四月。多くの人が新しい世界へと飛び立つ季節だ。高校へ進学する者にとっては期待に満ちた顔をするだろう。それは、ここIS学園においても同じだ。白を基調とする制服に包まれた女子達が入学式へと足を運ぶ。彼女たちもこれからの将来を頭に思い描き、期待に胸をふくらませてるだろう。
そんな中で自分たち4人は異彩を放っていることだろう。自分を含め男子が三人いるのだ、男子などいるはずのない女子高のIS学園では嫌でも目立つ。もう一人は女子なのだが三人の男子と並んで歩いているため、やはり他人の目を引くようだ。
好奇の目線の中、俺は一人、これからではなく これまでのことで頭がいっぱいだった。
約一か月前にRインダストリー社と契約して、この日まで訓練を重ね続けた。
当然、楽しいことは多くない。苦い記憶ばかりが多い。
ひたすらに行われたシミュレーション。執拗に戦闘機などの仮想敵に追い回された。
その時のヴィンセントの笑い声が今でも耳に残ってる。腹立つ事この上なかった。
毎日の射撃訓練。何度も心を折られた。ライフルの銃床で尻を叩かれ、罵倒される。何かに目覚める一歩手前だった。訓練中に見えたアカネのサービスシーンだけが心の支えだった。見るたびにお仕置きされたのを除いての話だけど。
トレーニング。この身に受けた殺人拳法の数々は忘れられない。
何度もマットに叩きつけられ、それら全てを使いこなすユーリに感心すらした。
手合せの結果は70戦中0勝70敗、惨敗。涙がホロリと出た。もうエンデイングに入った気分だ。
「何、浸ってるんですか?」
「これで終わりと思ったか? でも残念、訓練はまだ続くんだ、やったね弾君」
アカネに頭を軽く小突かれ、、ヴィンセントが現実を教えてくる。これからが本番だ、と言わんばかりの表情をユーリがこちらに向ける。やはり現実は厳しい。なぜなら今ここがスタート地点だからだ。
舞い散る桜は俺を祝福してくれているようには見えなかった。それどころか、嘲笑っているかのようだ。
入学式が終わり、各クラスに移ることになった。俺とアカネが一組で、ヴィンセントが二組。ユーリが4組だった。
一組の副担任の山田真耶先生が教室に入る。緑色の髪でメガネを掛けた童顔の女性だった。子供のような印象であったが、今まで見たことのない胸のサイズに目が行き、つい見入ってしまったが、隣の席のアカネから咳払いを聞き見るのをやめる。
山田先生はこれからの学園生活を頑張っていきましょうとエールを掛けるが、クラスの誰一人として反応を示さなかったので、仕方なくクラスの自己紹介に移る。
クラスの女子達の自己紹介をしてると、織班一夏の番となった。親友にはずだが、どうも他人のように思えた。一か月と短い期間だが、アカネ達と寝食を共にして訓練をしたせいなのか、初のIS操縦者として発表された時に抱いた劣等感のせいなのか。今ここで結論付けることはできなかった。
「織班一夏です!」
とりあえず名前を名乗ったが、女子達はそれだけで満足するわけなく、他に何かないのか?、と言わんばかりに期待に満ちた目で一夏を見る。
一夏もそれに気づいて何か言おうとしたが
「以上です!」
結局思いつかなったようだ
周りがズッコケていると、彼の姉 織班千冬が一夏の頭を出席簿で叩く。
甲高い音が大きく響いた。見るからに痛そうだ。
姉弟どうしで何やら話し込み、織班先生は教壇に立ち、クラス全員うを見据えて宣言した。
「私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。今日から君たち新人を一年で操縦者に鍛えるのが私の仕事だ。先生方の言うことは良く聞き良く理解しろ。分からないことがあれば聞きに来い。分かるまで教えてやる。先生方の指示には従え。逆らっても良いが指示に従え。逆らって死ぬ奴は今すぐ出て行って退学届けを書け、良いな」
威風堂々、まさに女帝だ。IS乗り最強の称号ブリュンヒルデを持ち、モンドクロッソでの世界大会を優勝。凛としたただ住まい。たしかに彼女に誰もが憧れるだろう。
周りの女子達もこぞって黄色い歓声を上げて、有頂天になっている。
