IS to family   作:ハナのTV

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初見の方のために書きますが、今回は結構キツイアンチの可能性があるため、セシリアのファンの方はあまりお勧めしません。


シルバースプーンは苦杯の味

シャワーを浴び終えて、火照った体をバスローブで包み私は鏡の前に立った。

高貴さを見せつけるのにはうってつけの最高級の白磁のような肌に母親譲りの自慢の髪の毛に、サファイアのような青い瞳。

 

そのどれもが今はみずみずしさを失って疲れた印象だった。

オルコット家を守るためにと今日まで努力してきた私にあらゆることが今年起こった。

そのどれもが、私をかき乱して地の底へと引きずり込もうとしている悪魔のごとき出来事ばかりだった。

 

忘れたい出来事なのに、それを回りは忘れさせてくれない。

 

シャワー浴びる前に今回の戦闘を本国の代表管理官に報告すると、しばしの時を経て管理官はメガネを外して言ってきた。

 

『セシリア候補生、一つ聞きたいことがある。貴女はご自身の職務を理解しているのか?』

「何をおっしゃるんですの?」

 

管理官は深いため息をこれ見よがしについて、画面に自身の顔を近づける。その顔は静かに怒りを見せており、少し前までの媚を売るような卑屈な態度は存在していなかった。

 

『ハッキリ言って、貴女の戦績は見るに堪えない。今まではブルーティアーズが実験機という不安定な側面も配慮して言わなかったのですが、私としてはもうお腹いっぱいですよ』

 

鼻を鳴らして、敬意どころか敵意すら見せつけてくる有様は癪に障り、私は声を荒げて抗議した。

 

「何て口調ですの?! フレキシブルを使い、命がけで敵と交戦して来たこの私にその態度はあんまりではありませんこと?!」

 

それに対して、管理官はわざとらしく驚いた表情をして、口から皮肉をたれるのみだ。

 

『ええ、これで貴女が敵機に勝っていたら私もシャンパンを開けて、女王陛下の代わりにセシリア候補生万歳と言っていたことでしょうよ。だが、現実はそうなっていない。私のシャンパンは冷蔵庫の中で眠るのみです。飲めなくて、とても残念ですよ』

 

私はその言葉に肩を震わせた。拳を握りしめて、今すぐ画面の向こうにいる彼の顔を引っぱたきたくもなった。しかし、日本からイギリスという物理的に遠すぎる距離のせいでソレは叶わない。

何より、彼が今までの結果を口に出して私に言い聞かせてきたことによって、私にそんな資格はないのだと教えられてしまった。

 

『ちなみにシャンパンは何時から用意してたと思います? 貴女が学園に行った時からですよ。貴女の戦績は実に私から楽しみを奪って来た。それはもう恨めしいほどにね。初回の代表決めに、素人の二人組に辛勝。覚えていますか?』

 

忘れるはずのない戦いだった。一夏さんという強い殿方との出会いでもあり、五反田弾という卑怯者との戦いでもあった。

一夏さんは正々堂々とブレード一本で来たのに対し、あの男は煙幕にフラッシュ、さらに死んだふりまでして、隙を作らせてきた。

 

戦い方も無様そのもの、できの悪いダンスのように刀を振り回していただけで、さらに事前に情報の無かった一夏さんの白式との戦闘から逃げ出したのには唖然とした。

 

一人の男性として、この上なく卑怯で臆病な男、それが彼だった。

 

だというのに、管理官はその彼を誉めてすらいた。

彼はあの状況でよくやったと、それに比べて私は、と続けるのだ。

それに対して私は反論をした。あの男はそんな大きい存在ではないと。

 

「ふざけないでください! この男はそんな……」

『しかし、貴女は二度目の戦いでこの男に負けた。違いませんか?』

 

管理官の指摘に私は言葉が詰まってしまった。さかのぼること三か月ほど前の話だ。思い出したくもない光景が私の前に映し出された。

 

