どうも、すいません。
蜘蛛を模した毒々しいデザインの相棒、アラクネを展開して白式を展開した織斑一夏と相対する。事前の情報では、白式は二次移行を完了したらしく、武装はブレードと荷電粒子砲にクロー、そしてシールドも装備されたと聞く。
一見すると、遠近どちらでも対応可能になって万能になった風に見えなくもないが、ほとんどの攻撃手段をエネルギー消費の高い武装で固めている以上長期戦はできない機体で、頭を使う戦いより純粋に腕で圧倒して一撃で相手を葬り去る機体だ。
それができるからこそ、織斑千冬は世界大会を制すことができたのだ。では、それができない場合はどうなるか。
答えは単純だ。ただの燃費の悪いでくの坊にしかなりえない。
雄たけびを上げて上面から刀剣をまっすぐ振り下ろしてくる白式を体を反らすことで避ける。再び振り下ろしが来て、避ける。もう一度振り下ろしをしようとしたが、天井が引っかかって思うように振り下ろせないでいるのを蹴り飛ばし、装甲脚のレーザー砲を連射してシールドを削りにいく。
正面からでは無理と判断したのか、織斑は横へ回避行動に入り、私の周りを衛星の用に回りだして攻撃のチャンスをうかがう。
弾丸やエネルギーのロスを狙ってもいるだろうがそうはいかない
行動先を予測して、レーザーで天井を切り崩して回避先に障害物を作り足止めし、止まったところに四本の装甲脚を密着させることで、高出力にさせて一種の巨大なレーザーブレードを飛ばして近辺を薙ぎ払う。
轟音が鳴って、いかにも戦争めいた心地の良い音を脳髄に響かせて、笑う。赤く光るエネルギーの粒子が散ったのを目で追って、思わず舌なめずりをする。
いつ見ても、いつ聞いても、この肌身に感じる空気はいいものだ。
しかし、感傷に浸っているだけではいけない。
まだ、ヤツはしぶとく生きている。そう私の勘がささやくのだ。
煙と瓦礫で視界が覆われたが、ISにはハイパーセンサーがある。あらゆる機能を駆使できてこそ、ISの搭乗者だ、その点私には隙は無い。
視覚ではなく聴覚を頼り、白式の現在地を探る。
瓦礫の崩れる音に、ガラスが割れる音、ひしゃげた金属の悲鳴の中から、白式の音を探っていく。
研ぎ澄まされた感覚が奴を捕まえるのにはそう時間はかからなかった。
届いたのは、あの雄叫びだった。後ろから聞こえたので奇襲なのだ。
気づかぬふりをして、その場に立ち尽くす。
「もらったぁ!」
瞬時加速を行った彼の姿を見ることなく装甲脚で足に引っ掻けて転ばせる。スラスターで転倒を回避しようとした織斑だが、室内の狭いロッカールームでは難しく、壁に激突してしまい、スラスターを吹かすことで勢いを増す結果となった。
このような限定空間では高機動性は制限されて白式の利点の一つは損なわれる。また、ブレードも思う存分に振り回せない以上、振った刀のトップスピードは落ちる。
いくらISでも力任せにブレードを振り回して障害物ごと切りに行っても、刀である以上、障害物とぶつかれば威力も下がるのだ。
痛みに和えでいる織斑にアラクネの脚力の身を使ってで接近して、利き腕を足で押さえつけて、マウントを取った形となる。
装甲脚に装備されている砲口のモードを変えて、レーザー砲ではなくレーザトーチに変更する。本来ならシェルターの防壁を溶断するための装備だが、切れ味はよく、腕を押し付けるだけでいいと、この場所では利点が多かった。
二本の装甲脚をトーチとして、白式の胴体に押し付けて溶断しようとする。アーク溶接のように火花が散って、光と熱が発生して白式の胴体を焦がしていく。
織斑は悲鳴を上げて痛みに苦しむ。絶対防御が発動しても、痛みは完全に消えない。痛みのない戦いはこの世界には存在しないのだ。
戦車に乗ろうが、戦闘機に乗ろうが、人は戦場に立つ以上は痛みと恐怖に耐えなくてはならない。IS乗りに欠如していることが多い感覚だ。だから悲鳴を上げて泣き叫んで許しを請う。そんな思考が場違いにも頭によぎった。
無論、油断をした人間にも降りかかる死神の鎌も忘れてはいけない。