その彼女たちを織班先生は一声でピタリと静かにして、自己紹介を再開させる。さすがのカリスマと言った感じで尊敬する。
自分の番になったので自己紹介する。
「五反田弾だ。あまり知られれてないだろうけど、二人目だ。一応、Rインダストリー社で雇われているけど、ISについてよく知らないことが多いからよろしく」
緊張で多少ひきつった笑顔だがうまくできたと弾は思った。
しかし、女子の反応は微妙だった。
「誰?」
「普通だね」「何かねえ」
中には一夏と比べるような声や、見下す声も聞こえた。それらの声を受け流し、席に着く。予測できた結果だ。自分と一夏では期待度も全然違うのだから。そんな事はここに来る前からわかりきったことだ。
所詮は二番目、付属品。オマケのようなものだ。
「クソ」
だというのに、思わずにはいられない。
何故いつもこうなのか、とこれから先の事で頭をいっぱいにして自己紹介が終わるのを待った。
一限目のオリエンテーションを終え、隣のアカネと雑談してると、自分を呼びかける声に気づいた。
声の主は織班一夏。世界初のIS男性適合者であり、友人。全ての元凶でもあり、アカネ達と会うキッカケ。正直、複雑な心境だった。
「よお、弾。久しぶりだなぁお前がいて助かったよ!」
心底嬉しそうな顔をして、こちらに来る。
「おう、久々。俺も晴れて女子校デビューだよ、お前のおかげで」
少し皮肉を混ぜる。
「そんな風にいうなよ。オレたち親友だろ……ところでお前、もう口説いたのか?その子と親しそうだけど」
「オ、オイ!? 何言ってたんだ?」
本人がいる前で言うセリフではない。この男はいつもそうだ。デリカシーが少し欠けている。それでいて、モテるのが妬ましい。同じ中学にいたころは、その朴念仁さで有名だった。
「彼女は俺と一緒の所属にいたからな、自己紹介の時言ってなかったか?」
「ゴメン覚えてない」
単細胞かお前は と突っ込みたくなる。話していると一夏の後ろに人影が見えた。
長いポニーテールで鋭い印象の女子、たしか篠ノ之箒だ。
「少し、いいか?」
箒がそう言って一夏と話す、話を聞く限り幼馴染のようだ。一夏が一言こちらに謝り箒と共に教室を出る。
アカネが一夏の後ろ姿を少し睨んでいた、「馴れ馴れしい奴」とつぶやくのが聞こえた。かなりご機嫌ななめに見える。
だが、アカネの不機嫌はもう少し続くことになった。もう一人こちらに来たのだ。
金髪の縦ロール、いかにもお嬢様な感じの娘、セシリア・オルコットが弾のもとに来た。
「ちょっと、よろしくて?」
少し高圧的な態度に気づく。いわゆる女尊男卑な今時の娘だと予想できた。
「何か用か?」
「まあ!なんなのですの。私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度をとるのが常識でしょう?」
予想が確信に変わり、俺はウンザリする。
「自慢だけなら、聞かないぞ。こっちも忙しいし。だいたい君のことなんて知らないし」
当然のことを言ったが彼女にとっては違ったらしい。
「なっ!私を知らない!?イギリスの代表候補生であり入試主席であるセシリア・オルコットを知らないですって!?」
こちらが黙っている間、ずっとこちらを見下すような言葉を吐き続ける、耐え兼ねたので思わず反論する。
「そりゃ、知らないよ。俺男子だぞ。ISについてそんなに知ってるわけないだろ。まして候補生なんか知らないよ」
そこまで言うと顔を真っ赤にする。何を思ったか、アカネにも怒りの矛先を向ける。
「あなたは?! まさか知らないなんておっしゃりませんよね? 日本の方には常識というものが」
セリフを続ける前にアカネが口を開いた。
「知ってますよ、てっきりグラビアアイドルの方だと思ってましたけど。雑誌の水着姿しか見たこと無いのでIS乗りだなんて聞いて、ビックリでした」
感情の一かけらも見せない表情で毒を吐く。セシリアは呆気にとられた。国家代表候補生はISの試験や軍での訓練などの他に雑誌のモデル等も行うというのは聞いたことがあった。
強く、美しくがIS乗りに求められているらしい。セシリアも例外ではなかったようで幾度かモデルのようなこともしたのだろう。
