勇者に選ばれてマジ狂い! 投稿者:讃州中学勇者部員タクヤ 作:ほろろぎ
今日は何の日?
子供会でレクリエーションの日!
だというのに、予定の時刻を過ぎても勇者部の新メンバーである三好夏凛は、一向に姿を表さない。
すでに他の面子は揃っている。
あの忘れん坊のサンタクヤロースでさえ、この日は予定時間の前に顔を出したというのに。
「アイツ完全に全身遅刻状態に落ちたな」
「どうしよう……これ以上、子供たちを待たせられないよ」
「ったくよぉ。仕方ねえ。俺が夏凛の奴を連れてくるから、お前らは先に進めてろ」
開始時間を過ぎていることに焦る友奈。
タクヤは他のメンバーにこの場を任せ、一人遅刻者の捜索に向かった。
まず少女の自宅であるマンションを尋ねるが、チャイムに反応は無く、ドアにも鍵がかけられていた。
「居留守って感じじゃねえな……」
当てが外れ、マンションの周辺をしらみつぶしに見て回る。
タクヤの体は上半身に比べ、下半身はまったくのトレなし体系なので、歩くという行為に向いていない。
ものの数分でタクヤの足は疲労で棒のようになっていた。
それでも、タクヤは夏凛を探すことを止めない。
それはすでにタクヤの中で、夏凛も大切な勇者部の仲間だということを、認めているからに他ならない。
「ま、夏凛の奴は反発しそうだがな」
その様が手に取るように浮かび、タクヤは苦笑と共にひとりごちた。
「俊さん」
「……おぉん?」
出しぬけに聞こえた声に、タクヤは足を止める。
呼び止める様にかけられた名はしかし、タクヤのものではない。
声の主の方に振り返る。
車道をはさんだ反対側の歩道に、同学年と思わしき一人の少女が立っていた。
「!」
ゴーグルの下で、タクヤの目がギョッと見開かれる。
少女には、
少女は、突然の遭遇で驚きの中にあるタクヤにかまわず、口を開いた。
「俊さん。『満開』は使っちゃダメだよ」
「……なに、なんでお前、満開のことを……」
「いいね。満開は使っちゃダメなんだ」
「お前なにもんだ……う、ぐぅ……あーっ!?」
勇者とその関係者しか知らないはずの、満開という言葉を口にした謎の少女。
素性を暴こうと一歩踏み出さんとするタクヤだが、急な頭痛が彼の行動を阻んだ。
「あーっ! おぅううっす! おーっ! うーっす!」
雄膣の奥まで突き上げられるような激しい痛みに、頭を抱えてうずくまる。
数分か、それとも数秒か。
痛みが去り顔を上げると、すでに少女の姿はどこにも無かった。
「そうだ……満開を使うと……そのあとヒデえ代償が……!」
少女の発した言葉、それとも少女自身を目にしたからか。
突如としてタクヤの喪失していた記憶の全てが、深い沼の底から浮上してきた。
だが、今はそれよりも夏凛を見つけることを優先するタクヤは、フラつく足で再び歩み始める。
午前中に児童館を出てから数時間が経過し、辺りが茜色に染まる頃。
「やっと見つけたぞ、おい」
「あんた、何でここに」
タクヤはやっとのことで、夕暮れの浜辺で勇者の戦闘訓練をしていた夏凛を見つけた。
「何でじゃねーだろ、おぉん? 今日はガキ相手のレクがあるって言ったじゃねーか。電話も無視しやがってなあ」
「……私たちは勇者なのよ。世界を守るのが使命なの! 子供とのお遊戯なんて、遊んでる暇なんてない!」
相変わらずとげとげしい態度の夏凛だが、タクヤの目にはその姿が、なんだか無理している様に映った。
ふぅ、と一つ溜息をつき、タクヤは子供をあやす様な優しい口調で夏凛に話しかける。
「お前、前に家族が大赦の関係者だって言ってたよな」
「それが何よ」
「勇者にこだわってるのも、それが理由か?」
「…………」
タクヤの問いに、無言で答える。
それはつまり、肯定を表していた。
