IS to family   作:ハナのTV

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前回の反応がすさまじかったので驚きです。

書いた私がびっくりです。

いつも読んでいただき、ありがとうございます


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暇で仕方ない日と言うのは誰にでもある。会社に忙しそうに向かうサラリーマンのお父さんから、国家代表候補生として任命されているあの子まで、それは平等にやってくる。

 

今日のアタシがそれだ。学園祭をヴィンセントと結託して、中華喫茶にしてやったまでは良かったものの、あまりに早く仕事をしすぎた。

 

衣装から教室の飾りつけまで、とんとん拍子で進めていき、話し合いはたった一時間もしないうちに決着がついた。皆を乗り気にさせること自体はヴィンセントの本人曰く「卓越な洗練された話術」で成し遂げた。

 

アタシに言わせると「プロの詐欺師の話術」なのは本人に言うべきかどうか迷いどころだ。

 

そんな風に今日は特に仕事もなく、授業も通常科目のみとやることが少なく、他のクラスより早く授業が終わってしまい、ヴィンセントの部屋にまで遊びに来ている。

 

しかし来たはいいが、クーラーが壊れて暑い。元々が格納庫近くの倉庫だけあって、通気性だとかはよくないため、サウナほどではないが、蒸されてる気分だ。

 

制服の代わりに、Tシャツを着て過ごしても、まだ暑い。

 

仕方なく、渡されたアイスキャンディーをなめていたが、三本目にしてアタシは暇すぎて死ぬと思った。

 

ヴィンセントも暇そうにソファでくつろいでいるだけで、時々だるそうな声を上げるだけだ。

 

「ねえ、ヴィンセント?」

「何だい?」

 

アタシはソファの背もたれに体を押し付けて、ヴィンセントの上から言った。

 

「暇じゃない?」

「・・・・確かにね」

 

ヴィンセントは半開きで眠たそうな目をして言った。

彼は半身を起して、いつも手首に巻いている腕時計を見て一つ息を吐いた。

 

「もう五時間はたったと思ったら、まだ三十分しかたってないな。こんなに暇になるとは思わなかったな。」

「訓練とかしないの?」

 

そう訊くとヴィンセントは起き上がって洗面所の方へ向かう。ソファがあいたのを見て、アタシがそこへ寝ころぶ。

 

さっきまで彼がいたせいで、妙に温かい。

洗面所から水道管から水が流れる音と一緒にヴィンセントの声が耳に届く。

 

「今日はアリーナが三年生の一日貸切の特別授業で埋まっているし、基礎訓練しようにも運動場も整備中で空かない。することが本当にないのさ」

「サイアクね・・・いっそ模擬戦でもって思ったのに・・・売店で雑誌でも買わない?」

 

アタシの何気ない提案を聞いて、髪を少し濡らしたヴィンセントがやって来た。顔を洗っていたらしい。

ため息を一つ吐いて言った。

 

 

「そうするか・・・」

 

そう言ってヴィンセントは手を差し出してきた。起き上がれという事なのだろう。

アタシは彼の手を取って、起き上がった。

 

他の女の子から見れば、少しはしたないというかもしれないが、彼は冗談めかして言うだけだ。そこも彼の魅力と言える。

飾らなくてもいいというか、100%素のアタシも褒めてくれるというのは、中々いないだろう。

 

心から気を許せる男。それがアタシにとってのヴィンセントだ。

アタシの弱さを彼は知っているし、ヴィンセントの弱さもアタシは知っている。

だから、こうしたことができる。

 

その時、ヴィンセントの携帯が鳴った。ベトナム戦争で有名な歌が流れだしてきたのだ。陽気そうなミュージックが部屋中に響き渡った。

 

Rインダストリーの御曹司であるヴィンセントの携帯から「俺は金持ちの息子じゃない」だかの歌詞が流れるのは悪趣味なジョークに思えた。

 

ヴィンセントは携帯でメールを見ているらしく、しばらく画面をにらめっこをしていた。

しかし、次の瞬間には顔の表情、いつもの笑顔でもキレた時のモノとなり、母国語で口汚く、罵って制服を手に取った。

 

