マチをママにする程度の能力   作:まだ名前はありません

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ポンズをママにする程度の能力

ウェディングドレスを身に纏った女性は、タキシードを着た男性とキスをして永遠の愛を誓い合う。

 

死が二人を分かつまで、と。

 

 

 

人間が死ぬ理由は様々だが、一般的には、病や怪我が原因となることが多いと考えられがちだ。

 

しかし、世界でもトップのサブカル大国においては、四十歳未満の最大の死因は自殺であった。

 

彼ら彼女らはきっと、リアルタイムで見ていたアニメが終わったり、連載を追っていた漫画や小説が完結や未完となったり、心血を注いだオンラインゲームがサービス終了となったり、長く続いた様々なシリーズが俺たちの戦いはこれからだとなったり等の理由により、自身の世界が終焉を迎えた結果、自ら死を選ぶと考えられる。

 

仮に似たようなアニメやら漫画やら新しい世界が次々と用意されるとしても、彼らは前の世界の終焉と共に自死を迎えるのだ。

 

 

 

 

 

このように、本来の死因が知られておらず、勘違いされているという事象は良く発生し得る。

 

 

たとえば、蜂は寒さに弱く冬の冷気によって凍死するのだとずっと考えられていたが、かの有名なファーブルという男はこれが間違いだと証明した。

 

彼は冬でも夏のように温かい部屋を用意し、そこで蜂たちを過ごさせてみた。

しかし、いくら夏のように温かい世界を用意しても、夏が過ぎ去り秋が終わると同時に、蜂たちは弱り死んでいったのだ。

 

 

蜂たちは、寒さによって殺されるのではなく、前の季節の終焉とともに自分たちの遺伝子にプログラムされた寿命によって自死を迎えるのだ。

 

 

 

 

そんなわけで、大量の冷気による範囲攻撃で蜂を撃退するというクララの作戦は失敗した。

 

蜂たちは、寒さによる影響を受けてはいたものの、戦闘不能になるほどでもなかった。

 

一体ずつ狙うのならばともかく、攻撃範囲を広くしすぎた結果、念により強化されたハチを倒すほどの威力は得られなかったのだと思われる。

 

 

 

それに、もしクララの作戦が成功して蜂を何匹か倒すことができたとしても、あまり意味はなかったかもしれない。

 

おそらく、ポンズが一度に操ることができる蜂は最大でも十匹前後であると考えられる。

今のところ最大八匹までしか、同時に展開していない。

 

数を制限するかわりに、強化率を高めているのだろう。

 

仮に多少の蜂を倒せたとしても、すぐに新しい個体を補充されてしまったりしたら意味がない。

 

 

ということは、本体であるポンズを叩かなければならないのだが、彼女は接近戦が不得意なのか、こちらから近づいてもすぐに逃げてしまう。

 

いまは相手の攻撃を耐えつつ、反撃の機会を狙うのが得策だ。

 

 

「毒っ! 毒っ! 毒っ!」

 

とはいえ、そんな理屈を説明してもクララが納得することはないだろう。

 

彼女にとって毒とは絶対に許容できないものなのだ。

 

なにしろ、毒というものは、かつて彼女が過ごしていた大切な世界を奪っていった、憎い存在なのだから。

 

 

俺にもよくわかる。

 

奪われる苦しみが。

 

思わずアニオタやソシャゲ廃人のように叫びだしたくなる、圧倒的な狂おしさが。

 

 

奪われる苦しみを、奪う存在をゆるすことなどできるはずがない。

 

 

たとえ、その終焉が神により定められたものであったとしても。

彼女は復讐のためならば、神殺しすらも成し遂げるだろう。

 

 

「毒はゆるさないっ!」

 

クララの体から広範囲に冷気が溢れだし、ポンズや蜂たちを襲うが、その勢いを弱める程度しか効果はなく、仕留めるには至らなかった。

 