「……タクヤのお母さんゎね、本当ゎ虐待おばさんだったんだよ」
「えっ」
少女は家族の間に、何らかのわだかまりを持っている。
そう察したタクヤは、自らの身の上を語りはじめた。
「小さい頃ゎ可愛がって育てられた拓也だけど、なぜか夫婦仲が悪くなって離婚した。したら、こんな子産まなきゃ良かった! って虐待が始まったんだ」
虐待によってグレたタクヤは全身不良状態に落ち、家庭にも学校にも居場所をなくした。
しかし、そんな中にあっても奇跡的に勇者部と知り合い、安らげる場所を与えられたのだ。
「お母さんのことゎずっと心底、大嫌いだった。だから家庭なんて絶対持ちたくなかったし、女も嫌いだった。
けどね、母が入院してオレしか頼る人がいなくて、急に思ったんだよ。
最初の10年間ゎ大事にしてくれた。だから10年分の愛ゎ、お返ししなきゃってね!」
「……そう、そんなことが……」
「夏凛が家族のどんなことで悩んでんのか、俺には分んねえ。
『悩んだら相談』って部のスローガンはあるが、言えねえこともあるだろう。
でも、いつかお前と家族が一緒に笑いあえる日が来てほしいって、俺は心から願うぜ」
タクヤの独白を聞いて夏凛も思うことがあるのか、普段の勝ち気な態度は鳴りを潜めた。
神妙な雰囲気で、少女は口を開く。
「アンタも結構大変な人生を送って来たのね。その……心配してくれてあ、ありがと……」
わずかに頬を染めながら感謝を口にする少女に、タクヤは父親が娘に向けるような、暖かな微笑みを向けた。
* * * * *
その後、態度の軟化した夏凛が主役の誕生日会を勇者部の皆で開いたり、歌のテストで悩む樹の応援をしたりと日々は過ぎていき……。
「ふざけんじゃねーよ、おい。残りのバーテックス、全部来てんじゃねえかよぉ~」
樹海の最前線で、タクヤはイラだったようにボヤいた。
視界の先には七体の怪物の姿が。
この日、バーテックスは四度目の襲来を果たした。
それも今までで最大の戦力をもって。
「まさに総力戦ですね」
「でも、全部やっつけちゃえば、戦いは終わるってことだよ!」
不安の色を浮かべる東郷を、気丈に励ます友奈。
バーテックスとの距離が徐々に近づいてくる。
部長の号令で少女たちが勇者に変身しようとしたその時、タクヤが待ったをかけた。
「お前らに言っとかなきゃならねえ事があんだ」
いつぞやの時の様に真面目な顔をのぞかせるタクヤに、風はジト目を向ける。
「あんた……また戦うのは自分一人で~なんて言うつもりじゃ」
「それゎあとで話すけど、その前に……満開のことだ」
「夏凛ちゃんが言っていた、勇者システムの強化機能のことですよね。なにかあったんですか?」
「あったぜあった。俺もお前も関わる、重大な隠し事がよぉ」
東郷の疑問に答えるタクヤの語気には、確かな怒りが含まれていた。
「満開を使った後にゎね、『散華』っていう機能が待ってるんだょ。それゎ強い力を使った代償として、神樹様に自分の体の一部を捧げないといけないんだ」
生贄、供物。
タクヤの明かした話を聞いた少女らの頭に、それらの言葉が浮かぶ。
「俺も東郷も、二年前に勇者として戦ってたんだよ。そん時に二人とも満開を使っちまって……お互いこの有様だ」
散華によって東郷は、歩行機能と勇者としての記憶を。
そしてタクヤも下半身の筋肉と、記憶をつかさどる脳の一部を捧げてしまっていたのだ。
「嘘でしょ……満開にそんな隠し機能が」
大赦と関りがありながら重大な欠陥を隠されていたことに、夏凛は少なからずショックを受けた。
タクヤはさらに言葉を続ける。
「それと……この世界が滅んで、バーテックスが攻めてきてんのは、俺のせいなんだ」
「どういう、ことなの?」
友奈の問いに、顔をゆがめ言いづらそうにしながら、それでもタクヤは自身の身の上を明かす。
