トップアイドルのウマ娘がアグネスデジタルのトレーナーをやる話   作:けいI

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みつけた

 決意を新たに、もう一度努力を惜しまない少女たちに視線を振る。

 

 

 …なるほど、先ほどの話を聞いた後だと、表情が違って見える。

 あれは叫んでいるのだろう。

 

 

 『私をみろ!』と。

 

 

 その気持ちは、よく、わかる。私とてあまり他人事とは思えない叫びだ。

 アイドルなんて、観衆の目がなければただの夢見る少女に過ぎない。

 自分に注目を集めるにはどうすればいいのか、なんて試行錯誤もあった…。

 

 そして当然、素人の考えがそうそう実ることはなく何度も挫折しそうにもなった。

 努力が報われない、だなんて本当によくある話なのだ。

 

 

 …やめよう。彼女たちに自分を重ねるのは良くない。彼女たちは今、必死に生きている。青春の中でもがいている。私と比較するなんて、どんな侮辱だ。

 

 

 

 私は今、選ぶ立場だ。

 

 

 

 応援しよう。そして、挑戦する彼女達をしかと見届けよう。

 

 

 

 

 

 大丈夫。

 

 

 

 

 

 君たちを求める人は、必ずやってくるの――

 「あれ?そういえば彼女がいないな…。おーいハルウララ!アグネスデジタルはー?」

 

 

 

 

 

 

 

 ……うん。そう。君たちを求める人は必ずや――

 「えーっとねー。わかんない!授業終わってすぐにどっか飛び出していってたよー?」

 

 

 

 

 

 

 

 ………ちょっと間が悪かったね。コホン。

 

 

 

 

 

 そう。君たちを求める人はかな――

 「そうか…困ったな。連絡は来てないんだが。誰か知ってるものはいるかー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ………ひょっとして来てほしくない?い、いやいや、そんなことはない。さっき話を聞いたばかりじゃないか。

 『いずれ現れるトレーナーのために、我らは研鑽を怠ることなく己が力を磨くのだ。キリッ』って言ってたって。

 うん。大体あってるはず。まったくもう。私ったら被害妄想が激しいんだから!直さなくっちゃ駄目ねー!

 

 

 ん”ん”っ。よし。そう。君たちを求め――――

 「あーたしか『私の最推しがー』っていって廊下走ってるの、私みたよー?」

 「あったね、そういえば。シンボリルドルフ会長怒ってたのそれかな?」

 「ま、でもそのうち来るでしょ。彼女無意味にさぼるような子じゃないし」

 「ねーたしかに」

 

 

 …………。

 

 

 「そうか…。すみません、シルバーリリーフさん。まだ来てない彼女も、さぼるような子じゃないんですが。ちょっと連絡とってみるので、少しの間ここをお任せしてもいいでしょうか?」

 「あ、はい。それは大変ですね。ここは私たちが見ておきますので、どうか行ってあげてください」

 「すいません。ありがとうございます」

 

 

 …そう言って、彼は携帯を片手に去っていった。

 

 

 

 …………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…何に怒ってるか知らないけど、任された以上ちゃんと監督しなさいよ?」

 「…別に怒ってないし」

 

 

 

 

 

 …怒ってないったら!

 

 

 

 

 。。。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …今日は空が綺麗だな。

 

 

 

 小鳥たちの歌声も聞こえる。

 

 

 

 そして、私の大好きな、ウマ娘たちの声も……。

 

 

 

 

 

 ……こうゆうときなんて言うんだっけ……たしか、そう。

 

 

 

 

 

 「知らない天井だ…………………………って、いや天井ないし!…ん?あ、あれ?え!?ちょっと待ってここはだれ!?わたしはどこ!?」

 

 危うく目標をセンターに入れてスイッチごっこまで始めるところだった!

 なんで私屋外で寝てるの?本当にどこだここ。

 

 「ここは…三女神像の裏?」

 

 …なるほどね?……いや意味が分からない。

 おおお落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない。ひとつづつ状況を整理するんだ。こういう時はあれだ。素数を数えるんだ!いや違う数えてどうする。5W1Hだ。

 

 えーとまずは?

