駅前のファーストフード店と言うのは高校生の憩いの場、オアシスのような物だ。決して美味いとはいえないが、学生の財布には優しい値段のハンバーガーとカロリーオフのコーラを頼んで、座れる場所があれば、後は駄弁ってればいい。
椅子と飲み物と彼女、もしくは友達があれば、高校生はそれだけで楽しいのだ。
「席、見つけたよ和馬」
「ああ」
サイドテールに切れ長の瞳をこちらに向けた遠藤 綾 が俺にその位置を指さす。
それぞれ、注文した品物を載せたトレイをテーブルの上に置いて向き合う。
髪の毛の先をいじりながら、綾はジンジャーエールをストローで吸い上げる。一見不機嫌そうな顔をしているが、大分その顔つきにも慣れた。
付き合い始めて、二か月も経った後、という事を考えると苦笑してしまうけど。
ジンジャエールを一通り満喫した綾が俺を見て頬杖をつく。
「それで、相談って?」
「ああ、ちょっとな……」
俺はしどろもどろに答えた。ここに来る途中で相談があると切り出したまでは良かったものの、やはり女性である彼女に、しかも綾にとっては全くの赤の他人である俺の友人についての相談をするのは間違いな気がしたからだ。
かといって、他に話せそうな友人もこれと言って思いつかばないのも事実なのだ。
綾は不愛想な顔のまま聞く。
「ハッキリ言いなさい。話ならいくらでも聞くから」
だが、迷う俺にそう言ってくれた。彼女の顔を見た。表情こそ変化はないが、瞳に映る感情は決して悪い物ではないような気がした。
俺は意を決して、彼女に話を持ち掛けた。
「悪いな、話ってのは……俺の友人の事なんだ」
「IS学園に行った友達のこと?」
ハンバーガーの包み紙を捲って中身を頬張る綾がそう訊いた。俺はそうだ、と短く応えて頷く。
二人の親友、織斑一夏と五反田弾の二人の事について相談したかった。
彼ら二人は世界でも貴重なIS適性を持つ少年として、お茶の間を騒がせて、IS学園へと旅立ってしまった。
聞いた時は信じられない話で、昔のアメリカの火星人が襲撃しに来たというラジオ放送のように、TV局のおふざけ番組だ、と本気で疑ったほどだ。
しかし、嘘ではなく、夢でもない。まぎれもない現実で、その時、俺は驚きのあまり、手に持っていたコップを落として割ってしまったほどだ。
そして、俺は一人寂しく藍越学園に通うこととなった。その時、二人に連絡を取りたかったのだが、学園への入学準備でもあったのか、忙しくて二人と連絡がつかなかった。
一度も言ったことなかった弾の家の定食屋にまで行って聞いてみたこともあったが、大した答えは得られなかった。
ただ一言、良い所に就職もできた、とそれだけだった。
そんなモヤモヤとした気持ちを俺は引きずりながら、日々の学園生活を営んで来た。
だが、それから何か月か経って、俺が再び彼らに再会した。
出会った最初は嬉しさのあまり、その場で小躍りすらしたかったほどだった。
女子校で過ごすというのはどういうことなのか、彼女はできたのか、学校こそ違うが、そんな他愛のない話でまた盛り上がれる、と素直に信じていた。
だけど、俺は二人に言葉を失っていた。あの時とあまりにも違いすぎた。
綾がハンバーガーをトレイの上に置いて、姿勢を少し正して聞く姿勢を作ってくれた。
その気遣いがありがたかった。
「詳しく話してくれる? 和馬」
「ああ、あれは確か……」
思い出すのは今から二カ月前ほどと一カ月前のことだ。どちらもあのショッピングモールでの出来事だ。
「早かったか……」
綾との約束で、映画館の出入り口付近で待ち合わせをしていた時の事だった。その時、俺は映画の開始時間に合わせて、早めに出かけてお気に入りのミサキ・ホーキンスの新発売の記念アルバムを少し行列を予測して行ったまでは良かったが、思った以上にすんなりと買えてしまい、三十分も余裕ができてしまった。
「まずったな」
そんな風に一人つぶやいた。本屋にも寄ろうかと、思ったが、欲しい本もコレと言ってなく、また、このモールの書店は東棟にあり、そこまでの道は面倒なことで有名だったため、結局行く気も出ず、暇を持て余してしまい映画のPVを見ているのみとなった。
大きい画面には子供向けのアニメのPVが流れており、考古学者と飛行機乗り、それにヒロインの三人が秘密の財宝を見つけるべく大冒険するという内容が流れており、俺はベンチに座って自分の行動を悔いていた。
