IS to family   作:ハナのTV

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防衛戦②

アリーナの観客席と言う場所は久々に来たところだった。いつもの俺達なら見る側ではなく、見られる側であり、いつもアリーナの中央で試合を演じていたためだ。ここの席に座るのも、かなり久々だった。

 

今回は普段、つるんでいる皆と来ており、すぐ近くには一夏たちがいた。観客席を見渡せば、チラホラと何人かの生徒が見える。

 

「簪は、大丈夫なの?」

 

鈴が訊いた。もちろん、彼女が試合に勝てるか否かを聞いたのではなく、あの状態で模擬戦をするという事に心配をしているからだ。

 

今の簪の心理的状況は普通ではない、彼女の精神は最早限界に達していると、誰もが判断した。

 

あの後、俺達も散々戦うべきでない、と彼女に主張したが、彼女の発する無言の圧力にことごとく黙らされた。

 

雰囲気だけなら、アカネがキレた、ラウラの時と似ていたが、アレと明らかに違うのはアカネは自制をある程度は利かせていたのに対し、簪は自制していないためか、暗部と言う組織に生まれたが、構成員として働いてないはずの彼女が出すにはあまりに濃密な怒気だった。

 

そのため、誰も鈴の質問に答えられなかった。そもそも、何が大丈夫なのか、それも判断がつかないでいた。簪の身か、心か、もしかすると、相手の楯無の事になるやもしれない。

 

俺もたまらず、隣にいたヴィンセントに訊いた。

 

「どう思う?」

 

ヴィンセントは苦々しい顔でアリーナの二人を見つめながら言った。

 

「……普通に考えれば、楯無会長が有利だ。国家代表の腕前は伊達ではないはずだしね。それに対して簪は候補生、経験差から考えれば、彼女が勝つ可能性は少ない。だけど」

 

チラリと、ヴィンセントが簪の方を見た。彼女は弐式を展開させて、ヘッドギアをつけて顔上半分が隠れているため、表情が読み取りにくかったが、心なしか口元が歪んでいるように見えた。

 

「僕は簪は理知的、というより計算で動く方だと思うんだ。模擬戦とはいえ、勝てない勝負をするとは思えないんだ。そこが気になる」

「つまり、簪には何らかの勝算があって、挑んでるってことか」

「そうだ。そして、それが嫌な予感がするんだ」

 

ヴィンセントが俺の問いに頷いた。それに対して、鈴が肯定の言葉を入れた。

 

「アタシもそう思うわ」

 

鈴は俺たちの間に入り、その訳を説明してくれた。

 

「簪の機体は打鉄弐式、拡張領域はあのレーザー砲ユニットとその制御で埋まっているはずよ。武装を追加するとかはできないはずよ。それに会長の機体は簪との相性が最悪のはずよ」

「機体の相性?」

 

「ええ」と言って、鈴は甲龍の腕だけを部分展開して、データを空中に投影させた。機体名ミステリアス・レイディ、ロシア製のISを元にフルスクラッチしたISで、主兵装は

ガトリング内臓のランス、高圧水流を発する蛇腹剣、そしてナノマシンで操る水だという。

 

このナノマシンの水は一種の装甲の役割を持っているらしく、実弾兵器はともかく、レーザーなどのエネルギー兵器に対し、絶大な効果があるとされている。

 

ナノマシンの水によって、エネルギーを拡散させるだけでなく、光を屈折させて弾道もおぼつかなくなるそうだ。

 

甲龍のデータでは、その対処法も記されており、それによると水中銃のような特殊な兵装、または、水そのものを蒸発させるほどの高出力のエネルギーを叩きこむ、か近接戦闘とある。

 

打鉄弐式のホーミングレーザーはそういう意味では最悪の相性だった。あの兵装は一撃で破壊するよりも、絶対に避けられない攻撃を何度も繰り返すというものだ。

 

同時に数発同じ場所目がけて放って、攻撃力を高めることができるが、一発のレーザーの威力は決して高くはない。

 