女尊男卑な彼女にとって、見下す男に自分の高貴な柔肌を見せつけるグラビアアイドルのような仕事のことを言われれば心底腹立つことだろう。今現在、顔を真っ赤にしている。茹で上がったタコみたいだ。
「それに貴女を見てるとこんな人でも代表候補生になれるんだ、て思えて、ありがたみも感じられませんから、それ相応の態度をとれ と言われても困るんですよ」
一夏で不機嫌だっだのが、さらにヒートアップしているようだ。基本的にアカネがこの手の女性を心底軽蔑してるのも相乗してるのだろう。
セシリアが歯ぎしりをして、口を開きかけるがチャイムが鳴り、捨て台詞を吐いて席へと戻っていた。二限目が終わった後、同じように一夏と一悶着起こしていた。
エリートで女尊男卑な代表候補生。これ以上の面倒なことが起きないのを祈る。
二時限目の授業は山田先生が行うようで、IS基礎概論だった。山田先生だけでは不安なのか、織班先生が教壇の近くに椅子を置いて腰掛けている。
だが、授業はこれと言って問題はなく山田先生の教え方は上手でわかりやすかった。偶に、ブラジャーなど女性にしか分からない例えをする事はあったが。
「ここまでで何かわからない所はありますか?」
質問の機会を設けてくれたので、手を上げようとすると、もう一つ手が上がり、山田先生はそちらをあてる。
手を上げたのは一夏だ。
「織班君、どこがわかりませんか?」
「すいません……全くわかりません」
「全くって全部ですか?!」
ハイ、と力なくうなだれて、一夏は申し訳なさそうに答える。
確かに、一夏の気持ちはわかる。渡された教科書、並びに参考書は百科事典のような厚さと重さを持っていたからだ。覚えきれなかったのだろう。
「織班、渡した教科書はどうした?必読と書いてあったはずだが。」
見かねた織班先生が質問を投げかける。当然好意的な態度ではない。
「古い電話帳と間違えて捨てました」
バシン、と大きな音を立てて、一夏に出席簿の鉄槌が下される。
流石に同情の余地はない。
「五弾田、お前は何故手を挙げた?」
「弾、お前もか」
まるで、仲間がいて良かったと言わんばかりの顔を見せる一夏とこちらに牙を向ける織班先生。織班先生はもう一度一夏を殴り、同じ理由なら許さん、と言わんばかりの鬼の形相をする。
「ハイ、質問ですが量産型ISについてです。世界には467個のみISコアが存在していない中、未だISコアの製造方法は不明です。量産型ISをつくる理由とは何でしょうか?また、本来は宇宙開発用とありますが、あまりそう言った話を聞きませんので」
前から引っかかっていた疑問を専門家に聞きたかったので、聞いてみた。
「その分だと、一応、基本を覚えているようだな。量産型ISは主にカスタムのベースとして使われる。ラファール等はまさにその代表例だ。私はスペインの戦斧を持ったラファールを駆る代表と戦ったことがある。また、学園だけだが、安価な訓練機として使う事もある。そして」
一呼吸して織班先生はISの現在の在り様をクラス全員に言い放った。
「いいか、ISは既存の兵器を上回る強力な兵器だ。間違った扱い方をすれば大きな事故を招く。もとは宇宙開発だったろうが、関係ない。力の扱い方を十分に学べよ。小娘ども」
つまり、専ら兵器としてしか、扱われていないってことか―――――
では、競技に兵器を使っているのか、と思うと背筋が少し冷えるものがある。俺は一人、背筋に寒いモノを感じながら、質問に答えてくれた織班先生に礼を言った
一方、一夏はあの教科書の類を一週間で覚えるよう言われ頭を抱えていた。
一夏は教科書に俺はこれからの試合に不安を抱いていた。
三時限目の授業は千冬さんがすることになった。IS戦術論で主に戦闘技術について学ぶ。
「では授業を始める。ISの武装と特性についてだ。っとその前にクラス代表を決めねばな。では自薦他薦を問わない。誰かやりたい者はいないか?クラス代表は学級委員みたいなものだ、そう難しくない。誰かいないか?」
クラスの代表と聞いて嫌な予感がし、それは的中した。
「はい! 織班君を推薦します!」
「じゃあ、私は五反田君!」
まさかの他薦に驚くが、この後の展開を危惧して思わず頭を抱える。