こんな事なら、もう少し遅れて来ればよかった、と頭に手をやってため息を吐いていた時、俺はシアターから出てくる人達を何となく見た。
映画が終わり、口々に感想を述べたり、いちゃついているカップルたちが目に入った。少し前まで羨望と嫉妬の混ざった目で見ていた類の人たちだ。
もう少しで自分もあんな風になれるのだな、と思い頬を緩ませていると見覚えのある人物が目に入った。
袖に赤いラインが入った黒いポロシャツを着た男は紛れもなく彼だった。
赤毛の長めの髪の毛にバンダナを巻いている、パンクロッカーのような頭部をした男、五反田弾だった。俺は久しぶりの彼を見て驚いたが、もっと驚いたのは隣にいた女性だった。
赤いスカートに黒いストッキング、黒のインナーの上に茶の革のジャケットを羽織り、メガネを掛けたセミロングの美人が彼の隣にいて、親しげに話していた。
二人の様子を見て、彼氏彼女の関係だな、とすぐにわかった。親友に久々に会って話しかけたい衝動に駆られたが、二人の邪魔をしてはまずいのでは、と思いこの場は見送ろうかとしたが、向うが気づいたらしく、こちらに来た。
「和馬か?」
久しぶりに聞いた声は前と変わらず、その様子に俺は心の底から嬉しく思った。
「弾、久しぶりだな」
「こっちもだよ。元気にしてたか?」
お互いに笑いあって、肩を叩きあった。数年ぶりに会ったかのようで、俺たちは再開の喜びを存分に分かち合った。
「知合いですか?」
隣の女子が弾に訊いた。凛とした感じだが、綾の話し方とは違い、どこか人懐っこさも感じられた声だった。
「ああ、御手洗和馬。俺の親友さ。前に話さなかったか?」
「そうでしたか?」
二人は顔を向け合って、俺を置いて話しあった。本当に仲がよさそうに見えた
しかし、少しして話に夢中になったのに気付いて二人は俺に赤面した顔を見せて謝った。
「おっと、悪かったな。つい夢中になって。彼女は堂上アカネ、彼女さ」
「こんにちは」
満更でもない表情を浮かべたアカネさんが俺にぺこりと頭を下げた。
「いやいや、ご馳走様だよ。何だ、女子校言って涙目かと思ったのに、ちゃっかりしてるじゃないか?」
「そう言うなよ……でも、そうなのか?」
俺とアカネさんの顔を交互に見て弾は訊いた。どうやら、そう言った自覚は無いようだった。
アカネさんは首を傾げて、「さあ?」と答えた。薄く浮かべた笑みに、弱冠悪戯を含んだような物言いに意外と茶目っ気がある人かもしれないと思った。
「そう言うお前こそ、こんな所にいるってことは誰か人待ってんだろ?」
「お、わかる?」
「そんなお洒落な服着てればな、この後はお前が見そうなものは三十分後の「最高の二人」以外、なさそうだしな、でもって映画を見るだけなら、お前はそんな格好にしないし、三十分も前から待たない、どうだ?」
鋭い読みに俺は感服した。俺の服装と映画の上映予定に目を通すだけで、この名推理をすることに俺は感嘆の声すら洩らした。
「当たりだよ。 すげえな、お前どこで習ったんだ、そんな探偵みたいな真似」
「日々の仕事の賜物だよ、これでもRインダストリーの社員だぜ」
そう言って、社員証のような物を見せてくれた。確かに本物のようで、これも弾がIS適性があったという恩恵によるものだと思い、羨ましくもあったが、素直に感心した。
しかも、世界でも名だたる企業の一員として働いている、というのだから凄い、と一言単純に褒める以外なかった。
社員証に記されたRの文字は彼の栄光の証だった。
よく見ると、顔つきも何だか、大人のように見えないでもなかった。顔の輪郭や、全体の雰囲気もシュッと引き締まっているようだった。
「にしても、凄いよな。この調子なら学園でも人気者だろう? そう言えば、一夏はどうした? アイツなんて、モテて仕方ないだろう?」
俺は中学の時と同じように話した。一夏と俺と弾は親友で、昔も、そしてこれからもソレは変わらない、と思っていた。
その時、弾の表情に陰りが見えた気がしたが、俺はその時はさして気にも留めずに話をつづけた。
「アイツ、どうせまた、朴念仁のままなんだろ? 全く、イケメンっていいよなぁ。アカネさんも知っているでしょ? でも、そこがいい所で……」
そこまで言葉を続けて俺はアカネさんの顔を見た。返答に困って、目を伏せているように見えた。その視線の先には弾がいて、弾を見てみると、何とも言えない表情をしていた。