少なくとも、グレイイーグルの装甲で簡単に弾けてしまうほどだ。つまり、簪の主兵装は楯無の機体に簡単に防御されてしまうことになる。

 

ISの乗り手としての腕前で負けている以上、彼女の勝率はますます低くなる。当てるために分散させれば弾かれ、貫通するために集中すれば、当たらないのだ。

 

つまり、彼女が勝つ見込みはない。それでいて、彼女は挑みに行った。

一体何をするつもりなのか、俺達は不安で仕方なかった。

 

「どうするつもりなんだ?」

「簪……」

 

俺は頭を掻いてそう呟き、アカネと鈴が心配そうに彼女を見ていた。

勝ち目がない戦い、それは簪なりの意地で行われるものなのか、それとも

 

そんな思考の海を彷徨っていると、唐突にヴィンセントの電話が鳴り出した。

ヴィンセントは携帯を取り出して、通話ボタンを押して、耳に押し当てた。

 

ヴィンセントは最初、こんな時に誰から、と舌打ちしそうな表情を一瞬だけ見せたが、何個とか話している内に顔色が変わっていった。

 

みるみると青くなっていくような表情を見せて、彼はスピーカーフォンにして皆に聞かせた。

 

「弾、アカネ、それに鈴、聞いてくれ」

 

切り替えると、スピーカーからマイクの野太い声が聞こえた。その声は酷く慌てており、怒声すれすれの声だった。

 

『聞こえるか!? 簪は今試合をしてるんだな?そうだな?!』

「何です? いきなり」

 

アカネの困惑する声に彼は構わずにつづけた。

 

『エライことになった。簪のヤツ、部品を全部持っていきやがった!アイツ、うちの会社にハッキングをかましたんだ!』

「ハッキング?」

 

鈴が何のことを言っているのかわからず、そう聞き返した。だが、俺はその言葉を聞いて、嫌な悪寒が背中を走るのを感じた。

 

『そうだ! さっき、資材調達の連中から連絡があった! 前に言った発注ミスの品はアフリカのPMCに送られるはずの品だった! ところが、運送するってタイミングで此処に送られるように変更されてたんだ!』

 

それに対して、ヴィンセントが有り得ないと否定した。

 

「馬鹿な、会社にハッキングだなんて……できるわけがない」

『簪がハッキングしたのは本社じゃないんだ、ヴィンセント! 下請けの方にハッキングしたんだよ! ファットマンのバッテリーなんぞ、機密でもないし、下請けも本社に確認のメールを送らずにいたのが最悪だった!』

 

報告されたのは全員を驚かせるのに十分なものだった。あの誤った品々は全て簪によって用意された小道具だったのだ。

 

ここで、俺は簪の小道具を思い出した。ファットマンと呼ばれるパワードスーツのバッテリー20個に小型のUAVだったはずだ。パワードスーツはシンシテイの警察が使っていたもので、二機で乗用車を運べ、20時間連続稼働が可能と言うものだったはずだ。

 

それよりも上位の軍用の物なら、どれ程のエネルギーを有しているか、想像に難くない。

UAVは福音事件の時、弐式がデータリンクして、リアルタイムで情報を得ていたはずだ。

 

『簪はハナから試合なんてする気じゃない! 早く彼女を止めろ!こりゃ戦争だぞ!』

 

 

電子戦のためのUAV、小型で強力なバッテリー、つまり彼女はインダストリー社から

戦うための目と矛を手に入れたという訳だ。

 

「マイクさん! ファットマンのバッテリーってどれくらいの物なですか?!」

『総重量450kgでその気になりゃ、軽自動車程度の物を弾き飛ばせるスーツを24時間動かすことができる! いいから、早く簪を止めろ! 手遅れ、にな、る前……』

 

声が途切れ途切れになって、回線がオフになった。ジャミングだ、と思った時には、もう既に異常が発生していた。

 

突如、アリーナ全体に警報が鳴り響いて観客席に防護用のシャッターが下りてきた。赤い非常灯がついて、訳が分からないままの一般生徒がとりあえず避難をしだした。

 

