みんな大好き真鍳ちゃんの登場ですね…単体での強さならアルタイルに次ぐ2位に立つであろう被造物ですからね…彼女の能力を把握していない場合、初見殺し可能ですね…この作品を知らない人たちにそのワクワクを取っておいてほしいのでここには明記しないでおきます…
被造物同士の戦闘も激化してきました。イケおじ枠のブリッツ・トーガーが初登場ですね。重力弾、物語に取り入れられそうだなぁ…
さて、今回はみんなの大好き、残念バグキャラですぅ兎の登場ですね!
第十四話 ウサミミ少女はイベントを持ってくる
ハジメがユエさんにプロポーズに近い贈り物をしてから十日後、遂に俺らはここから出ることになった。
出口へ続くであろう魔法陣を起動させながら、新調された義手に黒のコートを纏ったハジメはユエさんに静かな声で告げる。
「ユエ……俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」
「ん……」
「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」
「ん……」
「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」
「ん……」
「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」
「今更……」
ユエさんの言葉に思わず苦笑いするハジメ。真っ直ぐ自分を見つめてくる彼女のふわふわな髪を優しく撫でる。気持ちよさそうに目を細めるユエさんに、ハジメは一呼吸を置くと、キラキラと輝く紅眼を見つめ返し、望みと覚悟を言葉にして魂に刻み込む。
「俺がユエを、ユエが俺を守る。それで俺達は最強だ。全部なぎ倒して、世界を越えよう」
ハジメの言葉を、まるで抱きしめるように、両手を胸の前でギュッと握り締めた。そして、無表情を崩し花が咲くような笑みを浮かべた。返事はいつもの通り、
「んっ!」
……開始早々こんな展開で大丈夫なのだろうか。いきなり2人のラブラブアオハル見せられても俺どうしてりゃあいいんだよ。
いや、これ青春の領域超えてるからアオハルでもねぇな。2人の周辺だけ彼らを祝福しているかのように桃色の花びらが舞っている……錯覚だけど。
第三者の目線からはこんな風に見えるのか……
この調子だとこいつらだけで1話が終わりそうなので止めにかかるとするか。
「あー、お二人さん?そういうのは出来れば1章の終わりまでにして欲しかったんだけど?ただでさえ外伝2話挟んでて俺の存在感薄くなってきてんだよ」
「お前、何言ってんだ?」
いやいや、お前らがイチャイチャしてたら益々俺が薄まるじゃねぇか!
……一応言っておくと現在はオスカー・オルクスの隠れ家から、おそらく地上へ繋がる魔法陣に触れて転移し終わったところだ。
光が納まった先も洞窟……多分外でいきなり転移した時に発見されるリスクを防ぐためだろう。
皆で洞窟を歩いていくと、段々地上が近づいてくるのを感じた。そして遂に光が差し込んできた。
おぉ……数ヶ月ぶりの太陽だ。人口太陽には再現出来ない温かみがある、そんな光にほっと胸を撫で下ろす。
するとスマホから反応が。
『フッ、久遠は相当地上が恋しいようじゃないか』
「そりゃあな……やっぱりあそこでも外にいる実感があんまりしなかったからな。やっと戻ってこれた感じだよ……」
そしてさらに進みでると……待望の地上へ出る。
場所は渓谷……それも谷底だ。この形状の崖はトータスの間では有名なスポットだな……危険な方での、だが。
魔力分解速度が尋常じゃなく、基本魔法が使えない断崖絶壁の渓谷。西にはグリューエン火山で、東にはハルツィナ樹海と、二つのエリアを挟んだ超巨大渓谷。
それがライセン大渓谷だ。
……久しぶりの太陽が眩しい。俺の体内時計ど少しだけ時間にズレがあったようだ。
……でも、そんなのどうだっていい。
ついに、戻って──
「よっしゃぁああ──!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」
「んっ──!!」
「…………ったく、台詞も先に言われちまった」
『無理もない……実際彼らの味わった絶望や孤独は君以上だろうからな』
「そうだな……俺にも想像できないような地獄だったんだろうな」
目の前ではしゃいでいる2人を目にしてアルタイルと話す。
あの転落はハジメにとっちゃあ死んだも同然の出来事だし、ユエさんはもう数百年は封印されていたんだから、俺なんかとは比べ物にならない感情を抱いているのだろう。
