マチをママにする程度の能力 作:まだ名前はありません
無事に第2次試験を突破したトルテたちを回収した俺は、次の試験会場へと移動するために用意された飛行船へと乗り込んだ。
そして到着した場所は、高い塔の頂上部。
原作世界線と同様に、この『トリックタワー』を攻略することが第3次試験を通過するための条件であるようだ。
現在俺たちがいる頂上から、塔の下まで生きた状態で到達することが出来れば合格。
制限時間は72時間。
そういった内容の説明が、スピーカーからの音声で受験生たちに伝えられた。
正直、俺にとって地上に降りるだけという条件はそれほど難しくはない。
わざわざ罠が仕掛けてあると知っている塔の内部を進まずとも、外側をショートカットして進めるからだ。
流石に飛び降りるのは危なくてイヤだが、木馬ちゃんの力を借りれば、安全に下まで到達できるだろう。
ただし、それをやると試験官からの評価が悪くなるかもしれないという問題が出てくる。
先ほどの追加試験の間、仕事をメンチに丸投げしたマチオルタが俺の部屋にいたせいか、マチは俺を襲撃してくることはなかった。
ポンズのようにマチオルタも離反した可能性を考慮したのだと思われる。
仮にマチオルタが俺の味方となっていた場合、流石のマチも苦戦は免れないだろうからな。
これにより、直接対決でマチを倒してリタイアさせる絶好の機会が失われてしまったわけだ。
となると、当初の予定通りに試験官からの評価でマチを上回ることを目指すべきだろう。
その上で、チャンスが訪れればマチが不合格となるように妨害する。
そんな感じが良いのではないかと思う。
行き当たりばったりとなってしまったが、とりあえず、いまはこれで行くしかない。
そうなると重要となってくるのは、第3次試験の試験官であるリッポーという男からの評価である。
彼は受験生たちと遊ぶために色々な仕掛けをこのトリックタワー内に用意しているのだ。
それらを全て無視して、塔の中を通らずに地上まで降りたりしたら、彼はきっとガッカリするに違いない。
当然、試験官である彼からの心象も悪くなるだろう。
それが試験の評価に関係するかどうかは不明だが、少なくともプラスの影響を与えることはなさそうだ。
正規ルートであるトリックタワーの内部を通りつつ他の受験生よりも先に地上へと辿り着く。
試験官から高評価を得るためには、このやり方がベストなのではないだろうか。
少なくともマチより先にクリアできれば、最終試験において彼女より優位に立てるはず。
そんなわけで、早速俺はトリックタワーへの侵入を試みる。
いま受験生たちがいるこの塔の頂上部の床には、いくつもの隠し扉がしかけられているのだ。
その扉を通過することで、塔の内部へと入ることができる。
この時に選ぶ扉によって、塔内部のどのルートを攻略するかが決まってしまう。
原作世界線の主人公たちのように『多数決の道』とかになったりしたら厄介だ。
トルテたち以外では、ファランクスを組むための盾を持ってきているやつなどほぼいない。
そんなやつらと共闘する必要がある多数決の道は、俺にはあまり適していないだろう。
最速で塔を攻略するためにも、最適な扉を選択しなければならない。
そんなわけで、俺は勘でなんとなくよさそうな扉を一つ選んだ。
この塔への入口である隠し扉は小さく、通れるのは一人だけ。
木馬ちゃんは通れそうにないので、飛行船を降りる前に消しておいた。
塔の中にある部屋や通路が十分に広ければ再び呼ぶことができるはずだが、それは流石に厳しいかもしれない。
俺は床の仕掛けを起動させて、塔の内部へと進む。
隠し扉の下にあった部屋は、床の形状が三角形っぽくなっており、その三つの頂点の部分にそれぞれ一つずつドアが設置してある。
つまり、この部屋には三つの出口があるわけだ。
頭上で、ガコンという音がして、俺が入るのに使った隠し扉が閉じる。
その直後、説明のための音声が聞こえてきた。
音声の人物いわく、俺が挑むことになるのは『天国と地獄』という名の試練であるらしい。
