IS to family   作:ハナのTV

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展開が急すぎるかもです。



三度目の正直

「あの餓鬼が……やってくれたな」

 

アラクネの損傷した腕部を見て、そうつぶやいた。油断と言えば、そうだがはしゃぎすぎたといったところだ。

 

いくらなんでも、軽率な格闘戦は避けるべきだったと過去の自分を罵る。

あの赤毛の少年は思った以上だった。冷静に動いて、隙を突く。

突撃兵とアサシンの複合体と言ってもいい。一種の特殊部隊隊員のようなものだ。

 

あれで私より戦闘経験が少ないというのだから恐れ入る。

 

あそこで、マドカに二対一か、複数対一の状況にさせまいと動いて望み通りになったのは良かった。実際私が派手に動いたことで、ほとんどの敵機がコチラに注目し、戦闘を挑んでくれたのだ。

 

だが、その結果がコレだ。これまで相手にしたのは八機。ほとんどを戦闘不能か、撃墜かには追い込んだはずだが、

学園には戦力がまだ残っている。

 

ヒートアップした頭を落ち着かせるために深呼吸をする。

高高度で酸素は薄いものの、ISアラクネによって不快感を感じることはない。そのことにも感謝しつつ、私は思考回路を働かせる。

 

赤毛のガキはまだ戦闘不能には陥っていないはずだ。機動力の低下とある程度のダメージを与えたのは確信があるが、それだけだ。

 

そして、学園側にはまだ無傷の機体が二機存在する。甲龍とグレイイーグルの二機だ。子の二機がまだ姿を見せていないのが気になって仕方ない。

 

撤退するために全員が集まったところを高火力で一網打尽なんてことは避けたい。

ともあれば、今することはできるだけ敵戦力を落として、救助などに手を回させて、追撃にまで手を回せないようにするしかない。

 

潜入班とスコールからの指示がない以上撤退も許可はされていないと思っていい。

こっちの戦力は今の所、私にマドカ、爺に馬鹿二人。五人の最精鋭だが、爺が勝手に持ち場を離れているため、戦力は三つに分断されていると言っていい。普通なら各個撃破のいい的だろうが、そこを技量でカバーしていると言ったところだ。

だが、それも流石に長持ちはしないだろう。

思った以上にマドカの狙撃が露見するのが想像よりずっと早いのが誤算だった。

 

もう少し細かく指示を与えるべきだったか、と後悔もしたが終わったことを気にしても仕方ない。コレを打開しなくてはならないのだから。

 

マドカは現在、敵機と交戦中。驚いたことに元からセンスがあって、あの忌々しい男の手ほどきを受けたマドカとやり合えるほどの射撃屋だ。

 

福音戦で見れたアカネと言う女だと私は確信した。他の射撃屋は既に撃墜したはずだ。セシリアは海に叩き落としたはずで、山田真耶は僚機の救出のはずで損傷もかなりの物のはずだ。

 

とりあえず、マドカの救援が最優先だ。奪ったばかりの最新鋭機を壊させるわけにはいかないし、先輩としては捨て置くわけにもいかないだろう。

 

そう思考していると通信が入った。聞こえたのは嫌味そうな、あのインテリ眼鏡の声だった。

 

『聞こえますか、オータム殿? 長らく時間をかけて申し訳ありません。全ての工程は終了しました。』

 

事務的な言い回しで癇に障ったが、それも仕方ない。裏方組と戦闘班ではやることが違いすぎるし、どちらも性が合わない部署なのだから。

こちらからすれば、早いところ仕事を完了させてほしいと願っても、向うはもう少しの時間を欲するものだ。

 

「遅えぞ。仕込みは完ぺきだろうな?」

『ご心配なく。心配するまでもなく確実に作用するはずです。我々は大衆にまぎれ撤退するので、あとはスコール殿次第です』

 

通信先のメガネはため息交じりに言った。私は多少のドスを込めて男に返事を出す。

 

「わかった。見つかるなよ? それと、今度スコールの事でため息吐いてみろ。アラクネで八つ裂きにしてやるからな…いいな?」

 

男は少し息をのんで答えた。

 

『…了解しました。肝に銘じておきます』

「そうしろ、私はもう一仕事する」

 