何方も切実にここから出ることを願っていた訳だし、じゃなきゃこの迷宮をクリアは出来ない。
正直、2人がここに辿り着いただけでこっちまでもが何だかしんみりしてしまうのであった。
……アルタイル、写真頼むわ。あいつらの記念すべき地上のツーショット。
さて、2人の空気に飲まれかけていたが、俺もここに着いて感想くらいは言っておこう……うーん、この昂った感情を言葉にすると──
「久しぶりのシャバの空気は透き通ってて綺麗だな」
『王国では指名手配の君にはぴったりのセリフだ。旅路が全てシャバにならないよう祈るばかりだな』
あー……そう言えば俺多分王国から逃亡しているんだった……完全に忘れていたけど、実際そこまで重要な問題じゃないしな。
と言うのも、今の俺の姿は十分過去の俺とかけ離れているからだ。肉付きで体格も変わっているし、赤メッシュも本来の俺と比べるとかなりの違和感がある。
そしてこのクリスタルブルーの目が完全に外国人顔負けの顔面にしており、トータスの住人と間違われるレベルである。
こうして考えると日本人には青色の目って浮きまくるな。
カラコンとかみんなつけたくなるのも頷ける。
とにかく、今の俺だったらそこまで気づかれることはないんじゃ無いかと思っている。だからアルタイルに言われるまで意識していなかったし、それを思い出したところで気にしていない。
「つっても、まだスタートラインに立ったばっかだもんな……」
……そんなこんなで、前にいるハジメとユエさんも喜びを分かち合えたようだ。うんうん、良かったねー。
さて、では周りの害虫の駆除だな。俺たちの騒ぎを駆け付けてか、いつの間にか魔物の群れに囲まれていた。
全員、久しぶりの人間を発見したのか、敵意丸出しで牙を光らせている。これは戦闘を避けられないムードだな。
よーし、それなら早速──
『使うのか』
「あぁ、勿論だ。森羅万象……第22楽章、因子模倣!」
場所は前方に……場所の関係もあるし、実験も兼ねて一本だけにしておくか。右手に青い因子が収束し始め、やがてそれは一つの形になる。現れたのは一本のマスケット銃。
早速使ってみようか……マ○さん銃。
俺らの周りを囲んできた魔物は全員警戒しており、俺の出した武器にも反応が薄い。やっぱり現代兵器って魔物にとってもわからんよな。
照準をそのうちの一匹に合わせる。片手で持っているがこのステータスだ、命中率に問題は無いと見よう。持ち心地も最高だな。
思いっきり、そいつの脳天に向かって引き金を引いた。それにより上のタウル鉱石が下のタウル鉱石と接触して強大な摩擦熱が生まれる。
直後──
ドバン!!
電磁加速された弾丸が目にも見えぬ速さで銃口から放たれる。それが魔物に向かってノータイムで直撃する。常人ならその速さに撃たれたことすら気づかないだろう。
魔物は脳天どころか、頭丸々1つが吹っ飛んでいった。更に弾が後ろに控えていたもう一体にも被弾する。
そいつも撃たれて倒れたのでダブルキル。わーお、初回なのに高戦績。
……てか、威力の保証は今の俺の腕の状態で確認できた。打った直後、弾丸が銃口から放たれたエネルギーがそのまま腕に帰ってきた。
結果、右肩までに通っていた血管が全部破裂し、筋肉も衝撃に耐えられずにグチャグチャにつぶれている……これはグロいな。
直ぐに因子模倣をかけるが、内心驚いていた。俺のステータス上、耐久能力はあまり高く無いのは承知だが、それでもここまでひどい傷になるとはな。
痛覚も消えている訳では無い……たとえ一瞬で腕が吹っ飛んでも常人なら失神するくらいの痛みが実は来ていたりする……
この銃……想像の何倍以上にヤバイ。
まだ治療中のその時、他の敵の処理を終えたハジメがやってきた。両手にはドンナー・シュラークが黒い光沢を放っており、彼と共にひと仕事を終えたのだろう。
当人のハジメの表情から俺に呆れているようだが。
「お前なぁ……そんな調子で武器として扱えるのか?敵どころか、お前自身が虫の息じゃねぇか」
『安心したまえ、南雲殿。彼の戦闘は如何様にも変えることができるからな……それより余が言いたいのは何故あの隠れ家で威力の把握をしなかったのかだ』
「いやぁ、ちゃんとした魔物に使ってみたくてだな……あと、深い理由はないが、地上で実践したかった」
『はぁ……渓谷での使用だ。君も魔力が空では無いのか?』
鋭いねぇ……その通り、この回復が終われば俺の魔力がほとんど無くなるのだ。
ユエさんが言うに、魔力の消費効率が10倍も緩和されてしまっているので、俺の森羅万象とは相性が悪い。
……まぁ、別に俺の攻撃手段これだけじゃないし?