一夏が抗議するが、こちらの拒否権は認められないようだ。
「待ってください!」
机を叩く音が響く、案の定、セシリアだ。
「そのような選出は認められませんわ!男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!このセシリア・オルコットにこのような屈辱を一年も味わえと!?実力から言えば私が選ばれるのは必然なのに珍しいからという理由で極東の猿を選ばれては困ります!私はこのような島国に来て、ただでさえ苦痛だというのにサーカス…」
そこまで吠えて一夏が反撃する。
「イギリスだって大したお国自慢ないだろう。まずいメシで何年連続覇者だよ?」
「あなた、私の祖国を侮辱しますの!?」
二人の間で、激しい口論が行われる。
「……決闘ですわ!」
「おう、いいぜ。代表候補生だが何だか知らねぇけど、やってやるよ。なあ、弾!」
そこで俺に同意を求めるなよ、と心の中で毒づく。
「で、ハンデはどうする?」
「あら、早速お願いですか?」
「いや、お前のハンデなんだが」
そういうとクラス中に笑いが起こる。失笑、嘲笑、あらゆる笑いが起こった。
皆が一夏を笑う。中には男と女で戦争したら三日持たない、女のほうが優れている などの言葉も聞こえる。確かにISを動かして数分の男と代表候補性では勝負にならないだろう。笑うのは当然と言えた。
「日本の方は中々ジョークセンスがおありですのね。先ほどから、黙ってるあなた……あなたも何か言ったらどうですの?」
嘲笑を浮かべ、こちらにも矛先を向ける。どうあっても男を見下したいらしい。
「Rインダストリー社も何を考えてあなたを雇ったのか不思議でなりませんわ。所詮は金の亡者でしかない男達。あなたもそうなのでしょう?あなた達には何もできないでしょうから、私に今からでも泣いて許しを乞えば」
そこまで聞いてプツンと切れた。どうしても許せなかった。あなた達、ヴィンセントやアカネ、その他大勢の人達を笑われた気がして、席を立つ。
「下種の勘繰りも大概にしろよ。自分は高みにいるって勘違いして、見下すのが英国貴族の矜持ってか?いい根性してるぜ、全く。お前の喧嘩を買ってやる。アイツらへの侮辱のツケは払ってもらうからな、まずいイギリス料理以下のメシすら食えないようにしてやるつもりで行くからそう思え!」
突然の剣幕に誰も声を出せずにいた。セシリアも黙っていたが、唇をわなわな震わせている。男に反抗されるのがそんなに屈辱なのか決闘は一週間後に決まり、授業終了のベルが鳴る。
戦いのゴングにも聞こえた。
放課後、食堂でアカネ以外のメンバー全員が集まり、近況報告をする。ヴィンセントは二組の代表として選ばれたそうだ、ユーリの4組は決まってないという。
何でも、4組の担任は適当な人らしく、先生らしくはなかったという。
「聞いたぞ、弾。イギリスの候補生の喧嘩買ったんだって? やるじゃないか、弾」
楽しそうな声を出して愉快そうにヴィンセントが笑う。
「頭に来たから言ったけど、うまいように誘導されたかもな……だが負ける気はないぞ」
「とはいえ、お前の勝率は低いな」
ユーリが煎茶を啜り、苦い顔をする。
「今の所、お前のための機体はまだ完成していない。となれば使えるのは訓練機になる。おまけに一か月と少しの間に訓練したとはいえ、稼働時間では圧倒的にセシリア・オルコットに分がある。つまりスペックと腕で負けている」
ユーリの指摘に俺は言葉に詰まる。
ユーリの言う通り、俺はISに関して言えばセシリアに優る点がない。稼働時間がIS乗りの腕前に直結すると言われている以上、当然と言える。さらに機体性能も大きな差であることも明白だ。
俺のシミュレーション内でのIS時間はおよそ125時間。射撃訓練や格闘、IS概論なども応用は可能といっても、できることは限られているし、ソレは向うも同じだろう。
「じゃあ、どうする?弾。 今から泣いて土下座するか?」
「冗談だろ。とりあえず、まず情報だ。セシリアの癖、機体特性。とにかくデータが要る。ヴィンセント頼めるか?」
「構わないよ、それくらいは。でも、勝つにはまだ足りないなぁ弾。こういう時は?」
