IS to family   作:ハナのTV

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長くなってしまいました。
後、展開も早いかもしれません。


43

職員室で私に会いに来た三人の専用機持ちの方々 鈴さん 簪さん、アカネさん、を同時に見て私は何をしに来たのだろうと思った。

 

私としては生徒さんに頼られること自体は嬉しいのですが、どうもそう言ったものとは違うような気がした。

まず最初に話したのは鈴さんだった。

 

「山田先生、一つ聞きたいことがあります。」

 

神妙な顔で話す彼女に驚きつつ、私は訊き返した。

「何でしょう?」

「悔しくないんですか?」

 

私はもう一度彼女の顔を見て、質問の意味を聞いた。

 

「あの、どういう意味か分からないんですけど・・」

 

少し困ったが、笑顔を作るように努力して私は彼女たちに離しやすいように努めた。

それに対して鈴さんは身を乗り出して啖呵をきった。

 

「悔しくないんですか? 生徒にいいように言われて、何をしても笑われて、コケにされて・・・」

 

言われた言葉は私に突き刺さるものだった。

確かに必死に教えようとしても、相手にされなかったり、それどころか馬鹿にされたりするのは腹も立つし、泣きたくなる時もある。

 

でも、それではだめだ。

 

私は鈴さんに向かって言う。

 

「それは・・確かに思う所はありますけど、私には生徒さんを傷つけるなんてできませんし、それはやってはいけないことです。 それだけは・・・」

「でも!」

 

彼女はなおも食い下がる。自分に正直に生きている鈴さんのような真っ直ぐな人からすれば、私のやり方は見ていて、苛立つのかもしれない。

 

私はこれでも代表候補生だった。だから、その経験から知っていることがあった。

 

「私、これでも候補生だったんですけど・・・その時私たちを鍛えてくれた教官たちがいたんです。 その人たちも結局候補生どまりで、皆話も聞かなかったですし・・・私もその一人だったんです。」

 

思い出すのはメガネもかけずに打鉄を纏っていた頃の話だ。あの時はメガネを掛けていたら、格好が悪い。代表になったときに格好がつかなくては困ると思い、コンタクトをしていた。

 

生意気にも教官の人に向かって私ならもっとうまくできると思っていた。

何の根拠もなく、結局代表になることはできなかったのだけれど。

 

恥ずかしい思い出の一つだった。それと同時に忘れてはならない思い出でもある。

 

「でも、それでも一人熱心に教えてくれた人がいたんです。自分と同じ思いはしてほしくない。どうせなら、笑顔にさせてあげたいって言った人が・・・」

 

その教官もまた、私と似ていた。気弱で自分の意見をハッキリと言えない人だった。でも

私の道しるべとなった。

 

「その人は他の教官と違って生徒に手をあげたりはしなかった・・・どんなに酷い悪戯をされても、困った笑みを浮かべているだけでした。」

 

私の話を聞いて、鈴さんは質問をする。

 

「その人が理想なんですか?」

 

その問いの答えは決まっていた。

 

「はい、そうです。」

 

微笑んで、私は応えた。

 

「だから、私もその人のようになりたいんです。失敗した時でも、代表に選ばれなかった時も、この学校に来る時でも頑張れって言ってくれた人のようになりたいんです。」

 

ただの理想でしかないと言えばそうかもしれない。現実主義の人から見れば、私も教官もただの夢想家。度が過ぎたお人好しでしかないかもしれない。

 

でも、夢がないなんてのも悲しい。理想を追いもしない生き方は私は嫌だ。

現実を認めることは大切だというのはわかる。でも、なんの夢もなく現実に流されていくより、夢や理想を叶えてみようと思って動くのだって、大切だ。

 

だから、私は生徒さんに手をあげたりしない。たとえ、絶対防御なんてものがあってもやってはならない。

 

 

その答えを聞いてアカネさんが口を開いた。

 

「なら、なおさらじゃないですか。嘗められたら、山田先生の教官の方だって馬鹿にされてる事になるんですよ? イヴァナ先生も言ってたじゃないですか」

 

彼女は必死にも見えるほどに主張した。その姿を見て私はアカネさんにも理想とする人がいたのでは、と思った。

 

私と同じように誰かに憧れてその人を理想としている。

だから、彼女は懸命に主張しているのだ。

 

「夢をかなえるなら、先生が叫ぶべきです。私の夢はこうだ、と。貴女の力なら可能ではありませんか?」

「私にそんな力はありません・・・残念ですが・・・」

 

