マチをママにする程度の能力 作:まだ名前はありません
ショタをいじめて、スタンド使わせとけばいいのか。
復活する程度の能力
さて、ハンター試験というのは毎年大勢の死者が出る危険な試験である。
しかしながら、それはあくまでも念能力を知らない一般人の話であり、実際はそんなに苦労せずに受かるのではないか。
一応、念能力は秘匿事項だし、目立たないように気をつけよう。
俺自身、そんな考えがあったことは否めない。
「勝負だよ。狩りのターゲットはお互い。試験の成績で、アンタが勝ったらアタシは母親。アタシが勝ったらアンタは弟。」
最初は何を言われているか一切わからなかった。
「アタシのせいで死んで、生まれ変わった弟。それがアンタの正体だ。そうに違いない。次は死なせない。守る。何もかも全て管理する。そのために強くなるよう育てもした」
彼女は「今までは内と外で公平にわけてきたけど、今日で終わりだ」と素っ気なく呟いた。
「餞別に良いことを教えておいてやるよ。ヒントは『交換』あるいは『循環』だ。その体にじっくりと刻み込むといい」
循環。
それはリサイクル。
発生したいらないゴミを外へとはき出し、代わりに新しいものを得ること。
あるいはウロボロス。
二匹のヘビがお互いの尻尾の先端を貪り合う姿。
脱皮して成長した尻尾の先端をパクリと丸のみにする。
これにより、血を意味する
「ふぅ、思い知っただろう。姉に勝てる弟なんていないってね。ああ、ついでに、この力は返しておいてやるよ」
そう言ったマチの体から翼を持つ馬のようなオーラが飛び出し、ミイラのようになって死にそうな俺の体に吸い込まれる。
「結果が出るまで、アンタとは母子でも姉弟でもない。もしアンタが誰にも殺されないくらい強いって証明できたなら、その時はアタシがママになってやるよ」
彼女はそう告げた直後、寝台に倒れ伏した俺の方を振り向きもせずに去っていく。
先ほどハンター試験中は自分のことを「マチと呼べ」と言った彼女の真意を遅ればせながら知った。
良いだろう。やってやる。
一人になった子供は様々な飢えを味わう。
俺自身が散々経験したことだ。
満腹が正義であるならば、飢えは悪だろう。
悪は許さない。
天罰を下す。
もし俺の力がいつの間にか神々によって与えられたものならば、その力を振るわれたものは神からの罰を受けたことと同義である。
これは俺のエゴではない。
神から与えられる正当な裁きだ。
ハンター試験?
そんなものは知るか。
全部ぶっ壊す。
ネズミ一匹狩るために銀河破壊爆弾を使うのが日本人クオリティなのだ。
人を一人狩るためならば、世界そのものが終わってもいい。
俺の力で、否、神の力がこの世界の不信心ものどもに罰をもたらす。
かつてトロイ戦争が起こり多くの人間が死んだことの背景には、主神ゼウスの思惑があったとされる。
彼は人間どもに罰を与えたのだ。
その立役者となったトロイの木馬は、人間が生み出したものでありながら、実質的には神の代行者であったのだ。
つまり、トロイの木馬の正体は、ゼウスによって天に召し上げられて『雷』を運ぶ役目を与えられた
これまで俺は誰かから何かを奪うことを忌諱してきた。
自分がやられたら嫌なことは、他人にしてはいけない。
そんな今となっては理解できない理屈を信じてきた。
そうじゃないだろう。
奪われる前に奪え。
攻撃こそが最大の防御だ。
俺が奪うのではない。神が奪うのだ。
つまり俺は悪くない。
悪いのは神の怒りに触れた地上に蔓延る堕落せし人間たちだ。
俺の中の
これが俺の新しい力……否、神に与えられし真の姿。
『
翼を持つ神々しくもどこか人工物のような印象の美しいペガサスが天を舞う。
そして、俺はそのペガサスによって運ばれる『裁きの雷』。
マチは守ると言った。
だがそんなものは幻想だ。
諸行無常。この世界のものは神も含めて全てがいつかは壊されるものなのだ。
これからはじまるのは原作ではない、神の時代だ。
原作を守ったりはしない。
全てのものは壊される運命にあるのだから。
奪われ壊されるくらいなら、先に相手を壊す。
インドの聖人もそう勧めている。
インドとは最強の新人類であるララァ・スンの生まれた地。
すなわち、新しい時代を生きる人間の起源の一つとなり得る。
そこで聖人として崇められるガンジーという男は言った。
臆病者になるぐらいならば、暴力を振るう側になれ、と。
非暴力主義で知られた男でさえ、『奪う』か『奪われる』か、どちらか一つしか選べないなら『奪う』方を選べといったのだ。
新しい神の時代に適応した新人類にとって『奪う』ことこそが正しい行いなのだ。
この世の全てを奪い、全てを一つにする。そうすれば何も奪われない。
「力が欲しいか」
そんな声が聞こえた。
この場には今は俺しかいない。
わかっている。幻聴だ。
だが、欲しいのだ。俺はただ欲しかった。
「欲しい。全てを奪う力が」
「俺は信じてたんだよね。霊魂はあるって」
どこか見覚えのある男の姿が現れた。
幻聴だけでなく、幻覚まで見えてきてしまった。
だが、それでもいい。
北欧神話のように、神から力を得る代わりに、
全てを奪えるならば。
「君が
額に十字を持つ男は笑う。
「不思議に思ったことはなかったか? 自分の力が少し強すぎると感じたことは? オレでは君を奪えないから、代わりにイタズラしながら君を観察していた。まるで保護者とか父親のようにね」
黒づくめの男は言った「I am your father」と。
死と再生、不死の象徴である天馬が嘶く。
十字架に磔にされ、断罪された聖人は後に再誕したという。
その男は罪人でもあり、聖人でもある。
黒と白。すなわち
それはギリシャ神話における全てのはじまりである原初の神『
父と子と聖霊は同一にして不可分。
その聖人は神の子であり、裁きを与える神自身でもあったのだ。
『
「派手にやるぞ」
なんかよくわからない間に、俺は再びスタンドに目覚めた。
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