マチをママにする程度の能力 作:まだ名前はありません
色々と考えたが、やっぱりちょっと良くないかもしれない。
そう思った理由は二つ。
一つ目は、試験が開始してからまだそれほど時間が経っていないということ。
本来ならば、主人公は釣り竿を使ってプレートを奪う練習を何千回も繰り返して集中力などを鍛えるはずなのだ。
現在の時刻から考えると、彼はどう考えてもこの訓練を行っていない。
しかもヒソカという恐ろしい敵に挑むことで胆力を鍛えるという機会まで失ってしまっている。
俺のような子供が相手では明らかに迫力が不足しており、殺戮ピエロの代役など務まるはずがない。
つまり、このままだと彼がこの島で得るはずだった貴重な経験値が無くなってしまうわけだ。
この経験不足の影響がどれほどあるかは不明だが、彼には危険動物を駆除する役割があることを考えると、できれば何らかの形で補っておいた方が良いかもしれない。
そして、現状が良くない二つ目の理由は、今後の展開が分からなくなることだ。
正直に言って、これはそこまで重要でもない気はする。
この4次試験さえクリアしてしまえば、あとは最終試験だけである確率が高い。
その最終試験まで辿り着くことが俺の当初の目標であったため、基本的にはそれ以降がどうなろうと構わない。
とはいえ、最終試験が負け上がりのトーナメントになるという保証はどこにもないのだ。
なんとなくだが、原作世界線に近い状態にしておいた方が、そうなる確率が高くなるような気もする。
具体的には、4次試験を通過するルーキーを多めにするのが良いと思う。
ハンター協会会長によると、何年もルーキーが合格しない年が続くと原作の試験の時のように有望なルーキーが多く集まる年が訪れるのだそうだ。
最終試験の内容は会長が思いつきで決めているような感じがするので、この『良いルーキーが多い年』という印象を会長に与えることで原作世界線と同じような試験内容になる確率が高まるのではないだろうか。
少しでも作戦の成功確率を上げられるならば、やってみる価値はある。
そのためには、目の前の少年に405番のプレートを返してあげるべきだろう。
試験のルールでは、自分のプレートは3点となる。
あとは適当に三人からプレートを奪えば合格できるわけだ。
自分のプレートを失ってしまって六人倒さなければならないという状況よりはずっとマシなはず。
そんなわけで、俺は「もう6点分あるし、これは返すよ」と言ったのだが、少年は倒れたまま拒絶するかのように首を振った。
すぐに立ち上がれない程度には酔いが回っているらしい。
まぁ、短時間で合格することで試験官からの高評価を得ることを狙っていたわけだし、それを達成するためのアイテムというのは俺にとってそこそこ貴重だ。
酔いの効果もそれなりに強いと思われる。
「じゃあ、ここに置いておくね。その毒の効果はしばらく経てば消えるから安心していいよ」
とりあえず、倒れている彼の前に405番のプレートを放置して立ち去ることにする。
酔っているとはいえ意識はあるし、一応は尾行している試験官もいる。
ここに少年を残していってもたぶん大丈夫だろう。
残念ながら、彼のために長い時間を消費するような余裕は俺にはない。
刺客がいつ襲ってくるか分からないのだ。
プレートを自力で入手することで試験官に対して一定の実力は示せたはずなので、後はトルテやクララと合流してしまっても問題はない。
安全を確保するためにも、さっそく彼女たちを探そう。
そう思ったところで、少年がゆっくりと立ち上がりはじめた。
彼は無言でこちらを見つめながら、俺が返したプレートを突き返してくる。
どうやら、彼は「いらない」と言いたいらしい。
もしかして自分より年下のショタから施しを受けるのを嫌ったのだろうか。
たしかに俺の肉体年齢は彼よりも下なので、そう思ってしまうのも仕方がないことだ。
でも俺の感覚からすると彼の方が年下だし、いくら強制発動とはいえ、念能力による反撃を念を使えない子供に叩き込んでしまったことに関しては少しだけ罪悪感がある。
子供から何かを奪うのは、過去の経験的にあまり好きではない。
だから彼の分のプレートぐらいは返しておきたいのだ。
「そのプレートは無くても合格できるんだ。お兄ちゃんが使ってよ」
俺はそう提案してみたのだが、彼は首を振ってそれを断る。
これと似たやり取りは原作世界線にもあった。
ヒソカが不要になった自身のプレートをご褒美としてゴンにプレゼントしようとしたのだが、ゴンは「借りなんかまっぴら」とそれを拒絶する。
そこでヒソカは、頑固なゴンを殴り飛ばし、「自分の顔に一発ぶち込めたらプレートを受け取る」といったことを宣言して去っていくわけだ。
この例に倣うならば、俺も彼を殴って同じような発言をすれば良いのだろうか。
しかしながら、それをやると『一発ぶち込もうとしてくるショタにずっと追い回される』という恐ろしい状況となってしまう。
したがって、この案はダメだ。
何か別の方法を考えなくてはならない。
彼が『借り』を作るのを嫌がっていると仮定して、作戦を考えてみる。
ようするに『借り』ではなく『交換』ならば彼も受け入れやすいのではないだろうか。
彼に何かをもらい、その対価として俺は405番のプレートを彼に渡すわけだ。
とはいえ、価値が釣り合うようなもの同士の交換でなければ彼も納得しないだろう。
価値がプレートに比べて低すぎるものだと、『借り』を作ったのとあまり変わらない状況となってしまう。
そんな高価なものを彼は持っているだろうか?