 

 Q1,when(いつ?)

 

 ……分からん。時計どこだ?

 

 …なーい。え、しょっぱなで詰んだ?いやいや待て待てSUMAHOだ。私には文明の利器であるSUMAHOがあるじゃないか。これがあれば時間は分かる。なんて便利なんだ。みんな持つべきだいや今時持ってないやつのがレアだわバカ。

 

 「えーっと今の時間はー…ってなにこれすごい通知来てる。『デジちゃんついにイカれたかー?』って失礼すぎるでしょ誰だこれともちゃんかよ愛してる。」

 

 まだメダパニってんのか落ち着け私。とりあえず他の通知の確認だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …ふむふむ、なるほどなるほど。皆の意見をまとめるとつまり?

 私はどうやら授業後に突然教室を飛び出し?階段を転げ落ち「推し」に関して何かしら叫びながら廊下を爆走し?外に飛び出した後、誰かを探して校内を爆走し行方がつかめなくなったと。なるほどね?

 

 

 

 …いや、いやいやいやあるわけないだろうそんな急に頭が狂ったかのような行動をとるなんてあほじゃあるまいし今時小学生でももうちょい筋の通った話するよ?もし実際にそんなのがいるなら完全に頭に障害の疑いがあるじゃん精神科にかかるべきだ今すぐ入院したほうがいいだろうともいいきれないだろう存在が私だ異論はない。

 やるな。私はやる。推しのためならここまで動く。

 この学園に入ったときだっていろんな人にドン引きされたし。

 なんなら私のコース適正の幅広さの理由でいろんな人をドン引かせてるし。 

 

 

 つまりまあなんだ。そんなことなら安心だ。いつものことだった。

 

 「はぁーよかったー焦ったー」

 

 もう、むやみに驚かせないでほしい。過去の私よ。危うくSAN値が減るところだった。倒れるときは場所を選べとさんざん言われてきたじゃないか。普段からもっと慎みを持って…あ、「推しは推せるときに推せ」の信条に相反するからって突っぱねたんだった。

 

 

 とりあえず、事態が想定より軽いものだと理解して落ち着いた。見慣れた保健室の天井だったならもっと早く事態を把握できただろう。

 

 

 …となると気になるのは私をそこまで狂化状態にさせた御方の存在だ。何があったんだろ?

 ダイワスカーレットさんとウォッカさんの喧嘩とか?

 …いやそれは朝見た気がするなごちそうさまでしたうへへへへ。

 

 …じゃなくて!えーっと校内で見る人かなー?なんとなく誰であってもやりそうな気はするんだけど。

 

 

 

 

 

 

 ――と自分を狂気に陥れた犯人(冤罪)の心当たりを考えていると、

 ふと、どことなく懐かしい香りが鼻孔をくすぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …何だろう。間違いなく自分はこの香りの主を知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この懐かしくもどこか心躍る感じ…。たしかかなり昔…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思い出せ、思い出せと過去の自分が言っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わからない。でもたしかに昔、この香りの主に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭の中に霧が立ち込める。

 

 だが、その霧は決して濃いものではない。

 

 自分の根幹にあるものをうっすらと覆っているだけのような、柔らかく包み込む繭のような……。

 

 

 

 

 

 ゆっくりと、その霧をの中を歩いてゆく。

 

 そして、恐る恐るその中心に手を伸ばし――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …いや誰だ?もう少しで出てきそうなんだけど…。あ、まって過去の私!エスカリボルグで殴り掛かってくるのはやめて!思い出すどころか思いを馳せることになっちゃう!

 

 

 

 

 

 セルフで走馬灯を見ていると脳裏に引っかかるものがあった。これは、そう…!

 

 

 

 

 

 「リリたんの匂いだ!私の最推しの!」

 

 

 

 

 

 そう、謎は解けた。

 このうっすらと香る優雅で気品があり、だがどこか隠し味のように魅惑的な想いが渦巻きながらも芯には確かな快活さを感じさせる心安らぐ香りは何を隠そう自分の最推しのアイドル。シルバーリリーフの香りだったのだ!