気付いてから、二十秒後にはアリーナの彼女らと俺達はシールドと防護壁の二重の防壁に完全に遮断された。全ては簪一人によって行われ、俺達は彼女の普段の様子を知っていたがために何一つ予想できなかった。

 

「畜生!」

 

そう毒づき、俺はラプターを展開して、防壁を睨み付けた。壁一枚向うで行われている簪たった一人の抵抗を阻止しなくてはならない。

 

簪の心が壊れてしまう前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席の防護壁がしまったのを確認し、アリーナのシールドレベルも最高の7に設定したのも見て、私は姉さんに振り返った。

 

姉さんは目を驚愕のあまり大きく、見開いており、その顔は怒りを見せていた。

 

「貴女は何をしているの?」

 

姉さんは一言そう問いかけた。ランスを握るミステリアス・レイディの手が震えており、今すぐにでもランスを握りしめすぎて折ってしまうのではないか、と思うほどだった、

 

私はヘッドギアの中でUAVとのリンクを再度テストを行って、問題ない事を確認していた。

 

「何をしてるのよ!? 貴女は?!」

 

特に答えなかった私に対して、姉さんは喉が避けてしまうほどのの怒声を放った。彼女の怒りの理由が何なのかは私にはわからなかった。なぜなら、まだ私は観客席のシャッターを下ろし、シールドの強度設定を強くしただけに過ぎない。

 

言ってしまえば、子供が家のドアで鍵を無駄にかけてしまう悪戯の規模を大きくしたに過ぎない。まだ誰かを傷つけたわけでもない、と言うのに何故私がここまで言われるのだろうか。

 

「何を怒ってるの? 姉さん」

 

自分でも驚くほど、静かに、落ち着いて声が出せた。今までなら、話すことさえ委縮したり、劣等感を抱いてせいでまともにできたことがなかったというのに、今日はスラスラと流ちょうに言葉が出た。そのせいかクスリ、と笑いを少し零した。

 

「簪ちゃん、貴女、自分がしていることがわかっているの!? 貴女のしていることは利敵行為よ! あの男の為に戦っているというのなら、それは学園の安全を脅かすことになる! それをわかっているの?!」

 

姉さんはランスを地面に突き刺して、怒りを演出した。そうすることで、私が委縮して諦めると思ったのだろうか。やはり、あの人は私を下に見ている、そう感じたけど、今はそんなことはどうでもいい。

 

大事なのはこれからで、姉の考えではない。私はヘッドギアのHMDで姉さんの機体の動きを逐一報告させた。相手の動きを予測し、一撃を加える、これ以外に私に勝つ方法は無いからだ。

 

それらの操作をしながら、私は姉さんに一歩歩み寄った。

 

「別に……今起こったことは機械の誤作動。私には関係のない事、模擬戦をしたとき、偶々バグが生じてしまった、それだけの話。私を関連付けるのには証拠はない……貴女は自分の判断に自信を持っているけど、最近は良く外れることが多い、たったそれだけの差だよ」

 

「……何を言ってるのかしら、簪ちゃん?」

 

私はHMDに指示を出した。弐式を戦闘モードに切り替えて、後部ユニットサジタリウスの矢を起動し、砲門を開き、スラスターに火を入れた。

正面のISを敵機と認定させて、UAVに監視、追跡させる。同時に主兵装に注文した品々、カートリッジ式に改良したソレを装填し、もう一つの火器を密かに起動する。

 

体勢を整えて、改めて打倒すべき相手に向けて決意を表明した。

 

「でも、姉さんの言う通りだよ。私はユーリの為に戦いに来た。私の日常を取り戻すために私はここに来た。自分の意志で此処に来た」

 

思い出すのは懐かしくも思える日常の光景だった。お菓子を作って、彼が食べて感想を聞くのを待つ。たまに本音が遊びに来て、ユーリが何故か苦手そうな顔をするのに笑った日々。

 

彼と会うことで、鈴やアカネ、五反田君やヴィンセント君、癒子たちみたいな友達も増えた。そして、全てを変えてくれた彼もまた、変わっていた。

 

