勇者に選ばれてマジ狂い! 投稿者:讃州中学勇者部員タクヤ   作:ほろろぎ

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第一話 勇者部は奥深い

 神世紀二百九十九年。

 その年、タクヤはグレていた。

 

 まだ十三歳のタクヤは、中学生でありながら校則違反のセミロンに髪を伸ばし、さらには髪質が痛むほどに茶色に染めている不良くんだ。

 その理由は、タクヤと彼の母親との不仲にあった。

 

「クリスマス・イブは三日間くらいあるといいんだよね。だってさぁ、イヴの日とかにお母さんと一緒にお出かけ出来ないオレとかいてかわいそうじゃん!」

 

 なんて言っていながら、タクヤにとってのお母さんがはたしてイブに家にいてくれるかどうかやっぱり気になる。

 お母さんは決して絶対に約束なんかしてくれない。

 いつも仕事で家を空け、タクヤのことなんてほったらかしだ。

 だからタクヤはグレまくって不良なんかやっている。

 

 それに絶対決して「好きだ」なんて言ってくれない。

 単なる「同居人」として接してくれているだけだ。

 

 タクヤの住む四国には、『神樹』と呼ばれる神様が存在している。

 だからこの世界の人々は、とても道徳心が高い。

 その中にあって不良と化したタクヤは、ちょっと異質な存在だった。

 

 しかしいくら悪ぶっては見せても、タクヤもこの世界の住人。

 生まれた時から自然と教えられた宗教教育によって、タクヤの心の底にある他人に対する優しさは、決して消えるものではなかった。

 それは彼を慕う『タクヤの舎弟』が三千人もいたことが、なによりの証明である。

 

 この春、タクヤは讃州中学に入学した。

 しかし不良を気取るタクヤは、授業なんてネムネムの顔でさぼり気味。

 今日も勉強なんてそっちのけで、学校の廊下をぶらぶらしていた。

 

 今、讃州中学ではタクヤを含めた新入生を勧誘しようと、各種の部活に所属する生徒が活発に行動している。

 なんとなくそれらの勧誘活動を眺めていたタクヤに、一人の少女が声をかけてきた。

 

「あなたにお勧めの部活は、ここにあるわ!!」

 

 少女の名は、犬吠埼 風。

 タクヤより一年センパイであり、同性愛者のタクヤから見ても、とびきりの美少女だった。

 

「あなたの人柄を見込んで、ぜひとも我が『勇者部』に入ってほしいの」

「ゆーしゃ部?」

 

 聞きなれない名前の部活に、タクヤは疑問符を浮かべる。

 

「勇者部って言うのは、世のため人のためになる活動を勇んでする、いわばボランティアみたいな部活なのよ」

「知らねーよ、そんなの」

 

 大きく見えた風の威光がタクヤに無視され、気がついた時には消えていた。

 タクヤはそのまま風の前から立ち去ろうとする。

 

「あぁー、待って待って! ぜひともうちの部に、君の力が必要なのよぉー!」

「オレ胸囲百十のマッチョで売ってるボーイなんで全身でよがりまくる筋肉がたまんなく淫乱らしいぜ」

 

 女子しかいない勇者部には、タクヤのような鍛え上げられたガタイを持つ男手が必要だ、と風は懸命に説得する。

 そのおだて言葉に、タクヤはまんざらでもない表情を浮かべた。

 

 彼はサーフ系ボディビルダーを自称し、日頃からジムに通いガンガンに筋肉痛めつけてやって全身パンプアップさせて鍛えまくっているのだ。

 その肉体を褒められたことで、タクヤはちょっとだけ勧誘に乗り気になっていた。

 ちょろいぜ、タクヤ!