打鉄を纏ったあの男と武骨で悪趣味なデザインの専用機を纏った乱射魔の二人が私たちの前に立ちはだかった。

性能や腕前のバランスを見て、彼が足を引っ張って私たちが勝つ、そう言う確信を得ていた。

 

でも結果は違った。弱いと思っていたあの男はあの時と違って真正面から挑んで来た。

その上で、彼の腕前に翻弄された私は地に伏せて、敗北を味あわされてしまった。

 

膝をついた私を見る彼の目は達成感と優越感に満たされており、ますます私を惨めにさせた。このような男に負ける自分が許せなかった。

代表候補生として血がにじむような努力をしてきた私をあざ笑うかのように彼はたった2か月かそこいらで私に勝利した。

 

それがどれほど悔しかったことか。

 

それでも耐えがたい屈辱にも耐えて、今日まで、私は一夏さんや友人たちと鍛錬を重ねてきた。

しかし、それが実りを得ず、今こうして侮辱の言葉を受けることを許してしまっている。

 

思い出したくもない事をねちねちと責められることになっているのだ。

 

『貴女は訓練機に負け、その後の実戦でも我が国の誇る機体のスペックを引き出しているとは到底思えない。フレキシブルと言っても、取得に一体何か月かかっていることやら』

 

コチラの事情も知らずに管理官はそう批判してくる。ISも使えない男が一体ブルーティアーズの何を知っているというのか。

 

ビットと機体の動きを同時に扱えるようにし、ついにフレキシブルを会得した私の苦労も知らずに彼らはラム酒やブランデーの入ったグラスを傾けて、女の足を引っ張ることしかできない。

 

しかし、そんな批判を口にすれば、オルコット家の者として恥をさらすことになりかねなない。古来より、上流階級というものは下々の者よりもゴシップの類が好きで好きでたまらないのだから。

 

それは私がオルコット家を引き継ぐと決めた時から、散々味わって来た。

事情も知らないで、好き勝手に噂を言って、どこまでも馬鹿にする態度は何もモニターに映る管理官だけでない

 

初戦のあの男、五反田弾もそうしたのだ。高貴なる者の宿命と言っても、言われる度に歯ぎしりをして怒りに耐えて、涙を流してきた私を誰が知っているというのだろうか。

 

それはかつての私の父を思い出させて来る。

私や母に隠れて過ごしてきたあの男の卑屈で、臆病なところが。

 

 

 

 

 

 

 

父と母が存命の時、私がちょうど11歳の少女だったころだ。

その日は父の誕生日だったらしく、使用人たちがこぞって話していたのを聞いて知った。

 

日頃から母に頭を下げてばかりの父に対して、尊敬の念は持ち合わせてなかったが、この日は珍しく父に関心を持った。

 

父の誕生日という点もあって、今まで知ろうとしなかった父を知ろうとしたのかもしれない。そう思い立って母の元に行くと既に父がいて、母と話していたのを聞いた。

 

母は事務的な口調で父に書類を渡してサインをするように言って、父はそれに従った。

いつもの光景。卑屈な父に実家発展に尽力する母の姿を見てため息すら吐きそうになったとき、父が口を開いた。

 

「ところで、今日は何の日か覚えているかい?」

 

綺麗に整えられた口髭の下に優しそうな笑みを浮かべて父が母に聞いた。その様子はプレゼントを期待している子供のようで、今までの父とは違う側面を見れた気がして、驚いた。

 

婿養子という事にコンプレックスをいつも抱いているような父が初めて一人の男らしく見えた。

しかし、それに対する母の対応は冷たいものだった。

 

「さあ、知らないわ。それよりもサインを早くしてください」

 

父はトンカチで殴られたかのようなショックを受けたようだった。笑みは消えうせて失望に暮れた顔を一瞬見せた後に、すぐいつもの卑屈な笑みを浮かべた。

 

「そうか、すまなかった」

 

その後も二人の職務は続き、私はただ部屋に戻って勉強に励もうと思い、机の前に座るのみだった。

そのはずだったが、父の事がこの時妙に頭にこびりついて離れなかった。

あの父が母に対して初めて自分のことについて話そうとしたのを見て、幼いながらも興味を抱いた。

 