現にここでは無力であるはずの魔法特化型、ユエさんは前で雷を落としまくっていた。魔力のゴリ押しで自分の戦い方をしている。魔法チートすげぇな。
その後も俺は体術に切り替えて敵を潰していく。奈落に比べりゃあ雑魚同然なので、直ぐに片付いた。
すると向こうから何かが向かってきていることに気づいた。魔力反応……ありってことは、そいつも魔力持ってんのか。
誰かが何かに逃げている、そんな感じだな。目を凝らして渓谷の遥か先に繰り広げられているのを探してみる。
ハジメも気づいたようで、俺と同じ方に目を細める。奥から段々と見えてくる人物──
「……何だあれ?」
「……兎人族?」
「だけどここってライセンの底だろ?獣人の住処って樹海だなかったのか?」
『可能性として高いのは追放者……だがその前に厄介なものまで連れてきているな』
呑気な会話をしている間にも、その獣人の輪郭がはっきりと見えてきた。
……その後ろを追うようにこっちへ向かっている恐竜もどきの魔物も。もの凄く分かりやすい弱肉強食の構造だ。
プレデターはあの恐竜、獣人の子は食われる者に絶賛なりかけている。
「だずげでぐだざ~い! ひっ──、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」
ウサミミを揺らしながら必死に助けを乞うて来る少女……完全にイベントのフラグが立っている。
あれだろ?これで後ろの魔物倒したら〜的なやつだろ?ここで無視したら仲間にはならないけどスムーズにこの先のストーリーを進められる。
RPGではよくあった展開だ。寄り道イベントは基本全部とっていくスタイルだったが……
……イベントやるかどうかはともかく、初めて会ったウサミミを見殺しにするのはなんか後味悪いので、助太刀を──
「うわ、モンスタートレインだよ。勘弁しろよな」
「……迷惑」
あっ、2人はそそくさ彼女から距離を取ろうと歩き始めた。マジか。まぁ、確かに人助けは個人の自由であるが。
まさに無慈悲。思いっきりこいつらはイベントのフラグを折ってやがる。
「おいおい……ハジメ、助けねぇのか?ギャグの存在みたいな状況の女とはいえ、このままじゃあ本当に死ぬぞ?」
「別に死んだところで関係ない……寧ろこんなところにいる獣人に警戒しないわけないだろ」
「まぁ、否定はしないが……」
ハジメのスタンス通りに行けば、確かにそうなんだが……後ろをもう一度振り向くと今度はくっきりと兎を捕らえた双頭ティラノサウルスが殺気の方向を上げているところだった。
そしてそれに敏感に反応するハジメ
「アァ?」
えっ、今のには反応すんのかよ!?どうやら親友は食物連鎖における生死に思わず反応する体になったらしい。
気づけば、
ドパンッ!!
