マチをママにする程度の能力 作:まだ名前はありません
俺が組んでいるチームのメンバーは、俺以外にトルテ、クララ、木馬ちゃん、チョコロボ。
サポートチームの、シスター・マリア、シスター・シズクも最終的には合流することになるが、それまでは今の4人とともに戦う必要がある。
今回の俺の目的は、ハンター試験に合格すること、そしてその際にマチより成績が上でなくてはならない。
勝つ方法は2つある。
1つ目は原作をぶっ壊す方法。
試験がどうなっても構わないくらいの思いで暴れ回り、マチを潰して不合格にする。
俺かマチ、どちらかのみが合格しもう一方のみが不合格となるなどすれば、結果は明確に決まるだろう。
だが、あまり現実的ではない。
なにもしなければマチは普通に合格するだろう。
ということは、意図的に妨害して彼女を不合格にしなければならなくなり、難易度が急上昇する。
2つ目の方法は、原作をある程度守るやり方。
両者が合格するのを前提とした上で、相手より良い成績を取れば良いのだ。
具体的には『速さ』である。
相手より先に合格してしまえば、これは『好成績』であると考えることもできる。
そのために狙うべきは、最終試験だ。
ここで
俺は今回、原作知識をフル活用することに決めた。
もし原作通りの展開で進むとすれば、最終試験は『負け上がりのトーナメント』になるはずだ。
これは、1対1で戦うトーナメントを行うのだが、1回戦を勝った方はその時点で合格決定。負けた方は2回戦に進むというような変則的な進行となる。
2回戦でも勝った方は合格、負けた方は3回戦へと進む。
これを繰り返していき、最終的には1回も勝てなかった1人のみが不合格となるわけである。
つまり、同時に合格者が決まることはありえず、勝った者から順番に一人ずつ合格となっていくわけだ。
ということは、マチが1回目の試合をする前に、俺が試合を行ってそれに勝ってしまえば、俺の勝利となるわけだ。
俺の記憶が正しければ、それまでの試験の評価が高かったものほど、試合が早く行われる傾向があったように思う。
よって、最終試験まで最高成績を維持できれば、俺の勝ちは揺るがない。
これは試験内容を知らないはずのマチには不可能な、俺だけが立案できる作戦である。
名付けるならば『ネズミさん作戦』だ。
かつて神は言った「元旦の朝に挨拶に来たやつを先着順で十二匹まで出世させてやる」的なことを。
その話を聞いたウシさんは思った、夜の内に出発しておけば、ゆっくり進んでも最初にゴールできるんじゃないかと。
俺はなんだかこの考え方が好きだ。ゆっくりでも少しずつ進めばいつかは目的地へとたどり着ける。
しかし、そんなウシさんを利用する者もいた。
ネズミさんだ。
彼はウシさんの背中に乗っていき、ゴールの瞬間だけ、ウシさんから飛び降りて1着となった。
他人の力を利用して、自分は全く消耗せぬまま、最後のラストスパートで勝利を掴んだわけだ。
今回俺は、木馬ちゃん、チョコロボ、トルテ、クララ、マリア、シズクに全力でサポートしてもらう。
頼りになる相棒たちと4人の能力者による密かな後押しを受け続ければ、最高の評価を受けることも決して不可能ではない。
その上で、最終試験まで体力を温存し、勝利する。
原作でも、この試験には念能力者が複数参加しているので、体力の温存は絶対条件だ。
完璧に勝つ。
頭の中でそんな作戦を考えていると、乗っていたエレベーターが地下の試験会場へと到着する。
まず、せっかちなクララが飛び出し、意外と面倒見が良いトルテが追いかけ、最後に木馬ちゃんを連れた俺が続く。
チョコロボは懐の中だ。
試験会場へ入ると、受験番号が書かれたプレートを渡された。
クララが298番。語呂合わせで
たしか第4次試験あたりで、受験者同士がプレートを奪い合う展開があるので、他人のプレートの番号を覚えておいて損はない。
まぁ、クララは今回、荷物の中の海産物を冷凍しておくという役割があるので、肉屋というよりも魚屋が近いのだが。
トルテの番号は299番だった。
肉球という言葉には様々な意味合いがあるが、一番印象深いのは猫の手のやわらかいやつだろうか。
トルテもたまに猫っぽい表情や仕草をするので似合っている気もする。