俺は右腕側の盾も展開し、トルテとともにクララを守る。

隣の戦友を守るのはファランクスの常識だ。

 

 

「あなた毒が怖いの? 安心して。この娘たちが使う毒は、私が調合した特別なやつよ。ちょっと痺れるだけで、後遺症が残ることもないわ」

 

原作世界線において、ポンズは薬品の扱いが得意であった。

 

それを考えると、たぶん蜂たちの尻の針から様々な薬品を注入できる能力なのだと思われる。

 

 

「毒の種類など関係ない! この世の毒は全て消え去れっ!」

 

クララは激昂する。

 

それに対して、ポンズは冷静だ。

 

 

 

「あら、そんなに毒が嫌いじゃ結婚はできないわね。精液だって、お尻に入れたらお腹が痛くなる毒なのよ」

 

 

「なん……だって?」

 

クララは冷や水を浴びせられ、急に動きを止めた。

 

彼女には二つの目的がある。

 

一つは、自身の過去の生活を、大切な世界を壊した毒物という存在に復讐すること。

もう一つは、繁殖をがんばって新たに一族を増やすこと。

 

前者の目的を満たすには、精液も消し去る必要がある。

後者を達成するためには、精液を消してはならない。

 

彼女は岐路に立たされたのだ。

 

既に滅びた過去の世界の栄光を諦めずに足掻き続けるか。

世界の滅亡を受け入れて新たな世界へと進むことにするのか。

 

精液を受け入れるか、否か。

 

まだ十二歳ぐらいの子供の彼女に対して、その厳しい大いなる選択を突きつけるのは酷だろう。

 

 

彼女はふらふらと俺の前までやってきて、俺の服をつかみ、そのままズルズルという音とともに崩れ落ちるようにして座り込んだ。

 

彼女の瞳には迷いこそあるものの、絶望はない。

受け入れるか否か、突きつけられた大きなそれに向き合いながら、必死に答えを出そうとしている。

 

過去に区切りをつけて、新たなものを掴むのか、掴むのを諦めるのか。

彼女は、宙に手をさ迷わせながら、思考を巡らせているようだ。

 

ポンズとトルテは、そんな俺たちの様子を興味津々といった様子で凝視していた。

 

俺は、クララの冷気などによる寒さにがんばって耐えていた。

 

 

「私は、選べない。わからない」

 

果たして、クララは答えを出すことができなかった。

 

俺はそんな彼女の頭に手を置く。

 

「未来のことはいい。今は目の前の問題をなんとかする必要がある。手伝ってくれないか?」

 

「目の前の?」

 

クララは顔を上げた。

眼前にそびえ立つ巨大な存在を何とかしなければならないと気づいたのだろう。

 

「私は、どうすればいい?」

 

クララの問いに対し、俺はポンズを指さして答えた。

 

「一緒に力を合わせて、あいつをヤる」

 

「わかった。お手並み拝見といこうか。この能力を使うのは初めてだから、加減はできないぞ! 『白雪姫(スノーホワイト)』!」

 

クララの体が白いドレスで包まれると同時に、これまでよりも格段に強い、バナナもカチカチになるような冷気がポンズと蜂たちを襲った。

 

 

「くっ、これは近くで浴びたらつらいわね。でも、いまの距離なら耐えられる!」

 

防御に徹するポンズに対し、トルテが「えいっ」と最大まで伸ばした槍を投げつけた。

 

槍の先端の形状から、毒が仕込んであることを察知したのだろう。

 

ポンズは回避を選択した。

 

 

 

 

そして、足を滑らせて、その場にひっくり返った。

 

「かかった!」

 

クララの本当の狙いは、地面を凍結させることにあったのだ。

 

 

ポンズは背中を地面に強打し、長いスカートの前面が顔にかかったことで、視界を塞がれる。

これにより、一瞬だけ動きが止まった。

 

その隙を見逃したくはなかったのだが、彼女が下着を装備していないことに驚き、俺も一瞬動けなくなる。

 

