マチをママにする程度の能力   作:まだ名前はありません

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マチをミニスカポリスにする程度の能力(改)

盗賊の極意(スキルハンター)』は相手の念能力を奪うことができる能力だ。

 

おそらくこれで『俺の木馬(トロイ・ホース)』を奪った結果、『トロイの木馬(トロイ・ホース)』が発動して目の前の男、幻影旅団の団長であるクロロ・ルシルフルは死んだのだろう。

額を確認したらなんかマークがあったし多分間違いない。

馬で言うところの『星』みたいなやつだ。

 

 

能力者が死んだ以上、その念能力である『盗賊の極意(スキルハンター)』も消えそうなものだが、なんか死後に強まる念は残るとかいう設定もあった気がするしよくわからん。

心臓が止まっただけで実は生きているという可能性もある。

なんか心停止後に復活したピエロもいるし。

 

 

なんだろう。

現状をわかりやすく例えるなら、急にトラックが暴走して突っ込んできたと思ったら何故かトラックの方が爆散した、みたいな。

そんな感じだと思う。

 

 

とりあえず、俺は悪くない。

 

 

ちょうど逃げようとしたタイミングで料理を運んできたウェイトレスさんにそう説明しようと思ったのだが、残念なことに一般市民は念能力について知らないはずだ。

 

 

警察が来るのを待って、プロハンターを呼んでもらうしかないだろう。

 

相手が危険な犯罪者であることを説明し、詳しい説明はハンターにすると主張するしかない。

 

 

まだ俺の肉体年齢は十歳くらいのはずだし、そこまで酷い扱いは受けないはずだ、と思いたい。

 

そもそも一人死んだくらいで大騒ぎするとか、この辺りは治安が良すぎるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

クロロは心停止のまま病院へ、俺は警察署へと送られた。

 

フード付きのパーカーを着ていて良かった。

顔を隠せる。

別に知り合いとかはいないけど、お巡りさんと一緒にいるところを見られるのって何か嫌だからな。

 

 

 

警察署では取調室ではなさそうなちょっと豪華な部屋へ案内され、色々と調べたり上層部に確認したりするからしばらく待って欲しいと言われた。

 

 

三人掛けのソファの真ん中に座り、今後どうするか考える。

 

そもそも実際のところ、死因が何なのか、俺にもよく分かっていないのだ。

なんか顔が赤くなり酔っぱらったような動きをするのでアルコールだと勝手に思っているが、実は全く違う薬物とかの影響かもしれない。

 

その場合、俺が毒を盛ったと判断される可能性もある。

 

それはちょっと面倒くさい。

 

できればハンター、少なくとも念能力について知っている人が来れば俺の無罪は証明されると思うのだが。

 

 

 

 

そんな願いが神に届いたのか、俺の待機していた部屋に二人の婦警さんが入ってきた。

 

二人とも帽子を深くかぶっているせいでその表情を見ることはできないが、なんとなく彼女たちからは、ただならない雰囲気が感じられる。

きっと念能力者のオーラに違いない。

 

 

一人は金髪で背が高い女性。

胸元を大きく開けていて、思わず目が吸い寄せられそうになったが必死にこらえた。

最近、ようやく自分の体が大人に近づいてきたのでどうしても気になってしまう。

つまり、俺は悪くない。

 

もう一人の方はピンクっぽい髪の女性。

なんかスカートがちょっと短い。というか全体的に服がピッタリと肌に張り付いていて、まるで小さいサイズの制服を無理やり着たような印象を受ける。

いつも着ているはずの制服のサイズが合っていないなんて不自然なので、そういう着こなしなのだろう。

普段から彼女はミニスカポリスなのである。

ピンク髪は淫乱だと相場が決まっているので、この推測はおそらく正しい。

 

 

「事件現場に居合わせた子供ってあなたのこと?」

 

隣に座った金髪さんが尋ねてきたので、俺は頷き「はい。トロイと名乗っています」と返事をした。

 

俺のすぐ正面にはミニスカさんが立った。

彼女のスカートの丈は短い。俺は子供で身長が低いうえにソファに座っている。

この二つの要素が組み合わされば、何か未知の領域が見えてきそうな気配がするのだが、あと少しのところでダメだった。

 

というか、二人ともかなり俺との距離が近い。

逃亡しようとしたら、すぐ捕獲できるようにしているのもしれない。

一応、俺は容疑者だしな。

 

 

「原因について思い当たることはある? そもそもどうして、あなたはあそこにいたの?」

 

金髪さんが質問しながら、俺が着ているパーカーのフードの中に手を入れ、首筋に指を這わせる。

 

やはり距離が近すぎる。今、なぜ触れる必要があったのか。

まあ、女性に触られるのはそこまで嫌ではないから別にいい。

 

それよりも今は質問に答えなくては。

どう説明すれば俺が潔白であると理解してもらえるのか、頭の中で考える。

もしここで白ではなく黒だと判断されてしまったらお終いだ。

言葉は慎重に選ばなくてはならない。

 

うつむいたまま頭を必死に働かせ、ひとまず俺は潔白なのだと口にしようと顔を上げた瞬間、視界に眩しい純白の輝きが映り――

 

「白」

「黒ね」

 

 

俺と金髪さんの発言が重なった。

しかし、解せない。どう見ても黒じゃなくて白なのだが。

 

 

「団長は自動反撃型の能力にやられたみたい。それとこの子供は…………え、げん、さく、セカイをつくった、カミ? ……なに、これ?」

 

