勇者に選ばれてマジ狂い! 投稿者:讃州中学勇者部員タクヤ   作:ほろろぎ

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第二話 ユウシャ初体験

 今日は朝からの授業が突然のスマホのアラームで学業が一旦キャンセルに。

 代わりに神樹様の四国を覆う壁の方から光が広がってタクヤ、友奈、東郷の三人は樹海へ。

 

 連日ハードな学校生活と勇者部活動が続いていたので、タクヤは結構筋肉がパンプして脂肪も落ちていていい状態かも。

 寒いコンクリート製の校舎もあらゆる建造物も消えた樹海の中で、生徒三人動揺して、「もっと心をしっかり(たも)って!」と言われ平静を装い続けているうちに時々筋肉が吊りそうになってやばい。

 

「なにこれ……夢、じゃない……よね?」

「教室にいたはずなのに……」

 

 友奈と東郷が、自分たちの置かれた状況が信じられないといった風につぶやく。

 タクヤも少女らと同様、困惑の表情を浮かべている。

 

「やだ怖い……助けてください……ユウナチャン!」

「大丈夫だよ、東郷さん! 私もタクヤさんもいるんだから!」

「でっけぇなこいつ」

 

 異常な事態に(おび)え、親友にすがるしか出来ない東郷。

 そんな東郷を、自分も怖いはずなのに、友奈は気持ちを押し隠して(はげ)ました。

 タクヤは、友奈の気丈な振る舞いに感心を覚える。

 

 ふいに三人の近くから、別の人間の足音が聞こえてきた。

 接近してくるその音に、タクヤたちの間に緊張が走る。

 

「友奈、東郷! タクヤも! みんな無事でよかった」

 

 足音の主は、勇者部部長の風であった。

 風の後ろには樹の姿も見える。

 

「センパイに樹! 驚かせんじゃねえよ、まったくさぁー」

 

 見知った顔がそろったことで、全員の間にあった緊張が解けた。

 

「みんな、時間が無いから手短に説明するから、よく聞いてね」

「センパイは、今起きてることがなんなのか、知ってんのか?」

 

 タクヤの問いに、風は神妙な顔でうなづく。

 

「アタシは大社から派遣された人間なんだ。みんなを勇者部に集めたのも、大赦の指示だったの」

「なんで大赦がそんなことを……」

「それは、神樹様が作った結界であるこの樹海にやって来る、世界を殺す敵と戦うためよ」

「敵……って一体……?」

 

 友奈の問いに答えるかのように、その人類の敵である怪物──バーテックスが、壁の向こうより姿を見せた。

 

「あれは乙女座ね。足の遅い奴で助かったわ」

 

 風が乙女座、ヴァルゴ・バーテックスを見て言った。

 

「あの怪物が神樹様の元にたどり着いた時、この世界は滅びる。そうさせないため、アタシたちは勇者になって、あいつらと戦わなくちゃならないの」

「私たちみたいな子供があんな大きな化け物と戦うとか、うせやろ? ねーホントムリムリムリムリ」

 

 樹海に飛ばされ怯えっぱなしの東郷は、「わぁ~はぁ~ヤダ~~ヤダ止めてもぉ!!」とすっかり戦意を喪失してしまっていた。

 

 未だ接近中のバーテックスが一匹、戦えるのは勇者部だけ。

 とはいえ風も鬼ではない。

 恐怖に支配された東郷に無理強いすることは、とても出来ない。

 

「……友奈、東郷を連れて逃げなさい。タクヤと樹も……」

「私は、お姉ちゃんと一緒にいるよ」

 

 全員に避難を(うなが)す風だが、樹はこれを拒否した。

 今の樹の顔は、普段の引っ込み思案の色が消え、断固とした強い意志を感じさせる。

 

「お姉ちゃん一人にだけ、こんな大変なこと押し付けられないよ。私も、一緒に戦う!」

「樹……」

 

 妹の初めて見せる力強い決断に、風は目じりに喜びの涙を浮かべた。

 