そこで今まで黙っていた簪さんが口を開いた。

 

「そんなことないです。」

「簪さん?」

 

この中で一番大人しいと思っていた簪さんは力強く言った。

 

「先生は強いです。意志だって強い。福音の時も戦って、皆を守ろうとした・・・でもわかってくれない人がいて、先生が謂れのない誹謗を受けるのは見ていられません」

 

更に簪さんは言葉を重ねていく。

 

「劣っているとか、弱いとか、言われたり、思われるのは辛いはずです。夢のことまで馬鹿にされて怒りもしないなんて、そんなの・・・・辛すぎます。」

「簪さん・・・」

 

言われて見れば、彼女もそうだった。簪さんもお姉さんとの劣等感やオマケ扱いで苦しんでいたと聞いたことがあった。

 

今まで暗く、どこか諦観をしていたような彼女も色々な出会いで成長したように見えて、私に対しても意見を言うようにまでなっている。

 

そのことに喜ばしく思いつつも私はなおも答える。

 

「でも、私はこの考えを変えることはしません。生徒さんには・・・」

「だったら、生徒じゃなきゃいいんですね?」

 

鈴さんが突然とんでもないことを言い出した。

私は目を丸くして聞いた。

 

「鈴さん?」

「イヴァナ先生なんてどうです?」

 

彼女は二かりと八重歯をだして訊いてきた。彼女はなんと教師同士の試合を提案しているのだ、と頭で理解するのに若干時間がかかった。

 

「ダメですよ!」

 

私は即答した。教師同士で戦うことに意味を見いだせなかったからだった。でも、目の前の彼女たちはその意味を言っていく。

 

「教師同士の対決・・・いい見本ではないですか?」

「しかし、そんなのこじつけで・・・」

 

アカネさんがあおり、簪さんが期待するような目をこちらに向けて言う。

 

「私は見てみたいです。」

「簪さんまで・・・・」

 

そこへ、鈴さんが畳みかけるように私に決闘をするように勧める。

 

「イヴァナ先生の実力もみたいですし、それに私たちの先生が彼女にいいように言われたままって言うのがアタシ嫌ですし、何よりイヴァナ先生も素直じゃないと思いますし・・・・」

 

前半は褒められるセリフでないとしても、彼女のいう事に私は頭の上にクエッションマークを浮かべた。

 

「素直じゃない?」

「はい。多分ですけどね。イヴァナ先生って寂しがりやじゃないかなって・・・

いや、あの生意気な子を撃ったのも先生に対しての優しさだったんじゃないかなって・・・」

 

私は思わず、鈴さんの手を握って強く言った。

 

「詳しく聞かせてくれませんか?」

 

私は何か勘違いをしていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時々君が怖くなるよ。 君ってどこまで成長する気なんだい?」

 

ヴィンセントがアリーナへの道を歩きながら、聞いてきた。彼の顔は愉快そのものでニヤニヤしている。

 

「どこまでもさ。そうでもしないと、お前たちに追いつけないからな。」

「いい心構えだ。交渉役がもう一人欲しかったし、助かったよ」

 

褒められて悪い気持ちはしない。俺はありがと、と答えて自身の成長を自分でハッキリとみることができた気がした。

 

もっとも、まだ満足できるレベルではない。次の段階へとコマを進めていくだけだ。

それは今回の作戦も同じ。とりあえず、イヴァナ先生を誘い出すことは成功したのだが、問題は山田先生だ。

 

彼女の方は同性という事で、簪に鈴、アカネと交渉を任せてしまったが、うまくいっているだろうか。

 

山田先生はダーティなことは好まないために、いわゆる取引がしづらいタイプだ。

自分の信念とか心情に沿っているなら、どんなことでも引き受けてくれるだろうが、それ以外は受け入れない。

 

大場先生やイヴァナ先生、アルフレッドと違って結果だけではなく、過程も求める人だ。

交渉するのは難しいかもしれない。

 

しかし、そこは彼女たちに期待するしかない。この作戦のキーは互いに知られてはいけないことだからだ。

 

もし、途中でどちらかに知れ渡れば、作戦の意図が露見し上手く乗ってくれないためだ。

 

「さて、アリーナに着いたぞ弾君。君の作戦がうまくいっていれば、既にアリーナには山田先生とイヴァナ先生がいて、今頃試合をしようと話し合っているところだろう。」

 