 

 そんなタクヤに、風の後ろに控えていた二人の少女も声をかける。

 

「タクヤさん。風先輩もこう言ってることだし、私たちと一緒に勇者部に入部、しよう!」

「私は車イスで足を引っ張るかもしれないから、タクヤさんがいてくれれば百人力だわ」

 

 タクヤと同じクラスの女生徒、結城 友奈と東郷 美森も風に乗っかって、彼を勧誘する。

 

「マジかっこいいです……。もう、タクヤさんのカラダのためならハウスガールでもなんでもやります! とにかく……(一緒に部活)したいです……」

 

「タクヤさん、予想どおりのボディに惚れ惚れ。予想外だったのは、童顔と長めの髪だけど、それもいいな。

あとデカめな乳首、吸いごたえがありそうだし、吸うとタクヤさん、凄く喘ぎ始めそうだし、エロいよね」

 

「引き締まった躰、それでもってバルキー、焼けたすべすべの肌全身高感度、褒めきれない。

私の理想、タクヤさん、考えてる事まで、理想のまんま。ん~パーフェクト、もっと早くに逢いたかったです」

 

 三人の美少女は、タクヤのチョーエロに仕上がった優しくて温かいギリシャ彫刻のような完璧のガタイを称え上げる。

 散々持ち上げられまくったタクヤはそのままの勢いで、勇者部に入ることにした。

 まったくさー、おだてられて調子に乗ってんじゃねーよ!

 

 四人で始まった勇者部は、川のゴミ拾いからメンバーの足りない部活動の助っ人などを行い、風の理念通り人のためになる活動を続けていた。

 最初は面倒くさがっていたタクヤも

 

『スンゲー助っ人だぜ。今日一日で五回助けられた!』

『マジ、最高っす。不良から脱却したタクヤさんはオイラの想像を超えて(心が)温かい!』

『ありがとうございました! ゴツいけど格好良くてカワイかったですよ。またそのエロい体で助けて下さい!!』

 

 等々のお礼の言葉を聞いて、みんなの感謝が膣の奥から全身を駆け巡り、いつもより断然パワーが違うぜ。

 全く淫乱なボランティアと奉仕漬けの日々を送ることに喜びを感じていた。

 

 素行不良もすっかり()りをひそめたタクヤは十四歳になり、学年も二年に進級。

 勇者部にも新たな仲間として、風の妹の樹が新入部員として加わった。

 

「君が、まさよしくんだね?」

「……いや、違う」

 

 五人になり出来ることの幅も増え、校外活動も行うおかげで勇者部は新聞に取り上げられたりもした。

 

 ある時、タクヤはクラスメイトからこう言われたことがある。

 

『あんなダルな部活が楽しいなんて、冗談キツい』

 

 ボランティアなんてダルいことやってて楽しいのか? と問われたタクヤは、笑顔でこう答えた。

 

「『他人のために尽くすことは自分勝手に生きるより快感だ』と神樹様が言ったらしいが、本当だぜ」

 

 

 

 

 

*   *   *   *   *

 

 

 

 

 

 この日、勇者部はボランティアの一環で、児童館で子供たちに向けての人形劇を行っていた。

 

「やっとここまでたどり着いたぞ、魔王! もう悪いことはやめるんだ!」

「ワシを怖がって悪者扱いを始めたのは、村人たちの方ではないか!」

 

 友奈と風の熱演を、タクヤは脇で静観していた。

 二人の少女が手にはめている人形は、将来の夢が漫画家のタクヤがデザインしたものだ。

 コミカルにデフォルメされた二体の人形は、園児たちにも受けが良い様子。

 友奈と風の迫真の演技も相まって、子供たちはのめり込むように劇に見入っていた。

 

 順調に進行していると思われた劇だったが、突然のハプニングに見舞われる。

 書き割りが倒れ、演者の二人が子供たちの前にあらわになるという事態が起きたのだ。

 

「あわわ、どうしよう……!?」

 

 友奈も風も動揺し、劇がストップしてしまう。

 その時、タクヤが動いた。

 

「樹、曲流せ!」

「は、はい!」

 

 タクヤの指示で、樹はパソコンを操作して適当なBGMをかける。

 流れるのは「ワンダバ」という言葉が繰り返される、勇壮なメロディー。

 タクヤは音楽に乗って、混乱する友奈と風の前に堂々と仁王立ちを決める。

 

