トップアイドルのウマ娘がアグネスデジタルのトレーナーをやる話   作:けいI

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いざ、トレセン学園へ!

 ―ここはトレセン学園。皆の憧れ、輝ける栄光の舞台、『トゥインクル・シリーズ』を目指して走る前途有望なウマ娘たちが数多く集い…。仲間たちと共に学び、身と心を鍛える、切磋琢磨の日々を過ごしている。

 あとは…あれだ理事長がちっさい。他に情報が出てこないのでとりあえず目の前にあるわかりやすい情報を脳内学園PRに追記する。

 口に出したりはしない。空気の読める子なので☆

 

 「歓迎!ようこそ、我がトレセン学園へ!理事長の秋川やよいだ!」

 「アイドルのシルバーリリーフです。この度はご招待いただきありがとうございます!」

 

 私たち二人は学園長室にて今回の仕事の打ち合わせに来ていた。大事なことだからおふざけはなしだ。真剣に聞かねばなるまい。

 というか声大きいな。体が小さいから声だけでも相手を上回ろうという努力だろうか。だとしたらなんとも涙ぐましい努力ではないか、応援していると伝えてあげた方がいいだろう。しかしなんと伝えるべきかな、「体の大きさがその人の器を示すものではないと表すその姿勢。感服いたしました!!」とかがいいだろうか。いや、ただの煽りにしか聞こえないな。やめとこう。うん。

 

 「そこに掛けてくれたまえ。今お茶を出そう」

 

 …社会人としては当然の気遣いなのかもしれんが、その体躯でやられると違和感がひどい。「年はいくつですか?」って聞きたい。いやこれは煽りとかではなくて本当に純粋に気になるというか。

 …だめだ!どう考えても失礼な物言いにしかならない…!女性に年齢を聞くのは同姓であってもあまりよろしくはないのだ。

 外見年齢的に中学生くらいだと思うのだがさすがにそれはないだろう。…20代…前半、くらいだろうか?わからない…!君はどう思うマネージャー(36)!

 この推察をどう思うかと隣にいるマネージャー(36)に目で問いかけてみるとそこには理事長秘書の方と名刺の交換をしているマネージャー(36)の姿が。

 ちょ、こっち見て!担当アイドルから目を離しちゃダメでしょ!いいの?もう直接聞いちゃうよ!?あっコラ「お互い大変ですね」ってなんだ!聞き捨てならんぞ説明しろやゴラァ!

 

 「では早速だがまずは企画の内容を改めて説明しよう!たづな!」

 「はい。では理事長に変わりまして、改めてご説明いたします」

 

 私がマネージャー(36)に(目線で)喧嘩を売っている間に始まった企画説明をざっくりとまとめると、新設されたレース、『URAファイナルズ』の広告塔を私に担ってほしい、とのことだった。

 まあ事前に企画書は読んだけど、要はオープニングセレモニーにてライブを行ってほしいという話だ。

 そりゃまあウマ娘アイドルなんてぴったりすぎる広告塔もなかなかないだろう。

 

 「――というわけで企画の説明は以上になります。何かご質問などはありますか?」

 「では、いくつかお聞きしたいのですが」

 

 そう言って手を上げたのはマネージャーだ。私は特に質問などない。

 マネージャーはアイドルがライブを行うことでレース後にウイニングライブを行うのウマ娘にプレッシャーがーとか、ライブで使う楽曲に関してそちらの指定はどうーとか聞いてる。

 まあ詳しいことは後でマネージャーに聞けばいいから今は真面目な顔をキープしておく。うんうん聞いてる。聞いてるよー。

 

 

 

 

 

 「――なるほど。私からの質問は以上になります。ありがとうございました」

 「いえいえ。シルバーリリーフさんはどうでしょう?何か質問はございますか?」

 

 …っは!やばい聞いてなかった。質問?ないよ。いやでもここでないっていうのも…。

 あ、そうだ。

 

 「学園内を見て回ってもいいですか?」

 「許可!構わないとも!」

 

 判断が早い!さっすが理事長。やっぱり人の器は身長で測れるものではないね。

 

 「…理事長?」

 「ひっ!?あ、だ、だがまだ生徒がいる!あまり彼女たちの時間をとるようなことはしないでやってくれ!」

 