とっさの動物的な艦に従って体をよじった。
さっきまで、頭部があった場所に荷電粒子が通過し、間一髪回避できた。
通過した粒子の一部が髪の毛を数本焼いてタンパク質の焼ける嫌な匂いが鼻孔を刺激した。
「危ねえな。」
ちょうど二歩分下がって、距離を取る。織斑は攻勢に出て、再びブレードを振り回す。先ほどとは違い、刀を短めに持つことで障害物を避け、突きを中心に使って迫る。
頭の回転は早い。攻め方を変えて対応したというところだ。
一回目の突きは頭部を狙い、二回目と三回目は胴体と的を変えていく。
四回目の刺突の時に織斑はバックステップを取り、大きく距離を取って胴体を狙った。
「うおおおぉぉぉ!」
瞬時加速を併用したく神速の突き。技だけなら、かつてのブリュンヒルデに後れを取らなかったかもしれない。
少し反応が遅れた私に凶刃が迫った。
半秒もしないうちに装甲と刀が触れ合って、金属同士のこすれる甲高い音が鳴り響いた。
耳をつんざくような音の後に、私も織斑も動きを止めてお互いを見合った。
もしここに、第三者の観客がいたとして、横から見れば、私を貫いたように見えたことだろう。
織斑も刺突をしたときは確信に満ちた表情だった。当たったと。勝ったと思ったことだろう、
だが、自分の攻撃の成果を見る織斑は信じられないものを見る目をする。
刀は私を貫いたのでなく、横を通り抜けわきに挟まれていたからだ。
織斑が刀を引き抜こうとしても無駄だ。
アラクネの腕代わりにもなる装甲脚と腕部のパワーを合わせれば、現行のISでは最高クラスのパワーを発揮できる。
かっちりと固め、まず織斑の鳩尾にハイキックを当てて、さらに蜘蛛の尻の部分でへヴィアタックをして、吹き飛ばす。
倒れて、肺から空気を強制的に吐き出した織斑は膝をついて苦悶の表情になりつつも落としたブレードを掴もうとする。
それを顔面に足でスタンプするように足蹴にして、ブレードを明後日の方へと足でずらす。
憎しみの表情を見せる織斑をニヤリと笑って、脚部で腹を蹴りつけて装甲脚で両腕を完全に固定し、十字架に貼り付けるようにして、織斑の体を拘束する。
「女の顔を傷つけようとするとは……いけないガキだ。」
装甲脚全てをトーチに変換して、織斑にすべてを当てる。ISがついてなければ、凄惨な解体現場となったかもしれない。トーチで体をなでまわして装甲や装備を焼き切っていく。
時折、ISスーツの露出してる部分に当てて、先ほどの仕返しをして生意気な面を痛みで歪ませてやるのも忘れない。
溶断された装甲が溶け落ちて、熱されたチーズのように床に零れ落ちていく。
白式としての面影すら見えない状態にして、全ての武装を破壊尽くして、織斑を開放する。
痛みと熱でうなされて、虫けらのように転がる織斑。それでもブレードを手に取って反撃しようともがく姿を見て苦笑を漏らす。
ブレードに手を伸ばす腕を踏みつけて私は問う。
「一応聞いておくが、大人しくISを寄越しな。そうすりゃ痛い目は見なくて済むぜ? お前には武器もねえし力もねえ、悪くはない選択だろ?」
織斑は怒りに染め上がった眼で私を見つめ、大声で叫んだ。
「…ふざけんな! 俺にはやらなきゃならないことがあるんだ! 皆を…守るんだ! 弾を救わなきゃいけないんだ…だから、そのために…」
織斑は渾身の力を込めて叫ぶ。
「もう、あんな思いは御免だ。俺がみんなを守るんだ。そのための力だ! 白式は、お前たちになんかに絶対に渡さない!」
ため息を一つ漏らして、脚部に力を込めて、さらに踏みつける。
滑稽だ。思ったことはそれだけだった。何のために守っているか、そしてソレを求められたわけでもなく、ただ力を行使する。
そんなのものは過激な宗教や思想にとりつかれた者と何ら変わりない。たとえ、民間人に銃を向けたりしないだけマシでも、その守るといった者たちが求めているわけではない。
私はこの男と似たものを知っている気がした。
「そうか、なら死ね。悔いる暇ぐらいはくれてやる。何、ほんの数分さ。同情するぜ、可哀想にな」