 何も難しいことなどなかった。自分の根幹にあるもの。今の自分を形作る支柱となっているもの。自分のウマ娘好きの原因であるもの。そのベールに包まれた一部があらわになっただけだったであった。

 

 「なぁんだそっかリリたんの香りかぁ。気づかなかったの悔しいなぁ!リリたんが使ってる洗剤と香水は特定してたのにー!ウマ娘が好きすぎてウマ娘中毒とまで言われるようになった私が最推しの匂いに気づかないなんてファン失格だよ!もうどうして一発で気づかなかったのかなぁ私はー!」

 

 ごめんよ過去のわたしぃー!と、空に向けて叫んで気を晴らす。

 

 にしてもそっか。私の最推しが来てるのか。それなら私がバーサーカーやっちゃったのも、今ここで倒れてるのも納得だわ。大方見てたら尊さがあふれ出して尊死したとかそんなんだろう。ほんとにいつもの発作だった。まぁいつもならだいた保健室で目が覚めるからすぐ気づかなかったのだろう。今日はたまたま持病の発作が起こった時に周りに人がいなかっただけなのだ。

 

 謎が解けたら、過去の記憶をだんだん取り戻してきた。

 あ、ほらやっぱりそうだ。リリたんが来てるの確信して、会えたらどうしよう、いやでも遠目に見るぐらいはと校内駆けずり回って

 道行く知らない生徒にリリたん来てるかもだから情報くれとねだり、いつもならご褒美のはずのシンボリルドルフ会長からの説教も時間が惜しいからと天井に張り付き回避し

 ようやく三女神像の前でその後ろ姿を見つけたときに歓喜に打ち震え、せめて正面から見たいからと匍匐前進で三女神像の後ろにたどり着き、正面からそのご尊顔を拝謁することができた栄誉にガチ恋口上が口元まで出かかった後に!

 

 あまりの感情に体が耐えきれず意識を失った、と。

 

 びっくりするくらいいつもの私だった。

 

 冷静になって思い返してみると自分のあまりの醜態に思わず笑いが込み上げてきた。

 

 そしてこらえきれず、ついつい誰もいない三女神像の前で吹き出してしまった。

 

 

 

 

 あはははは。バカだなー私は!

 

 

 

 

 あははははははは。

 

 

 

 

 

 

 あはははははははははは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が現実を認識して再び狂気に侵されるまで、あと10秒。

 

 

 

 

 

 

 

 。。。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、電話を終えて戻ってきた監督トレーナーが言った言葉を理解するのに、少々の時間を要した。

 

 「えと、すいません。もう一度お願いできますか?」

 

 「ええもちろん。自分でも随分なことを言っているなとは思うので」

 

 ちょっとあまり理解できなかったのでつい聞き返すと、監督トレーナーはどこか遠い目をしてもう一度繰り返してくれた。

 

 「今遅れている子に連絡を取って見たのですが、その、『推しが推すに推せるとき、推した推しを推し通さん――』とかよくわからないことを喚き散らして意思の疎通が取れる状態にありませんでした。とりあえず、倒錯しまくった言葉の中から三女神像の近くにいるらしいことは分かったので、近くにいるトレーナーに連絡を取って回収をお願いしたんですが、歌ったり踊ったりブリッジしたり周囲の匂いを嗅いだりと、狂ったように暴れまわって手が付けられないそうなんです。なので彼女の『最推し』であるあなたなら対処ができるのではないかと思いまして…」

 

 どうやら聞き間違いではなかったらしい。つまり私にその発狂状態にある子の対処をしろ、と。

 

 

 

 「え?」

 

 

 

 意味が分からん。いや、理解はできるんだ。唯一対処ができそうな人に暴れ馬(比喩ではない)の手綱を握ってほしいってことでしょ?わかるわかる。でも理解したくはない。正気か?

 なんかさっき感動話から惚気話への感情急転直下のフリーフォールをさせられた件といい、私の渾身のシリアスをぶった切られた件といい、目の前の監督トレーナーへの好感度と尊敬度が大暴落を起こしてるんだけど。あってまだ一時間もたってないよね?実は私気づかない間にあなたの家族を滅ぼしたりでもしちゃったかな?

