IS to family   作:ハナのTV

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一組の喫茶ではトラブルが生じていた。執事として絶賛売込み中の一夏君がIS装備品の企業の人と共にどこかへ行ってしまい不在で、しかも私の代わりにシフトに入るはずだった本音もいない。

 

おかげで、お客からは苦情が来て何故織斑君がいないのかと責められ、私も休憩に入れないでいる。

 

休憩に入るのはいいが、ちゃんと報告してほしいし、本音もシフトぐらいは守ってほしいと苛立ちつつも、接客をしていると、新しいお客さんとして、我らがレジスタンスを導きし三女神、イヴァナ先生に大場先生、山田先生と店の中に入って来た。

 

見て驚いたのが、地味なグレーのスーツの二人とは違って、大場先生は大胆すぎる水着の様なISスーツの上にコスプレ喫茶で借りてきたのであろう、軍服の上を羽織って来ていた。

 

逆に目立っていると伝えた方がいいかと、言おうと思ったが口にチャックをすることにした。

 

「いらっしゃいませ、お嬢様?」

「クエッションマークはつけなくていいぞ。」

 

大場先生が不満顔に言うと、山田先生とイヴァナ先生は顔を背けて笑いをこらえていた。

少しかわいそうに思えたが、私も面白いと思ってしまった。

 

三人は席に着くと、適当にコーヒーとケーキを注文した。ほんの少し前では想像もできないくらい、仲良さげに話している。

まるで、3姉妹だった。気の強い長女に、活発な次女、そして振り回されっぱなしの大人しい三女と言ったところだ。

 

三者三様の先生たちを見て、私も楽しくなってしまった。

 

厨房で皿の上にケーキを乗せてコーヒーを淹れて、お盆へと載せる。メイドと言う役職故に片手で持つのは少し難しいが、何とかこなしてテーブルの三人に配膳する。

その時、山田先生が疑問に思ったのか、私に訊いてきた。

 

「そういえば、織斑君はどうしたんですか?ここのお店の一押しでしたよね?」

 

執事姿の織斑君が見たかったのか、山田先生がどこからか、カメラを持ち出していた。

喜んでいる先生には悪いけど、私は彼女に残念な報告をしなくてはならなかった。

 

「それが…IS装備の企業の人と一緒にどこかに行ってしまったんです。勧誘でもされたんでしょう。」

「そうですか……残念です。」

 

お菓子をもらえなかった子犬のようにがっくり項垂れてしまった。一組の記念撮影などにするつもりだったのだろう。私が無理にでも引き留めておくべきだったかもしれないと思ってしまった。

 

そんな山田先生を見て大場先生は肩を叩いて慰めているが、イヴァナ先生だけが何故か納得のいかない顔をしていた。

 

「静寐さん……その企業の人ってどこの企業か、わからないかしら?」

「さあ…そこまでは……何かあったんですか?」

 

イヴァナ先生は顎に手をあてて、その腑に落ちない理由を述べた。

 

「変な企業だと思ってね。 普通、こういう新装備の勧誘っていうのは専用機のメーカーからの連絡があったりするはずだし…第一、彼に新装備を売るっていうのがナンセンスだなって」

「ナンセンス?」

 

大場先生がイヴァナ先生に食いついた。山田先生も興味を示したのか、彼女の話に集中しだした。

 

「ええ、織斑君ってブレードしか使わないはずよね?なら重火器を売っても大したデータは取れないわ。スラスターに関しても今でも十分なはずだし燃費が悪化するだけでメリットはない。織斑君にとっても企業にとってもメリットは無いはずよ。」

 

そこに山田先生が反論を上げた。極々簡単な反論だった。

 

「宣伝と言うのはどうでしょうか? 織斑君のネームバリューなら…」

 

彼女の意見はもっともな気がした。希少な搭乗者に使わせて、あわよくば活躍すれば、これ以上ないほどの広告の効果がありそうに思えてならない。

 

しかし、イヴァナ先生は首を横に振った。彼女はむしろ逆効果だと答えた。

 

「ISを装備できるのは主に女性よ?そして、男性をよく思わないのがIS搭乗者には多い。ちょうど五反田君がそう扱われているようにね。そんな彼女たちにとっては{汚らしい男と同じ装備}を持ちたがるとは思わないわ。」

 