通信を切ろうとした時、ノイズが走って誰かの声が入って来た。

通信コードにないもので、偶然か否かアラクネが拾った音声だ。通信をしているのは男の声で、何かを話している。ノイズを除去しながらそれを耳にする。

 

『……聞いた作戦は以上だ……この通信はプライベートではないため、傍受される可能性を考慮して一度しか言わない。それはそうと、聞いてほしい。』

 

声紋照合をかけて、声があの赤毛の少年のものだと判明した。

まだ、しぶとく生きているのだ。

 

『俺たちは今まで散々に負けてきたのは皆わかっていると思う。福音も暴走事件も結局、俺たちは正当な評価も得なかったし、それどころか処罰を喰らった奴だっていた。そんで、せっかくの学園祭もこんな結果になっている』

 

男の言う言葉はトーンダウンしてさらに現状を嘆くセリフが続いた。

 

『今日、俺は家族に会った。数カ月前から会うことは無かった家族だ。その家族は俺に向かって人殺しと罵って、手前らのやったことを棚に上げて罵倒して来た。

これが、俺たちだ。最善の結果を求めても、こんなことにしかならない、なっていないんだ』

 

 

赤髪の少年はなおも語る。

 

『楽しいはずの学園祭、夢を追うための場所、仲間に生徒、いろんなものを踏みにじられてきた俺たちは諦めて、どこかへ行くべきだろうか?きっと、誰かはそうやって問うかも知れない』

 

『でも、それでも言うよ、戦おう。 評価のためじゃない、でしゃばっているわけでもない、ただ自分の夢と居場所のためにだ!』

 

いつの間にか、少年は大声で叫んでいた。

 

『 もう他人に何も言わせるな! 理不尽に泣く現状を放ってしまえば、きっといつか後悔する! 俺はそんな大人たちを知っている!』

 

 

奴のいう事はおそらくRインダストリーの連中の事を差していると私は推察した。

そして、私はそのまま聞いてしまった。

もはや、情報すら聞き出せないというのに、ソレの続きが気になってしまった。

 

『戦わないと理不尽はずっと続くんだ。それもより酷い理不尽が来る! もう一度言う、皆戦ってくれ! 今度こそ、俺たちが正しいって大声で叫ぶんだ!』

 

長い演説は終わり、砲火がピタリとやんだ。

奇妙な静けさが、学園全体を魔法にかけたかのように、静まり返らせてしまった。

 

『夜明けはすぐそこだ! だから、あきらめずに戦ってくれ!』

 

そして、次の瞬間、私は銃火の音がより強くなったのを聞いた。

敵の反撃、あの少年の叫びにやつらは答えたのだ。

 

これ以上は無いと思った戦闘がさらに激化して、各ポイントから苦戦を知らせるように通信が飛び交ってくる。

 

「やってくれたな」

 

再び、大地に降り立ち戦闘することを決意して髪をかき上げる

隻腕になった愛機には悪いが、過重労働を強いることになりそうだ。そう思ってアラクネに一言つぶやくように謝罪を述べた。

 

「悪いな、もう少し頑張ってくれ」

 

出会ってから、もう一年になる機体。第二世代型の機体だが、度重なる改良と戦闘経験で優秀な兵器へと進化したアラクネは大事な機体だ。愛でない理由がないわけがない。

そっと胴体を撫でて、大地へと降下する。

 

雲を切り裂いて、高度を急激に落としていく。フリーフォールなどでは到底感じられないスリルとスピードを味わいながら、降下したさきに見えたのは一つのライフル弾だった。

 

目と鼻の先に見えたコレを避けて、口笛を吹いた。

いい反応だったからだ。わざわざ、見えないように雲の中を通ったというのに視界ではなく、センサーのみの反応で正確に狙ってきたのだ。

 

早速の歓迎が来たことに、少し舌なめずりをして狙撃した主を見る。

校舎の中から緑髪のメガネの女が損傷の激しいラファールで膝撃ちの姿勢で狙撃用に改造されたライフルを握っている。

 

あれ程、痛めつけてもまだ、抵抗を続けようというのだから恐れ入る。

勇敢だが、無謀でもある。その姿勢には敬意を表しながら、装甲脚のレーザーモードで光のシャワーを狙撃手に降らせる。

 