何故か、相手の聞いてはいけない事、いわゆる地雷を踏んでしまった気分になった。
怒っているわけではない、頬を掻いて、どう言えばいいのか、迷っているようだった。
俺はその顔に違和感を覚えた。それはそれは大きい違和感だった。
親友の事を聞いただけで、何も難しいことは聞いていないはずだ。弾と一夏は親友のはずで、それならば余程の事がない限り、話すことに困るという事にならないはずだ。
あの二人に何かあった、それは俺にとっては考え難い事実で、それはないと俺は信じ込んでいた。しかし、弾が口を開いて、発された言葉は予想の遥か上を行った。
「和馬、そのことなんだが……実は最近あまり上手くいってなくてな。事情が複雑でちょっと言いづらいんだ、だから……」
あまり、聞かないでくれ。そう続いた。俺はそう話す弾を一目見て、嘘ではないかと疑った。
弾は嘘を吐くのが下手くそな方だ。昔よりは上手くはなって様だったが、俺には分かった。
何より、アカネさんの表情や目線から、何となく予想がついてしまったのだ。
きっと一夏とはすこぶる上手くいっていない。それも仲が修復不可能なほどに喧嘩をしてしなったのではないだろうか。
彼女はいい人なのであろう。きっと事情を知らない俺が質問してしまったことで弾が傷ついてしまったことを心配したのだ。
「そうか……なんか、ゴメンな」
「いや、いいんだ。本当に……いいんだよ」
今度は少し悲しそうな顔を浮かべた。だが、そこには何か吹っ切れたような物も見えた。
悲しみはするが、後悔はしていない。そんな感情の動きがそこにはあった。
俺は聞きたかった。一体何が起こって、そうなってしまったのか、と。それを聞いて、事情を知れば、もしかしたら力になれるのではないか、と思った。
だけど、違う学校、しかもこちらは一私立高でしかないのに比べて、向うは世界中のエリート学生が集う、国立の、しかも最高峰の学校だ。
俺の付け入れる好きなど欠片もあるわけがない。噂では、あの学園内からのネットは監視されているらしく、そこで迂闊な書き込みや投稿をした学生が退学処分にされたと言う
個人の情報を徹底的に監視しているのではないか、と言うものがあるほどだ。
俺一人では何もできないことは確実だった。それでも、と思ったが、事情を聴きだすという事をして弾の心の傷に塩を塗るようなマネになることを恐れた。
「俺とアイツは少し考え方が違った、それだけなん……悪いな、せっかくの再会なのに、今度暇があったら、ボーリングとか行こうぜ」
「ああ」
それだけ言って、弾は立ち去って行った。アカネさんもそれに続こうとしたが、何か思う所があったらしく、その場で止まり、俺に向かって小声で話してきた。
「あの、ありがとうございました。事情が言えない私達の事を気遣ってくれて」
アカネさんはそう言った。私達と言う言葉を使うあたり、彼女も一夏の事に関して何らかの形で関与しているようだった。
そして、事情が伝えられない、という事から、もしかしたら機密とかの話のような気がした。
俺はたまらず、彼女に訊いた。
「あの、弾はそんなに、貴方たちはそんなに何かに巻き込まれてるんですか? もし、よければ……」
すると、アカネさんは唐突にメガネを外した。俺は自分に向けられた瞳を見て、少し後ずさりした。猛禽類のソレと似ていて、青く光る刀のような煌めきを見せていた。
一目見て、普通とは違う女の子だと分かった。だが、一番恐ろしかったのはさっきまで茶目っ気がある普通の女子高生がメガネを外すという事をすることで、恐ろしい人間へと一瞬で変化したことだった。
彼女は俺の口に人差指を立てて、言った。
「友達の事……弾の事を大切に思うあなたの姿勢は立派です。実際、私としては弾の親友でいてくれている貴方には感謝しています。ですが、これ以上の深入りはNGです。それが貴方と弾のためでもあります」
「……俺は弾の親友なんですよ?」
そう言ったが、彼女は首を横に振るだけだった。
「なら、なおさら知らない方がいいです。勝手ではありますが、そうしてください」
俺は食い下がろうとした。どんな事実があろうと、俺たちは変わらない、そう、その場で叫んでもみたかった。
「アカネ」
不意に弾の声が聞こえた。
彼はいつの間にか、アカネさんの肩を弾が掴んでいた。
「それ以上はダメだ、ダメなんだ」
さっきまで、先を急いで視界から消えたはずの弾が、いつの間にか、そこに居た。まるで、瞬間移動でもしたかのようだった。