「西暦の時代に、優れた能力を持つ人間を人工的に生み出す、
俺はその計画で造られた人造人間の末裔、超人の子──ウルトラマンコなんだよ」
「タクヤさんは人間じゃなかった……?」
「で、でもその話とバーテックスに、なんの関係が」
樹のもっともな疑問にタクヤは答えを示す。
「科学的に改良された生命を生み出す……なんて大それた行為に、奴が怒ったからだ」
「奴って、一体」
「バーテックスの上にいる文字通りの神様、天の神。それが人間を根絶やしにしようとしている、俺らの敵の正体だ」
人類を守ろうとする神樹という存在がいる以上、敵もまた神であると言うのはなるほど、納得できる話だろう。
「アンタの話は分かったわ。でもそれは昔の人の行いが原因であって、タクヤが責任を取る必要はないじゃない」
「俺の存在も原因の一端ではあるからな、祖先の尻は子孫が拭わなきゃね。だから、巻き込まれただけのお前らは必要ねえんだよ!」
タクヤの一喝と共に、五人の少女たちの姿が薄れ始める。
まるで樹海の内に存在することを拒否されたかのように。
消えかかる自分の体に、五人は動揺の声を上げる。
「え、えっ、なにこれ!?」
「落ち着け、友奈。神樹様に頼んで、お前らを元の世界にもどす、戻してやんだよ。お前らを元の世界に戻すんだよ」
「
「悪ぃな、センパイ。でも、これがタクヤのケジメだから」
ごめんナス!
消えゆく仲間に最後にかけた言葉は、謝罪だった。
それは、おそらく自分はここで死んでしまうだろうということを、覚悟してのもの。
「あいつら、俺が死んだらゼッテー後悔するだろうな……」
タクヤも、友達を悲しませるようなことをしたくない思いはある。
だからといって、たった一人で七体もの怪物を相手に生き残れるなどと、甘い考えも持ってはいなかった。
『次はバーテックスの攻撃を防ぎながら三分間の戦闘、できるか?』
『ウッス!』
『約束だぞ!』
『ウッス!』
『じゃあ、あとで練習してから帰れ!』
タクヤの脳裏に、いつかの風とのやり取りが思い浮かぶ。
「結局センパイの言いつけを守らなかったが……練習、しとけば良かったかもなぁ」
「だったら帰ってから特訓ね」
「!?」
バーテックスと対面するタクヤにかけられた予想外の声。
ふり向けば、そこには先ほど樹海から追い出したはずの、勇者部の少女たち五人がいた。
「お、おまえら、何で……どうやって戻って来たんだよ!?」
「んー。それは……そう、根性で?」
「マジかよ。勇者ってチョーS(スゲー奴らの集まり)だよな」
友奈のシンプルすぎる答えに、タクヤは呆気にとられる。
神の力による妨害も、友情の前には無力だったようだ。
「それよりタクヤ! あんた何度同じやりとりを繰り返せば気が済むのよ! もう一人で無茶するなって言ってるでしょ!?」
「そうですよ。(便乗) タクヤさん前に、『仲間を信じない勇者は勇者じゃない』って言ってたじゃないですか。私たちのことを信じて、一緒に戦わせてくださいよ」
「なにかあったらこいつらが助けてくれるから頼れ、とも言ってたわよね。だったらアンタも仲間に頼れって話でしょ、私はそう言いたいけどね」
風、樹、夏凛がそれぞれに、タクヤへの思いを口にする。
決して独りにはさせない、と。
「私まだ、過去のことは思い出せないけれど……これ以上、誰も失いたくないと私の心が訴えてるんです」
「東郷……」
少女の想いは、タクヤの想いでもあった。
「……俺だって同じだよ、もう誰も失いたく無ぇ」
タクヤに散華の事実を伝えに来たのは、二年前に共に勇者のお役目に付いていた仲間だった。
だがその少女はかつて、三体のバーテックスとの戦いで
(あいつは魂だけになっても俺らのことを心配してくれるんだな、マジおもしれー!)