狙撃手はスラスターではなく足で跳躍することで回避し、校舎の壁を自らの防壁にして移動する。

レーザーの雨が校舎にぶつかるたびに、無残な姿をさらしていくのを尻目に山田真耶はライフルを連射する。

彼女が十発撃つ頃にさらに速度を上げて、私が校舎内にダイブする。激烈なスピードで降りたので、隕石が直撃したかのように校舎に大穴ができた。

降りた場所は山田真耶の一つ下のフロアであり、天井越しに彼女に向かってレーザーを撃ちこんでいく。

 

連射ではなく、出力を上げて単発にして撃ちこんで、逃げるラファールを追う。

ラファールは逃げながら撃ち返してくる。

 

その弾数をカウントする。一発二発とカウントして、それが十九発目になる瞬間にフロアを突き抜けてラファールを強襲する。

 

瓦礫の中から出てきた私に彼女はライフルを向けるが、引き金が引かれたことによって銃弾が出ることは無かった。

彼女のライフルは装填数三十発のデユノア社製だ。

私と戦闘するのに慣れないライフルを使ったことで弾数をしっかりと認識できていなかったのだ。

 

首根っこを掴んで壁に押し付ける。アラクネの最大出力で叩きつけたことで、彼女は短い悲鳴を上げた。ラファールの背面の推進器は見る影もなく、破壊されてようやく戦闘能力を完全に失った。

 

「死ね」

 

短く言って、レーザートーチでとどめを刺そうとしたところに、左右から二機の敵機がセンサーに反応が出た。

 

左右の目で二機を確認すると、ラプターとモデルの登場するラファールが左右からはさんで来た。

舌打ちしながら、山田機をイヴァナ機に投げつけて、接近を防ぎラプターのレーザーソードをトーチで防ぐ。

 

そこへ耳元に空き缶が転がるような音がした。足元を見ると山田機が放ったであろうグレネードがそこに転がって来ていた。

反射的にそれを蹴りあげたが、何の爆発もしなかった。

 

不発弾だ、デコイに引っかかってしまったことに気付いた。

ラプターは叫び声を上げて、スラスターで強引に私を押し出した。

校舎の壁を突き破って、再び庭園へと戻って来た。

バランスを失った一瞬のスキでここに来させられるとは不覚を取った。

 

地面に両足を立てて地面をえぐりながらも、ラプターの顔面を睨み付ける。

悪趣味なデザインのツインアイが赤く光らせているのを見て私は、吠えた。

 

柔道の巴投げのようにして、機体をひっくり返して、ラプターを後方へと投げつける。

ラプターは巧みなスラスターの制御で壁面にぶつかることなく、制動してみせた。

そこへ、レーザーの嵐を降らせると、ラプターは横へと回避してこっちと平行になるように動いてマイクロミサイルを放ってきた。

 

弾丸やエネルギーをケチって、脚部で地面掘り起こして、石つぶてで弾幕をはることで、一発の信管を作動させて、残る数発を誘爆させる。

 

その爆風を切り裂いてラプターが猛禽類を思わせる怪鳥音を響かせて、レーザーソードとアラクネの装甲脚をブレードを得物として、得物である私に食らいついてきた。

 

ツインアイの光がラプターの搭乗者の意志を表すかのように発光して、二つのブレードを振り下ろす。残った装甲脚で受け止めて、衝撃と機体のパワーの二つの力が混ざった一撃はアラクネの脚部を軋ませた。

 

連戦に次ぐ、連戦に予想もしなかったダメージにアラクネがついに悲鳴を上げだしたのだ。

HMDに各関節の過大負荷の警告が発せられて私は舌打ちを漏らす。

 

だが、アラクネの頑丈さはそれだけでは壊れない。第二世代ゆえの実用性重視は伊達ではないのだ。蜘蛛を模したユニットを中心にして、流れに身を任せるように、水のような柔軟性をイメージして相手の力の方向をずらす。

 

浮き上がるラプターの懐に入り込んで、腹部を掴み地面に押し倒す。

最大出力で行ったことで、再びアラームが鼓膜を刺激するのにも無視して、ラプターにとどめを刺そうとトーチを今度こそ、当てようと動かした瞬間、センサーに後方から急接近する機体が映った。