ちょっと思いつかない。
では、品物をもらうのではなく、何かしらの仕事をしてもらうというのはどうだろう。
たとえば、トルテやクララを捜索してもらうとかが良いかもしれない。
彼女たちを探すくらいなら自分でやっても良いのだが、刺客がいることを考えれば、誰かにやってもらった方が安全であることは間違いない。
獣並みの視力を持つ彼ならば、高い木の上から周囲を見渡すことで広範囲の探索ができるはずだ。
これだけだとプレートの対価として少し簡単すぎる気もするので、ついでにヒソカやマチの場所も調べてもらっても良いかもしれない。
マチの方は分からないが、ヒソカに関してはその周囲を探るだけでも命の危険が伴う。
プレートの対価としては悪くないと思われる。
トルテたちは仲間なので合流したい。
ヒソカは俺のターゲットであり、そのプレートがあった方が試験官からの評価が良さそうなので、可能ならば狩りたいと思っている。
ローブの人物は、少し因縁がある存在で注意が必要なので居場所を把握しておきたい。
そんな感じに説明をしながら、俺は交換条件を提示してみる。
彼は無言でしばらく考えるような仕草をした後、こちらに右手を差し出してきた。
俺は迷わずその手を掴みしっかりと握る。
握手。なんとか交渉は成立したようだ。
とりあえず彼には適当に捜索してもらって、得られた情報がどんなものであっても対価としてプレートを押し付ける。
短い付き合いになるだろうが、よろしくな。
しばらくして、周囲を探索していたゴンが戻ってくる。
「トロイが探している人たちのうち、二人は見つけた」
俺がゴンに捜索を頼んだのは四人。
トルテ、クララ、マチ、ヒソカだ。
その全員が念能力者であり、気配を隠す達人たちであるにもかかわらず、この短時間で二人も発見できるとは。
一体どんな方法を使ったのだろうか。
「一人目は、クララっていう女の子。レオリオとクラピカが一緒にいて、何か揉めてるみたい」
どうやら、クララがまた何か問題を起こしたようだ。
いくら念能力者とはいえ、言い争いをしている最中は気配を消したりはしないだろう。
しかも、クララのことだから大声で喚いていると思うので、見つけるのは容易だったはずだ。
ゴンも仲間のことが気になるだろうし、ここはクララを回収しに行くのが最優先だな。
「二人目は、ヒソカ。こっちは真っ白いタキシードを着てたから、遠くからでもすぐに見つけられたよ」
マチのやつ、やりやがった!
もしヒソカが旅団の団員だとすると、マチオルタを通じて接触することは容易なはずだ。
報酬さえ用意できれば、刺客として雇うことだって難しくはないだろう。
普通のタキシードならばともかく、真っ白なタキシード。
そんなもの、新郎であるとしか考えられない。
間違いない、ヒソカはマチが雇った刺客だ!
いままでは花嫁を送り込んできていたが、今度は花婿を用意してきたようだ。
原作世界線ではゴンが顔面に一発ぶち込まれていたが、色々とイレギュラーが重なった結果、なぜか俺がヒソカに一発ぶち込まれそうになっている。
ふざけるなよ、マチ。
やって良いことと悪いことがあるってママから教わらなかったのか?
たぶん教わらなかったんだろうな。
なんとなくそんな気がする。
だったら、代わりに俺が教えてやるしかない。
そして、悪い子にはお仕置きをしてやらねばならない。
俺がお前のママになって、お尻ペンペンの刑を執行してやろう。
しかし、いまは自分の身を守ることが最優先だ。
タキシードピエロとかいう特大の危険物に対処しなくてはならない。
向こうは間違いなくこちらを狙っている。
逃げ回るか、こちらから仕掛けるか。
どうするのが正解なのだろうか。
脳を全力で働かせるために、俺は水筒に入っていたクララのミルクを飲んで糖分を補給した。
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