俺は少しおどけて言って見せた。

 

「上手くいっていれば、な。 それに二人とも大人なんだから起きないこともあるだろ?」

俺達は二人笑いあって、違いないと二人同時に言った。

そして、ヴィンセントが扉に手をかけた。

 

「さて、我らの作戦の結果を・・」

 

扉を開けてみると、そこに女子組三人がいた。三人とも冷汗を流していたり、頭を抱えていたりしている。

 

またレジスタンスの面々もいる。彼女たちの顔は真剣そのもので雰囲気からして、試合をする時のそれだった。

 

何事かと思って俺とヴィンセントは顔を見合わせて訊いた。

 

「何があった?」

 

そうしていると、扉の影の所で壁に寄り掛かっていたユーリが見えた。彼は無言でアリーナの中央を指さした。

 

その方向を見ると、特注装備を付けたイヴァナ先生のラファールと、重火器満載のラファールをつけた山田先生が、得物を向けあっている。

そして、その中央に打鉄を纏った大場先生が立ち、双方を見て高々と信号弾を打ち上げた。

 

大場先生は後退して、二人のラファールが戦闘速度にまで加速させて空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大場先生? どういうことですか?」

「さあ、恐らくは私達子供にはめられたんでしょう。」

 

イヴァナ先生と大場先生が目の前で話す。彼女たちの雰囲気は決していいものではなく、陰険さも見え隠れする黒いものだ。

「貴女も・・・グルってわけなの? あのプラチナと赤毛の子の」

「いや、そうじゃない。ただ、アタシとしても貴女の態度には一言言いたくてね・・彼らに協力しているのさ」

 

イヴァナ先生のこめかみがピクリと動いた。大場先生に対して何らかの感情を抱いているのだろう。

 

「だから、山田先生を? 卑怯じゃないですか?」

 

大場先生は懐から煙草を一本取りだして、禁煙であるアリーナのど真ん中で一服した。気持ちよさそうに紫煙を満喫して、彼女は言った

 

「見ての通り、教師としてはアタシはできてはいない。そんなアタシがやるより、教師としてもっとふさわしい彼女の方が向いているだろうと思いましてね。いけませんか?」

 

歯をキラリと光らせて笑う大場先生にイヴァナ先生は何も言わない。ラファールの指でチャレンジャーライフルの長い銃身をコツコツと叩いているだけだ。

 

しばらくして、叩くのをやめて、大きな深呼吸をして、目をつむった。

目の前に立つイヴァナ先生を纏っているのは第二世代型ISラファールにイギリスで開発されたであろう特殊ユニットが装着された。

 

本気と言うわけだろうか。

 

長い赤毛の髪の毛を風に吹かせて、こうして立っているだけで勝利者のような笑みを浮かべている。私を下に見ていることは明白だ。

 

でも、それは実力面での話ではない。ISの腕で彼女は私を見下しているのではなく、私の考えそのものを愚かだと、疑わないからだ。

 

「アラ・・・・貴女何その装備は・・・? 私とヤル気なの?」

 

先ほどまで全く気付かなかったかのように彼女はこちらを見て言った。

 

その態度には少し腹が立った。

 

そんな私の様子を特に気にもせず、彼女は大型のチャレンジャーライフルを棒術のように回して、地面に突き刺し、もたれかかる。

 

「いよいよもって、自分のために戦う気になったてことでいいのかしら?」

 

最初は使っていた敬語も今は使わなくなっている。彼女なりの考えがあっての行動かもしれないけど、それは私に敬語を使わなくなっていった生徒さんを思い出させた。

 

「少し・・・違うかもしれません。」

「というと・・?」

 

私は意を決して言うことにした。これがどんな結末を生むかはわからない、けど言わずに終わるよりはいい。

深呼吸をして、言った。

 

「私の思うことを認めさせるというのもあります。でも、私は貴女を一人にさせたくない。

だから、ここに来たんです。」

 

意を決して言った言葉に対して、イヴァナ先生は顔を伏せるようにして表情を隠した。

顔から笑みが消えているのもわかったが、私は言葉を続けていく。

 

「貴女は強がっているのではないですか? 食堂での話を聞きました。セシリアさんから厳しく言われても、貴女は口でこそ反論はしても、決して手は出さなかった。」

 

それが彼女なりの考えなのだろうと思った。彼女は良くも悪くもフィールド以外で手を出すことはしない。ルールを弁えているからだ。

 

