考えた。

俺は嫌悪されるのは俺とアカネだけだと思っていた。しかし、それは間違いでレジスタンスに対する目も変わっていたのだ。

 

では、どうしてこうなるか。それは簡単に思いつく。

将来の、つまり操縦科になれるキップ争奪戦だ。アピールとしては最高のモノを起こしてしまった彼女たちを歓迎しない者もいるというわけだ。

 

専用機を倒したことで喜んでくれる人もいる反面こういった人もいる。

 

嫌な話だと思う。さっきの女子のように、努力したのを素直に祝福することもできないのだ。だが、別の考えもある。俺が専用機を持つことで余裕が発生したからこそ、こう考えられるだけでは、とも。

 

一つため息を吐いて俺は廊下へと出た。難しく考えすぎなのかもしれない。

すると、唐突に自分を呼ぶ声がした。

 

「やあ。」

 

話しかけてきたのは生徒会長 更識盾無だった。利発そうな外見で挨拶を交わしてきたのだ。

 

「ああ、どうも」

 

俺があいまいに答えると彼女は口をすぼめた。

 

「つれえないなあ。お姉さんがせっかく会いに来たのに」

「何か御用でしょうか? 俺はこの後、アカネたちと訓練をしに行くんですけど・・・」

 

とりあえず、予定を口にして、急いでこの場から去ろうとするが、彼女は俺の目の前に立ち通せんぼをしていた。

無理に通ろうとすれば、俺の噂もさらに悪化することだろうと思い、内心舌打ちした。

おそらく彼女はわかってやっているからだ。

 

「私が君にISのコーチをしてあげようと思って・・」

「突然の申し出でありがたいですけど、教官ならいますのでいいです。」

「でも君は弱いままよね?」

 

明らかな挑発だなと思いつつも、少し頭を整理して俺は頬を掻いて答える。

その手に引っかかるものか、と心の中で毒づきさえもした。

 

 

「ええ、だから彼らの所に行くんですよ。あそこなら各エキスパートが揃ってますし、教え方も上手ですから。それに初心者の俺が生徒会長の目に留まるくらいにはなれたらしいですし、今後もそれで行きますよ」

 

多少生意気ととられる内容ではあるが、俺は答えた。この程度の減らず口なら俺程度でも使えるというものだ。そして、彼女の目が鋭くなったのがわかった。口元を扇子で隠して笑い声を漏らす。

 

「・・・随分と口達者なのね。それも訓練の成果なの?」

「ええ、二組のプラチナブロンドの御曹司のマネです。」

 

俺もにこやかに応対する。これもヴィンセントの真似だ。彼曰く、笑ってごまかすというのは万能のコミュニケーション手段なのだそうだ。

生徒会長は妖艶に笑みを見せて近寄ってきた。心なしか、ボデイラインを強調したポーズに見えた。

 

「そう言わないで、お姉さんと一緒に・・」

「他人の教え子に色仕掛けですか?」

 

間に入って来たのはアカネだった、目の奥に煮えたぎった溶岩の様な憤怒を見せつけている。

 

「アラ、貴方は・・」

「堂上アカネです。この後彼と予定があるので・・・失礼」

 

アカネは俺の手を取って強引に彼女を押しのけた。少し口惜しそうな笑みを浮かべる生徒会長をしり目にアカネは耳元にささやいた。

 

「彼女と変な約束は?」

 

まるで、知らない人と話していた子供をしかりつける母親のような口調で問い詰めてきた。

 

教官として、生徒をとられたくなかったのだろう。

 

「してないよ」

 

俺が答えても、彼女はムスッとした表情で聞く。

 

「本当に?」

「信じろよ」

 

俺は彼女の肩を叩いて信頼するように言う。彼女は微笑んで「ならいいです」と満足そうに答えて食堂へ行くように言った。

 

 

 

 

食堂でついて、間もなく俺とアカネは机に突っ伏してクラスの出し物に頭を悩ませた。

 