そして、弾が見せた瞳には、以前の温かさと見たことのない冷たさが同居していた気がした。
もう一人の親友、織斑一夏との再会はそれから、少し後の話だ。
時間的に言えば、一か月程度だと思うが、俺にとってはすぐの話だった。
その時、俺は一人でモールに訪れており、セールの広告を見て、買いに来ただけだった。
目的の品を入手して、余分なものも買って財布の中身を軽くしたあとで、俺は偶然、一夏と会った。
ブランド物の服を扱っているショップの近くだった。確か、誰かの買い物の付き添いだとか言っていた。
相も変わらない姿形であったが、弾の一件でもしかして、一夏も変わっていたらと思い、今度は俺から話しかけた。
最初は変わっていないと思って、素直に喜んだ。
「久しぶりだな、一夏」
「ああ、久しぶりだな。和馬」
数か月前のいつものように、挨拶を交わして、他愛のない話をした。
IS学園の女子は美人が多いか、相変わらずモテているのか、とか、そんな事ばかり聞いた。
「学園はどうだ?」と聞くと、いつも通りの彼がそこに居た。
「大変だよ。周りは皆女の子だらけだし、廊下を凄い格好で歩いている子もいて、落ち着かないさ」
「そうなのか?」
「そうだよ、でも皆いい人でさ、今日も二人きりで買い物に行きたいって誘われてさ」
女の子から好意を受けているのに違いないことに、気付いていなかったり、と昔のままだな、と思った。
「それってデートじゃないのか?」
「? 何でそうなるんだ?」
俺は苦笑交じりで一夏に言った。
「何だ、いつも通りのお前か、てっきり変わったんじゃないかと思ったのに」
今思えば、その言葉は安堵の意味も含まれてのだろう。
一夏は俺の厳に頬を膨らませて、不満げに聞いた。
「どういう意味だよ?」
「わからなくていいさ」
彼は昔と同じだ。悪く言えば、成長していないと言われるかもしれないが、俺には何よりうれしかった。それが身勝手な喜びだとは理解してはいたが。
また、いつかの日常のように楽しく話せる、そう思ったが、ここで大きな落とし穴が発生した。俺がある一つの質問をしたとき、彼の様子が変わった。
「ところで、弾とはどうしている?」
この様子なら、聞いても大丈夫かもしれない、俺は一夏はどう思っているのかが気になって訊いた。弾は詳しくは答えようとしなかった。答えられない事情が絡んでいると、弾の彼女は言った。
だからこそ、何があったのかが知りたかった。一夏なら、何か知っているだろうし、答えてくれるという期待が俺にはあった。
だが、それを聞いた瞬間、一夏の様子が一変した。さわやかな笑顔から、歪んだモノへと変わった。
「アイツは……変わったよ。Rインダストリーに入って変わっちまった。あんなの本当のアイツじゃない」
「どういう意味だよ?」
俺は一夏の様子にうろたえながら、聞いた。
「囚われているんだよ、力に。ISは人を守るための物なのに、力の使い方を間違っているんだ。昔の弾なら、あんなことしなかった」
俺は口を開けて、間抜けな顔を晒した。一夏の言っていることがよくわからなかったからだ。力の扱い方、人を守る力、ただの高校生にどうして、こんな単語が出るような状況になるのかが、さっぱりわからなかった。
俺の知っている一夏は、時たま寒いジョークをいうものの、友達思いで、朴念仁で、いい奴だったはずだ。
確かに弾が変わったのは俺も知っている。だが、だからと言って、ここまで今の弾のありようを否定するかのような物言いをするだろうか。
あの時の変わりように俺は寂しさを感じたのは事実だ、だが弾は弾で、変わらない。あの冷たい目を見せる前の弾は少し大人になった弾だったはずだ。
それすらも否定するかの言い方に俺は首をひねった。そして、目の前の一夏の顔を見て、俺はうすら寒さを覚えた。
さっきから、俺の事を置いて、一人ブツブツと言っていて、少し怖かった。
「何があったんだよ、お前達に? お前もらしくないぞ」
一夏は俺に気付いたのか、さっきまでの笑顔に戻って謝った。
「……悪い、ちょっと、言えないんだ。口外することが禁止されてて」
「おい、ちょっと待て」
俺は一夏の口から飛び出した言葉に動揺を隠せなかった。
「なんだよ、口外することが禁止って、いくら特殊な学園でも、そんなのおかしいだろ? 俺たちはただの学生でしかないだろう?」