その日の夜、父がこそこそと出かけていくのを目にした。誰にも見つからないように気を配り、運転手もいつもの事のように父を乗せてどこかへと行ったのを目にした。

それをつけようと思い立ち、他の運転手に無理を言って聞かせて、父の後を追った。

 

この時は自分でも強引だと思うほどで、しぶる運転手に母に言いつけると脅しを加えて指示に従わせた。

 

その運転手も父の事については知っているようで、父が言った道を正確にたどって行った。

私も、それどころか母も知らないであろうことが父に会ったとは思えず、この先に一体何があるのか、ますます知りたくなった。

 

もしかしたら、父の浮気かもしれない。その時は私が母に報告して裁きを受けさせるだけだと心に決めながら、道を進み暗い森のような場所を抜けて、着いた先には明かりのついた古びたパブが一つぽつんと立っていた

 

一体中で父は何をしているのだろう、とこっそりと窓に近寄って中を覗いた時私は一瞬それが何なのか、理解ができなかった。

 

今思えば、ついて行くべきではなかったと後悔している。中では父と同年代のたくさんの人がいて、大きなケーキが中心にアイリッシュバイオリンの音楽なる中で踊って楽しんでいる最中だった。

 

天井に垂れ下っている垂れ幕には、リチャード誕生日おめでとうと書かれていた。

父は母も私もいない中で、一人友人たちと誕生日パーティを楽しんでいた。

 

友人と肩を叩きあって、大笑いする父はビールの入ったジョッキを片手に大声で音程のずれた歌を楽しそうに歌っていた。

 

周りから、下手くそと陽気に罵られ、ご婦人たちが手を叩いて父の姿を歓迎していた。

私の知らない父の姿がそこにあった。

 

あの卑屈で情けない父が豪胆に笑い、談笑している。そのことがとてつもなく腹が立った。

ますますもって、情けないと思ったからだ。

 

母の権力に怯えて、普段は何もしない父がいざ母の目がなくなると、本性をさらけ出しているのを見て大きな失望感を感じた。

婿養子とはいえ、自分の妻に本性すら見せることができない父を情けない、と嘆く以外に私はできなかった。

 

相手の強さに合わせて自分を変える人間、唾棄すべき人間でしかなかったことに私は怒る以外の感情を持ち合わせていなかった。

 

そうして見守っている内に父と二人の男が外に出てこようとしたので、とっさに車の陰に隠れて様子を見た。

 

彼らは母に関して話しているようで、父はそれを聞いていた。

 

「リチャード、お前相変わらず妻に頭が上がらんのか?」

 

少し禿げ上がった頭をした上品なスーツを着た男が訊いた。

父は苦笑いを浮かべて、自分の頭髪を撫でながら言った。

 

「恥ずかしいが、その通りだよ。僕は経営とか、全然わからなくてね……妻に任せるほかないのさ」

 

お酒に酔っていたのか、顔を少し赤くした父がそんな事を言うと相手はため息を吐いて父に言った。

 

「だから言ったろう。貴族なんてロクでもないさ。お前のように戦うこともできないくせに偉そうに講釈をたれる。悔しくはないのか?」

 

父は頭を振った。そして手に持ったビール瓶をラッパ飲みして答えた。派手なゲップまでした。

 

「悔しくないと言ったらウソになるかもしれない。でも、彼女もきっと僕の事を愛してくれると思っているんだ。でなければ、娘を作ろうなんて考えないよ。それに、僕が無能なのは知っているだろう?」

 

男は大きく頷いた。

 

「そうだな、その通りだ。では、何故こうして一人でこんな風に誕生日を祝うのだ。これではまるで、自分を慰めているだけにしか見えんぞリチャード。私はお前のそんな姿はあまり見たくない」

 

男は父に自分の酒瓶を渡して、もっと飲むように促した。父はそれを呷るように飲んだ。酒を飲んで口の滑りを良くしているようだった。

 