幼くして死んだ仲間の想いに、タクヤはゴーグルの下で涙ぐむ。
同時に思った。
彼女の様な犠牲を出すのは、もうこりごりだと。
タクヤの胸中を察したかのように、友奈が口を開く。
「タクヤさん、諦めちゃダメだよ」
「諦める? 俺が?」
「タクヤさんは友達が傷ついたり、辛い思いをすることが嫌なんでしょ? だから、自分だけが我慢すればいいと思って諦めてる」
「…………」
「私も同じだよ。でも、それじゃダメなんだ。だって、友達のことを大切に思ってるのは、相手も同じなんだから」
友奈の言う通りだ。
人は、互いが互いを思い合う生き物なのだから。
「タクヤさんも勇者なんだから。大切な人がいる限り、勇者は諦めちゃいけないんだよ!」
友奈の言葉に少女らはうなづく。
彼女たちは想いを一つに、タクヤの元に帰って来た。
そしてタクヤは、お手上げだという風に肩をすくめた。
「まったくさー、勇者部ってチョーS(親切)だけど、チョーM(真心屋)でもあるよな」
まあ、そんなお前らが好きなんだけどさ。
と照れながらこぼすタクヤの顔は、憑き物が落ちたようなスッキリとした表情だった。
「っと、敵さん黙って待っててくれると思ってたら、なんかヤバそうな気配ね」
風の言葉で全員の視線が、四国と外を隔てる壁の方へ向く。
バーテックスは、タクヤらが話し合っている間ずっと静観していた訳ではない。
七体の星座型は、獅子座を中心に
「強烈なプレッシャーを感じるわ。あいつら、この一戦で全てを終わらせるつもりみたいね」
バーテックスが融合した目的は、まさに夏凛の言葉通り。
圧倒的な力を内包するバーテックスを相手にするには、少女らも満開を使わざるを得ないだろう。
「……お前ら、いけるか?」
「大丈夫です、覚悟は出来てますから」
心配するタクヤに真っ先に返答したのは樹。
他のメンバーも、散華の事実を知ってなお、全員で戦う道を選んだ。
仲間の熱い友情に、タクヤの不安な心は掘られまくり痙攣しまくり白目剥いて吠えまくり。
「んじゃあ、いきますかっ」
「うん!」
「ええ」
「はい!」
「絶対勝つわよ!」
「やってやろうじゃない!」
タクヤの声に友奈、東郷、樹、風、夏凛が応える。
「満開~」
勇者アプリを起動し、禁断のワードを唱える。
光がタクヤを、少女たちを包み込む。
光は体を通して、タクヤの心もハンパなく温かく照らしてくれる。
「すっげー温もりを感じるぜ! 勇者部の仲間がいれば、俺らは天の神になんて、ぜってー負けてやんねえ!」
光の中でタクヤは確かにそう思った。
樹海に向けて、融合型巨大バーテックスが侵攻してくる。
名状しがたい異形のそれは、『怪獣』と呼ばれるべき
怪獣に対して樹海を守るように、タクヤらを包んだ光が大きく天へと立ち昇る。
光はやがて、一体の巨大な人型のシルエットを結んでいく。
まさしくそれは、『
UAが思うように伸びず、モチベーションを保てないため、タイトルにあるように打ち切りとなりました。ごめんナス!
最後までついて来てくれた人はこんな結果になってモシャモシャセン…