聞いてみるとイヴァナ先生の反論はもっともだった。

主な取引先は結局のところ、女性だらけであるのだ。織斑君を広告にしてもうまみが全く取れない。むしろ反感を呼んでしまう可能性があるため、頼まない方が賢いというものだ。

 

データも取れなければ、広告としても使い道があまりない。では、あの販売員の彼女は何のために織斑君に接触して、どこへ行ったのだろうか。

 

そんな考えに私が脳をフル回転させていると、私より先に結論が出たのか、大場先生が立ち上がった。非常に怖い顔をしていた。

 

いつか見た戦う時の鋭い眼光を目に宿していた。その様子から、ただ事ではないことを悟った。

 

「イヴァナ先生、山田先生。これは…最悪の状況かもしれませんよ?」

「…まさか、学園に潜入を?」

「ありえないわ」

 

イヴァナ先生が大場先生の意見を否定しようとする。彼女も含め私も、このISが多数有する学園に誰かが攻め込むとは考えにくかったからだ。

たとえ、攻めてきても戦力からしてこっちが圧倒的なはず、普通はそう考え着く。

 

「仮にコアを奪うためだとしても、検知されれば一発でバレるわ。そんなリスクを承知でここに来るわけがないわ」

「……少し待て」

 

大場先生は携帯電話を取り出して、電話をかけだした。先生の電話からコール音が数回鳴るのが聞こえた。だが、電話の相手が出ることはない。

大場先生は一度電話を切って、もう一度電話を掛けた。しかし、結果は同じだったようで、

繋がらなかったようだ。

 

「たった今、格納庫と警備室に電話を掛けたんだが……繋がらない。今日と言う日にどちらも電話がつながらないなんてあり得るのか?」

 

山田先生が立ち上がった。

 

「明日はISのお披露目で今日は格納庫は大忙しのはずです。それに警備室は学園祭中はいつでも誰かいる決まりになっているはずです。」

 

イヴァナ先生が驚愕で見開かれた目をしつつ、立ち上がって二人を交互に見る。

 

「…本当に?ここに?」

「信じがたいが、敵は相当の馬鹿か、あるいは凄腕か。はたまた私の作り出した妄想の産物か……」

 

大場先生のセリフにイヴァナ先生が冷や汗を流していた。度胸がある方だとは思うが、元の所属がモデルと自衛隊では対応に差が出てしまうのは仕方ないだろう。

大場先生は二人に向かって言った。

 

「イヴァナ先生、私の部屋に来てください。」

「何をするんですか?」

「武装します。89式と9mm拳銃ならあります、それで格納庫でISを確保しましょう。それと山田先生は警備員をできるだけ集めて警備室の方へ、このままでは生徒に避難も指示できません。あと、生徒会長に連絡を」

 

私の前で、先生方は行動しようとする。起こるはずのなかった騒動が起ころうとしている。

それも最悪の場合はテロリストの侵入ということになる。

 

杞憂に終わってほしいが、そうもいかない気がした。不自然なことが起きている。それも私たちが気づかなかった間に起きている。

 

これは偶然にしてはできすぎだろう。

 

「大場先生、私は……私たちは?」

 

大場先生は振り返って、少し考え込み答えた。

 

「この際、仕方ないが……専用機持ちに呼びかけをしてくれ。狙われる可能性もある。レジスタンスの皆にも声をかけてくれ」

「わかりました」

 

本当は、先生たちと一緒に生きたいと思ったが、することはできない。射撃訓練やISを扱う訓練だけしか受けていない、私ではかえって足を引っ張るだけでしかない。

悔しいけど、今の私にできることはそれしか無いことをわかっていた。

 

専用機を呼ぶ、それが私のできることだ。警備室からの避難勧告がなければ、私が何をどういっても信じてはもらえない。

 

さっきまでの私のように誰もこの学園に攻め入るものなどいるとは思っていないからだ。

今はこれしかやれることがない。

 

とりあえず、目の前にいるアカネさんからだ。そう思って駆け出した。

楽しい学園祭がほんの数時間で終わってしまった気がして悲しく思いながらも私は走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人で窓からの景色を見ていた。家族と歩いている小さな男の子を見てからと言うもの、ずっとそこから動かずに眺めていた。

 

家族との訣別。やってみると、たった一言、二言で終わってしまい、俺の15年近く連れそっと家族との絆は消えていった。

 