拡張領域に仕舞っていた物体を取り出す。40センチほどの大きさの四足のついた機会を白式に取り付ける。
剥離剤と呼ばれる装置だ。ISを強制解除してコアの状態に戻すというのが訊いた説明だ。
コイツが仕事を終えるまでの短い時間が織斑に与えられた懺悔の時だ。
その後はISのとられた唯のクソガキでしかない。そんな存在はアラクネで捻るだけで視界から消せる。
剥離剤が白式にとりついて、電流を流し始めた。再びツヤに欠ける男の絶叫が室内にこだました。通常なら間違いなく死んでいるであろう電流が相手を拘束し、コアにオーバーヒートを起こさせるという話だ。
終わるまでの数十秒間、私はつまらなく思いながら、織斑を見ていた。
ブリュンヒルでの弟という事で、会うまでは期待していたが、とんだ買い被りだった。
才能は遺伝しなかったようだ。
「何が…織斑千冬の弟だ。何のことはねえな。」
一人そんなことを呟いた。スパークがはじけて光っているのを冷めた目で見ていた。
もう三十秒は経った今でも電流が流れているらしく、まだ剥離剤は仕事を追えないらしい。
それから、何十秒も経った。しかし、変化が訪れないことに違和感を覚えた。
あまりにも時間がかかりすぎている。話では一分もたたないはずだが、もうとっくに過ぎている。
やがて、剥離剤が力尽きたのか、電流を流すのをやめて床に無残に転がった。
だが、白式は織斑に装着されたままで、何の変化もない。
そこに、大量の汗を流して肩で息をしている織斑がそこに居るだけだ。
剥離剤の故障もしくは不良品か何かと考えたが、電流を流していたり、コアに反応していたのを見てそれは無いと判断した。
剥離剤は正常に作動して織斑からISを剥がそうとした。それができてないとなると、考えられるのは織斑のISには何らかの対抗措置があったと考え着いた。
眉間にしわを寄せて非常に不快な気分になった。事前の情報には白式に何らかの措置ないし、改造を施したという情報は無かった。
早いところ仕事を終わらせようという時にイレギュラーが起こるとはツイてない。
「な…何のつもりか知らないけど残念だったな…」
勝ち誇った笑みを浮かべる織斑を見下ろす。状況がわかっているのかどうかは知らないが、見上げた度胸だ。
その度胸に敬意を表して、四本の装甲脚を密着させて、再びエネルギーの巨大な塊を作る。
今度はより小さく、鋭く剣の形に凝縮して織斑の首もとに添える。
昔ながらのギロチンのようにブレードもどきを構える。言葉はいらない。ただ振り下ろすだけで、全てが終わる。
そして、振り下ろそうとした瞬間、またしても勘が働いた。
そこから離れろと、耳元にささやかれた。
勘に従って、その場から脚部の力のみで退避すると何もないはずの空間に爆発が起きて大気を振動させた。
この世に手品のような兵器は存在しない。ということは間違いなくIsのものだ。
センサーを働かせて索敵すると、一人の人間が見つかった。
「あら? 外しちゃったわ。そのIS中々の機動性を持っているのね」
センサーで強化された瞳に映ったのは一人の少女。水色の髪に赤い瞳。話にあった生徒会長、更識楯無だった。扇子で口元を隠してクスクスと笑っているように見えた。
「増援か…遅すぎだ。無能め。 私を誘き出したつもりか? それとも功績欲しさにわざと遅れてきたのか? 」
本音も半分混じっているが簡単な挑発をしてみる。予想通り、やはり効果は無い。
この程度に乗らなない程度にはプロらしい。
「意外と口が回るのね。まあ、いいわ。とりあえ…」
最後まで喋らせる前に、アラクネの機動性で接近し、腕部を突き刺す、液体が飛び散って水が滴るような音が耳に届く。
後ろで楯無と叫ぶ織斑の思う事とは反対に私はとっさに気を翻して接近する物体、ランスを弾いて見せた。
貫いたと思ったのはただの囮だ。アラクネの腕に着いた物質を解析して主成分が水とタンパク質だと知った。水でできた巧妙なデコイ。
タンパク質という事だが、その正体はナノマシンに違いない。ただの水ではこうも偽装はできない。