そんな猫っぽいトルテのやわらかな肉球をぷにぷにさせられつつ、俺は300番のプレートを受け取った。
そして、俺たちの後からやってきたのが、受験番号301番、ギタラクル。
このギタラクルという名は偽名で、本名はイルミ=ゾルディック。
ゾルディック家の長男であり、念能力者だ。
顔に針を突き刺すことで変装するという能力を使っているので、顔が針だらけという少々不気味な見た目をしている。
おそらくトルテの兄にあたる人物だと思うのだが、未だに明確な証拠はない。
とはいえ、その可能性は非常に高いので、俺は急いでトルテの肉球から手を離した。
油断していたな。たしか原作でも彼は301番だった。
少し冷や汗をかくと同時に、安心もする。
どうやら原作からそこまでは離れていないのかもしれない。
そう考えた直後、次の受験者が現れた。
受験番号302番、ギタラクル。
なん、だと?
あまりにも意味が不明な展開に思考が停止し、無意識の内に再びトルテの肉球へと手を伸ばした。
トルテはその手を掴みにぎにぎしてくる。
なぜギタラクルが2人もいるんだ?
顔は2人とも完全に一緒、まぁ変装しているからだろうが。
身長は301番のギタラクルの方が高い。
こちらを大ギタラクルと呼ぶことにする。
302番の方は小ギタラクル。
一体、どっちが本物のギタラクルなのか。
というか、原作大丈夫なのか。
不安になってきたところで、少し離れたところから「俺の腕がぁ――っ!」という叫び声が聞こえてきた。
よし、これは原作通り。
たしか原作の試験開始前に、念能力者である受験番号44番の奇術師によって、モブキャラの腕が切り落とされてしまうシーンがあるのだ。
ということは、今回の試験にも奇術師がいるのか、注意しなければならないな。
そう思い、叫び声が聞こえた方向を見ると、加害者は44番ではなく298番だった。
「他人に毒の入った飲み物を渡そうとするなど、悪い手があったものだ。これはお仕置きしなければな」
受験番号16番、新人潰しのトンパという男が、毒物絶対許さないウーマンであるクララに両腕を凍らされていた。
この男は新人を潰すのが趣味で、試験会場にやってきた初めて試験を受けるルーキーたちに、毒の入ったジュースを配ったりするのだ。
その行為がクララの逆鱗に触れたのだろう。
腕がどうなるのかは知らないが、今回の試験はリタイアだろう。
このトンパという男には、原作でとある役割があった。
ルーキーである主人公たちに親切なフリをして近づき、試験について教えたりするという役割が。
さらには第3次試験で、主人公たちと一緒に塔を攻略したり、第4次試験で主人公たちと敵対したりもする。
原作さん、もうダメかもしれないな。
だが、希望はまだある。
ギタラクルが1人増えて、トンパが1人減ったのならば、実質的にプラスマイナスゼロなのでは?
問題はギタラクルでは、トンパのように親切なフリをして主人公たちに接近して飲み物を与えたりといった行為ができないことだ。
そこは誰かが代わりにやるしかない。
クララには無理だ。
今も「毒を塗ってある矢など、この世界には必要ないだろう?」などという声が聞こえてきた。
どうやら毒を狩るのに忙しいらしい。
トルテも同様にダメそうだ。
なんかさっき「美味しそうな、青い果実……♥」とか呟きながら近づいてきた変態に対し、「トロイの未成熟なトロピカルフルーツはわたしのだ!」などと言い争っている。
二人がダメだとすると、動けるのは俺しかいない。
そう、俺がトンパになるしかないのだ。
誤字報告ありがとうございます。
質問です。肉球は好きですか?
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大好き
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好きではある
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どちらでもいい
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不快感を感じる