俺は少し笑いを含めていった。相手を安心させるためと、笑えない冗句を飛ばしただけだ、と自分に言い聞かせるために、そうした。
「弾は社員だから、そうかもしれないけど、お前は違うだろ? 一夏。」
「違う」
同意を求めるように言った。だけど、一夏はぞっとするほどの鋭い目で俺に言った。
「俺にも弾にも力があるんだ、和馬。俺はもう違うんだ、和馬。そいつの使い方を間違えている弾は俺を避けている、だから、俺は」
嬉しかったはずだった。しかし、出会ってすぐに俺は一夏も変わっていることに気付いてしまった。弾の変わりようをその前に見てしまったからかもしれない。
「アイツを目覚めさせなきゃいけないんだ」
俺は何と言っていいか、わからなかった。もし、中学の頃なら、中二病かよ、と茶化すこともできたかもしれない。笑いとばして、その場をもりあげることもできたろう。
だけど、一夏にはそんなフザケタ様子はなく、フィクションの中の人物のようにシリアスに物事を語っていた。
俺の親友は二人とも変わっていた。相反する者同士となってしまったということを知って、俺は二人に出会う前以上に思い悩むようになった。
全てを話し終えて、俺は綾に問う。
「俺はどうしたらいいと思う?」
綾に問うのは間違いな気もしなくはない。変わってしまった友人の話など、彼女にはさっぱりだろう。それでも、聞いて欲しかった。せめて、誰かの意見でも聞かないと自分もどうしたらいいか、解決の糸口すら掴めないままだ。
「昔のままでいてくれ、何て身勝手だし、そうならないのはわかってる。だけど、こんなのは違うと思うんだ……親友同士だったのが相反する者同士になるだなんて……」
綾は少し間を置いて、口を開いた。
「相手はIS学園なのでしょう?和馬や私みたいな、一般の生徒にはどうしようもないわ」
「でもなぁ……!」
思わず立ち上がったが、そこから言葉が続かなかった。俺もそれがわかっているからだ。声を少し荒げたことで、周囲からの視線を浴びているのに気付いて俺は座り込んだ。
綾は首を横に振って静かに言う。
「それに、友達が変わるなんて近くに居てもそうなるわ。それが、自分にとって受け入れがたいだけ、そうじゃない?」
正論だった。昔から聞いていたが、男はロマンチストで、女はリアリストとは言ったもので、彼女の言っていることは正しいの一言だった。
「でも、その気持ちわかるわ」
「え?」
綾は確かにそう言った。彼女は毛先をいじりながら自分に関しての話をした。
「私の友人もIS学園に行っているのよ。鷹月 静寐っていう子なんだけど。彼女も変わっていたわ」
初めて聞いた事実に俺は目を丸くしていた。彼女もIS学園に行った友人を持っていたのだ。
綾は頬杖をついて明後日の方を見た。遠い瞳だった。
「典型的な委員長タイプで、真面目で世話を焼くのが好きな、いい子よ。それは今でも変わらないけど……」
綾は一つため息を吐いて言った。
「久々に会ったあの子は、そういう掟というか、規則とかに反抗的な言葉が増えててね。そういう反抗とかにどこか楽しさを感じているみたいだった」
俺はその言葉を黙って聞いていた。綾の話すことも俺と似ていたからだ。
「その時、ナンパ男がやって来た。いつもなら私が追い払って、彼女が感謝するという風なんだけど、その時は彼女が追い払っていたわ。暴力を振るって来た男に見たことも無い関節技まで披露したわ」
瞳に寂しさが見ることができた。友達が遠くにってしまった、俺と同じものだった。
「ねえ、和馬」
彼女は俺をまっすぐ見て訊いた。
「IS学園って何なの? 私たちの友達をたった数か月でここまで変えてしまう学校なんて信じられる?」
彼女は一拍置いて訊いた。
「親友なのに、どうしていいかなんて、私もわからないよ、和馬」
答えなんて出なかった。
彼らの親友なのに、彼らがわからない。それとも、親友だからわからないでいた方がいいのか。
唯一つ救いがあるとすれば、まだ俺たちは繋がっているということだけだった。
トレイに乗っているハンバーガーを一口齧った。見た目はおいしそうだったが、熱が完全に逃げてしまい、冷めきっていた。
以前リクエストを受けたものです。
上手くできているといいのですが、少し不安です。
最近更新遅くて申し訳ありません。
ちなみに次回は亡国の予定です。
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