そして、あの行動が私に対する思いで行われたのだとしたら、私は謝らなくてはならない。

彼女なりの思いを踏みにじってしまったのだから。

 

たとえ、それが褒められた行動でないにしても、私はその思いには答えなくてはならない。

 

「貴女のことを誤解していました・・・・寂しかったんじゃないですか? 一人望んでもいない所に来て、せっかく叶えた夢も無下にされて。 だから、誰も貴女を肯定しない中、私や大場先生と言う同じ人を求めたんじゃないんですか?」

 

そこでイヴァナ先生が顔を上げた。笑みを浮かべていた表情は怒りで歪んで、非常にひきつった笑みとなっていた。

 

「・・・・何を言い出すかと思えば・・・お嬢ちゃんがよく言うじゃない。そういう、人を助けよう、人のために働こうって息巻いているのがムカつくのよ。自分だけ綺麗みたいな顔して・・恩着せがましい・・・!」

 

そう言われて私も自分の堪忍袋の緒が切れるのを聞いた。

素直になろうとしないどころか、他人が傷つくであろう言葉を選んで、人を突き放そうとする彼女の態度に私は怒りを覚えた。

 

私をあくまで「夢見がちなお嬢ちゃん」としか見ようとしないことにも、いい加減に我慢の限界だった。

 

「そうやって、自分だけ現実を知っているみたいな言い方をやめてください! 貴女だって子供のように駄々をこねているだけじゃないですか!」

 

さらに彼女の顔が険しくなる。おそらく私の顔も同じようになっているのだろう。鏡が無くてもソレはわかる。

 

「言ってくれるじゃない もう遠慮はいらないってわけね。今ならの上品そうな顔を殴るにはうってつけよね? 文句はなしよ?」

「望むところです!」

 

お互いに銃器を構えて、向き合う。公式の試合でもないので、試合開始のブザーはならないことに私は一瞬、違和感を覚えたがすぐにそれも消えた。

 

今日だけは、我がままになる。この時だけは・・・そう思って神経を研ぎ澄ます。

メガネのレンズ越しに相手を見つめる。

 

HMDに敵ISからのロックオンアラートが表示され、私はライフルのグリップを力強く握った。

 

そして、打鉄を纏った大場先生が信号弾を打ち上げた。

 

花火のように撃ちあがった光を放ったその瞬間私たちは飛び上った。

 

最初に発砲したのはイヴァナ先生だ。チャレンジャーライフルの大口径の実弾が轟音と共に、放たれる。元々が戦車同士の戦いに使われる砲弾をよけるのは難しくない。

 

大型故に取り回しに難があるし、こちらに砲口を向けるまでに若干のラグができる。

 

通常の回避運動で難なく避けるが、私の額には汗がにじむ

しかし、一発でも当たれば、全エネルギーの三分の一以上は消費する。それだけでも

緊張させるには十分な要素だ。

 

そして、再び英国生まれの120mm弾が発射される。

回避先を正確に予想した射撃だが、ラファールの扱いやすさと機動性の良さは伊達ではない。

 

スラスターと体の向きを微妙に変えることで減速することなく回避する。

二発撃ったところで、間隔が生まれた。

イヴァナ先生はボルトを操作して、排莢して内部に砲弾の入った金属製の箱をおしこめた。

恐らく、弾君のパルスライフルと同じクリップを使ったリロード法なのだろう。

 

ここまでは順調に回避に成功し、今度はこちらの番だ。

 

標準型のアサルトライフルを構えて、三点バーストで大仰な翼が生えたラファールを狙い撃っていく。

 

小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、彼女のラファールは大きな装備を背負っているにもかかわらず、かすりもしない。流石に代表に選抜されるだけのことはある。

 

マガジン内のすべての弾丸が切れる直前で、ミサイルポッドを開き、七発発射し、さらに誘導グレネードのオマケもつける。

 

そして、DMR9を呼び出す。一番扱いなれたライフルではないが、夏休み中に癖をつかんでいる。

後は私次第だ。チャージンぐハンドルを引いて初弾を装填し、中距離用のスコープを覗く。

 

スコープに映るのは、回避行動をとる異形のラファールだ。

枝付きグレネードの下部から噴射炎が出てイヴァナ先生へ目がけて飛んでいく。彼女は後退して、クルッと回って急降下をする。追跡するミサイルの先のイヴァナ先生目がけて、

向きを変えていく。

最高速と見れる加速をする彼女。地面にぶつからないように減速したところを狙い打てれば、足が止まる。そこにミサイルとグレネード直撃させれば私の勝ちだ。

 