俺を売った家族、そんなものは捨ててしまえばいい、と思っていたはずなのに俺の心は暗いままだ。

何の光もないトンネルの中を永遠と彷徨っていて、出口を見つけて出たはずが、実は違った。

一言でも心配してくれる言葉を望んでいたのだろうか。しかし、今まで俺に構わなかった彼らがそうするわけがないことは俺が一番よく知っている。

 

罵倒されて、命令される。それしか無いと俺は知っていたはずだ。

それに抗って、この選択をしたはずなのに、俺の心は晴れることはない。

 

俺は結局何を望んでいたのだろうか。それすらも曖昧になってしまっていた。

 

「……割り切れないなぁ」

 

一人でそんなことを呟いた。言葉として吐き出しても全く効果はなく心は沈んだままだ。

映画のように鋼の心があれば、こんな事に囚われることも無かったのかもしれない。

 

子は何時か親の元を離れる。そうは言っても祝福されるどころか呪詛に近い言葉を言われて出てくるというものは相当に堪えるのかもしれない。

 

頭を振って、払しょくしようと努める。考えても、もう終わったことなのだから、先に行こうと考える。とりあえず、心を落ち着かせるためにその場から離れようとしたところに、

誰かが、俺のそばに来て何かを手渡してきた。

 

何かとみるとハンカチだった。

誰かと思って、顔を見上げると豪奢な金髪のロングヘアに真っ赤な瞳、モデルのイヴァナ先生に匹敵するか、それ以上のグラマラスな体をドレスに似た格好で惜しげもなく見せつけている。

 

絶世の美女と言う言葉が似合う女性が俺にハンカチを渡してきたのだ。

 

「貴方、大丈夫? 泣いてるようだけど…よかったらこれ使って」

「……いいんですか?」

「お構いなく」

 

俺はハンカチを受け取って目元吹いた。さっきまで、彼女の身につけられたもののせいか、香水の香りがわずかにした。

 

「貴方、ここの学園の生徒さんよね? 大丈夫?」

「ええ……もう平気です」

 

俺は借りたハンカチを返そうと彼女に渡したが、彼女は貰っておけと言うのみだった。

そんな彼女を見て、俺はなんとなく気になった。この人気のないところにどうして来たのか。

 

ここでは何もやっていないのに、彼女が何故ここに来たのか気になった

 

「ところで……どうしてここに?」

 

彼女は少し物憂げな顔をして名刺を渡してきた。

そこには、アリスラビット社 スコール・ミューゼルと書かれていた。

 

「いわゆる販売員なのだけどね……ここには縁がなかったようなの。だから、傷心して来ただけよ……貴方こそ、どうしてここに?」

 

そう尋ねてきた彼女に俺はどうこたえるか迷った。見たところ、彼女は嘘を言ってないように思え、悪い人ではないかもしれない、と思ったが見ず知らずの人という事と少しの警戒心で俺は少し内容を変えて言った。

 

「俺も縁がなかったクチですよ。たった今、お別れをしてきたところです。」

「……それは悪いことを聞いたわね。謝るわ」

 

謝罪をしようとする彼女に俺は手を振って遠慮した。

 

「いいですよ。誰かに聞いてほしかったかもしれないんです。こんなこと、友達に話したら、また心配をかけられてしまうから見ず知らずに人に話した方がいいかもしれません」

 

これは本心からの言葉だった。彼らは親友で、恋人だ。故に俺が隠そうとしても敏感に感じ取られてしまう。どこかで吐き出してスッキリしない限り、簡単にばれてしまうだろう。

 

それは嬉しいが、彼らに心配をかけさせたくないという気持ちがある以上、どうしても素直にいえない。それに、アカネなどは本当にそうだ。俺が悲しい顔をすると彼女も同じ顔をする。俺は自分のせいで、悲しい顔をしてほしくないのだ。

 

一人こうして耐えるだけ、彼らに悟られやすくなるのがわかっていても、彼らの前でそんな顔をしないように、俺は一人ここでどうするか考えていたのだ。

 

「貴方、強いのね……でも、貴方は友達に話すべきだと思うわ。」

「何故?」

 

そう聞くと彼女は窓際に寄り掛かって話した。

 

「そう言う強さは時に他人を傷つけるわ。たとえ、それが友人でもね。でも、人は弱さも含めて人なのよ……それは恥ずべきことでもなく、人としての美点よ。」

「弱さがですか?」

 

「そうよ」と答えて、スコールは大きく頷いて肯定して見せた。

 