「どうしたの?」

「問題発生さ、君も来てくれ。弾と織斑が殴り合ったらしい」

 

驚きの話を聞かされて私も先ほどまでのぐうたらな空気を吹っ飛ばした。

アタシは手渡された制服の袖を通して、髪も整える。

 

「何だっていうんだ。全く・・・」

「ヴィンセント先行くわよ!」

 

一足早く制服を着終わって、現場に向かおうとした時アタシたちの前に誰かが立ちはだかった。

 

「やあ。」

 

水色の髪に赤い瞳、簪と顔のつくりがよく似た二年生。間違いなく、生徒会長の更識盾無だった。

何故こんなところに来ているのかはわからず、疑問符が出たが、今はそんな場合じゃない。

弾のことが心配だ。

 

アタシが通り抜けようとしたら、彼女は通せんぼするかのように立つ。しかも、挑発的な笑みを浮かべて。

 

「すいませんけど、今急いでるんですけど!」

「知ってるわ。五反田君が一夏君と殴り合ったものね。」

 

カチンとくるものがあった。

アタシは一瞬で彼女のことは気に食わない奴だと思った。何もかもお見通しで、私は何でもできる、みたいな顔をしている。

 

出会ったころのヴィンセントでさえ、ここまで露骨ではなかった気がするのはひいき目に見てるだけだろうか。

そして、アタシが急いでる理由を知っていて、尚止めようとするのだから、余計に癪に障る。

 

「もう、現場には先生方もいるわ。貴女方が行くと問題が増えるわ。だから・・」

「だから行くなって? ふざけてんの?」

 

二年生でロシア代表だろうが、関係なくアタシは怒気をだす。こめかみが引くついて、どうしようもなく叫びたくなる衝動に駆られる。

 

「問題なんて知ったこっちゃないわよ。ダチを見過ごすわけにいかないのよ? それとも何? そんなこともわからないの? ボッチなわけ?」

 

楯無は扇子で口元を隠して、目を細めた。言う事の利かないできの悪い子供でも見るかのようにアタシを見る。

 

「口が悪いのね。 おねーさん困るわ、そういうの。じゃじゃ馬が過ぎると少しだけ怒るわよ?」

 

扇子をパッと開いて学園最強などと、ふざけた文字がアタシの瞳に映った。ただでさえ短気なアタシも怒声を上げようとした時、遅れてやってきたヴィンセントが間に入った。

 

「鈴、落ち着くんだ・・・彼女の言う通りに通していただけませんか、生徒会長殿?」

 

ヴィンセントはあくまで冷静にしている。彼はニタニタと笑いながらも、交渉をしようとする。

 

「僕らは彼の所へ行きたい。貴女は問題を起こしてほしくない。それだけなら話は簡単だ。

貴女も来ればいい」

 

ヴィンセントがそういうと盾無会長が小首を傾げた。

 

「私がどうして貴女方についていくのかしら?」

「損得勘定ですよ。 貴女が来れば、弾の問題も解決できるし、僕たちが何かしようとしてもすぐ止めに入れる。何せ学園最強。僕らなど一蹴できるはずでしょう?」

 

 

目の前の会話を聞いて私はとりあえず落ち着きを取り戻した。ヴィンセントは挑発も交えて、交渉している。 学園最強の部分だけを大げさに言って彼女をあおっているのだ。

 

その時、ヴィンセントが横目でアタシをちらりと見たのを確認した

アイコンタクトだ。そうと来れば、アタシも援護だ。

 

「そうね、それがいいわ。お願いします生徒会長。 学園の秩序のために。」

 

楯無会長は先ほどまで激情に身を任せていたアタシが様子を一変させたのを見て面食らいつつも、少し考えるそぶりを見せ、答えた。

 

「・・・わかったわ。そこまで言われたら仕方ないわ。行きましょう」

 

それを聞いて、アタシたちは駆け出した。そして、お互いを見合って小さくハイタッチしながらも急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何が理由だ?」

 

織斑先生はため息交じりに訊いてきた。俺も一夏も黙秘権を行使して、織斑先生の問いに黙ったままだ。言って理解されるとは思わないし、この先生ならきっと下らない、と一言言って切り捨てるだけだろう。