しかし、彼女がとったのは奇妙な動き方だった。

長いチャレンジャーライフルの銃身を両手でつかみ、それを軸にして回りだして、破廉恥ともいえるほに長い脚を開いて機体の向きを強引に変えた。

 

そして、踊るように地面を滑り、銃身を短く持つように構えてアリーナの大地を榴弾で抉った。大量の破片と土にコンクリート片を巻き上げて、ミサイルやグレネードを次々と誘爆させて処理した。

 

凄まじい煙の中、一瞬ひるみながらもサーモに切り替えて彼女を見つけ出して、発砲する。

こちらが上を取っている分有利だ。数発撃つと、イヴァナ先生の肩部に一発シールドを抜けて被弾したが、彼女はその反動を利用してまたも銃身を利用して回転し、隙を作らせない。

 

奇妙な動きではあるが、効果は十二分にある。

恐らくはポールダンスを、真似たものだろう。長い銃身を軸にして回避と機体制御をおこなう、独特の技だ。

 

そして、もう一発120mm弾を放つ。

しかし、予想外だったのが撃ったのは榴弾でもAP弾でもない。

 

空中で爆発し、鉄の矢が辺りに飛び散った。ラファールのシールドで防ぐことはできたが、

ライフルのスコープに矢が入って使い物にならなくなった。

 

その時だった。私の後方から青い閃光が走った。

レーザーであると直撃を受けて私は気づいた。振り返ると、そこにはセシリアさんが使うようなブルーティアーズのビットが存在していた。

 

「BT兵器・・!」

 

さらにセンサーが複数の物体を感知してビットからのレーザーを発射されているのを知った。

回避行動を繰り返し、ショットガンでを両手に展開し、辺り一面に散弾をばら撒いていくが、ビットは機械的に動いて弾幕を潜り抜けていく。

 

そして意外と高出力なレーザーが装甲を弾き飛ばしていく。

抉られていく、ラファール。彼女のビット操作は巧みで、好みのポイントに私を誘導して、

逃げてきたところを撃つという方法で、追い詰めにかかっている。

 

逃げた先は地獄、とどまっても地獄。悪趣味ともいえる嬲り方だ。

 

でも、それだけに集中しているわけにはいかない。

どこかで、彼女が狙いをつけているはずだからだ。

そして、その時は起こった。自機の後方、高度30m下に反応アリ、振り向くと巨大な大砲を向けた彼女がいた。左に旋回しながら、ショットガンを向ける。

 

そこで、彼女は瞬時加速を行って、旋回しきった私の後ろに回り込んで、またもあの奇妙な動きをして、短く持ったライフルを構える。

 

彼女がトリガーを引く時、私は振り返ることなく、後ろに向かって加速をして、背中をそのまま、彼女にぶつけて、直撃を防いだ。

 

発射された砲弾が私のラファールの腕部装甲を掠めていき、耳を覆いたくなるような金属の悲鳴を放ったのも気にすることなく、小型ナイフを右手に逆手に持って展開して、切り付けようと動いたとき、私の身に衝撃が走った。

 

右手が動かない。何かに巻き付けられて動かないことに私は気づいた。

そんな装備が彼女にあるとは思わず私は目を見開いたまま、彼女を横目で見た。

 

「ごめんなさいね。」

 

そこに見えたのは、先ほどのビットだったが、センサーでよく見ると、ピアノ線の様なモノがついていた。

その正体を知って、私は驚きを隠せなかった。

 

「有線式ビット・・・! 開発は中止されたはず・・・!」

 

イギリスでのブルーティアーズの派生型の一つだ。BT適性に左右されることなく、誰でも扱えるようにしたビット兵器。

 

機体から出力供給させるので、威力も上がるという利点もあったが、結局高速戦闘中に操るには有線式は邪魔にしかならず、何より試験パイロットのほとんどがワイヤーを絡ませてしまって使い物にならないという、曰くつきの失敗作だ。

 

彼女は意図的に絡ませて、動きを封じ込めている。それほどまでに熟練していた。

 

「だから、貴女はお嬢ちゃんなのよ。」

 