詳しい試験の内容は、部屋の中央に説明書を置いてあるのでよく読んでおくようにとのことだった。
その説明書によると、俺はこれから、この部屋にある三つのドアの内の一つだけを選んで先に進まなければならないようだ。
三つあるルートの内、一つだけは当たりの『天国』ルートとなっている。
難易度が比較的低めに設定されており、ある程度の実力者ならば5時間程度、実力が低めなルーキーでも12時間程度あればクリアできる。
制限時間が72時間であることを考えれば、かなり余裕を持って地上まで到着できるだろう。
しかしながら、この『天国』ルート以外の残りの二つは『地獄』ルートであり、無事に生きてゴールに着ける確率は非常に低いとのことだ。
では、三つあるドアの中のどれが『天国』で、どれが『地獄』なのか。
そのヒントとなるのが、それぞれのドアのすぐ隣に設置された台座の上に置かれているフルーツだ。
バナナ、メロン、マンゴー。
それぞれの台座の上に異なる種類のフルーツが乗せられている。
これら三種類のフルーツの内、一つは普通に美味しく食べることができる品種であり、残りの二つには食べると体が痺れる毒が含まれている。
安全なフルーツが一つ、弱い毒があるフルーツが一つ、強い毒があるフルーツが一つという内訳のようだ。
美味しいフルーツが置かれているドアが『天国』ルートにつながっており、毒入りフルーツがあるドアは両方とも『地獄』ルートへと続いている。
完全にランダムに進む道を選んだ場合は当たりを引く確率はわずか3分の1だが、前回の試験で真面目に勉強していれば、その確率を高めることができるわけだ。
もしかすると、そういった学習意欲のようなものを確認する意図もあるのかもしれない。
とはいえ、学習しなかったものにチャンスがないのかというと、そんなこともないようだ。
この部屋には、『当たり』のフルーツを見つけるために役立ちそうなものが色々と置かれている。
たとえば、壁際にはたくさんの資料が入っている本棚が並んでいる。
おそらくあの資料の中のどれかに正解を見極めるための情報が書かれているのだろう。
知力や分析力が高い者ならば、それを見つけ出すことができるかもしれない。
だが、あれほど多くの資料を全て確認するのは一日や二日では難しいような気もする。
制限時間に追われながら作業をしなければならず、冷静さや精神力なども必要となるはずだ。
あるいは、部屋の隅に置かれている食料なども、正解へたどり着くための道標となるかもしれない。
一見、資料を調べるために受験生が長時間この部屋に滞在することを想定して、親切に試験官が準備してくれただけのようにも思える。
それ自体は十分にありえる話なので問題ない。
しかし、用意されている食料はパンやお菓子などであり、なぜかそれらと一緒に置いてあるナイフとスプーンという存在に違和感を感じる。
仮にパンを切るためにナイフの方は必要になるとしても、このオタマジャクシのような形をした食器はいらないだろう。
では、この白いプラスチック製のスプーンは、どういった意図で置かれているのか。
これはあくまでも俺の推測にすぎないが、もしかすると試験官からの『フルーツを一つ食べてみろ』というメッセージではないだろうか。
メロンやマンゴーを食べるならば、スプーンがあった方が便利だろうからな。
試験の説明書によると、強毒のフルーツは一口食べてしまっただけで数日ほど全身が痺れたママとなるようだが、弱毒のフルーツの場合は一日ほどで体から痺れがとれるらしい。
つまり、弱毒の方ならば間違って食べてしまってもリカバリーできる。
三つのフルーツの中の一つを食べた場合、3分の1の確率で強毒のものを引いてしまい、ほぼ確実に制限時間をオーバーしてしまう。
だが、逆に言えば、3分の2の確率で即リタイアとなることはないわけだ。
3分の1の確率で美味しいフルーツに当たり、『天国』ルートに進むことができる。
もし弱毒のフルーツを食べてしまった場合でも、外れの『地獄』ルートが一つ見つかったことになり、残りの二つのルートの内のどちらか片方が『天国』でもう一方が『地獄』だと判明する。