 

 うちのマネージャーが『トップアイドルって大変ねー』とでも言いたげな目で私を見てる。おい、私をトップアイドルにしたのは誰だかわかってんのか?責任の一端は間違いなくあんたにもあるんだからな?目を逸らすな!一緒に背負って!この罪を私と一緒に背負って生きて!

 

 「どうかお願いできませんか?この通り!」

 

 頭を深々と下げ懇願してくる監督トレーナー。

 なんでさっきより深く下げるんだよ。本当に私の感動を返してほしい。

 ほら急に頭下げるからみんな気になってこっち見てんじゃん。もう頭あげなって、ちょ、やめ、や、やめろやおい!

 

 「わ、わかりましたから、頭を上げて――」

 「本当ですか!?ありがとうございます!ここは見ておくので、どうぞ行ってあげてください!道は分かりますか?大丈夫ですか!それは失礼しましたお気を付けて!!」

 

 目上の人にずっと頭を下げられたままだと据わりが悪いので、なんとか頭を上げてもらおうと口を開くと、言質は取ったばかりにまくし立てて問題ごとを押し付けてくる監督トレーナー。

 

 思わずというか、つい促されるままに私たちはその場を後にした。

 

 

 え?やっぱり私嫌われてたりする?

 

 

 

 

 

 。。。。。

 

 

 

 

 

 

 

 Mission1:とち狂った暴れ馬を制御せよ

 

 

 

 ――ジジッー気をつけろ!奴はその身体性能の高さをフル活用してこちらの背後をついてくる!

 

 

 ――こちらを認識した瞬間からパワーが跳ね上がりやがった!現在こちらを攻撃する意思はないようだが確信は持てない。

 

 

 ――奴が冷静さを取り戻すか、こちらがやつを制圧するしか道はない!もう一度言うぞ、決して気を抜くなよ!

 

 

 ――くそっ、入ってすぐに先輩にこんなこと押し付けられるなんて俺もついてねえ。

 

 

 ――ひょっとしてお前もその口か?ははっ、なんだ。そりゃあお互い運が悪かったな。

 

 

 ――ああ、わかってる。俺はここで死ぬつもりはねぇ。

 

 

 ――ここで戦果を挙げて、一気に昇進としゃれこもうじゃねえか。

 

 

 

 ――やるぞ兄弟!準備はいいな!

 

 

 

 

 ――突撃ぃぃぃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほ、ほわぁぁぁぁぁあああ!さ、最推しが目の前にいる!夢か?これは夢か!?いいや夢だ間違いない!現実で私ごときが彼女に拝謁するなんて恐ろしいことできるはずない!あの宝石のごとく煌めく肌と間違いなく葦毛のトップクラスであろう光輝く銀髪!美の女神すら首を垂れるであろう美貌!そして何より私の胸を高鳴らせ続けるあの深紅の瞳!ああ見える!私には天使の環と羽がくっきりと見えるぅぅ!間違いない。天が地上に遣わした女神だ間違いない!だっていい匂いするもん!いまめっちゃいい匂いがするもん!え?そんな御方が今までライブしてくれてたの?だれのため?ファンのため?死ぬか?私死ぬのか?ああ、でもあのお方の笑顔で死ぬならそれは本望…!や、やばいどうしよう落ち着け私!今倒れて推しのライブを肉眼で拝見する機会を棒に振るなんてあってはならない!ファンとしてそんな無様な真似ができるはず…あ、今こっち見た。絶対こっち見た!目ぇ合ったもん嘘じゃない!あ、いまニコッてした!まさか私に向けて!?そんなファンサがすぎますダメですいけませんお客様!私は生涯ウマ娘達の壁として生きると決めていて…っ!っきゃああああああ!」

 

 

 

 

 

 「第一印象で決めました。私の勝利の女神になってください」

 

 

 

 

 

 「ぱ」

 

 

 

 




私はゲームのウマ娘をやってはいますがアグネスデジタルは持っていません。
なので話し方が違うとかそもそもこんなこと言わないとかあるかもしれませんが、そういった場合はやさしく教えていただけると幸いです。
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