 

 

そんな俺の背中を、二人と一匹の足が蹴り上げることで、宙へと舞い上がった。

 

 

俺は咄嗟に空中で体勢を整え、落下と同時に槍を突き入れる準備をする。

 

 

だが、そこでポンズは笑みを浮かべた。

 

 

「罠にかかったのは、旦那様のほうよ。残念だったわね」

 

その時、俺は彼女の足の間から細長いものが飛び出していることに気づき、思わずギョッとした。

 

 

 

 

 

 

「蜂のように体から針を出す能力よ。特にお尻から出すと強くなるわ。接近戦に弱いと思わせたのはブラフってわけ」

 

鋭い針が俺の落下地点で待ち受けている。

 

このままの角度では、あの小さな槍のような尻針により、俺の尻の穴が増えたり広がったりしてしまうかもしれない。

 

そんな恐怖を覚えつつも、俺は伸ばした槍を必死で突き出す。

 

 

 

 

「俺のほうが、長かった!」

 

俺の槍の先端部が彼女に突き刺さり、わずかに血が流れた。

 

 

左手で彼女の細い腰をガッチリと掴み、右手に持った槍を彼女の首元に突きつける。

 

ここまでしっかりと拘束すれば、彼女は動けまい。

 

 

 

「さあ、選べ。ここで俺にヤられるか。このまま大人しく俺に道をまっすぐ進ませて俺のもの(ママ)になるか」

 

彼女は「選択肢になってないじゃない」と不満をこぼしつつも、肩を竦め、犬が降参するようなポーズをしつつ「そのまま奥に進んでいいわよ、旦那様(パパ)」と答えた。

 

 

 

その答えに満足し、俺は彼女の体を自由にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、婚約同意書なるものにサインをすることになったのだが、トルテとクララが文句を言いだした。

 

俺は「もっと大きくなってからな」と諫めようとし、クララが「見てみろ、私はもう大きい」とロリ巨乳であることが判明し混乱させられたタイミングで、そのロリ巨乳少女が「あ、そうだ、キス……」と呟き倒れてしまった。

 

 

おそらく、『白雪姫(スノーホワイト)』の副作用だと思われる。

 

離れた位置の敵にまで到達する強い冷気による攻撃。

何のリスクもないと考える方が不自然だ。

 

クララは瞼を閉じた状態で死んだように眠ってしまっている。

 

 

 

だが、どういうデメリットかは彼女の発言から大体想像がつく。

 

白雪姫は毒リンゴを食べさせられた後、キスにより目覚めたという伝承がある。

 

それを再現すれば、彼女は目覚めるのだろう。

 

あるいは、のどに詰まっていた毒リンゴを噴き出して助かったという伝承もあるが、こちらのパターンではなさそうに思う。

 

 

 

 

 

 

と、思ったのだが、俺の想像通りには進まなかった。

 

ロリ巨乳はなかなか目覚めなかったのだ。

 

というか、十二歳ぐらいだとこの程度の体は異常ではないのかもしれないので、この呼び方は良くないかもしれない。

 

俺は十二歳の裸体について詳しくないし、そもそもクララの正確な年齢を知らない。

この世界には、ビスケという偽ロリもいるので、判断は非常に難しい。

 

とにかく、俺はがんばったのだがクララは目覚めることもなければ、毒リンゴを吐き出すこともなかった。

出てきたのはミルクだけ。

 

 

 

そこで賢い純正ロリが「普通は口じゃない?」と気づかなければ、俺たちはタイムアップで試験に不合格になっていたかもしれなかった。

 

 

賢者のごとき俺より賢いとは、やはりトルテは知恵の女神アテナのように聡明だった。

 

 




一部修正しました。

質問です。子供のキャラについてどう思うか教えてください。

  • 子供は子供らしくあるべき
  • 大人な部分があってもいい
  • どちらも捨てがたい
  • 子供には興味がない
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