「タクヤ、なにを……」

「おれはタクヤじゃねえ、ウルトラマンだ」

 

 風の問いに静かに、しかしはっきりとタクヤは言う。

 

「ウルトラマンは、神の使いだ。魔王。村人に迷惑をかけたお前に、今から罰を与えっからなぁ」

 

 言うが早いか、タクヤは魔王役の風の腹筋ボコボコにパンチを食らわせる。

 

「おっぶぇ!?」

「反抗すr……反抗やめるまでやるぞ」

 

 タクヤ──否、ウルトラマンの脅しに魔王は呆気なく白旗を上げた。

 降参する魔王と蚊帳の外に置かれた勇者の仲を取り持つウルトラマンタクヤ。

 

「こうして、ウルトラマンの括約によって世界は平和を取り戻したのでした。めでたしめでたし」

 

 東郷のナレーションによって、劇は無理やりに締めくくられたのだった。

 

 

 

 

 

*   *   *   *   *

 

 

 

 

 

「タクヤの機転で助かったけどさぁー、仮にも先輩を殴るってどうなのよ?」

 

 劇を終え、帰路に就く勇者部の面々。

 風はお腹をさすりながら、タクヤに一言文句を言った。

 

「ごめんなさい。タクヤを救世主に見立てたかったみたい」

 

 風の抗議に対し、タクヤは素直に頭を下げる。

 ついでに主人公を演じてみたかったらしい。

 東郷は、そんなタクヤをフォローする。

 

「でも、いい思い出になりましたね。記録もばっちり撮ってますから、あとで動画を勇者部のホームページに上げておきますね」

「そういえばお姉ちゃん、なにか大切な話があるって言ってなかった?」

 

 東郷の乗る車イスを押す友奈。その後ろを歩く樹が訊ねた。

 

「そうそう、迷子の猫の捜索依頼が来てるから、明日はみんな時間厳守で部に来てね」

 

 だが、翌日……放課後の集合時間が過ぎても、タクヤだけが来なかった。

 待てど暮らせど姿を見せないタクヤにイライラを募らせる風。

 結局、三時間以上経ってから、やっとタクヤは部に顔を見せた。

 

「お疲れナス!」

「おう帰れ!」

 

 挨拶するタクヤに開口一番、風は追い返すような言葉を投げつけた。

 

「おいおい、センパイが今日は来いっつったんだろーが」

「三時間も遅れて、なに平然としてんのよ! お前勇者部やる気あんのかよオォン? 一体今までなにやってた訳!?」

 

 散々待たされ怒り心頭の風に、タクヤは

 

「今日は昼からジムに行って、マッサージ受けて日サロに行ってから買い物してた」

 

 て答え。

 タクヤの記憶力はガバガバで物覚えがとても悪く、前日の風との約束をすっかり忘れていたのだ。

 そしてこんな出来事は、一度や二度ではなかった。

 

「そっか、あったまきた……。(冷静) 遅刻した罰として、今日の猫探しの依頼はタクヤ一人で受けてもらうからね」

「マジかよ! もう日が暮れるぜ!? オレぜってーやらねえからな!」

「誰がご主人様なんだ? え?」

 

 怒りを秘めた笑顔で、風はタクヤの胸ぐらをつかむ。

 

「あー、セ……センパイで……す」

「時々忘れるからな、思い知らせてやらないとな」

「う……っす! ぅあーーっ!」

 

 風のブチギレっぷりに肝を冷やしたタクヤは、大人しくセンパイの奴隷になることにした。

 そして部長の指示に従いただ一人、迷い猫の捜索に向かうのだった。

 

 

 

 

 

*   *   *   *   *

 

 

 

 

 

「おはよう、タクヤさん」

「あら、なんだかお疲れの様子ね」

 

 翌日、登校してきたタクヤに挨拶する友奈と東郷。

 二年の教室で対面したタクヤは、東郷の言うように疲労が見えた。

 