「俺もイクぜ! イク!」

 

 そんな姉妹に続けと、タクヤも同行することを名乗り出た。

 今のタクヤは東郷とは反対に、戦意に満ち溢れている。

 

「勇者って言うのは純真無垢な女の子しかなれないものらしいけど、タクヤも大赦に選ばれたってことは、大丈夫よね……?」

 

 わずかな不安をにじませる風。

 でも実はその言葉がS気に火を注ぐんだよ。

 

「バーテックスを芸術品に仕立てや……仕立てあげてやんだよ。バーテックスをげいじゅつし……品にしたんだよ! バーテックスを芸術品にしてやるよ(妥協)」

「やる気は十分みたいね……。それじゃあ樹、タクヤ、アタシに続いて!」

「うん!」

「明太子売るボーイ(変態コールボーイ)、脱ぎます!」

 

 風に習って、二人はスマートフォンを操作する。

 あらかじめインストールされていた専用アプリを起動することで、三人は世界を守る『勇者』へと変身をとげる。

 

 風は『輝く心』という花言葉を持つオキザリス、そのモチーフを持つ黄色い戦闘服に。

 樹は『心の痛みを判る人』という花言葉を持つ鳴子百合、そのモチーフを持つ緑の戦闘服を。

 

 そしてタクヤは、モチーフである『ジャスミン』の花弁(はなびら)と共に着ていた制服がすべてはじけ飛び、全裸に仏像を思わせるシルバーのマスクを被った姿になった。

 

「「ヴォォォォェエエエエエ!!!!」」

 

 風も樹も、顔面真っ赤のド吐く力で絶叫した。

 タクヤのおやつカルパスに酷似した肥大化した乳首、そして(たくま)しくそそり立つデカマラが姉妹の網膜に突き刺さる!

 後ろの方では友奈と東郷も朝食を戻していた。

 

「勇者部の女子たちはみんな、まるで『裸を見ないのがエチケット』って感じでいてくれる。それともオレの格好が激エロのモロホストだから目をそらすのかな(笑)」

「吐いちゃいソース……」

「視覚壊れちゃぁぅ↑」

 

 自信満々で胸筋をヒクヒクさせるタクヤ。

 すげぇ乳首だなオイ……。(呆れ)

 樹も風も、戦う前から満身創痍だった。

 

「あ、じゃあ私たちは向こうに逃げてますね……」

 

 ひとしきり嘔吐して冷静を取り戻した友奈が、東郷を連れて後方へ避難を始めた。

 犬吠埼姉妹は、相変わらず裸のタクヤに目を向けられない。

 純粋無垢な少女だからね、仕方ないね。

 

「じゃあこいつでぇ、オレのボディをペインティングして、視覚を誤魔化すってどうすか?」

 

 姉妹が恥ずかしがっていては戦いにならないと、タクヤはスマートフォンの勇者アプリを操り、自分の体に色を付けていく。

 タクヤの体は肌色から赤と銀の二色に塗り替えられ、ぱっと見で裸体とはわかりづらい外見になった。

 

「おおーなんかウルトラマンみてえじゃん!」

 

 正義のヒーローのようなカラーリングになったことで、タクヤも満足げだ。

 風と樹も、バカ乳首を直視するよりはマシか、と納得。

 気持ちも落ち着いたところで、三人は迫りつつあるヴァルゴ・バーテックスを改めて見据えた。

 

「デカイ!」

 

 数十メートルはあるヴァルゴの体躯に、三人は飲まれかける。

 

「馬鹿野郎お前アタシたちは勝つぞお前!!(天下無双)」

 

 風の一喝で気合を入れ直す樹とタクヤ。

 三人はバーテックスに向けて、果敢に向かっていった。

 

 今回勇者として戦う少年はタクヤっ。

 ハンサムなマスクと、均整のとれた体。(大嘘)

 まだ十四歳のこの少年は、バーテックスとの戦闘に耐える事が出来るでしょうか?

