トップアイドルのウマ娘がアグネスデジタルのトレーナーをやる話 作:けいI
アニメは見ておらず、ゲームも現在チームランクD3のポンコツです。
ウマ娘に関してはほぼ二次創作から学んでいるため、独自の設定が多々あると思います。
それでも良いという方はよろしくお願いします
みんなに持て囃されるトップアイドル。
何処へ行っても声をかけられ、握手やサインを求められる人気者。
不満なんて一切ない、まさに完璧な人生…!
ウマ娘アイドルって、サイコー!
。。。。。
「アイドルやめたーい!もう飽きたー!」
まぁ、人っていうのは慣れる生き物なわけで。
慣れれば必然と飽きはやってくるものである。
「ちょっとリリー!楽屋の中でそんなこと大声で言わないで!誰が聞いてるか分かんないんだから!」
…マネージャーに怒られた。そう言われるのは分かっていた事だが、こうも強く言われるとそれはそれとして気に入らない。
頬を膨らませて抗議の念を顔に出してみる。ぶー。
「まったく…。いついかなる時も発言には気をつけなさい。」
ぶぅぅ。
「アイドルなんて特に気を付けなきゃだめなの。新聞やら週刊誌やらにのって世間の笑いものになるなんていやでしょう?」
ぶぅぅぅ!
「…はぁー。分かった。気持ちはもう充分伝わったから、その顔やめなさい。無駄に顔がいいのが腹立つわね」
ようやく指摘されたので小言が増えるのに比例して膨らませていた頬をひっこめる。
というか無駄にって、マネージャーが担当にそんなこと言っていいのか?ああん?普通のアイドルだったら「担当チェーンジ!」と叫んでいるところだ。ま、私はゆるすけどね。私の寛大さに感謝するといい。断じて顔がいいと褒められたからゆるすわけじゃない。私はそんなにちょろい女ではないのだ。
「ほら、にやにやしてないでさっさと支度する。出番近づいてきてるんだからね」
「にやにやなんてしてない。断じてしてない」
「わかったから早く!」
まーったく、アイドルってのも楽じゃない。ただちやほやされたいだけだったのにこの仕打ち。そんなに私が好きか?しょうがない。
ひょいとやたらふかふかのソファから身を起こし、衣装やら化粧やらをチェックする。このソファともしばらくの別れか…。短い間だったがさらばだ私の彼氏。浮気っぽいあたしを許しておくれ…!
「ってそうじゃない!私そろそろアイドルやめたいの!もう飽きたの!次なる新天地が私を待ってるの!」
危ない。もう少しで忘れるとこだった。私をおだてて注意を逸らすとは、やるじゃないかこのジャーマネ。
「…っち。ごまかされなかったか…。」
おい今なんつった。
「あのねぇ。今どんなときかわかってんの?武道館よ?武道館ライブ。そーんな大事な時になんてこと言い出すのよ。全アイドルの夢の舞台を目前にしてあほなこと言ってないでさっさと行くわよ!」
「あちょ待っ…」
…勢いでごまかして楽屋を出ていくマネージャー。きたない。さすがおとなきたない。 …まあいいだろう。今はごまかされておいてやる。今は、だ。
いずれ私はお前らのようなアイドル事務所の手をかいくぐって出し抜いてやる。私がただおとなしくて可愛くてお淑やかで人の目を集める天性の才があって頭もいいだけの高値の花子さんだと思ったら大間違いだ!後になっても遅いぞ?せいぜい私の手を乞い願うがいい…!ふふふ。ふふふふふ。ふはははははははは。
「ふははははははははーー!」
「さっさとしろこのぽんこつアイドル!」
あい。
。。。。。
「みんなー!今日は私のライブに来てくれてありがとぉーー!!」
「ここに来られたのも、これまで応援してくれてたみんなのおかげだよ!ほんっっとうにありがとぉーー!!」
「私、頑張るから!これからも応援、よろしくねー!」
。。。。。
「ほら、次の仕事来たわよ。こっちの事情でやらなきゃいけない仕事はもうある程度ピックアップして予定組んでおいたから、あとで確認してちょうだい。それから、それ以外の出演依頼とかはこっちにまとめてあるから、この中から好きなの選ぶといいわ」
無駄に仕事の早いマネージャーが事務所のソファで寝ている私にタブレット端末を手渡してくる。
ライブが終わってからやけに仕事が増えた。
みんな私のこと好きすぎない?ちょっとくらいほかに浮気してくれてもいいのよ?ほら、私っててーしゅくな淑女だから、浮気とか許容できるいい女だから!だから事務所でぐらいはゆっくりさせて!