「小説のようにね…弱さがあるから人は惹きつけられる。弱さは決して短所ではないのよ。その弱さできっと貴女の友達との絆は強くなる。そう思わない? 時に弱さに頼るのも悪くはないはずよ」

 

彼女のいう事にも一理あった。時に人に甘えるときも必要だという事だ。それは咎められることではないし、むしろ人との絆を深めることにもつながるのだから、やってもいい、そう思えた。

 

しかし、俺はすぐに首を縦には触れなかった。それどころか、少し笑いながら、首を横に振った。

 

彼女の意見はとても、魅力的だったが、俺はもう一つの考えがあった。

 

「いい考えかもしれませんけど、俺は…もう少しだけ耐えてみます。」

「どうして?」

 

俺は柔らかな笑みと共に聞いてくるスコールに応えた

 

「俺だけがすぐに甘えたら、ズルいでしょう? どうせなら、アイツらと同じくらいに這耐えてみようと思います。」

 

所謂、妥協策だ。単なる意地や見栄っ張りなだけかもしれないが、俺だけがすぐに泣きつくのはフェアじゃない気がした。

どうせなら、ギリギリまで粘ってみたい。少しは格好をつけたいからだ。

 

「お話しできて、よかったです。少し気が軽くなりました。」

 

俺が彼女に礼を言うとスコールは首を横に振って笑みを浮かべた。

実にいい笑顔だった。

 

「いいえ、力添えになれてよかったわ。それに強い子は好きだもの。気にしないで」

 

俺とスコールはそこで別れた。何の関係もない赤の他人同士だったが、奇妙な感覚で不思議と親しげになれた。

彼女の持つ雰囲気が独特というのもあった。引き寄せられる、外見だけでなく仕草一つ一つで相手を魅惑の虜にするような雰囲気が彼女にはあった。

 

それだけでなく、何故か親近感を湧いていた。それがどうしてなのかはわからない。

 

その時、携帯に着信が入った。誰からだろうと思い電話に出ると、アカネだった。

 

「もしもし、アカネか?」

『弾、今どこにいるんです?!』

 

アカネは焦っている様子で、大きな声を上げる。それだけでなく、m14ライフルの初弾を装填する音が聞こえた。いつも彼女と訓練をしていたため聞き覚えがあったから、すぐにわかった。

 

「南棟だよ。何かあったのか?」

『学内の警備室が制圧されてて、中の人間が皆殺しになっていたそうです! ご丁寧に警報から何から何まで壊されて…!』

 

耳に届いたのはまさかの事態だった。学内への侵入者。今までの暴走事件とは違う完ぺきな人為的な物だ。

このIS学園に一体どこの誰が攻め入った言うのだろう。答えは見つからないが、とにかく緊急の事態であるのは確かだ。

「どうすればいい?」

『私がそちらに向かいます。拡張領域に銃が入っているはずですから、とりあえず展開して待機してください!』

 

俺は言われたとおりにいして、拡張領域から銃器を取り出す。訓練で使っていたM4カービンをさらに短くしたものだ。マガジンを差し込んで初弾を薬室へと送り状況に備える。

 

俺の学園祭はたったの数時間で消えうせたことを恨みつつも、どこにいるかわからない敵の恐怖していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

格納庫付近にまで来たアタシとイヴァナ先生、それに警備員7,8名で、格納庫の中の様子をうかがう。

中は見たことのない四角い物体を除けば、普段と変わらず早めに整備が終わったのか整備科の人間がおらず、一見無人に見える。

 

89式小銃のセレクターをフルオートにして、中に侵入して辺りを確認する。警備員も軍隊での経験でもあるのか、訓練された動きで中に入ってくる。

その後ろからイヴァナ先生が少し慣れない様子で続く。

 

数歩先に行くと、うめき声が聞こえた。その方向に銃口を向けて確認すると、マイクが取れていた。頭から血を流して、鼻血を出しているのを見て、駆け寄った。

 

「マイク! しっかりしろ!マイク!」

 

呼びかけてはみたが、意識がはっきりしないのか、受け答えができないでいる。彼の応台を確認してると、後頭部を殴られたようで、明らかに何者かの襲撃を受けたのが分かった。

歯噛みしながら、周囲を警戒してると、ふと気づいたことがあった。

 

妙な話だが、ISの数が多すぎる気がした。さっきまで格納庫はほとんど無人だったはずで、何もいなかったはずだ。

何故ISを奪っていないのか、大きすぎる疑問が浮かんだ。

 