双頭ティラノの片方の頭を弾丸が貫通しているところだった。
そのままバランスを崩して地面にひっくり返る恐竜。衝撃で一名を取り留めたウサミミ少女が宙を舞い、ちょうど初めのところに落下するところだった。
おっ、流石にこれはキャッチしなきゃいけないパターン……もしくは衝突して──
「きゃぁああああー! た、助けてくださ~い!」
「アホか、図々しい」
『先ほどから久遠の予想する展開をことごとく破っているな……』
彼女の着地……落下地点を律儀に開けるハジメ。そのまま少女は地面にめり込むようにダイブした。純粋に痛そうで目を逸らしかける。
そのまま両手両足を広げうつ伏せのままピクピクと痙攣している。
「……面白い」
『これはまた残念を体現したような生き物だな』
「お前らも無慈悲すぎるだろ……」
死体撃ちのように興味なしですと、あまりの2人に思わずウサミミに同情してしまう。確かに怪しさ満点なんだが、対応がひどすぎる。
……仕方がないのでこいつの傍に、安否の確認を行うことにする。
「おーい、ウサミミ……平気か?」
「うぅぅ……こんなの未来になかったのに……」
「?、未来?」
なんか意味深な言葉だな……こいつ未来人属性まで持ってんのか?
ところが言葉をつづけようとしたら片方の頭で復活した双頭ティラノに遮られた。どうやらハジメの攻撃にひどくお怒りのようだ。
そしてそれに同じく気づいたウサミミはすぐさまハジメの方に行き、そいつを盾にする様後手に回った。見事な身代わりプレイ。
ハジメも思いっきり顔を顰めながら後ろの奴を引き剥がそうとした。2人の攻防が目の前の恐竜にも関わらず繰り広げられている。
「い、いやです! 今、離したら見捨てるつもりですよね!」
「当たり前だろう? なぜ、見ず知らずのウザウサギを助けなきゃならないんだ」
「そ、即答!? 何が当たり前ですか! あなたにも善意の心はありますでしょう! いたいけな美少女を見捨てて良心は痛まないんですか!」
「そんなもん奈落の底に置いてきたわ。つぅか自分で美少女言うなよ」
「な、なら助けてくれたら……そ、その貴方のお願いを、な、何でも一つ聞きますよ?」
……上目遣いでとは、あざとさ満載の見せ方だな。だがこいつ、よく見ると容姿とか髪色とか整っている。現在がひどいだけで、素材は多分ユエさんレベルに匹敵するんじゃないか?
そんな彼女のアピールも……どうせ無理だと予め予想しておく。
「いらねぇよ。ていうか汚い顔近づけるな、汚れるだろが」
「き、汚い!? 言うにことかいて汚い! あんまりです!」
「だがウサミミ、今ここに4人いるし、何でも言う事聞くなら4つにしなきゃ行けないんじゃねぇか?」
「はっ!?……うぅ、私の身体が持つかどうか……いいえ!それでも私は全て叶えてみせましょう!さぁさぁ!」
「幾らでも変わらねぇよ!てか一之瀬も変なこと吹き込むんじゃねぇ!」
「それでも私は断固抗議しまッ「グゥガァアア!」ヒィー! お助けぇ~!」
だがハジメも見事な鬼畜だな。コントじみた会話を何とか勇敢な双頭ティラノが中断させるが、それはハジメからして見たら威嚇に匹敵する。
……要するに彼の「敵」を意味してしまうのだ。
「というか、今回俺全然活躍してねぇな。ほとんどハジメの無双状態じゃねーか」
『無理もない。彼の武器は魔力を必要としない、対して君の武器は現在使い勝手が悪すぎる。魔力のことも踏まえると彼の出番が多いだろうな』
アルタイルの解説は最もだ。俺の格闘技でもあのデカさとなると一苦労である。その為この場で最もコスパよく活躍出来るやつは目の前の錬成師だ。
「それはそうなんだけどよ……あっ、終わった」
ここまで来ると俺の存在価値がどんどん薄くなってる気がしてたまらない。
色々と迷惑な兎を持ち込んできた恐竜魔物は呆気なく初めが放った弾丸で絶命した。たった2発で退場とは、あいつも運がなかったな。
こう言っちゃあ何だが、ここにいる魔物は奈落の奴らと天と地くらいの差がある。思考能力や五感など、敵の選別力がない。
井の中の蛙状態ある彼らはもう俺らの敵じゃないんだよなぁ。
と、2人が何か言い争っている。えーっと、アルタイル?