金髪さんがぐったりと俺にしなだれかかってきた。

彼女はちょうど俺の耳元で「(見た記憶が、思いだせない? なぜ?)」とつぶやいた。

 

その発言で俺は現状をほぼ正確に理解し、思わず震え上がった。

 

 

 

クロロが団長を務めている幻影旅団には女性の団員も何人かいる。

 

その内の一人がパクノダという金髪の女性で、触れた相手の記憶を読み取る念能力を持つ。

 

つまり、俺の隣で意識を朦朧とさせている女性はそのパクノダで、勝手に俺の記憶を盗み見た結果、酔っぱらってしまったのである。

 

映画館で勝手に映画を録画したりする行為を映画泥棒と言ったりする。

それを基準に考えれば、他人の記憶をコピーするというのも盗みの一種と判定されたのだろう。

 

その結果、彼女は酩酊し、盗み見た記憶を失った。

原作知識という俺にとって非常に重要なものを見てしまったとはいえ、あくまでもコピーしただけだから軽症で済んだ。ということに違いない。

 

 

そこまではいい。

彼女はほとんど意識がないようだし、いくら旅団のメンバーとはいえ、いまなら逃げることぐらいはできる。

問題は、なぜ彼女がここにいるのか、ということだ。

 

素直に考えると、団長が病院に運ばれたことを知り、何が起こったのか調べるために現場に居た子供の記憶を調べに来た、といったところだろう。

 

 

ということは、パクノダと一緒に来た人物も旅団の関係者だと考えるのが妥当だ。

ピンク髪のミニスカさんは淫乱なのではない。

ただ潜入する際にサイズが合う制服を見つけられなかっただけなのだ。

 

 

「テメェ、何しやがった」

 

ミニスカさんに襟首を掴まれ、立たされる。

 

俺が着ていた超安物の貫頭衣は、たったそれだけでビリッと破れ、服の前半分が分離した。

 

服の切れ端はミニスカさんの手の中。

当然、彼女に対しても『俺の木馬(トロイ・ホース)』が発動し、服の前半分を奪い去る。

 

ミニスカさんの顔が真っ赤に染まる。

彼女の目を見ると、顔が赤くなった原因は羞恥からくるものではなく、酩酊と怒りからくるものだとすぐに分かった。

あれは海王類がブチギレた時に見せる目だ。

 

殺される。

なんとなくそう思った。

そして残念なことに俺の勘は驚くほどよく当たる。

 

ミニスカさんは酔いと怒りのせいで判断力が鈍っているのだろう。

自動反撃型の能力と判明している俺に攻撃してくるなんて。

 

 

俺に残された勝ち筋は一つだけ。

 

先ほど手に入れたクロロの能力だ。

もし、あの本の中に何か一発逆転の能力が入っていれば……

さっきちらっと見た時は白紙のページばっかりだったような気がするのだが、俺が見落としているだけという可能性もある。

ついでに俺が未知の能力を所持していることを警戒してくれればさらにありがたいのだが。

 

 

俺の木馬(トロイ・ホース)』を発動し、扉を開ける。

 

その瞬間、俺の頭の中に大量の情報が流れ込んできた。

 

先ほどパクノダは俺から『自分の知りたい情報』をコピーしていた。

順当に考えるならば、俺にとっての『自分の知りたい情報』をパクノダからコピーしたのだろう。

 

脳裏に流れ込んだ情報は、団員の能力や戦闘法に関するもの――が一切含まれてなかった。

 

俺が見たのは、旅団の女性メンバー、マチとパクノダが着替えたり水浴びをしたり夜に一人で遊んだりといった光景のみである。

 

あっ、シズクはいない。原作前っぽい。

 

 

 

コピーした情報の内、戦闘に役に立つものはほとんどなかった。

唯一の収穫は、俺を殺そうとしているミニスカさんがマチという名の旅団メンバーだと確定したぐらいである。

彼女は念糸を使う能力者で、切断された腕を縫って繋げることもできるほどの器用さを持つ。

ようするに、超テクニシャンなわけだ。

そして、意外と着痩せするタイプらしい。

 

これらの情報を得た対価として、俺の体は無意識の内に前かがみになっていく。

 

体が成長し大人へと近づくのも良いことばかりではない、ということだな。

まさに『塞翁が馬』というやつだ。

たしか塞翁さんの馬が逃げてしまい不幸だと思ったら、なんか友達の馬を連れて帰ってきたのでラッキーみたいな話だった。

幸運だと思ったことが不幸につながったり、不幸だと思ったことが思いがけない幸運につながったりするという意味の言葉である。

 

 

 

今回の場合はその前者のパターン。

とてつもなく幸せな光景を見たものの、そのせいで体が勝手に前かがみになるという不幸につながってしまったわけだ。

 

戦闘中に座り込んだりするなど、自殺行為以外の何ものでもない。

 

しかし、今回の場合は違ったようだ。

俺がかがむと同時に頭を掠めるように何かが通り過ぎる。

 

もしたたなければ、もとい座らなければ、やられていた。

 

これは『塞翁が馬』の『不幸だと思ったことが幸運につながる』方のパターンだな。

 

 

運が良かったおかげで、マチの初撃を避けることができた。

 

しかしながら、幸運が何度も続くとは思えない。

 

俺は一発逆転を狙って、木馬ちゃんのお腹に手を伸ばした。




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