こんな学園にまで来て、一番の目玉のISに目もくれていないのだ。もし、所在地がばれるために奪わないのだとしたら、相当に間抜けだろう。

 

身の丈に合わない襲撃をしでかしたことになる。しかし、ここまで誰にも気づかせずに入り込み警備室と格納庫を手中に収めていたはずだ。

 

だが、実際はどうだろう。警備室は潰しただけで、誰かを配置するわけでもなく格納庫でISの一機も奪おうとしない。腕前は一流で、頭が阿呆など信じられない。性質の悪い悪戯だ。

 

もしかすると、私も知らない何かがここにあるというのだろうか。そんなことがあるのか、疑問が尽きない。

 

「大場先生!」

 

イヴァナ先生が叫んで、打鉄の待機状態を投げ渡してくれた。細工など施されてなければいいのだが、確かめる術はなく今は戦力として使うしかない。

 

「イヴァナ先生! 装備は?!」

「私のはあります、大場先生のにはブレードがとりあえず入っているはずです!」

 

そんな情報のやり取りをしている時だった。金属の筒が転がる音が聞こえた。何度か聞いた音だった。ちょうど私が所属していた部隊の訓練で使うフラッシュバンの音と似ていた。

 

「伏せろ!」

 

私とイヴァナ先生はすぐさまISを展開して、防御姿勢を取った。スタングレネードの起こす閃光と後から続く強烈な音が警備員の何名かの戦闘能力を奪い、あとから、サプレッサーで減音された銃声が響いた。八人いた警備員の五人が高速弾の餌食となって、帰らぬ人となったのを目で確認した。

 

リロードに入ったのか、銃声が止んだ。

 

その瞬間を狙って、私は残った警備員にマイクを連れていくように指示する。

 

彼らも、銃器を失ってしまったので、大人しく従ってマイクを引きずって格納庫から出て行く。

 

アタシは打鉄の手にブレードを、イヴァナ先生がチャレンジャーライフルを構えて、銃弾が飛んできた方向へと向けて警告を発した。

 

「銃を捨てろ! さもなくば発砲する!無駄な抵抗はやめて投降しろ!」

 

ISの威を借りる女性と似たような発想だが、この場ではこちらが圧倒的に有利なはずだ。

ISと歩兵では戦闘能力に天と地の差がある。

だからこその勧告だ。捕えて目的を知ることができるのなら、これ以上のことは無いだろう。

だが、帰って来たのは笑い声だった。驚いたことに一人遮蔽物から出てきて、手を両手に挙げて出てきたのだ。

 

出てきたのは男で、スーツ姿でハンサムだが粗野な印象で何故か恐怖のかけらもない笑顔で私の前に現れた。

 

「そいつはちょっとお断りだな、姉ちゃん。俺だって仕事でやって来たんだ。そのために色々と準備をしてきたんだ。わざわざドレスコードも守って来たんだ。なあ?」

「無駄口を叩いているのなら、跪いて両手を頭の後ろに組め」

 

勧告にも従わずに男はアタシとイヴァナ先生を交互に見て、不敵に笑う。

 

「そう言うなよ。ところで、いいスーツだ。ISってやっぱカッコいいよな?

ところで…」

 

男は不意に指を鳴らした。その時男の周りに光が集まり、男を包んでいった。私の目の前で信じられないことが起こった。

 

ここ以外の人間で、男がISを纏ったのだ。

全身装甲のフルスキンで装甲はつけているが、有機的なデザインで曲面を多用した

昆虫の様な目を持った機体がそこにあった。

 

「大場先生……こっちもですよ…」

 

イヴァナ先生の方でも、どこからかもう一機のISが現れていた。 

同じ機種だ。こんな機体はどこでも見たことが無かった。

 

「俺も同じようなスーツ持っているんだけど…似合うかい? 大場2尉?」

 

粘着質な笑い声を上げて、男の機体がにじり寄る

 

私とイヴァナ先生は二機の機体に挟まれた。彼らはテロリストだ。

それも未知のテクノロジーを持ったテロリストだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら、誰も来ないと思います。」

 

標的の織斑一夏が案内したのはロッカールームだった。学園祭の真っ盛りにここに入るものは今日は居ないらしく、天井を見てもカメラのたぐいもない。

この男にしては考えたものだ。

 