 

また、もう一つ大きなため息を吐いて、織斑先生は出席簿を手に取って、俺と一夏の頭を一発殴る。

 

ただでさえ、殴り合ってあちこちが痛む中、また一つ痛むところが増えたのに、少し恨みたくなった。

ロストワールドでの訓練で、あちらこちらでシバキを受けたが、それとは違い、何故か苛立ちを覚えた。

 

「そうか、だんまりか。なら仕方ない。二人はしばらく謹慎処分だ、部屋で頭を冷やせガキども。」

 

そう冷たく言われて職員室を出た。無論、この間も一夏とは無言のままだ。このまま一生口を利かないのではないかとすら思った。

廊下へと出ると、ヒソヒソと声が聞こえる。

それら全てが好意的でない内容なのは予想できた。

 

「ねえ、見て。織斑君怪我してるじゃない。」

「やっぱり、アイツは野蛮よ。噂は本当かもね。」

「・・・・・人殺し。」

 

俺が何気なく壁を蹴って音を立てると、周りは一瞬でビクついて、声も一瞬で途絶えた。

廊下を行く生徒の皆さまは驚いた顔や怯えた顔で見る。

 

それらを見て俺は心底侮蔑していた。何が人殺しだ、何が野蛮だ。なら、お前たちは何なのだ。偏見と自身の好みで好き勝手にイメージを張り付けて陰湿な事しかしないではないか。

 

俺はイライラする心を抑えて、部屋へと戻ろうとした。

 

そこへ、一人の人間が来た。マイクだった。サングラスをかけて、コーラを片手に俺の所に来た。

 

「よお、弾。随分と噂されてるじゃないか? どうした?」

 

そう陽気そうに聞いてきたのに俺はそっけなく答えた。

 

「何でもないですよ。 ただ、ちょっと腹が立っただけです。」

 

そう言って部屋へと行こうとしてマイクは俺を呼び止めた。

 

「まあ、待て。一杯付き合えよ。コーラだけどな」

 

そう、いつも通りの口調で言って来た。断る理由もなかったもで、小さく頷いて俺はマイクのついてくるよう言われて指示に従った。

 

彼の大きな背中についていき、五分もかからない所で目的地に着いた。そこは飲み物の自販機とベンチがついているだけの小さな休憩場所だった。

 

マイクはもう一本コーラをそこで買って、俺に手渡してきた。俺はそれを受け取ってプルタブを引いて、中身の液体を喉へ注ぎ込んだ。

 

「落ち着いたか?」

「ええ、少しは」

 

マイクは一本煙草をくわえたが、禁煙なのを発見して仕方なくしまった。

そして、サングラスを外して青い目で俺をまっすぐ見た。

 

「この際俺はお前が何をされたかは訊かんよ。 傷口をえぐりたくはないからな・・・・

久々にお前はキレたって聞いて驚いたぜ。」

「怒らないんですか? 俺が余計なことをしたって・・・」

 

マイクは小さく笑って、俺を見て俺の頭を掴んだと思ったら、力強く撫でた。

 

「余計なことしない学生も考え物だよ。それに、お前の友達にそんなこと思うやつなんていないさ。皆嫌われ者だからな。」

 

俺は何も言わなかった。いつも思うが、この子供の様な大人と言われているこの人はどうしてこう、カッコいいことを言えるのだろうか。

 

だが、言ってくれる人がいるからこそ、俺たちは立ち上がれるのだ。

俺はこの人には感謝しきれない。機体であるラプターも俺自身もこの人のおかげであるのだから。

 

俺は思い切って聞いてみた。

 

「マイクさん・・・俺は家族と向き合うべきですか?」

 

彼はコーラで口をよく回るようにして答えた。

 

「お前にとっての家族ってのが何なのか、だな・・・・お前の家族はどこにある? 弾」

 

マイクはそのまま話をつづけた。それは、ある男の話だった。

 

「福音事件の時、世界最悪のテロ野郎なんかいたろう? でも、そいつが去る時俺は見たんだ。兎と嬢ちゃんに手をつながれて、ラボに帰るソイツの背中をな。」

 