すなわち、2分の1の確率で『天国』ルートを選べるわけだ。
よって、どれか一つのフルーツを食べることで、『
何も考えずに進む道を選んだ場合は33パーセントでしか正解できないが、少し冷静に考えるだけで一気に正解する確率が50パーセントまで上昇する。
さらに言えば、強毒のフルーツにのみターゲットを絞って資料を調べれば、より短時間で情報を精査することができるわけだ。
強毒のものがどれか判明しさえすれば、残りの二つの内の片方を食べることで、確実に『天国』へのドアを見つけることができる。
もし弱毒のフルーツを食べてしまった場合でも、体の痺れがなくなるまでに24時間、『天国』ルートを踏破するのに12時間、合計36時間ほど残っていれば十分。
つまり、制限時間72時間の内の半分である36時間以内に強毒フルーツを特定し、残りの36時間でゴールまで進めばいいわけだ。
このやり方ならば運に頼る必要が全くなくなる。
仮に情報精査が苦手で調べるのを諦めたとしても、冷静な判断力さえあれば、フルーツを一つだけ食べることにより50パーセントの確率で試験に合格できる。
強毒のフルーツを食べてしまった場合でも、タイムオーバーで失格となるだけであり、危険な『地獄』ルートに進んで死ぬよりはマシだ。
生きていれば来年以降に再挑戦すればいい。
きっと試験官は、そういった判断力を受験生に求めているのではないだろうか。
この仮説をもとに、さらに推測を重ねていく。
三種類のフルーツの中で、オタマジャクシ型の食器を使って食べるのはメロンとマンゴーだ。
バナナとオタマジャクシには何の関係もない。
どれか一つを食べるとするならば、メロンかマンゴーにすべきなのだろうか。
だが、それは流石に安直すぎる気がするし、試験官が仕掛けた罠かもしれない。
資料を使った証拠集めなどの検証を一切行わずに、安易な手段を選ぼうとする怠惰な受験生をハメようとしている可能性も絶対にないとは言い切れない。
他にも何かヒントはないだろうかと、白いスプーンを持って部屋全体を見渡してみる内に、俺はもう一つの重大な事実に気づいてしまった。
どうやら、この試験を考えたやつは、相当にママが好きらしい。
まず注目すべきは、この部屋の形だ。
三角形のそれぞれの頂点から、一本ずつ道が続いている形状。
これは、母体にある生命の揺り籠に酷似している。
その揺り籠には卵巣へとつながる卵管が二本、誰もが一度は通る道が一本の合計三本がつながっている。
前者の二本を進むオタマジャクシは、そのほとんどが死滅し、せいぜい一匹程度しかゴールまで到達できない。
最初は数億だったものが、最終的には一匹を残して消え去ってしまうという厳しい試練。
これはまさに『地獄』だと言っても過言ではない。
そして後者の道は、厳しい試練を乗り越えた者だけが進むことが許される。
ここを通ることで、自身の母親と出会うことができるのだ。
このような幸福を味わえるのは、まさに『天国』に他ならない。
誰もが一度は通ることになる道は、天国への道なのだ。
一度以上経験がある者なら5時間前後、初産の者なら12時間前後という時間も、ほぼこれと一致している。
間違いない。
この試験はママを暗示していたのだ。
まさか、こんなところで仲間に出会うことになるとは思いもしなかった。
試験官の恐ろしい智謀に思わず背筋を震わせていると、頭上から気配を感じた。
オーラを纏った拳により、隠し扉が破壊され、空いた穴からローブを着た人物が飛び降りてきた。
壁を殴る者。
すなわち強盗に違いない。
そう思った俺は素早く槍を取り出して構える。
警戒する俺に対し、その強盗らしき人物は、ローブのフードをとりながら話しかけてきた。
「あたしは、ネオン=ノストラード。よろしくね」
強盗じゃなくて、マフィアだった。
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ショタが攻めに回ってもヨシ