 …この学園の力関係がちらほら見えるなぁ。

 とりあえず許可は得たし、学園の生徒の様子も見たいし、さっそく学園散策へしゅっぱ――

 

 「リリー?」

 「はい。もちろん最後まで聞いてからにしますよ?社会人として当然ですともええ」

 

 意気揚々と腰を上げかけたところでマネージャーストップ。おとなしく腰を下ろす。

 

 別にビビったわけじゃないですよ?社会人としてのきょーじ?とかありますもの。当然じゃないですか。やっぱり一流アイドルたるものそのくらいの分別はついていますともええ。大事な要件もまだ話し合ってませんし?

 …なのでもうそんな睨みつけてこなくてもいいと思いません?思いませんかそうですか。

 

 「…はぁ」

 「…ふふっ」

 

 マネージャーが眉間をもみほぐす様子をみて秘書さんは微笑している。

 その視線に気づいたマネージャーは照れくさそうに頬を搔いた。

 

 …なんでそこだけ青春っぽい雰囲気になってんの?

 

 

 「んんっ。では仕事の内容は理解しました。契約の方は後程いたしましょう。つぎはこちらの話なのですが――」

 

 

 私のじとっとした視線から目を逸らし、マネージャーが口を開いた。

 

 

 

 

 …さて、私にとっての本題だ。

 

 

 

 

 

 

 

 。。。。。

 

 

 

 

 

 

 

 そうしてたどりついた三女神像の前。身長より高いその像を仰ぎ見る。

 前からちょっと見てみたかったんだよね。なんかかっこいい雰囲気あるし。

 

 さてと、それよりも。

 

 「あ、あの!ふぁ、ファンです!握手してくらさい!」

 「え、ちょっズルいわよ!私だってサイン欲しいのに我慢してるんだから!」

 

 視線を正面に戻し、自分の前にいるファンに笑顔を向ける。にっこー。

 

 「ふふっ。みんなー押さないでー!時間はあるからゆっくりねー!」

 

 ふーやれやれ。人気者はつらいぜ!

 私が来ているという話をどこかから聞きつけたらしい生徒に囲まれてしまった。変装してたんだけどなー!いやぁ困っちゃうなー!

 …なんでばれたんだろ。マスクと帽子だけじゃだめか?サングラスもつけるべきなのか?いやでもそうすると今度は不審者と間違われそうだしなー。

 

 「あ、あああの!今日ここにいらしたのは撮影か何かでしょうか!?」

 「もしかしてウイニングライブの講師とか!?」

 「え!?トップアイドルに講師依頼したって噂本当だったの!?」

 「噓!ほんとに!?」

 

 うーんどうしよう。どう乗り切ろう。見学させてもらってるだけって言ったらついてきちゃいそうだしなぁ。というかなんだその噂。アイドルに教わってどうする。ちゃんとした講師に教わりなさいよ。マネージャーは契約うんぬんの話があるからって理事長室において来ちゃったし。…よし。

 

 「実は今みんなの活動を見学させてもらおうと思ってたんだ。よければみんなの練習風景を見せてもらってもいいかな?」

 

 そう尋ねると、そこら中から黄色い声が上がる。…思ったより反響が大きい。ちょっと早まったか?いや行ける。このまま乗り切ろう。

 

 「やっぱり日本最高峰のこの学園では訓練の様子を見学するだけでもとーっても有意義だからね!一応、理事長に許可はもらったんだけど、トレーナーさんの指導方針によってはあまり学外に出したくない秘匿された訓練メニューなどがあるかもしれないからね。各トレーナーさんはもちろん。その成果ともいえるみんなから、見学の許可をもらいたいんだ!」

 

 とりあえず今はやらねばならんのはこの子達を練習に戻すことだ。いや今が練習中なのかは知らないけど。やっぱり理事長にいろいろ聞いてからくるんだった。

 

 「も、もちろん私たちは構いません!ご存分にご覧になってください!」

 「よかった!ありがとね!」

 

 ま、所詮口約束だがやらないよりいいだろう。ひとまずみんなの練習場所とトレーナーの居場所を聞き、後で行くから待っててほしいといった旨を伝える。そして解散していく一同を手を振って見送――。