『少しは話を聞いておけ……はぁ、要約すると兎人の名ははシア・ハウリア……兎人族の族長の娘であり、今回の事態の原因でもあるようだ』
そこから話を聞くと、どうやら彼女は獣人にもかかわらず『魔力操作』を扱い、さらに固有魔法まで持ち合わせている。そのことを兎人族が一体となって隠していたが最近になってバレてしまった。他の獣人族からシアの殺害を回避するため、彼女の一族総出で故郷から逃げ出した。
……逃げ出したところで帝国兵と遭遇。今度は帝国兵からも逃げる羽目になり、そこで何人もげ囚われてしまったらしい……そいつらは全員奴隷行き……どの様に使われるかはご想像にお任せする。
そして逃げ込んだのがこのライセン大渓谷だったらしい……もうわかっていることだが、ここには大量の魔物が住み着いており、並の人間なら普通に死ぬところだ。
幸い兎人族は聴力に長けており、何とか逃げ切れているみたいだが、人数もじわじわと減ってきている。このままじゃあ全滅の恐れまである。そうしてシアは単独で渓谷の底まで来て助けを求めてきたんだとな。
……何かどこの種族も複雑な事情を持っているんだなぁ。全員同じ生き物だから当然だけど。
さて、この時俺はどうするか……こんなイベントは大歓迎、何だがあいにくここは現実の世界だ。行動は慎重にとらねきゃならない。
この少女の話は多分だが本当なんだと思う。ここまできて俺らを陥れようとする理由も同期もないからな。
問題は俺らにメリットがないことだな。人助けは別にいいんだが、この世界で聖人君子になるのは難しい……誰も救おうとすると自分の一番大事な物を救えなくなってしまうからな。
いつの間にかハジメに視線が動いていたところで彼女からの返答が来た。
『何を迷っている……余はあくまでも君に全てを助けるのは無理があると言ったまでだぞ?』
「……承知しているんだが、こんなふうにホイホイ助けになろうとしてたらまた二の前になるんじゃないかって思ってな」
『はぁ……極端な人間だ。君の取捨選択は君と親友だけなのか?君の選定でいいじゃないか』
それは……確かにそうだ。俺が思うようにすれば良い。だが今はハジメやユエさんが居るのだ。
2人に無理言えばそりゃあ協力はしてくれるだろう。だがそれではなにかダメな気がするのだ。甘え……とでも言うべきか。
こいつらは覚悟を決めて、自分の目的を果たすために必死なのだ。そんな時に俺の都合で寄り道などするのは申し訳ない。
決めあぐねていたらまたスマホからため息が。そして呆れ声までもが続いた。
『人間は誰しも己の欲に忠実だ……だが欲を満たそうとすれば必ず何かを捨てなければならない。傲慢な人間は時が動くと欲を更に大きくさせ、何れは人として大切な価値観までもを捨てるのだ……だから余はそのような人間は嫌いだ』
「……」
『かと言って自分の欲望を全て捨て、世界の激流に流されるのも見当違いだ。人は欲を力に変換する生き物でもあるからな』
妙に説得力があるな。それも彼女が俺らを恨み観察し続けた結果得た答えなのか。そのまま話は続く。
『欲に溺れるか、欲を捨てるか……そんな短絡的な問題ではない。重要なのはそのバランスであろう?』
「……そうだなぁ」
『君は違うじゃないか。少なくとも余が見てきた君はその裁量を心得ているはずだ……何かをゼロか100で考えるのは人間ではない、それは機械だ。そして機械には心が存在しない』
……極端に生きるやつも最早人間じゃねぇってことだな。分かりやすいが人間ボロクソ言われてるなぁ。
それでも彼女の言葉がスっと心に響く。ここで彼女を捨てると、俺にとってその判断を下した「自分」は人間じゃないと思う。
自分の欲には忠実に……だけど飲み込まれることなく、ね。
アルタイルの教示……いや、叱責とも捉えられる言葉を頂いて少しスッキリした。俺たちを恨んでいただけあって、よく理解していることで。
「ハジメ、一回こいつの案に乗ったらどうだ?嘘はついてねぇようだし、上手くいけば樹海の案内として頼めるかもしれねぇ」
「……それは一理あるな」
少し思案顔になるハジメ……興味は持ってくれたようだが、まだ足りないな。
ふむふむ……あっ、じゃあ──
「あと、俺、知ってるぞ?お前の趣味、普通にウサミミは大好物じゃねぇか」
「っ!おい!一ちの──」
「今の彼女は確かにひでぇ姿だが、それを取り除けばスタイルもいいし、ウサミミもお前のラノベコレクションにあっただろ?ドンピシャじゃねぇか」
「ぐはっ!……」
おお、クリティカルヒット。ハジメが自身の封印した過去を思い出してしまいその場に崩れてしまった。側でユエさんが驚く中、俺はこれでも終わらせんよ?