その男の名は知っている。スレートと呼ばれた凄腕のテロリストだ。酒におぼれたであろう窪んだ眼を俺は見た。地獄を見すぎて疲れていた目だった。そんな男にもそんな存在がいたのだ。

 

「兎にも言えることだが、血のつながらない家族ってやつだったぜ。そんな家族もアリだと俺は思う」

 

 

そして、兎こと束博士だ。彼女は実の妹よりも彼とあの女の子を選んだかのように見えた。

それが、たとえ「逃げ」だったしても、彼女を一方的に責めることはできないだろう。

 

「俺にはそれしか言えない。 だが、俺はお前達を息子みたいに思ってる。そいつは忘れないでくれよ。」

 

そう言って彼は去っていた。適当に生きているように見えても、彼こそ、俺にとっての大人の男だった。

俺は一つ深呼吸をした。そして、飲み干した缶コーラをゴミ箱へと投げ入れて立ち上がった。

 

曇っていた心もどこへやら。俺の心は晴天の空のように晴々していた。

そこへ、何人かの来客が来た。

 

いつものアイツ達だった。それを見て彼の言っていたことが本当だったと改めて気づかされた。

 

「無事かい?弾」

「アンタ怪我してるじゃない! 保健室行くわよ!」

 

ヴィンセントと鈴が来てくれた。そのことにも感謝しつつも、俺は保健室は必要ないと告げる。

 

「でも!」

 

食い下がる鈴に対して、俺は冗談を言う。

「いいんだ。アカネに看病された方が傷の治りも早いさ」

 

そこへ誰かのつぶやきを聞いた。あまり聞き覚えのない女性の声だった。

 

「いい友達に恵まれてるのね・・・・・あの子も・・・そうなのかしら。」

 

誰だったかは定かではない。だが、悲しげにも聞こえた・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、買い出しに行ってきますね。 買ってほしいのはメモ書きに書いてるものだけで?」

「ああ、頼むよ」

 

謹慎中で、部屋の外に出ようにも出られない弾に代わって私が買い出しをすることにして、過ごしていた。

面倒にも見えるが、好きな人に頼られるというのは悪い気持ちはしない。むしろ、頼られて嬉しいという気持ちの方が強いほどだ。

 

俗にいう、世話焼き女房と言うのも悪くない。

 

書かれたリストを持って鼻歌交じりに廊下を歩いてると、我が女友達の簪と鈴に出会った。

互いに挨拶をして、行先が同じらしく、売店へと一緒に行くことにした。

 

「・・・今日は何だかご機嫌だね。」

「そうですね。頼られるのも悪くないなって・・・」

 

懐に仕舞ったメモ書きを見せて少し自慢げにする。簪は羨ましそうに見て、鈴は何やら悟りきったような目で、やれやれとした。

 

「本当にべたぼれね。見てるとブラックコーヒーが欲しくなるわ。」

「貴女もいかがです? 甘い恋愛は?」

 

少し挑発的に行ってみたが、鈴は鼻を鳴らすのみで、否定もしなかったが、肯定もしなかった。内心は羨んでいるに違いないな、と私は推測した。

 

「・・・ユーリには無理かな?」

 

簪が疑問を口にして、鈴が少し唸って、ユーリの人格から考察を導き出した。

 

「どうかしらねぇ? アイツって良くも悪くも固そうなだし。多分だけど、自で出来ることは自分でするやつだと思うわ。」

「やっぱり、そうかな? アカネはどう思う?」

 

 私は少しの間考える。あの男とは三年以上の付き合いではあるが、ことプライベートではナイフ磨きか、トレーニングをしていたくらいしか記憶がない。

 

しかし、訓練や戦場では後ろにいて心強いのは間違いない。例え、相手が複数だろうが、圧倒的スペック差があろうと戦うタフガイであるのは確かだ。

 

そのことだけを考えて言うと、鈴と似たような意見になる。しかし、最近の変わりようを見ると別のことも言える。

 

「確かに大抵のことは自分でやるでしょうけど、簪なら頼りますよ。」

「・・・そうだね」

「・・・ハイハイ、ご馳走様」

 