 それでは、ご覧下さい。

 

 迫る勇者たちを認めたヴァルゴ。

 たなびく布を思わせる触腕をふるい、ジャンプ中の三人を虫でも叩くようにはたき落とした。

 

「うぁっ!」

「きゃぁっ!」

「おーっ!」

 

 樹海に叩きつけられる少年少女。

 普通に考えれば、これだけで死んでしまうほどの凄まじい衝撃だった。

 

 だが風と樹の体は、勇者システムに備え付けられている『精霊』のサポートによって、発生したバリアのおかげで守られ事なきを得た。

 タクヤはというと、バリアの加護もなくダイレクトにヴァルゴの攻撃を受け、樹海の根に体をめり込ませていた。

 正規の勇者ではなく、規格外の男の勇者のタクヤのシステムには、精霊が実装されていないのだ。

 

「うわっ、痛ってぇなぁコレ(素)」

 

 埋まっていた体を引きはがし起きるタクヤ。

 衝撃の割に大したダメージも無い様子なのは、毎日のジム通いで鍛えたガタイの頑強さの賜物(たまもの)だろう。

 

 三人が平然としているのを見たヴァルゴは、次なる一手を打つ。

 下半身を膨らませ、そこから子供を産み落とす様に、種状のなにかを射出してきた。

 

 バァン!

 

 爆発と衝撃が辺りに広がる。

 ヴァルゴの放ったそれは、爆弾だったのだ。

 

 姉妹は再び精霊バリアに守られたが、守るもののないタクヤは華奢な下半身では爆発に耐え切れず、吹き飛ばされてしまった。

 

「タクヤ!?」

「タクヤさん!」

 

 爆風で樹海を転がるタクヤに姉妹が叫ぶ。

 

『バーテックスはさあ、(勇者を)苦しませるためにあるんだよ』

 

 とでも言うかのように、ヴァルゴは追撃のため爆弾を連射する。

 いくらバリアがあるといっても、爆発の衝撃を何発も受けては破られてしまうだろう。

 風と樹は、全力で爆弾を回避する。

 

「タクヤ! 急いで逃げて!!」

「ちょっと待ってよ、シャワー浴びなきゃ」

「いいよ、浴びなくて! 早く逃げなさい!」

 

 風の叫びに、爆発でついた体の(すす)汚れを気にする乙女さを見せるタクヤ。

 センパイの命令には逆らえない、と退避行動に移る。

 

 神樹の力を宿した勇者の全速力は、軽く車ほどのスピードがある。

 ヴァルゴは「あっ、おい待てぃ」と、逃げる三人を執拗に追いかけ続けた。

 攻撃を避けることは出来るが、このままでは勇者側が攻勢に転じることは難しい。

 

 樹海の中をヴァルゴの爆弾から逃げ回っていると、ふいにタクヤの胸に装着されているタイマーが、チカチカと明滅を始めた。

 

「センパイ? 今胸のタイマーが点滅しています。すぐ説明してもらえますか?」

「あ、あん、はっ、はい、四十分後には、せっ、説明できまっす!」

「もっと早く言えませんか?」

「あ、ああ、はい、なるべくはっ、はっ、早く言いまっす」

 

 スマートフォンで風に連絡するタクヤだったが、向こうは向こうでバーテックスの攻撃を回避するのに精一杯の様子。

 代わりに、樹からの着信がタクヤの元に入る。

 

「今アプリのテキストを見たんですけど、タクヤさんが勇者に変身できる時間には制限があるみたいです」

 

 そのタイム、実に三分間。

 今胸のランプが点滅しているのは、変身の残り時間が一分を切ったことの合図であった。

 

「そんな短いんかよ!」

 

 タクヤはタイムリミットのあまりの短さに、呆れるように叫んだ。

 このまま変身が解除されタクヤが離脱するようなことになれば、戦線は一気に崩壊してしまうだろう。

 そうなれば風と樹、友奈と東郷の安否はおろか、世界そのものの存亡すら危うい。

 タクヤは決断を下す。

 

「いくか? オォン? いくぞ! オイ!」

 

 逃げる足を止めると、全力疾走で正面からヴァルゴに突っ込んでいく。

 ヴァルゴは向かってくるタクヤに標的を定め、尾から爆弾を連射した。

 数十発もの爆弾は、タクヤ目掛けて一直線に飛来。

 タクヤはそれらを避けることも、防ぐこともせず走り続ける。

 

 バァン! バァン! バァン!