イヴァナ先生は自身のラファールの腕で私の体を固定して、唐突に胸に触るように手を置いた。

突然のことで頭が回らなかった。そこから、淫靡な手つきで腰に手を回して、上へと手を登らせて体を嘗めるように触って楽しむようにして、首もとにまで来て、唐突に手つきを変えた。

 

展開したのはデリンジャータイプの散弾銃だ。とどめを刺す気でいる。

 

「私を嘗めた罰よ。それと、いつまでも甘い考えでいた貴女への餞別よ 観念しなさい、甘ちゃんお嬢様。」

 

私の中で、プツンと切れた音がした。一度ならず、二度も三度もお嬢ちゃんと言う彼女に私はついに怒った。

いい加減にしてほしい。私は織斑先生の腰巾着でもなければ、夢を追うだけの夢想家でもない。

 

私が夢をかなえようとして何がいけないのか、笑っているのもいい加減にしてほしい。

二年もブランクのある人に負けるものか。装備が何だというんだ。

 

私はずっとラファールに乗って教えてきた。夢のために。それを否定させはしない。

叶わないなんて言わせない。

それが私だ。

 

「私は・・・・お嬢ちゃんじゃ・・・ない!」

 

動かないと思っていた手にグレネードを展開し、ピンを抜いた。そして、それを宙に放り投げた。

 

ピンのはじける良い音が耳に届いて次に、イヴァナ先生が初めて、戸惑いの声を上げたのが聞こえた。正直、いい気味だと思った。

 

私達の頭上で炸裂するフラググレネードが破片で、ビットやワイヤー、イヴァナ先生の頭部のセンサーユニットを破壊して、私も被害をこうむるが、自由に動けるようになる。

 

後ろ足で彼女を蹴飛ばして、離れ振り向きざまにショットガンを一発放つ。

彼女もデリンジャーを発砲して、反撃しともに被弾し、推力を失い高度を失っていく。

PICの補助が消えつつあるらしく、スラスターだけで飛ぶしかない。

 

私は機体を立て直し、DMR9を展開し、邪魔なスコープを手で壊して外して、フルオートマチックに切り替えて突撃する。

 

ラファールでは相殺しきれない反動でも構わずに撃ち続ける。

弾倉が空になるたびに交換して、一個、二個と空中へ投棄しながら、大声で叫び突撃をする。

 

大きなライフル弾が彼女の機体を穿ち、装甲を食い破っていく。

ブランクのせいか、スラスターだけの制御に戸惑って、降下するイヴァナ先生に何発も命中していき、彼女のラファールが傷ついていく。

 

あと数発で勝てるはずだったが、無抵抗で負けるような相手ではない。

 

彼女も負けていない。損傷の少ない残ったビットを使って弾幕を張り出して寄せ付けまいとする。

 

曳光弾の代わりに青い閃光の走って、面制圧を行ってくる。そのレーザーのシャワーを潜り抜けようとすると、ラファールに被弾していき、左脚部から黒煙が上がる。

 

いよいよもってクライマックスになって来た。

 

HMDも次々と警告を鳴らしていくのをうるさく思いアラームをきった。

今いい所だ。集中しなくてはならない。

 

彼女まであと3mと言う所でDMR9の銃身がレーザーで切断されて、またしてもビットのワイヤーで機体を固定される。

ワイヤーが締め付けて関節がうまく動かない。

 

普通なら万事休すだけど、引くわけにはいかない。

 

「これまでよ!」

「まだです!」

 

装填し終わったチャレンジャーライフルが火を吹こうという時に私は黒煙を上げている左脚部のスラスター部分を強制パージして拳銃で撃ちぬいた。

 

残ったエネルギーが熱と閃光を伴って、一気に周囲に向かって放出される。

チャレンジャーライフルにも誘爆を引き起こして、大爆発が起こり、私達両者の武装全てを吹き飛ばした。

 

大規模な爆風が起こる中、無様に地面に不時着して、私はすぐに立ち上がって、まだ収納していたサブマシンガンを持って、彼女のいる方向へと向ける。

 

「これで、貴女の武器はもうないはず! 負けを認めなさい!」

「お断りよ!」

 

土煙から瞬時加速で彼女のラファールが姿を見せた。あの天使を思わせた姿はもうなく、

ボロボロの機体が最大速度で突っ込んで来たのに、私は反応が遅れて、サブマシンガンを連射する。

 

彼女は射線を呼んでいたのか、多少の被弾は許したものの、私にとりついて、長い脚でサブマシンガンを蹴り飛ばして、拳で私の顔を殴った。

 