簪は微笑み、鈴はあきれたように手をヒラヒラさせている。

こういうガールズトークができるとは、IS学園も捨てたものではないなと思う。

ずっと紅一点としてピースで頑張っていた私には嬉しい限りだ。

 

男子相手ではできない会話ができる。これは重要なことである。

そんな中、鈴がふと口にした。

 

「そういえば、前から思っていたけどユーリの昔の話って聞いたことないわね。知らない?」

「知りせんね」

 

普通に言った私に対して、簪は少し顔をうつむいて答える。

 

「詳しくは私も・・・ただ・・」

「ただ?」

鈴が訊き返す。鈴と私としては、簪にも話していないという事に少し驚いていた。今のところ、一番仲の良い簪なのだから、何かしら話しているだろうと思っていたからだ。

 

「あまり・・聞かない方がいいのかもしれない。 姉さんも多分それで・・・」

 

簪は暗い顔をしかけたが、はっと気づいて無理に作り笑いをして、表情を隠そうとする。鈴も私もお互いに顔を見合う。かつての私達みたいにするものだ。皆して、どうして強がったりするものかと思った。

 

私は簪の右腕を、鈴は左腕を掴んだ。私達が何をしているのか、理解でぎないようで、戸惑って顔を赤らめている。その姿はまるで、小動物のように可愛い。

 

「大丈夫よ。アンタ、ビルから飛び降りても平気なほどなんだから、姉なんて、気に食わなけりゃぶっ飛ばせばいいのよ。」

 

「女の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ね、ですよ。それにユーリもわかってくれてますよ。」

 

私と鈴の二人で言うと簪は微笑んでくれた。

女の友情と言うものはよく批判されがちかもしれないが、ここにある友情に嘘偽りはない。

 

ミサキ以外に女友達ができるなんて、ここに入る前は思ってもみなかったので素直に嬉しい。

 

「ところで、学園祭は何をするんです。ちなみに私はメイド喫茶だそうです。」

 

新たな話題を提供し、鈴が胸を反らして自慢する。

 

「アタシは中華喫茶よ。 来たら、芝麻球をサービスしてあげる。」

 

揚げ胡麻団子をサービスするという事を聞いて、私と簪は目を輝かせた。出来立ての香ばしいのは相当に美味だからだ。

 

「ヴィンセントも中華な格好するんですか?」

「もちろん! これがインチキ商人みたいで・・・」

 

鈴は腹を抱えて大爆笑する。その姿を想像してみる。中華の派手な格好で、長いひげで、語尾にアルアルでもつけてるヴィンセントを想像し、私と簪も笑ってしまう。

 

「簪は?」

 

鈴が訊くと、簪は顔を背けて恥ずかしそうにもじもじとして、答えを発した。

「似たような感じかな。コスプレ喫茶なんだけどね・・・・」

 

そこから、簪はユーリが大場先生に着せ替え人形にされたのを聞いて、私たちはもう一度笑った。

そんな事を話していると、売店に着いた。

 

帰り道は何の話をしようか、と思考した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室。高校ならどこにでもある部屋で私は働いている。いや、正確に働かされていると言うのが正しいかもしれない。

そう言うのも、無理はない。

 

何故なら、生徒会員は私の家のご主人様、更識盾無が生徒会長を務めて、さらに、そこに姉の虚がいる。

 

つまるところ、更識家の巣窟と言っても過言ではない。

更識家は対暗部用暗部。カウンターテロリストに近いものだ。代々、日本政府につかえていたと自慢げに家の者はよく言うけど、所詮は公権力もない日陰者の汚れ役に過ぎない。

 

それが、ISができてから急速に権威を挙げようとしている。おかげで、大勢の人が迷惑をしているにも関わらずに。

 

犠牲者となっているのは、かんちゃん 、私に大場先生だ。

来たくもないところに来る羽目になったりで散々だ。

 

もし、全ての不満を言えるなら、普段食べているお菓子の全てのカロリーを使い切ってもまだ、足りないほどだろう。

 

そんな職場での上司というか、ご主人様の盾無お嬢様は現在お悩みの真っ最中だ。

 