ズイっと身を乗り出してくる。
「奇を用いよってか?わかってるよ。」
流石、と言って満足そうな表情を浮かべる。俺を試していたらしい。
戦いの基本は駆け引きだ、とこの男に言われたことがある。彼曰く戦う前の下ごしらえが重要であり、ぶっつけ本番など言う輩などとるに足らないモノだと力説していた。今回はそれをするだけの時間はたっぷりある。
情報を得て、策を練るための時間は。
「お前って人をからかったり、試したりするの好きだよな。ホント」
「人聞きの悪いこと言うなよ。ただ、教え子がちゃんと覚えているか確認しただけさ」
ああ言えばこう言う、とは正にこのことだ。とりあえず、今は一週間後の決闘に勝つ方法を考えなくてはならない。限られた戦力をいかに使うかは学んだ、あとは応用と実践だ。
「しかし、凄い発言をするもんだ。日本人を猿呼ばわりか」
ヴィンセントがアゴを撫でながら言う。
「こういうのって国際問題とかになったりするのか?」
少し唸ってヴィンセントは回答する
「どうかな?……所詮、学校の教室だから公の場って訳でもないしなぁ。おまけにまだ候補生どまりだ。せいぜいが孤高なお嬢様になるだけじゃないか?」
そういうものか、と納得するが「孤高なお嬢様」とは皮肉のつもりなのだろうか?それとも彼なりにオブラートに包んだ言い方なのだろうか まあ、そんなことより、セシリアの攻略こそが今の課題だ。
だが、今はとりあえず目の前にある定食から片付けよう。
俺は箸で焼き魚をつつきだした。
IS学園は基本的に全寮制である。2人一部屋で共同生活を行い、互いに親睦を深めつつ、セキュリテイがしっかりと置かれた環境でIS乗りを育成するといったところだ。
ここで一つ問題がある。IS学園は女子高であり、男子がいることなど普通ありえない。では、仮に男子が入ってきてしまった場合、どうなるのか?今回に場合、ヴィンセントに俺、ユーリそして一夏だ。4人なのだから、男子でまとめることができる。当然、同性でまとめた方が余計なトラブルも回避できるし、男子にとってもありがたい。
思春期の男子なら可愛い女子と同棲なんて妄想なら楽しめるかもしれないが、現実ならお断りだ。まして女尊男卑な思想の女子なんかもいる中で男女で同棲など言語道断だ。
男子である俺が女子と相部屋になるわけはない 普通はそうなるはずだ。
だが、学園寮の自分の部屋を開けると、そこにはタンクトップにジーンズというラフな格好でアカネがメガネを外して雑誌を読みながら煎餅をかじっていた。
一瞬、これは幻覚かと思う。アカネが何故か俺の部屋にいて、隣のベッドに木刀が突き刺さっている。驚きのあまり、声も出ない。
「ルームメイトは弾でしたか、これからはよろしくお願いします。」
雑誌から顔をのぞかせ、手をひらひらと降る。
「ちょっとタンマ!何で女子と相部屋なんだ。普通違うだろ!。」
「何だか知らないですけど、織班君が女子と同部屋にされてるからじゃないかと思いますよ。」
煎餅をパキッと割って口の中に放り込む。
「ちょっとタンマ……一夏が女子と? なんで知ってるんだ?」
「さっき、シャワー浴びて着替えてる最中に部屋に助けを求めて入ってきたんですよ。助けてくれえって・・・おかげで色々見られてしまって・・・それで」
「それで?」
「とりあえず鉄拳ですかね……その後木刀持って篠ノ之さんが来て、一夏になにをした!って叫んで木刀で突っ込んできてチャンバラしたんです。返り討ちにしたんですけど、ベッドがお釈迦に」
ハハ、と脱力した笑いをする、俺に謝罪してくれた。
今夜の寝床はパーとなったわけだ。俺のベッドは一夏の朴念仁の犠牲となったわけだ畜生め。
ため息をついて、穴の開いたベッドに腰掛ける
「てか、男と同じ部屋なのにいやにくつろいでるな」
「あのビルの中で、男女比3対1で過ごしたというのに、何をいまさら。」
手を叩いて納得してしまう。言われてみれば俺たちは一緒に普通に生活していた
「それはそうと、相談いいか?アカネ」
どうぞ、と言って、寝ころんだ状態から起き上がり、アカネがこちらに体のむきを変える
「まずはこれを見てほしい。」
そういってヴィンセントからのメールを見せる。