 

「何?!」

 

視界に入ったのは、日本製第二世代機、打鉄だった。

最早、ISとしての形すら保っているのかわからないほどの損傷を追いながら、ヤツは来た。

 

「何、手を出してやがる?」

 

折れたブレードを居合のように構えて、後方から入り込んで来た、ソレの搭乗者の血走った眼と迫力から、飢えたオオカミを連想させた。

 

データにあった大場二尉その人だ。だが、自衛隊では飼いならせないような獣のような攻撃性を見せた彼女の貌に私はゾクリと背筋に何かを感じた。

 

それでも機体を動かして、浅いままに済ませられたのは、折れたブレードのためか、または私の腕によるものか判断がつかなかった。

 

アラクネが示した敵のスピードはコンマのひと時ではあったが、かつてのブリュンヒルデを超えていた。

 

機体や腕だけでは説明がつかない意志の力だ。赤毛が福音相手に奮闘したのと同じ人間だけが発揮できる力に私は戦慄した。

 

もし、ブレードが元の長さなら、もし私の反応がコンマでも遅れていたら胴体が泣き別れになっていたかもしれない。

 

寒気がした私を見て、血に飢えた獣は一言、凍えるような冷たさで言葉を口にした。

 

「やらせんと言ったろ……!」

 

奴の舌打ちが聞こえた。もう一撃をかます気だ。悟り防御姿勢を取った、その後に援護射撃が入って、奴とラプターがさがった。

 

二機のEOSが援護に来たらしく、搭乗員のトカレフが通信をつなげてきたのに、私は怒声を放った。

 

「トカレフ、何やってんだ!? 格納庫の方は?!」

「仕事自体は完了してまっせ! あと、あの女キてやがる!それに、撤退命令だぜ姉御!」

 

HMDで確認すると今しがた撤退命令が出されていた。

学園内にのどこかにスコールがいるはずだが、どこにいるか。そして、今になって撤退命令とは相変わらず、悪戯が好きなお人だ。

 

私はEOSの片割れ、オーリからサブマシンガンを受け取りながら、他の構成員の状況を聞き出す。

 

「爺は?!」

「息子と交戦中の模様! 勝手に帰るから好きにしろとさ!」

「マドカは?!」

 

そう尋ねると上空から、損傷を受けたサイレントゼフィルスが飛来して来た。

得意の得物のライフルはその手になく破壊されたらしい。

これで、撤退メンバーは揃ったという訳だ、私は全機に通信をつなげて指示を出す。

 

仕事も完了し、仕込みも終わった、命令も出たとなれば後はずらかるのみだ。

余計なことはこの際しないで逃げ帰るのに限る。

 

「全機!撤退方向に向けてV字型隊形を組め! 殿は私がやる!損傷のデカいマドカの援護だけは忘れるな!」

 

全機が指示に従って隊形を組んで、後退を開始しだした。その時、センサーに新しい反応が出てきた。新手の増援だった。

校舎の屋上からの反応が7機,さらに増大していく。

 

一機、また一機とその場へと集合していくのをセンサーが正確にとらえた。

こんな時に来援が来るとは思ってもみなかった。

 

その数、合計12機。その方へと視線を向けるとそこには銃器を手にしたISを身に着けた少女たちと大人、そして装甲に身を包んだ二人の男女が夕日をバックにして整列していた。

その姿は一枚の絵画のように、勇敢さと気高さを私達に魅せつけていた。

 

「姉御ォ!」

「わかってるよ、全機用意!」

 

これだけ見せつけられれば、やることはサルでもわかる。

構成全員が残った火器を展開して、構える。

動きは冷静に心は落ち着かぬまま。

 

それは敵も同じだった。

急な展開のせいか、敵の一部は回線をオープンのままにしている

せいか、声が聞こえる。

 

『やれるの?!』

『やるのよ! 怖くたっていい! 弾君が叫んでくれたんだ!』

 

少女の決心が聞こえて、次に大人たちの声が続く

 

『大人が負けてなるものかよ!』

『負けません! 私だって叫んで見せます!』

『格好付かないものね!』

 