私にとっては好都合な場所だ。所持しているISに持たせたサプレッサー付のマカロフを抜く機会さえつかめれば、いつでも私の仕事は終わらせられる。

 

あとはほかの連中が撤退するときに多少援護すればいい。学園内にいるIS乗りなど、所詮はぬるま湯づかりでふやけた連中ばかりだ。

 

ハイスクールの子供にそんなものを求めるほうがおかしいが、私としては戦いという行きがけの駄賃がもらえないのは少々不満だ。

 

とりあえず、思考の海から抜け出して標的である哀れな子羊を見ると、彼は私の方へと近づいて言った。

 

「それで、俺はどうすればいいんですか?」

「まあ、落ち着いて下さい。まず、書類を出さなければならないので…」

「…早くしてください。」

 

織斑一夏は私を急かす。よほど、あの赤毛を思っているのだろうか。男同士の恋愛でもしているわけでもないのに、何故彼はこうも赤毛に執着しているのか、疑問に思うほどだ。

 

「では、こちらから…」

 

バッグから書類を取り出して、彼に手渡す。彼は待ち望んでいたかのように書類を受け取ると、その紙の束に視線を落として、ページをむくりだした。

しかし、彼の顔はページをめくるたびに険しくなっていく。

眉間にしわを寄せて、疑問から、怒りへと変化していった。

 

そして、不発弾のように爆発して、書類を床にたたきつけた。

 

「何ですか、これは?! 全部白紙じゃないですか?!」

 

しかし、織斑一夏の目の前には怯える美女は映らない。私は彼が書類に意識を向かわせたときにはもう、行動を完了していた。

 

顔にマカロフ拳銃を突き付けて、引き金を引いて発砲した。小さな音が鳴って織斑は床に倒れた。

 

その倒れた男の胴体めがけて、マカロフ拳銃の全弾を次々と撃ちこんでいく。薬きょうが地面に落ちて甲高い金属音が鳴るたびに、織斑の体はビクリと体を痙攣させた。

 

ホールドオープンしたマカロフをしまって、織斑に近づく。

これから殺す相手に長話をするのが「いつもの悪党の常識」ではない。それは映画や小説だけだ。

時と場合に応じて楽しむためにそうすることもあるが、それも期待できない相手にはしないのが私のルールだ。

 

今回はつまらん相手だから、それをしないで手っ取り早く撃ち殺すことにしただけだ。

楽しい仕事をするのもプロの掟だが、最小限の経費で最高の仕事をするのもプロの掟だ。

 

私はいつもISを振りかざしているだけの雑魚とは訳が違う。

 

標的のISとやらを奪って今回は私の主な仕事は終了だ。私は彼の体に触れた、その時だった、織斑の体が動き、私を撥ね飛ばそうとしたのだ。

 

間一髪で彼を投げ飛ばして事なきを得たが、私は驚きを隠せないでいた。

確かにマカロフの弾丸を撃ち込んだはずだ。頭に1発と胴体に8発と撃ちこんで確実に仕留めたはずだった。

 

しかし、彼は生きていて、しかも銃創の一つも見つからない。全くの無傷で彼立ち上がった。

よく見ると、いつの間にかISの装甲が彼の体に着いていた。

あの一瞬で彼は装着したというのか。

 

「貴女は……一体…?」

 

織無一夏がそう訊いてきた。私のことを知っていたわけではなさそうだ。そして、瞳孔が揺れているのを見て、私はとっさに反応したものではないことを察した。

 

彼も何故助かったのかわからないでいる。ISがオートで展開したことになるのか、聞いたことのない機能だ。

 

私はマカロフ拳銃を投げ捨てて、織無一夏に相対する。

仕事が少し面倒になっただけだ。

 

「答えろよ、アンタは何者だ?!」

「さあな、知る必要もないし、知ってもわかんねえよ。 とりあえず一言言っておく。IS渡して、とっとと死ね、クソガキ」

 

相棒であるISアラクネを呼び出して、私は神経を研ぎ澄ませる。暗殺が殺し合いになっただけだ。いつも通り、殺して帰ってスコールと寝る。

それだけだ。

 

 

 




次回から戦闘だらけです。
色々と詰め込みすぎて潰れんよう頑張るつもりです。

亡国のお披露目に会長にと忙しくなりますので書くこと自体に手間取って更新遅れるかもしれません

なおリアルでも予定があるので、来週は更新できないかもです。
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