横目で楯無を睨み付ける。機体は水のスカートと言うべきかヴェールと言うべきか、腰部分に水が纏われており、手にはランスが握られている。
布仏本音の情報であった機体ミステリアス・レイディとはコイツの事だろう。
ナノマシンによる水の操作と、特徴とよく合致する。
「三下の割にやるわね?」
「そりゃどうも。」
腕にナイフを展開し、格闘戦に入る。ランスを振るうミステリアス・レイディの動きは洗練されており、振りも小ぶりで突きも鋭く熟練されたのがわかる。
一回目の刺突をナイフの刃で受け流して、距離を詰めようと前進するが楯無は四歩分後退して、点の突きではく横の薙ぎ払い、つまり線の攻撃で接近を防ぎ、三回に刺突に分けて胴体と脚部を狙ってくる。関節部や装甲の薄目そうなところを速く正確に狙いをつけてくるのを、装甲脚も展開して防ぐ。
レーザ砲へと切り替えて、地面を切り崩して足場を崩し、少しよろけたところに狙ってレーザーを連射して本体への攻撃を狙ったが、水のヴェールが楯無を包み込んで、エネルギーをロスさせて光学兵器の一切を無効化した。
アレが装甲の代わりなのだろう、エネルギーを纏った水の前では実弾は速度を失ってしまうし、レーザーも水と言う壁にエネルギーをロスして威力を減らしてしまう。
貫くとなれば初速が異様に早いRインダストリーのハヤブサに装備されているパルスライフルか、ジャンクラビットの超出力の荷電粒子などで強引に突破するしかない。
もしくは膨大なエネルギーをぶつけてナノマシンに伝達させているエネルギーと水の水蒸気爆発を合わせて吹き飛ばすというのもある。
しかし、これは悪手だ。アラクネでもできなくはないが、エネルギーのロスが大きすぎるしソレを実現するにはかなり接近した状態でないとうまく作用しない。
爆発に巻き込まれてダメージを受けるようなことはまだ避けたい。
となれば、格闘戦に入るのが一番だが、そうは楯無がさせず、ランスに銃器を仕込んでいたらしく、弾幕を形成して接近を許さない。
後退して瓦礫の障害物に身を隠すが、そこで先ほどの爆発が起こり行動を制限してくる。
指向性の気体火薬のように、攻撃を仕向けてくることができるのに、舌打ちをする。
長期戦になれば、アドバンテージは向うにある。このまま増援を待つだけで私が不利になる。
別に苦しくはないが、小細工得意の機体がいる中で乱戦は避けたい。
思考の海をさまよいながら、楯無にレーザーで対応していると、楯無の後ろに織斑の姿がふと映った。
まだ、退避してないようで機体を動かそうとしている。
それを見て、ひらめいた。面倒な学園最強を葬り去る方法を。
両腕にアサルトライフルを展開し、装甲脚全てのレーザー砲と合わせて周辺を全てでたらめに撃つ。的も絞らずにただひたすらに撃ち続けて瓦礫と粉じんを作り出して、レーザーによる高温で空気を熱していく。
ライフル下部に装着されたグレネードランチャーを楯無に向けて放って、さらに爆炎を巻き上げていく。
「煙幕のつもりかしら? 逃がさないわよ」
彼女の言う通り、これは煙幕に過ぎない。だが、逃げるための物ではない。狭い室内で瞬時加速を発動し壁に張り付きトーチでISが通れるだけの穴を作り、理想的なポジションへと蜘蛛のように張り付くようにして移動し、楯無の後ろに着く。
彼女の反応も流石で、ランスの銃器で正確に狙いをつけてくる。
だてにロシア代表ではない、だが私の顔に浮かぶのは笑みだ。
ちょうど見つけて良い得物がいる位置に陣取って楯無に向けて、再び火力を集中させる。
水のシールドを展開して防御態勢に入った楯無を確認する。
私の勘が正しければ、もう少しで動いてくるはずだ。
伸るか反るか、だが私には絶対の自信があった。
煙幕で視界が効かない状況なら好機のはずなのだ。あとは誘いに乗るかどうかだ。
そして、その時は来た。
「うおおおおおおおぉぉぉ!」
再び聞こえた雄たけびにガッツポーズすら取りたくなった。