絶対防御のおかげで死にはしないものの、衝撃でメガネが吹き飛ばされてしまう。

さらに彼女は襟をつかむように私を掴んで拳で何度も殴打する。

 

とっさにガードをするが、彼女には一切の容赦がない。腹部に膝蹴りをして、私のガードを崩す。

 

肺から空気を強制的に出されて呼吸が苦しくなる。イヴァナ先生は弱った私の上に載ってマウントを取る。

 

「中々やるけど、殴られるのは初めて? もしかして殴ったことも無いのかしら? どうなの山田先生?!」

 

私は再び、怒りに震えて叫ぶ。

 

「私だって・・・・殴ることはできます!」

 

機体のマニュピレータ―を動かして彼女の顔を殴り返す。

ISでこんなことをしたのは初めてだった。

 

立ち上がって、お互いの四肢だけが武器となって、残ったエネルギーを使い戦い続ける。

いつの間にか、感情を吐き出しながら私は戦っていた。

 

「貴女も、どうしてそう身勝手なんですか?!」

 

彼女の蹴りを防ぎながら叫ぶ。

 

「一人が嫌ならそう言えばいい! 悩みがあれば言ってくれればいいのに! 言う事もしないで、周りを見下して!」

 

「黙りなさい!」

 

拳をぶつけに行くが、彼女はそれを防いで、殴り返しに来る

 

「何も知らないくせに! 候補生時代からそんなのは無意味だって知ってるのよ! 皆、結局上っ面とか、生まれとか、適性でしか、判断しない馬鹿ばかりじゃない!ISなんてそんな馬鹿しかいないのに! 言ったところで何になるというの?!」

 

砲弾をかすった左腕でガードしたために、スパークが走ってエネルギーが減っていくのを尻目に私は彼女に立ち向かっていく。

 

「アイルランド生まれというだけで、貧乏の家出身というだけで、私を否定して来た馬鹿な女達! ISではなく、モデルとしての夢を追った私を淫売と侮辱する馬鹿な大人たち!それにも耐えてきたのに、その夢もぶち壊しにされて、こんな所で一人になっている私に・・・誰が!」

 

私は彼女に叫び返す

 

「私たちがいます!」

 

「口だけなら何人もいたわ!」

 

「でも、そうでない人だっている! 貴女はそれを知っておきながら真正面から話さないだけです! だったら・・・・!」

 

そこで、お互いが拮抗した。拳をぶつけあって、そこでつばぜり合いの様になった。

 

「だったら・・・何よ?!」

「私たちと来てください! レジスタンスに・・・! 貴女は一人じゃない、貴女と同じで、皆理不尽な思いを受けてきたけど、努力している人がいる! それを見て、まだ私の考えが間違っているかどうか見極めてください!」

 

お互いに機体の負荷は限界だ。それでも、一歩も引かない。

負けられない。彼女と私のためにも、負けられない。

 

ギリギリと音を鳴らして、マニュピレータ―のモーターがいかれていくのがわかる。

それでも、私は踏ん張り続けた。

 

段々と押し勝ち始めてきた。イヴァナ先生の顔が焦りを見せる。

 

「貴女なんかに・・・私の・・・この思いが・・・」

 

彼女の瞳から涙があふれてきた。

透き通って綺麗な涙が彼女の頬を濡らしていく。その姿は孤独と悔しさに耐えていた彼女の思いの深さを語るには十分だった。

 

一人の大人の女性が流す涙にしては純粋すぎた。

 

「わかるから・・・その思いを受け止めるんです。」

 

そして、彼女のラファールの腕部は限界を超えて、崩壊した。コードや装甲、小さな部品をまき散らして、彼女の素のままの腕が露わになった。

 

彼女のエネルギーは全て費えて、私は勝利した。

 

しかし、喜びに浸れるわけもなかった。機体を解除して、幼い少女のように涙を流している彼女がそこにいた。夢も人格も、否定され続けてきた彼女は一人ぼっちだった。

 

故に彼女は心に鎧をまとう以外に方法を見つけられなかったのだろう。

 

私も今までの出会いが無ければ、こうなっていたかもしれない。理想に閉じこもったままでいたかもしれない。

 

私は彼女を抱きしめた。

 

それぐらいしか今はできなかった。

 





余計な話かもしれないですが、長々となってしまい申し訳ありません。
この次に学園祭とそれにまつわる問題をやっていこうと思います。

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