 

 「あ、そうだ。もう一つ聞いてもいいかな?」

 

 もう一つ聞きたいことを忘れていた。

 最後に握手して去ろうとした一人を捕まえて尋ねる。

 

 

 「今トレーナーがついていない子たちについてなんだけど――」

 

 

 

 

 

 。。。。。

 

 

 

 

 

 

 彼女たちと彼女たちのトレーナーにも許可をもらい、ようやく見学を再開したすることができた。どうやら私の存在は此処では相当大きいもののようで、行く先々でキャーキャー言われる。にへへ。

 よし、とりあえずジムと体育館は見たし、つぎはいよいよレース場にでも、と足を向けたところで後ろから声がかかった。

 

 「ああ、ようやく見つけた。あまり好き勝手動き回らないで頂戴。見つけるの大変…でもないわね」

 

 マネージャーに追いつかれてしまった。いい気分なので小言は控えてもらいたい。今はまだこの賞賛を浴びていたいのだ。

 

 「それにしても、その変装はどうしたの?見つかると大騒ぎになるからって自分からつけてたじゃない」

 「わりとすぐばれちゃったから外した。私が来てるってことがすでに広まってたみたいでね。変装してると逆にわかりやすいみたい」

 

 これはさっきトレーナーさんたちに見学許可をもらいに行ったときに聞いたことだ。学園長からトレーナーさんたちに私が見学するという通達がすでに行っていたらしく、見学許可自体はスムーズに取れた。

 

 「それで?いい子はいたの?」

 「そりゃもちろん。でも、せっかくならもう少し探したいな」

 

 マネージャーと話しながら歩いていると、芝の香りが鼻をかすめていく。どうやらレース場が近いらしい。

 

 さて、日本最高峰を冠する学園のレース場。どれほどのものか楽しみだなぁ。

 

 

 

 「ほわぁー…」

 

 すごい。ひろい。

 

 思わず語彙が消失したが、さすがトレセン学園。日本最高峰というだけあってか、広々としたターフのレース場が広がっている。奥に見えるのはダートだろうか?

 にしてもほんとに広いな。ここ東京のはずなんだけど。実はアメリカとか異世界とかに飛んでたりしない?

 

 益体もないことを考えながらしばらくぼーっとレース場を眺めていると、とん、とマネージャーに肩をたたかれる。レース場に夢中で気にしていなかったがどうやらそこそこの人数が練習中らしい。ちらほらと視線を感じる。対応は後でいいだろう。今私は自然を感じるのに忙しい。

 

 「彼女たちね。まだトレーナーのついていないのは」

 

 ほう?そう言われたら否が応にも気にせざるを得ない。私の今後に関わってくる問題だ。どれ、カワイ子ちゃんたちを近くで見ようじゃないか。

 

 レース場に降りて歩みを進めていくと、なるほど歓喜と困惑が入り混じった顔が良く見える。まずは近くで監督しているらしいトレーナーさんに挨拶しとこうか。

 

 「こんにちは!連絡が行っていると思いますが、アイドルをやっているシルバーリリーフといいます!今、学園の中をいろいろ見学させてもらってるんですが、こちら見ていてもいいでしょうか?」

 「はい、もちろん構いませんよ。今後のためにもよく見ておいた方が良いでしょうから」

 

 苦笑交じりに言われてしまった。

 どうやら私の事情はトレーナーにはもう知れ渡っているとみていいだろう。

 

 「ではお言葉に甘えて!」

 

 と、練習風景に目を向けるとまあ当然というべきか、なぜ?どうして?といった目が多数向けられている。

 

 これでは練習に身が入らないだろう。さて、なんと言えばいいだろうか。

 

 と私が言葉を探しているうちに、隣にいた監督トレーナーが口を開いた。

 

 「みんな聞いているかもしれないが、今日はアイドルのシルバーリリーフさんが後学のためにと見学に来ている!憧れの人に見られているということで緊張しているかもしれん!だが、本番のレースはこの比じゃあない!いい機会だから今のうちにその感覚を覚えておけ!」

 

 はい!と、大きな返事を返し、彼女らは一層気合の入った様子で練習に打ち込み始めた。

 