「コスプレ喫茶か・・・アカネさん、メイド服着るご感想は?」

「最悪です。いっそフレンチメイドじゃないことを喜ぶべきでしょうかね? 大体私たちが参加してもいいんですか?」

 

彼女の率直な疑問に俺は考えを述べる。

 

「彼女らだって、そう表だってハブることはしないさ、何だかんだ言って、専用機持ちを相手にすると面倒だと知ってるからな」

 

アカネはそれを聞いて、深くため息を吐いた。

 

「最悪です」

 

ハイライトの消えた瞳のまま、ストローでグラスに入ったコーラを力なく飲み込んでいく。俺は彼女の方を見ながら言う。

 

「でも、いつだか前に可愛い服着たいとか言ってたじゃないか?」

 

そう訊くとアカネは袖を捲って見せた。そこには女性らしくもあるが、しっかりと鍛えられた腕が現れた。

 

「また・・・筋肉増えてしまって・・・もう私一生ヒラヒラの服着れませんよ・・・」

 

悲しいことに彼女が得意な得物を使うたびに鍛えられていくのだ。

故に彼女はアスリートとしては美しく最高な体を手にすることはできても、可愛い少女にはなれないのだとか。

 

「気にするなよ。俺は好きだぞ。」

「・・・ありがとうございます」

「私はそんなことないと思うのだけど?」

 

少し間延びして、色気を感じさせる声が割って入った。

俺とアカネが顔を上げると、そこには前かがみになって豊満な胸の谷間を見せつけるスーツ姿の女性、イヴァナ・ハートがいた。

 

「イヴァナ先生・・?」

「そうよ、五反田君。 嬉しいわぁ、覚えてくれて。あと、イヴァと呼んでほしいかな。」

「イヴァ先生、何の用で?」

 

アカネが少し警戒心を見せつつもイヴァ先生に質問すると、突然、イヴァ先生はアカネの腕を持ち上げて観察し、次に彼女の肢体を嘗めるような目で眺めていく。

 

その一連の動きにアカネは顔を少し赤らめた。

 

「あの・・・何か?」

「自信もっていいわよ。貴女、すごく素敵じゃない。ちゃんと出てるところは出てるし、

胸もボリュームあるわ。ワンピース来てもイケるわよ。」

 

彼女はアカネのスタイルを褒めて、続けた。

 

「メイド服で、どうしても体を見せたくないなら、和風にするといいわ。あなた東洋人の血が入ってそうだから、十分似合うはずよ。 可愛いんだから自信を持ちなさい」

 

そう言って、アカネの額にキスをした。

アカネはあっけにとられた顔でロボットのようにかくかくさせて答えた。あまり、この手の話題で褒められたことがないからだろうか

 

「あ、アリガトウゴザイマス。」

「うん、その調子でね。またね」

 

彼女は一通り満足したのか、豊満な胸を揺らして、去って行った。

ぼんやりとその背中を見ていると、驚いたことある人物たちの席に座った。何と大場先生と山田先生の席に彼女は座りだしたのだ。

 

これはスクープものだと思った。新米教師が早くもあの二大先生の二人の席に向かっていったのだ。

一体何のためか、興味がわくというものだ。

 

そもそも、彼女の存在そのものが異質に思えてならなかった。IS乗りとはいえ、どうみても鍛えた風には見えない。

 

IS乗りはモデルもやることがあると聞くが、むしろ彼女の場合それが本流ではないかとすら思う。

 

そんな彼女が何故この学園に来たのか、そして何故山田先生と大場先生と言う異色コンビの元へ行くのか、これを知らずにはいられない。「

 

俺はフリーズしている彼女を現実に引き戻して、その方向を指さした。

そして、彼女も遅れてソレを理解し端末を取り出して、集音機の役割をさせて先生たちの話を盗み聞きすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラ! オリキャラに原作キャラ。正直多すぎな気が・・・
しかし、ストーリに色を付けるためには・・・

と思うこの頃です。


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