ユーリは私を思ってくれていた。空だと言った男の子が初めて見せた感情の動きは私に対するものだった。

 

だからこそ、彼を救いたいのだ。救われてきてばかりだった自分が彼にできることはそれだけだから。

 

そう思うがゆえに私は彼によって助けられて、自分で掴んだ幸せを失いたくない

代わりの物なんて、ないからだ

 

あったとしても、要らない。私が欲しいのはたった一つの本物の幸せなあの日常だけだ。

 

それを取り返すために私は誓った。私がソレを守る、と

 

「私は貴女達から与えられる幸せを拒絶する。ヒーローがいないのなら、私が自分と彼を救うヒーローになる!」

 

全武装を彼女にロックオンをした。最早後戻りなどはできない。ただ、戦うのみだ。

 

そして、姉さんも戦闘態勢に入り、水のヴェールを展開した。その顔はさっきまで怒りに燃えていたが、次の瞬間にはあの嫌味な自身に満ちたものになっていた。

 

「そう……なら容赦はしないわ。お姉さんがキッチリ仕置きしてあげるわ」

 

そう言われて、私は弐式の兵装、背部から回って、腰部につけられた兵装を彼女に向けた、まずはその腹の立つ表情を引きはがすことからだ。

 

「無駄よ、光学兵器はこの子には利かないわ」

 

ピシャリ、と言いつけた姉に対して、私は叫び返した。

 

「なら、受けるといい!」

 

現在の弐式はマイクさんたちの改良の元で作られた機体だ。その上で、本来搭載される予定だった兵装がオミットされている。

 

だけど、それらのパーツは残っており、そして問題を克服すれば十分に使用ができるのだ。

エネルギーを無駄に使ってしまう荷電粒子砲 春雷。本来の武装であり、背部ユニットに固定すれば、すんなりと装備できるのだ。

 

荷電粒子砲のデータは以前の福音事件で習得済みで、問題のエネルギーをバッテリーで克服した新兵装、受けれるのなら受けるといい。

 

本来、ISの試合なら間違いなく使用が禁じられる超高出力の荷電粒子砲を!

 

バッテリーが春雷の薬室に装填され、春雷内部でエネルギーが圧縮される。破壊力ではなく、貫通力を重視した粒子砲が地獄からの唸り声を奏で、そのエネルギーの発する熱が最高潮になった瞬間、トリガーを絞るイメージをして、発射した。

 

二本の荷電粒子砲が光の速さで、その破壊的な熱量を水のヴェールに叩き込んだ。守るはずの盾はあっさりと貫通されたが、姉さんの腕前は流石で、身をよじることで直撃を避けた。

 

神業、紙一重の回避が実を結んで、エネルギーの暴力は彼女の背部の壁面を焦がし、その粒子の塊が通った下の地面にはガラスが出来上がっていた。

 

舌打ちをして、私は高度を取った。用済みになったバッテリーを4個排莢して、装填。スラスターを吹かして、相手の上を取りつつ、ホーミングレーザーで弾幕を張って頭を抑えた。

 

姉さんの機体レイディは横にステップをして、レーザーを回避し、地面を蹴って、宙へと舞い上がった。

 

UAVからのデータを受け取って、私は彼女に合わせて行動をする。レイディがガトリングを放つ、回避先を予測しての射撃だと判断し、大きな回避行動をさけて、これらに処置する。

さらにレイデイが接近して、蛇腹剣を振りミドルレンジからの直接攻撃を行う。振り払い、振り下ろしと、独特の武器が成すいわば、槍のような線の攻撃で、剣がねじれているため、普通なら回避しにくいが、今の私はそれらを余裕で身をよじるのみ回避し、

 

サジタリウスの矢を一本だけ放って、思い通りの太刀筋を描かせない。

ガトリングの曳光弾と、蛇腹剣の白刃の猛攻撃。だけど、そうしている内にも、私の頭はあくまで冷静だった。

 