 

「オォン、オォン、オォン、オォン、オォン、オォン、オォン!」

 

 爆発の衝撃と熱波がモロにタクヤの体を襲い、たまらず苦悶の声を漏らす。

 さすがのビルダー体系でも、爆弾のダメージは防ぎきれないようだった。

「拓也はバーテックスに体を痛めつけられても死なないんだよな」なんて無謀なバトルの始まり。

 

 熱波に体を焼かれ、それでもタクヤは足を止めない。

 仲間を、人々を、世界を救うため、タクヤは爆弾の嵐を無理やり突破して、ついにヴァルゴの正面まで近づくことができた。

 

「コットンで殴られてぇか? 座れオラァ!」

 

 渾身の右ストレートがヴァルゴにヒット。

 バリアが無いぶん上乗せされた超パワーで繰り出された拳は、タクヤとは比較にならない巨体を簡単に吹き飛ばす。

 遠目に見ていた風と樹は、彼の予想以上の怪力に呆気にとられていた。

 

「おめぇはもうこっから帰れないんだよ……」

 

 タクヤはおもむろに、股間を前方に突き出した。

 あらわになっているイチモツには、金属製のコックリングがハメられている。

 

「堕ちろ!」

 

 気合と共にコックリングの封印が解かれ、タクヤのペニスから三千万度の超高温の射精が放たれた。

 力が入らなくなったヴァルゴの股が大きく開かれて、燃え盛る(バーニング)プラズマと化したタクヤの射精が容赦なく突き刺さる。

 バーテックスだって死ぬときゎ御霊を吐き出すんだよ。

 

「あー!! イク!!」

 

 御霊にビクビクと弾丸が撃ち込まれると同時に、ヴァルゴも意識がぶっ飛び射精。

 そのあとピクピクと痙攣したまま動かなくなり、最後には砂と化して崩れ去った。

 

「封印の儀なしでバーテックスを倒すとか、ウッソだろお前……」

 

 正規の手順をすっ飛ばし、単身で怪物を降したタクヤを見て、風は呆然とつぶやくしか出来なかった。

 そして、樹海に花吹雪が舞う。

 戦闘が終了したことで、樹海化が解除されたのだ。

 風たち勇者部のメンバーは、讃州中学の屋上へと戻されていた。

 

「ぉ、お姉ちゃん……終わった、の?」

「ええ、そうみたい。樹、大丈夫だった?」

「うん、私は……それよりタクヤさんが!」

 

 樹の声で、少女らの視線がタクヤに向かう。

 そこにはちだ、血だらけのタクヤがたたずんでいた。

 バリアも無しにヴァルゴの攻撃を一身に受けていたのだから当然だろう。

 

「タクヤさん! 大丈夫なの!?」

「今救急車を呼ぶわ」

「いらねーよ、そんなの」

 

 友奈と東郷も、タクヤの惨状を目にし心配の声を上げる。

 風は大赦に救急車を手配してもらおうとするが当のタクヤは、こんなのかすり傷だと取り合わない。

 

「『男の傷は誰かを守った勲章の証しだ』とペガサス星矢ちゃんが言ったらしいが、本当だぜ」

 

 背中越しに、ニヤリと口の(はし)を吊り上げて強がってみせるタクヤ。

 決め台詞を残すと満足感を(ともな)って、颯爽と帰宅するのだった。

 

 もちろん制服は変身時に千切れ飛んでしまったので、全裸のまま。




次回、『ノーマル勇者の模範』でお待ちしてナス!
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