「ねえ、本音ちゃん。貴女から見て彼らはどう思う?」

 

普段は自信過剰にすら見える彼女も現在は元気のない子犬のようだ。私はいつも通り、「本音」と言う名前に反した態度で接する。

 

「彼らって、誰ですか~?」

 

楯無会長は小さくため息を吐いて言った。

 

「インダストリー組よ。 送られてきた情報を見る限りは油断できないのだけど、見る限りはそんな様子を見せない・・・目が曇って来たのかしら・・ちょっと自信なくて」

 

私の擬態も見破れないのでは難しいだろう、と心の中で毒づきつつも私は率直な答えを述べる。

 

「そうですね~。皆いい人ですよ~。ダンダンもアッカリンも厳しいけど優しいし~。かんちゃんもユリ~と一緒だと笑顔ですし~」

 

さりげなく、ユーリとかんちゃんの関係についても述べて、反応を見る。思った通り、盾無会長様は目を強張らせてこちらを見る。

 

その反応を見て内心クスリと笑う。彼女の尾の部分を刺激すると面白いほどに反応を示す。

元はと言えば、家の中の雰囲気が関係をこじらせたのだが、ある時、会長閣下が初の任務に行かれたことがあった。

 

IS適性の高い女児を誘拐し、彼女らを売りさばくという闇組織の壊滅が目的だったはずだ。

被害者の中には日本人も多かったと聞いていた。

 

楯無会長のISと更識家のエリートも10名ほどつれて任務は10分もかからないとされたが、結果は楯無会長を除いて全員が死亡。

 

連れ去られた女児も処分されて、最悪の結末となった。

 

そして帰って来てで迎いに来たかんちゃんに彼女は言ってしまったのだ。

 

『あなたは何もしなくていいのよ、無能なままでいなさいな』

 

と取り返しのつかないことを言ってしまったのだ。初の任務が大失態で、自分だけが生き残ってしまったという中で、かんちゃんに手を挙げなかったのは立派だったけど、この言葉は頂けなかった。

 

そして言った本人も後悔しているのだが、関係の修復は未だ糸口すら見えていない。

かんちゃんは拒絶し、楯無お嬢様も何もできずにいるという事で、お互いに歩み寄ろうとしない。

そして、私を使って情報を集めたり、あちらこちらに警戒や、挑発行為を行って探りを入れている。

 

それがむしろ逆効果になっていると教えないのも私なりの仕返しだ。

 

かんちゃん と私の分の仕返しだ。

 

「お嬢様はどうしたいんですか~? かんちゃんと仲直りしたいんですか? それとも自分が気分良くなりたいだけですか?」

 

「言ってくれるわね・・・私は簪ちゃんともう一度・・・」

 

私は彼女に音もなく近づいて、口元に人差指を当てるようにする。

                    ・・・・・     

「なら、することが違うと思いますよ~。 刀奈お嬢様?」

 

会長の本名で呼び、私は煽る。この程度で激昂しないのは知っている。

ユーリとかんちゃんの事となると途端に感情をむき出しにするお嬢様。

見ていてとっても素敵です。

 

彼女とてご当主様だ。立場も弁えている。

 

だからこそ、見ていて面白い。立場と感情の二つに悩まされているのを見るのは相当に愉快だ。

 

そんな、従者と主人の織りなす空間に携帯の着メロが鳴った。その音を聞いて私は微笑んで、携帯をお嬢様の前で取り出して、部屋を出る旨を伝えて出た。

 

生徒会室の扉を閉め、携帯を耳に当てて、電話に集中する。

 

『こんにちは。本音さん。前にお会いしました。ドクターと言うものです。一応確認のために電話をしたのですが・・・・お邪魔でしたか?』

 

目当ての人物からの電話であることを確認して私はさっきまでの嘘ではなく本音で接する。

 

「いえ、今なら大丈夫ですよ~ 貴女方の来訪お待ちしてますよ~」

 

幸せの時は近い。

 

本当に学園祭が楽しみになって来た。

 

 




次回から奴らが来ます。

敵は強くないと面白くないので、亡国は強化予定です。
問題は私の文章力と構成力が低いことですけど。

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