こう言っちゃあ何だが、こんな状態のハジメはいじりがいがあってたまんねぇ。こいつの膨大な魔力タンクに秘められた黒歴史の数々……それを俺は持っているからな。
泣ぐんでいたシアに向いて励ましの激励を行った!何処かの熱血テニスプレイヤーを彷彿とさせる口調で!
「シア、お前の魅力は全然こいつに通用してるぞ!何てったってハジメもさっきからお前のことは侮蔑の目で見てても、そのウサミミには動揺が隠せていない様だからな!粘り強く行けば必ず落とせる!君になら出来る!!」
「えぇぇ!?でも、それはそれで複雑ですぅ!」
「安心しろ、こいつにはお前の言う『いたいげな美少女』は確かにこいつの心に刺さっている!そう!ユエさんがいるにも関わらず!ユエさんが!いるにも!関わらず!!」
「……ハジメ?」
「待て待て待て!!ユエ!それは違うからな!?俺の気持ちは全く揺らいでねぇからな!」
おーっと、ここで正妻さんから無言の圧力!ふっふっふ、そのままヤケになって俺の話に乗っちゃえよ!
ユエさんにタジタジなハジメを他所に、アルタイルからジト目を盛大にくらっていた。
『……これは余、関係ないからな。君が始めたことだからな』
「アッハッハ!確かにそうだけどな!……やっぱり俺はこういう役でなくちゃな」
よく考えたら俺こんな立ち位置だもん。自分らしく生きてきたんだ。今回もハジメを巻き込んでしまうことにしよう。
「はぁ……ったく、分かったよ……こいつを連れていけばいいんだろ?」
「ん……私も別にいいと思う」
「ありがとうございますですぅ!それでは早く出発しましょう!事態は一刻を争ってますから!」
こうして俺らの旅に、早速1人のウサミミが追加されるのであった。
ちょいと補足
シア・ハウリア
→はい、序盤は残念うさぎ、後半がバグうさぎのハウリアですね。基本はありふれ原作と同じ立ち位置になると思いますが、序盤は久遠とつるむことが多いかも…ですが予めに行っておきます。彼女は…ハジメの物です。
アルタイル
→基本久遠の胸ポケットにいる。実は久遠がオーダーメイドで態々改造した代物であり、丁度彼女のカメラが外の視界を捉えられるように作られている。なので大抵久遠のそばにいる限り何が起きたのか把握することができる。
正月から2週間以上経っちゃった…そして実は数日もしないうちに大事な試験期間に入っちゃうので投稿がまた出来なくなります…一応ストックしてある話を出すかもしれないですが、もう暫くお待ちください…
さて、始りましたね、二章…ついにハウリアの暴走が始ります。色々考えなきゃいけないところはあるんですけどね。ハウリア間改造計画に久遠がどうか変わるのか、久遠とシアの絡みをどうするか…あとはニューヒロインをどうやって取り込ませてりくか…
やることは山積みですが、なるべくしっくり来る様な展開を目指して、がんばります。
ニアさんの設定はどっちに寄せる?
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原作(茶髪、メガネなし、小顔)
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今作(橙色、メガネあり、インテリ風)