「選べっていわれてもなー」
渡されたタブレットにざっと目を通しながらぼやく。ウマ娘という特殊な出自であるからか、たまーにほかのアイドルではできない妙な企画も上がっていて、見る分には割と面白い。だが自分がそれをやるとなると話は変わってくる。
にんじんの収穫て、ちょっと。…いやわりといいかもしれない。
「んー、お?」
すいすいと流し読みしながら目を通していくとちょっと気になる企画を発見。…そういや最近走ってなかったし、ちょうどいいかもしれない。曲がりなりにもウマ娘である身だし、走りたいという欲求は少なからずあるのだ。
「マネージャー!私これやるー!」
「どれどれ。あー、そういえばあなたもウマ娘だものね。分かったわ、手配してくるから、ほかの企画にも一応目を通しておいて」
「あーい」
さすがと言うべきか、私の考えを察するのはお手の物らしい。楽でいいね。
「ねぇねぇマネージャー。再来週休みあったっしょ?海いこーよ海ー!」
「海ねぇ…まだシーズンじゃないし、プライベートなところ探さないと泳ぐなんてできないわよ?」
む、そうだった。今をときめくトップアイドル様が海なんていったら大変なことになる。
「じゃあお花見は?そろそろじゃなかったっけ?」
「それはもう終わった。今年はやたら早咲きだったってニュースで言ってたわ」
むむ、ならしょうがない。もとより私は花より団子派だったし、あんまり期待はしてなかった。
「ならホームパーティにしよう!たこ焼き器とか買ってさ!踊りあかすなんてどうよ!」
「あなた今減量中でしょうが。それに友達そんなにいるの?」
急に致命傷負わせにくるじゃん?私のこと嫌い?別に二人でもよくない?
にしてもどれもダメなのか。もっと他に、他に…。
「…あ!なら私がマネージャーのために合コン開いたげる!確か前に親が子供見せろってうるさーいってぐちってたじゃん。私の伝手つかっていい人揃えてあげるよ!もーお礼なんていいよ日頃の感謝の気持ちを――」
バシッときた。ちょ、ふつう担当アイドルの頭をそんな軽率に殴る!?というかそのハリセンどこから出したのさ!もー、彼氏ができないって嘆いてるから私が一肌脱ごうって言ってるのにその仕打ちはなくない?だからいつまでたっても彼氏ができない喪女なん――。
スパァンってきた。痛い!痛いって!ごめんって!もう明日の朝刊が「トップアイドルパワハラ被害!?事務所による卑劣な被害とは!?」ってなる前にやめなさいったら!
「はぁぁぁぁぁ、まったく」
そんなため息つかなくてもよくない?
「くだらないこと言ってないで手ぇ動かしなさい。遊びたいならあとで付き合ってあげるから」
「はーい」
うちのマネージャーにはツンデレ属性がある。今日のところはそのかわいらしいツンデレに免じて許してやろう。
だが言質はとった。あとでとことん遊び倒してやろう。
再びタブレットに目を落としてほくそ笑む。
「ああ、それと今日の夜空いてるわね?仕事終わったらご飯奢ってあげるから、ちょっと付き合いなさい」
「あいあー…」
……ん?アイドルに夜付き合えって?ままままさかついに男あきらめて女に!
「…なにあほなこと考えてるか知らないけど、真面目な話よ。あなたの今後に関わる、ね」
なぁんだ。いやまあわかっては分かってはいたけどね。マネージャーと夕飯ってのも初めてってわけじゃないし。
ただ前に一緒に食べたとき酔っぱらったマネージャーから愚痴の嵐が来たから、ちょっと回避したかったってだけ。
でもまぁいつになく真剣な顔したマネージャーに言われちゃあ
「しょうがないなぁ」
ま、断れないよね。