初手からの派手な猛攻には裏があると感じた私は弐式とUAVに、付近のスキャンを命じた。

すると、思った通りの結果が帰って来た。

 

『附近にナノマシンを探知』

 

HMDでそう通じられて、ナノマシンの蒸気が徐々に近づいてることに気付き、そのポイントにレーザーを放ち、その場で暴発させた。

 

清き熱情、言ってみればナノマシンの水蒸気であり、指向性を持った可燃性ガスのような物だ。センサーで感知もできるが、そうさせないために、ガトリングと、蛇腹剣の回避に注意を向けさせて、ナノマシンを忍びよらせる。

 

やっていることはユーリの戦法によく似ている。それ故に私は看破できた。その甲斐あって、姉さんは見破られたことに驚いていた。

 

「そんな……!」

 

私はそのスキを突いた。二回目の春雷を発射して、もう一度水の防壁を破った。

同時にサジタリウスの矢をフルオートで連射し、その防壁の穴目がけて殺到させる。

 

レイディは高速機動を行って回避行動に専念する。後ろにバク転するように回避、更に左へクイックターンをして、バレルロールを二回繰り返し、高度を上げ下げしヴェールの穴を塞ぐ時間を稼ぐ。

 

だが、こちらはUAVで完全に相手を捉えている。次の回避先に、次の次の回避先にとホーミングレーザーを放ち、自機でレイディに追撃する。

 

赤い閃光がカーブを、直線を描いてレイディを追う。外れたレーザーが地面と観客席のシールドに命中し、粒子を散らせていく。

生き物のように曲がりくねる、これらの生きた閃光の束をレイディは巧みな操作で直撃を防いでいた。

 

ある時は余った水のヴェールで弾き、時には重量のあるランスを回転させて、シールド代わりにするなど、魅せつけてくれる技も使う。

 

これだけ、行動が読まれているにもかかわらず、ギリギリで回避する姉の技術は流石だった。私が彼女と比べられて、勝つことができないのも頷ける。

 

だけど、今回は何が何でも譲れないのだ。私は思考回路が焼き付くまで、その回避先、次の行動をデータから読み取って、命中させるための方程式を解き続ける。

 

当てるための答え、xを導くために何度も放っては、避けられるの試行錯誤を繰り返し、そして、遂に正解を見つけた。

 

「全砲門、フルオートで指定座標に一斉射!」

 

200を超える赤い閃光を連続発射して、その答えへと姉さんを誘導させる。 

相手を倒すための条件がクリアされたのを見て、春雷の三発目をセットし、ある一点に射軸を固定する。

 

「……チェック!」

 

王手をかけた、と確信を持って私は荷電粒子砲を放った。すると、姉の目の前に展開されたのは以下のような物だったろう。自分を囲う赤いレーザー光のドームにその中心から迫る二本の光の槍、幻想的な暴力の光刃が見せた光景。

 

避けられない、私の作り上げた死の方程式が姉さんに襲い掛かった。それは私が見ると赤い卵を貫く、黄金の槍のように見えた。

 

その時、大爆発が起こって、激しい閃光と音が鳴り響き、発せられた衝撃波に弐式が大きく揺れた。

 

余りに大きな爆発により発生した熱と黒煙の前にUAVが熱探査を行ってもレイディを捕捉できずにいる。

 

私は距離を取って、その爆発の中心から付近をスキャンをして、警戒を厳にした。ダメージを与えたとはいえ、コレは試合で無い以上、終了のゴングなどなるわけもない。

 

倒せてない可能性を捨てずに三度、スキャンをした。すると、弐式のセンサーが真下のIS反応を捉えた。

 

まだ生きていた、そう思って機体をバックした。すると、ランスの穂先がヘッドギアを掠めて、隠れていた自分の左目が露わになった。

 

その目に入ったのは大きくダメージを受けていた。二つあったヴェールを発生させるアクア・クリスタルを一つ失い、もう一つもひび割れていた。

 

腰部の装甲は砕け、スラスターも片方しか機能してない状態だった。彼女自身も煤まみれで汚れており、最早余裕の笑みなど浮かべてなかった。

 