「昨日、センパイの指示で夜になるまで猫探しを続けたからな。汗がドロドロ流れて全身の筋肉という筋肉が張り裂けるまで続けたぜ」

「そっか、大変だったね」

「それで、猫は見つかったの?」

 

 東郷の問いに、タクヤはニカッと笑みを浮かべ答える。

 

「昨日の依頼は、正真正銘の迷い猫を飼い主に返すS(捜索隊)役。

わめこうが叫ぼうが嫌がり逃げるのを押さえつけて頭を撫でて最後にガン抱き!

マジ楽しかったぜ~♪ ブチ系でガタイもよくて可愛いさ抜群! 親元での成長が楽しみだね!」

 

 どうやら無事に依頼を達成し、迷子の猫を飼い主の元に帰すことができたようだった。

 困っている人の役に立てたことで、タクヤの表情には疲労よりも満足感が、より濃く浮かんでいる。

 

「良かったわね、タクヤさん」

「お疲れナス!」

 

 東郷と友奈も、タクヤの頑張りを(ねぎら)ってくれた。

 

「そうだ。今日の部活は、文化祭の出し物をなににするか決めるって風先輩が言ってたから、タクヤさんも忘れずに来てね」

「あとで部室へ行って参加してやるよ、アイディアも図書室で何個か調達してやるよ」

 

 友奈からの連絡を、今度は忘れまいとタクヤは頭に留め置く。

 そしてホームルームの時間が来たため、三人は自分の席に着いた。

 

 前日の猫探しの疲労が(たた)って、タクヤは授業中にもかかわらずウトウト舟をこぎだしていた。

 放課後の勇者部まで四時間もあるのでガタイ休めなきゃと思ってとりあえず教師の講義を無視して目をつむってたが↑ってるんで全然休まらねぇ!

 力を抜けば抜くほど射精してないマラの根元の奥から疲労が全身に広がって身悶えてたまんねー!

 

 その時出しぬけに、カバンにしまっていたタクヤのスマホのアラームが鳴り響いた。

 眠気まなこをこするタクヤに、教師の注意が飛ぶ。

 

「たくや? 今授業中です。すぐ携帯の音を止めれますか?」

「あ、あん、はっ、はい、四十分後には、とっ、止めまっす!」

「もっと早く止められませんか?」

「あ、ああ、はい、なるべくはっ、はっ、早く止めまっす」

 

 だが、音を鳴らす携帯はタクヤのものだけではなかった。

 同じクラスの友奈、東郷のスマートフォンも同様のアラームを響かせている。

 

 スマホを見るタクヤ。

 画面には『樹海化警報』という見慣れない表示が。

 それは二人の少女の携帯も同じであった。

 

 三人は同時に警報を止める。

 教室内に静寂が戻る。

 それは異常なほどの静けさだった。

 

「うっそだろお前!」

 

 世界の時が、止まっていた。

 一時停止を押されたように微動だにしないクラスメイトを前に、思わずタクヤは叫んだ。

 

「タクヤさん、動けるの!?」

「やだ怖い……止めてください……ユウナチャン!」

 

 どうやら友奈と東郷も、静止した世界の中でタクヤ同様に意識を保っている模様。

 不安な表情をタクヤに向ける友奈。

 東郷も、恐怖のあまり親友に助けを求めている。

 

 タクヤが二人の側に行こうとした時、窓の外……海の向こうを覆う神樹の『壁』から、強烈な光が放たれ始めた。

 三人も光に飲みこまれる。

 

「……信じらんねぇ!」

 

 光が晴れた時、タクヤは再び叫んだ。

 三人は教室ではなく、視界全土を埋め尽くす大きな樹の根の上に立っていたのだ。

 

「もうなにがなんだかわかんねーよ……」

 

 異常事態に困惑するタクヤのつぶやきが、樹海の中に小さくこぼれた。




次回、『ユウシャ初体験』でお待ちしてナス!
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