 なるほど、さすがである。と賞賛を込めた目を隣に向けると、いたずらっぽい笑みを浮かべたウィンクを返された。なんだこいつ。仲良くなれそう。

 

 目線のみでお代官様ごっこをしていると、反対側から肘で小突かれる。まあおそらくしっかり練習を見ろといった意味合いであろう。これ以上ふざけていてもマネージャーからの叱責が痛くなるだけなので再びレース場に顔を向ける。目に見えた地雷を踏む趣味はないのだ。

 

 …ふむ、それにしても

 

 「皆さんレベルが高いですね」

 

 マネージャーが気持ちを代弁してくれた。

 そう、みんなレベルが高いのだ。まだちょっとした走り込みしか見ていないがそれでもフォームが綺麗に整っているのがわかる。あのウマ特有の前傾姿勢での走りは一朝一夕で見につくものではない。まあさすがにプロとは比べるまでもないのだが、少なくとも今この子たちにトレーナーがついていない、というのが信じられないレベルだ。

 これがここの最低限のレベルだというのならちょっと自信を無くしてしまう。

 

 「ありがとうございまず。そう言っていただけると彼女達も喜ぶでしょう。」

 

 監督トレーナーさんが話し始める。

 なにか秘訣とか秘密の特訓法とかあるんだろうか。超知りたい。

 

 

 「彼女達には確かに現在特定のトレーナーがついていません。私が今こうして見ているのも、手の空いているトレーナーが持ち回りでやっていることです。まあ、持ち回りというだけあって、トレーナーそれぞれで練習法が違ったりするものですから、最初はみんな少し混乱するのです。僕らにも自分の担当がいるので時間を共有して練習法の打ち合わせとかが難しくて」

 

 

 監督トレーナーさんは少し申し訳なさそうに頬を掻く。

 

 

 

 「でも彼女達はトレーナーがつくまでの辛抱だと、互いに鼓舞しあって、いろんなトレーナーから教わったことを自分たちなりに理解して練習に励んでくれているんですよ。自分にトレーナーがついたときにがっかりされないようにって」

 

 

 

 

 

 …ちょっと感動した。自分がトレーナーに選ばれないのに友達はどんどん先に行く。そんな中で空元気だとしても互いを励ましあってじっと待つなんて、私にはできそうにない。

 

 なるほど。さすがトレセン学園。生徒の質がバカみたいに高い。トレーナー不足が悔やまれるわけだ。遊び半分で来たつもりはなかったが、この契約が決まって少し気が緩んでいたみたいだ。これは私も浮かれてられないな。帯を締めなそう。

 

 よしっ、とさっそく緩んでいた気合を入れなおしてしっかりと自分の担当を――

 

 「いやぁ、そしてそれを見ていた僕たちトレーナーも触発されてしまって、トレーナーそれぞれが自分の担当のウマ娘の調整に忙しいってときに、少しでも時間を割いて彼女たちの面倒を見ようとするものだから私なんてこの間担当の子に浮気だなんだと騒がれてしまいまして――」

 

 

 

 ……なんだろう。この肩透かし感。感動エピソードで気合を入れさせようっていう魂胆じゃなかったのか。惚気を入れてくんじゃない。やめろ、だれもお前が尻に敷かれている話とか求めてない。私の奮起を返せ。

 

 ついつい恨みがましい目で見ると、こちらの視線の意味に気づいたのか顔を赤らめて咳払いをする監督トレーナー。なに照れてんだぶっとばすぞ。

 

 

 「まあ、そんな彼女たちなので誰を選んでも、しっかり見てあげてください」

 

 

 お願いします。と先ほどの醜態とは打って変わって真剣な顔で頭を下げる監督トレーナー。

 

 …彼はさっき言っていた。

 

 彼女たちの監督は『全』トレーナーで持ち回りで行っていると。

 

 なら、きっと彼だけじゃないのだろう。

 こうして彼女たちのために、本来部外者であるはずの私なんかに頭を下げるのは。

 

 

 …まったく、自分の担当でもないのにそこまで入れ込んじゃって。しょうがないなぁもう。そんなこと言われちゃったら――

 

 

 「――はい!任せてください!」

 

 

 

 私も、負けてられないな。

 

 

 

 

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