高度が同じになったところで、彼女はランスを横に振るう。それを右手で受け止めて、さらに後退する。

 

「この!」

 

三度にわたる突きを後退のみで、ギリギリのところで回避する。薙ぎ払いも同様に回避する。

 

「ランスの長さは2.5m程。そして、ガトリングを内蔵している以上、重く僅かだけど、遅くなる」

 

独り言のように呟いて、ホーミングレーザーを七つ放射状に放ち、目をくらませる。

至近距離で相手の声がよく聞こえ、姉さんは苦悶の声を漏らした。

 

レイディを飛び越えるようにして、背後に回り込んで加速を着けた回し蹴りを浴びせる。

姉さんはけりを受けた衝撃で回転し、ランスを振るう。

 

それを今度はバックで回避することをしないで、足で払った。明後日の方向を向いたランスからガトリングの小口径弾が飛び出していた。

 

後退して回避する私に対して、追撃を行うつもりだったのだ。

しかし、それはUAVのデータで把握済みだ。ランスの柄を強く握る動作があると、ガトリングが飛んでくると決まっていた。

 

「嘗めるな!」

 

私はそう叫んで、タックルを行い、鳩尾に貫手を行い、更に首、脇腹、と裏拳や拳を叩きこむ。

 

全てを決めるために猛攻撃を行い続ける。ここで、全てを決める。今が勝機だ、と言い聞かせて、叫び、獣のように咆哮を上げた。

 

急所すべてに格闘技を叩きこみ、防ごうとする姉の裏をかいて、とにかく攻撃を当て続けた。

 

更に加速をつけて頭部に向かってハイキックを当て、吹き飛ばされるレイディより、先に回り込んで、首を掴み、地面へと投げつけた。

 

空を切る音が鳴ったと同時に地面に大きなクレーターを作られた、大型の爆弾がその場で炸裂したかのような轟音が耳に届いて、私は叫んだ。

 

勝利の雄たけびのように、叫んだ。

 

 

肩で息をして、二酸化炭素と酸素を交換し続ける。それでも、肺が酸素をしきりに要求し、過呼吸気味になって不快になった。

 

気付くと、鼻から血が流れていた。大量の情報を取り扱ったせいか、鼻血が流れてきたのを、腕で拭った。

 

勝った、とそう思った瞬間、爆炎の中から蛇腹剣が飛び出て来た。判断が遅れた私の足に絡みつき、私は地面へと引きずり込まれた。

 

そして、クレーターから出てきた姉と密着するようになって、彼女と私は互いに蛇腹剣で絡みつく形となった。

 

剥がそうと機体を動かすが、離せない。第二世代のマイナーチェンジの弐式ではパワー不足だった。

 

そして、損傷の激しい機体を使い、姉がランスを天を衝くように振りかざし、そこに残ったナノマシンの水が集まっていくのが見えた。

 

HMD内で、警告が発せられ、非常に強力なエネルギーを感知した。

 

「UAVに弐式の戦闘能力、よくここまでやったモノね……簪ちゃん。でも、嘗めていたのは貴女よ、お姉さんの本気と覚悟……その身で受けなさい!」

 

本能に赴くまま、逃れようと機体を動かすが、動かず、普段は言わないような悪態をついた。こんな所で、見たことのない兵装が出るとは想定外で、完全に計算違いだった。

 

退避せよ、とアラームがうるさいほど鳴り、私は壊れたヘッドギアから覗かせた左目で姉の本気の顔をありったけの憎悪をこめて睨み付けた

 

ここまで、私の道を阻もうとする姉に私は叫んだ。

 

「姉さん!」

「これが私の覚悟よ! 簪ちゃん!」

 

そして、レイディの見せる最大の業の名を彼女は叫んだ

 

「ミストルテインの槍、発動!」

 

私たち二人は閃光と熱の渦に巻き込まれた。

 




久々の戦闘描写ですので、しんどかったです。
上手くいっていることを祈ります。

また、来週面倒な用事があるので、更新遅れます。

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