二人の男女の声が互いに話し合っていた。

 

『弾! 貴方の叫び確かに聞きましたよ! だから言わせてください! 一緒にいきましょう!』

『当然だ! 今度こそやり遂げるぞ!』

 

 

弾倉を交換して、チャージンぐハンドルを引く金属音、鉄と真鍮の二重奏を耳にしながら、これから行われる破壊のオーケストラに備えた。

同じくして、彼らも構えた。

赤い夕陽の中、中央の大場機がブレードを指揮棒代わりにして、拡声モードで全員に叫んだ。

私も彼女もこの場では同じ意志、同じ指示を出した。お互い、立場も思想も違うというのに。

 

『全機! 撃ち方始めぇ!』

 

双方が一斉に火を吹いた。滝のように落ちる金色の薬きょうにカメラのフラッシュを思わせるマズルフラッシュが視界を埋め尽くす。

様々な口径の弾丸が敵を破壊するという本能を持っているかのように飛来してゆき、相手と私たちの装甲を食い破ろうと飛来する。

 

装甲表面に小口径弾がぶつかって弾かれる音がドラムが叩かれる音を思わせた。

だとすれば、たかれるフラッシュは一昔前のミラーボールと言ったところか。

 

ISの機能でシールド内の大気は調整されているはずなのに、甘いコロンを思わせる硝煙の香りを感じるのはコンバットハイになった頭が起こす感覚の誤作動だろうか。

 

繰り返される消費に次ぐ消費。これが戦争だ。弾薬に装甲、人命も何もかも消費して戦う。

無駄なことだとわかっても止めれない、なぜかは、この私が今感じている高揚感が語ってくれている。

 

大口径の弾丸が装甲脚を一つ吹き飛ばした。お返しにまだ残っているライフルを単発で撃って狙撃し帰してやると、向うの山田機がライフルを破棄して、有効射程でもないハンドガンを二つ持って撃つ。

 

コチラもマドカが得物を破壊されて、トカレフからサブマシンガンを受け取って応射する。

敵側の六機の訓練機に乗った少女たちが泣いたりわめいたりしながら戦っているのがわかる。

数を減らそうとそこを重点的に狙うと、イヴァナ機と大場機、山田機が前面に出て、損傷激しい機体を楯代わりにする。どうやっても死なせないつもりのようだ。

 

曳光弾とエネルギー弾が交差する戦場、戦術も技も無い、ファッキンウオーとなったその場で、私が徐々に後退を指示たした時、センサーが別の反応を捉えた。

 

何だ、と思いつつソレを見た。

その機体は太陽を背に黒い影を私達に魅せつけていた。

シルエットからして二機のISが重なっているように見えたが、すぐに違うと判断した。

 

あれは一機がもう片方の一機を吊り下げているのだと、判断して望遠にしてその詳細を見たとき、この場にいる全員が唖然とした。

 

「何だよ……冗談だろ」

 

データにあったグレイイーグルと甲龍だった。しかしグレイイーグルの見せつけた姿はもはやISではなく、一つの要塞だった。

 

元々重装甲の機体の背部にラプターの持つX状のスラスターを大型にして双発のジェットエンジンを肩にのせている。

人型所以の二本の腕は一つの銃器と化して、アラクネの示すデータによると、右腕部がGAU-8、30mmガトリング砲二門に置き換わっており、左腕部も105mm榴弾砲二門に置き換わっている。

 

背部ユニットから延びるベルトリンクに、ウィングに満載された20連奏の80mmロケットが上下合わせて八つにブルーティアーズのミサイルが四つ搭載されているのがアラクネのはじき出した奴の正体だった。

 

敵の正体は世界中どこを探しても見つけることができない世界最悪の爆撃機だったのだ。

 

 

甲龍がグレイイーグルを離した。イーグルはジェットエンジンとスラスター、PICを全てフル稼働させて、こちらに接近して来た。

 

敵は最初から、これを本命にしていたのだ。十二機の機体による一斉発射をフェイクとして、足止めに使いグレイイーグルの最大火力で一掃する算段だっと今更に気づいた。

 

私はあらん限りの大音量で叫んだ。

 

「全機! 今やっていること全部やめろ! 全力で逃げろ!」

 