「必要なんだ。僕の誕生日で邪魔したら悪いだろう?だから、これでいいのさ。それに……僕は妻を愛せそうにないんだ」

 

衝撃的な言葉が飛び出して、私は一瞬声を上げそうになった。それを必死にこらえて二人の会話を聞く。

 

「好きでもないのに、一緒にいるのか?おかしな話だな」

 

「おかしい話、確かにそうだ。でも離縁なんてできないし、彼女の名誉に傷がつく。それを見るのが忍びない」

 

男は腑に落ちない顔で訊いた。

 

「情けか?」

「違うよ、愛してくれていることへの礼だよ。僕は彼女と違いすぎて、彼女を愛せない。身分が違うんだ。肌に触ろうとするだけで震えるくらいさ。でも彼女は僕を愛してくれている……だからさ」

 

父の顔に浮かんでいたのは何だったか、その時はわからないでいた。

今思うと、あの時の顔はきっと情けない顔だったろう。

身分違いの結婚をして、肩身の狭い生活の中でせめてもの癒しを求めて、一人で家族の誰にも言わずに誕生会をする。

 

そんな情けない顔だったことだろう。

 

「どうしようもなくお人好しだな。相変わらず、専門分野以外は無能で、人が好すぎるな……だから、お前の事は信じられるんだがな」

 

相手の男は呆れた口調で言った、父はそれを笑って見せた。相手の方も笑っており、二人は古くからの親友のようだった。

彼ら二人はその後他愛もないことを話しながら、

 

結局父は劣等感を抱いているのだ。それでいて母はこうだ、と見抜いた気でいる。

傲慢にも思えた物言いをする父は結局男尊女卑の男なのだとこの時はそう思った。

 

その考えは家に帰って、誕生日プレゼントを持った母を見かけるまでしか続かなかった。

 

父は母の事を正確に分析していながら、労うこともしないでいた。

高貴な者の職務を押し付けるだけ押し付けて、父は母を置いて一人楽しんでいたのだ。

卑怯で、どうしようもない父という事を私は知った。

 

その両親が死んだ後、よりによって、その父の影が私を苦しめ続けた。

あれ程周りに頭を下げていた父に社交界で出会う方たちは口をそろえて、立派な人と言う。あれほどオルコット家を支えてきた母を褒め称えることなく、逆に貶す人すらいたというのに。

 

男は卑怯だ。表では頭を下げるだけのくせに、裏ではこそこそと自分の利益のための行動を惜しまない、と思うようになっていった。

 

父は人徳溢れた男としての名声を受ける一方で母は罵られる。表ではオルコット家と私の面倒を見ると言いながら、莫大な財産をいかにかすめ取るか計算する大人の男たち。

 

そして、今目の前で戦績の落ちたことをいいことに日頃の鬱憤でも晴らそうとする管理官に、普段はヘラヘラと笑っているだけで、裏ではいかに勝つかを求めるだけの五反田弾。

 

誰もが卑怯な男たちだ。

 

そうではないのは一夏さんだけ。正面から堂々と戦うのも自分の思いを正直に隠さず言ってくれるのは彼だけで、皆はそれに気づかない。

 

高貴な者の考えは周りに理解されない。

 

突然、一夏さんに会いたくなった。この心をわかってくれるのは彼しかいない。そう思い立ったが最後、通信を切って私は部屋を出ようとした。

 

すると、そこには会いたくない人間が立っていた。

 

その人は男ではないが、女としては最低の部類の人だった。

 

赤い血のような色をしたロングヘアーをなびかせていたイヴァナ・ハートがそこに居た。

部屋から出ようとして扉を開けたら、すぐそこに居たことから、私に何か用があるようだった。

 

「アラ?貴女から扉を開けてくれるだなんて、珍しいこともあるのね」

 

クスクスと笑っている彼女に不快感を感じざるを得なかった。

卑怯な男たちもいれば、彼女のような足を引っ張るだけの女もいる、と再認識する。

かつて国家代表になるまでの実力を持っていたというのに、名誉も女としての自覚もなしに、モデルという娼婦のような職業に誇りを抱くような女だ。

 