ブルーティアーズ。イギリスの第三世代型IS。。青を基調としたカラーでスナイパーライフルなどを装備した遠距離型。イギリスのBT兵器と呼ばれる相手の死角からの攻撃を行う全方向オールレンジ攻撃が可能のビット型兵器を装備しているのが特徴であり、現在、この兵器に高い適正をもつセシリア・オルコットが搭乗者である。
セシリアは高い射撃能力を持つとされているが、どれほどのモノかは詳細不明。またミサイルのブルーテイアーズも装備しているとの事。注意されたし。
PS 射撃ならうちのアカネには負けると思われる。
「こんな感じでな、アカネに相談してみようと思ったんだ。どうだ?」
少し考える表情を作って、足を組む。
「そうですね、見たところ狙撃型でしょうね。これなら勝機があるかもしれません」
「詳しく説明してくれ。」
アカネが一息吸って、説明を開始する。
「まず、狙撃というのは、どういうものか覚えてますか?」
「ワンショット・キルで姿すら見せず、遠距離から相手を撃つことだ」
アカネから教わったことだ。今更聞くまでもない気がする。
「そうです、狙撃というのは、相手のアウトレンジから一発で決める、これが普通です。しかし、IS同士の戦いではシールドがあるので、一発で堕ちることはまずないでしょう。そして、弾が戦うのは狭いアリーナ。アウトレンジになることはあり得ません」
「つまり、ブルーティアーズは試合向けでないってことか。」
「そうです。せっかくの狙撃仕様もあのアリーナでは宝の持ち腐れですからね。それにスナイパーライフルは動き回って撃つには向きませんから、制圧射撃で相手の回避を誘い命中率をさげることも可能ですし、弾の機体制御も悪くはないですから、当たりっぱなしのワンサイドゲームにはならないでしょう」
確かにアカネの言う事に一理ある。限定された空間なら訓練機でも接近するチャンスもあるだろう。いかに高出力の専用機だろうと、狙撃するときに多少の減速ないし静止する時があるはずだ。その時こそが好機となる。
「だが、問題はビットだよな」
死角からの攻撃はシミュレーションでの経験もあるが、BT兵器になると話が違う。ブルーテイアーズに搭載されているBTは4つだ。同時に4方向からの攻撃は経験がなく、今の俺にとって全て躱すのは至難の業だ。しかも、これはビットによる攻撃に限った話でここにスナイパーライフルが加わることによって5方向になる。
また、BTで相手の思惑通りに誘導されれば、その後どうなるかは想像に難くない。
どうにかビットを攻略する必要がある訳だ。例えばビットを無視して本体を集中攻撃し、ビットに落とされる前に倒すなど。
しかし、どれも難しいだろう。相手はそんな稚拙な戦法で勝たせてくれるほど甘くはない。そう思ったとき、一通のメールが届く。ヴィンセントからの追加メールだ。
メールには動画ファイルとセシリアの家柄から出身地まで書いてるデータがぎっしり詰まっており、動画は全てセシリアの実戦や訓練の映像だった。動画内のセシリアは完全にBT兵器を完璧に使いこなしてる様に見え、さらに頭を悩ませる。
「何か隙があれば……」
自分でつぶやく。代表候補生にそれを望むのは難しいだろう と思い直し、ため息を吐く。
すると、とある第二世代型ISラファール・リヴァイブとの模擬戦闘の動画が目に入った。
初めにスナイパーライフルを撃つ、ラファールは懸命に回避して接近するが、ブルーテイアーズがビットを展開し、シールドエネルギーを削られていく。ラファールもビットを迎撃しようと弾幕を張るが、小さなビットは弾幕を掻い潜りラファールを攻撃する。苦し紛れにセシリアに向かってサブマシンガンを乱射する。するとセシリアに被弾し、ビットが一つ流れ弾を喰らい、破壊された。
ここで違和感を覚える。今までビットは完璧に弾丸を避けていたくせに、ここで命中するのは不思議に思えた。
BT兵器を操るセシリアを何度か繰り返してみる。他の動画も同じよう見ていく。
すると一つの天啓を授かった。
「……あった!」
勝利の女神が自分に微笑んだ気がした。
ようやく入学編と最初のボス戦です。
テンポが悪くて申し訳ありません