構成員全員が最大速度で撤退を開始した。この場においては格好も何もない散々に消費した弾薬数では迎撃など不可能だ。

連中の策にまんまと引っかかったという訳だ。

 

「マドカ! ブレードを寄越せ!」

 

だが、それでも抵抗はさせてもらう。少しでも被害を少なくすることに越したことはない。

投げ渡されるブレードを手にしてグレイイーグルと相対する。

 

グレイイーグルは火器を向けてガトリングの銃身を回転させ始めた。

いよいよ、死神の鎌が私を地獄へと落とそうと煌めきを発して来たと見える。

 

「来い! 死神だろうが灰の鷲だろうが、ダンスしてやるぞ!」

 

叫びに応えて、グレイイーグルが全火力を一気に解放した。毎分3,900発のガトリング砲の放つ鉛の暴風雨と榴弾とロケットによる爆撃が視界を覆い尽くす。

 

その嵐を回避する前にブレードをグレイイーグルの頭部めがけて投擲する。

ブレードは鉛の暴風の中に飛び込んで、一秒にも満たない時間でぼろ屑となっていく。

その破片が頭部のカメラを破壊したのを確認して、全力で逃げる。

 

まだ、形を保っていた庭園はこの嵐を前に完全に消え去った。雑草一つすら残さない爆風と鉛の砲弾が地面をえぐり、様々な構造物を消し去っていく。

 

EOSやアラクネ、サイレントゼフィルスは回避行動と防御、シールドによって、守られてはいたが、いくつもの破片と爆風がロケットがそれらを突き抜けてダメージを負う。

 

ミサイルやロケットを迎撃するだけ、無駄と言わんばかりに放つイーグル一機に全員が翻弄されている。

 

先ほどとは比較にならない。たった一機で十機以上のISの一斉発射を上回る火力で圧倒してきている。

 

アラクネの装甲が飛び散る。被弾したのを感じた次の瞬間には30mm弾が容赦なく雨あられと降り注いでいく。

頭部を損傷させて、命中率を下げたはずだが、この弾幕では多少の命中率はカバーできてしまう。

HMD内の警告が止まらない。回避を行ってどこかには命中してしまい、反撃すら許さない純粋な暴力が起こること、30秒。ようやく、その波が穏やかになった。

 

ダンスには生き残れたものの、全機損害過多。数々の重火器をパージしたイーグルが低いエンジン音を凱歌に勝利の旋回をして低空で向う側へと戻っていった。

 

全機の残存エネルギーがレッドゾーンに入った。

 

わずか三十秒の砲火で我々の戦力はズタボロにされてしまい、これ以上の抵抗はできなくなった。

傷ついた私は校舎の上の連中をにらんだ。

 

連中は追撃をしないで、じっとこちらを見ている。

生き残ったことに驚愕しているものの、しっかりと握られた銃火器はこちらを向いている。

逃げてくれさえすればいい、守りの戦いだ。

 

これ以上の戦闘は不可能だ。感情に任せてもできないことはできない。

見逃してくれるというのなら、そうすべきだろう。

向うも向うで被害や損傷機で追撃ができないだけなのかもしれない。

 

なら潮時は今だ

 

「姉御」

 

トカレフがささくれだった装甲のEOSを纏いながら訊いてきた。

私は血が混じった唾を吐いて宣言した。

 

「完全に撤退する。急げよ」

「だが、スコールと爺は?」

 

私は撤退に行動を移して言った。

 

「心配するな、爺はともかく、あのスコールだぞ?」

「なるほど」

 

トカレフは納得したようにうなずいてもう一つ聞いた。

 

「化けモンは?」

 

化け物、あのニコニコと笑い続けている少女の事だと理解して、私は応えた。

 

「化け物は死なねえよ。 殺せないからな」

 

そう言って暁の空の元、母艦へと帰投するために跳んだ。

 

後方の連中が撤退する私たちを見て歓声の声を上げていた。

 

私は何故かそれに不思議な満足感を抱いてしまった。




大まかな反撃はこれにて完了です。
あとは校舎に残った組だけです。

上手く行っていることを祈ります

感想、アドバイスありましたら自由に書いて下さい。

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