背後からの織斑の奇襲。零落白夜を発動して、エネルギーの刃を形成した白式の一撃必殺の技。煙幕で後ろを見せた私に対してなら、絶好の機会に見えるはずでほとんどの武装を潰した白式の起死回生の一撃だ。
「よく来た!」
身をかがめて回避して、白式は素通りしてしまった。間抜けにも見えたかもしれないが、奴のまいた種だ。私の知る由ではない。
彼が突っ込むその先にあるのは水のヴェールを張った楯無のミステリアス・レイディだ。
楯無は私の狙いに気が付いた。彼女はとっさに水のベールを解こうとしたが、アラクネの集中砲火でソレができないでいた。
いくら学園最強でも見えない所から来る弾丸は避けられない。それが瞬時加速までしてしまった白式ならなおさらだ。
織斑のブレードが水のヴェールに突き刺さった。今までのエネルギー以上の熱量が水を瞬時に蒸発させて、行き場を失ったナノマシンに伝達されてたエネルギーが零落白夜のエネルギーと触れ合った。
白式は一撃でISを戦闘不能にできる攻撃能力を持つ。そのエネルギーの大きさは口にしなくてもデカいことは確かだ。
そんなエネルギーの塊と接触した場合、水のシールドは一体何を引き起こしてしまうか。
例えるなら、粉じん爆発。エネルギーの粒子にちょうど、細かい粉末が引火するかのようにして弾けて大爆発を引き起こした。
トーチで空けた穴から脱出するときに楯無の顔を見て私は言った
「見たか? これが戦争だ!」
強烈な閃光と轟音を響かせて、二機は爆炎の渦へと巻き込まれていくのを哄笑を上げて私は見た。
これで、二機の撃破は確実だ。アラクネの胴体に着ける撃墜マークを更新できる。
これで何機目だったかは正直覚えていない。
あとで、白式を回収すれば、スコールもきっとご満悦だろう。それが何よりの喜びだ。
「ありがとう、オータム」とほほ笑んでくれるだけで今日の仕事の成果としては十分だ。
それで、ベットインできれば、本望だ。
スコールの白く陶磁のように柔らかさと美しさを備えた肌を想像して、頬が緩んだ・
あの美しい腕が私を撫でるそんな想像をした。
しかし、幸福の時間は長くは続かない。
こうして浸っている時に水を差すようにアラームが鳴って私の気分を害した。
ロッカールームから外へと出て数分もしないうちに、三機のISの反応がした。
連戦だ。三機同時に相手にすることとなるのは容易に想像がつく。
この時は撃墜マークが増えることより、想像を邪魔されたことに腹を立て、鋭い眼光を宿らせて、小娘達に振り返る。
「よくも、一夏を!」
「私の嫁に手を出すとは…覚悟してもらおうか?」
ごちゃごちゃと恨み言をオープン回線で話されて、やかましい。
またしても仕事が増えた。楽しめそうもない相手を三人もしなくてはならなくなった。
私は嘲笑を上げて反論した。
「ごちゃごちゃうるせえな。来いよ、殺しに来い! 私はお前たちの種馬を散々痛みつけたぞ!」
その時、黒い敵機の胴体を青い閃光が穿った。直撃を受けて黒い機体の搭乗者は目を白黒させていた。
「ラウラ!」
他の小娘が騒いでいるのにも、青い閃光が走って、狙撃していく。回避行動をとって、バラバラに散った三基を尻目に私は秘匿通信をつなげる。なぜなら、青色のエネルギー弾による狙撃行う正体を私は知っていたからだ。
「助かったぜ、エム。ほめてやる」
ぞんざいに言うと、答えが返って来た。
「……お前には必要のなかったか?オータム」
素っ気ない口調で機械のように話すエムことマドカに私は上機嫌に話しかける。
「いや…そのまま支援しろ。アイツらは始末しても構わねえからな…千冬はダメだぞ?」
からかって、千冬のことに言及するとマドカは派手に舌打ちをしてつぶやいた。
「…面倒だ。」
再び、エネルギー弾が飛び、狙撃していくエムがいるだろう方向にスコールのように投げキッスをして空へと上がった。
平穏など存在しない、青く残酷すぎる空へと。
完全なオータム回です。
せっかくの亡国さんの戦闘員ですから、なるべく強くしたいものです。
とりあえず力と狡猾さを手にしたオータムさんです。どうでしょうか?
感想、批評等お待ちしております。