その思考は理解不能で、しかも彼女は私たちのような候補生に何ら謝罪も述べようとしない。

 

そんな私たちの夢を嗤った女が無言でいる私を目にして、怪訝そうな顔をしたのちにフウとため息を吐いて、一枚のプリントを私に渡してきた。

 

「はい、コレ。貴女に上げるわ」

 

そう言われてプリントを見てみると、そこにはブルーティアーズの新装備のプランに関してのもので、新武装を試験するか否かが書かれたものだった。

 

新装備のテストの承諾書をブルーティアーズはおろか、専用機すらない彼女が持っていて、要らないから私にくれると言う。

 

彼女は私よりも先にイギリス政府に新装備のテストパイロット選ばれたのだ。

 

プリントを持った手がぶるぶると震えた。

どうして私ではなく、この女が持っているのか不思議でならずに声を荒げて訊いた。

 

「どういうことですの?!何故、コレを貴女が持っているんですの?!」

 

イヴァナは気だるそうに顔をしかめて言った。

 

「なんでも、私にもう一度やってみないかって誘われてね。でも私は興味ないからどうでもいいって断ったのよ。そしたら貴女に渡せって言われただけ。よかったわね?」

 

またしても敗北感がこの身を襲った。必死に努力をした私ではなく、こんなISを二年も動かさないでカメラの前で卑猥な格好をしてきた女に負けた。

 

何の努力もしていない彼女のおこぼれで、書類を渡された私はまるで乞食とでも思われていたというのだろうか。

 

私は彼女に掴みかかって、胸ぐらをつかんだ。何の抵抗もしないで驚いた声をイヴァナは上げた。モデルなどしているため、護身術もできないでいるのだ。

 

「馬鹿にしてるんですの?! どうして……どうして貴女はそうやって人の欲しがるものを簡単に手に入れて、そう簡単に捨てられんですか!? それをどんなに……欲しているのかわからないんですか?!」

 

そう叫んでも彼女の顔が真剣なものになることはない。茶化すかのように笑って、彼女は応える。

「要らないからよ。いいじゃない、私が何を捨てようと勝手じゃない? 私はモデル兼教師をしたい、貴女は強くなりたい。利害の一致よ」

「へ理屈なんて聞いてませんわ! 貴方という人はどれだけ人を馬鹿にすれば……!」

 

だけど、この女には私の理屈は通用しない。私の必死の訴えもむなしく、やれやれと両手を万歳のようにあげているのみだ。

 

暖簾に腕押し、何を言っても理解されることはない。

 

この女も管理官と同じように私の境遇も努力も知らないで、私を踏みにじる。

父も、管理官もこの女も皆同じだ。私の思いも知らずに好き勝手な事ばかりする。

 

そしてイヴァナは言った。

 

「シルバースプーンを持って生まれたお嬢さん、貴女の思いなんて私の知ったことじゃないわよ。それは貴女も散々してきたでしょ? じゃ、ソレよろしくね」

 

そう言って書類を部屋に投げ込んで、私を突き放していった。

部屋の扉が閉められて、私一人暗い部屋の中に残された。

 

オルコット家を守るために努力して来た。それは変わらないし、その結果イギリスの代表候補生の地位を得ることができた。

 

でも、その私にどうしてこうも災厄ばかりが降り注ぐのだろうか。

もし、父があんな男でなければ、もしRインダストリーなんてなければ、私も一夏さんもこうも貶められることは無かったはずだ。

 

高貴な目的を持った者ばかりが理不尽な目に合う。

こんな大人たちの世界は正しくはないと心の中で叫んでいた。

 

でも、現実私にできることは涙を流すのみだった。

 

シルバースプーンは苦杯の味だ。高貴な者ほどつらい宿命が待ち受けている。

 




セシリア回
実は色々と修得していたという話と親父の話を作ってみました。
正直な話、これでいいのかと何度か考えました。

ご期待に添えなかったら申し訳ございません。
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