ありふれた物語の森羅万象   作:RASっさん

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第二話 異世界、中々にぶっ壊れとる

 眩しい光が収まらない中、俺たちは浮遊感に襲われる。無論俺もその1人で、先程から何とか手に持っていたスマホをポケットに入れて転移に乗っかった。

 

 するとその時は急に訪れた。頭の中に何かが入ってきたのだ。

 

「うっ……」

 

 頭が……力が……疼く!系だったら良かったんだけど、割とシャレにならん痛みが脳を蝕んでいく。脳内に異様な声がやけに響く。

 

「『森羅万象(ホロプシコン)』は万有の力。万物流転、新界転生の力。塵は緑に、緑は灰に而して再び、世界はここして立ち戻る」

 

 この声……アルタイルか? だけど今までのような声と違う、もっと相手への侮辱も含まれたどす黒い声だ。

 きっとその声は相手へと向けた言葉であり、つまりこの声はアルタイルの記憶……彼女が世界を滅ぼそうとした時の会話なのか……? 

 

 そして同時に身体に巡る回路のような電流。目に映るのは様々なプログラミングのような、だけど訳の分からないコード。俺の知ってるプログラミングのコードでもねぇ……っ! 痛てぇ……

 でも理解はできる。言葉には表せないがその言葉は要するにこう言っているのだ。

 

森羅(ホロプ)……万象(シコン)……!

 

 耳には音楽という名の術式が反響して入ってくる。目のコードも消えることがなくその情報を無理やり訴えかけてくる。コードは何を言っているのか分からない……だが頭に入ってくる情報は分かる……

 分からないのに分かるという矛盾が頭を圧迫している。

 

 …ううっ、このまま一気に弾けて割れそうだ。

 

 ……アルタイルは……こんなにも多くの情報を仕入れていたのか?信じられない。

 常人なら間違いなく脳が焼けて死んでいるレベルだ。幾ら彼女が被造物であろうと、精神は人のままの筈なのに…

 

 だけど……この痛みの中1つの切実な感情が俺の中に生まれていた。

 

 

 俺もアルタイルの力を知りたい。

 

 

 アルタイルが過去に、俺らに対して抱いた感情、絶望の縁で何を得て何を思ったのか……それを知りたい。彼女の歩んだとてつもなく長いその軌跡を知りたい。

 

 そして、あわよくば彼女の孤独を俺が埋められるなら──

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

『っ!……ん!!……久遠!!』

「あぁああ…………がぁぁぁ!!!」

 

 アルタイルの言葉がトリガーになった。力を振り絞って情報の痛みから断ち切ることが出来た。同時に意識が現実へと引き寄せられる。

 改めて目を開くとそこにはもう文字はなかった。それに安心しつつ、俺はびっしょりかいてしまった汗を拭った。全身が熱くなっており、先程の情報の巨大さが伺える。

 

 前を見ると困惑した生徒たちがいる。何人かは心配そうに俺の事を見ていた。

 脳への痛みが来たのはどうやら俺だけだったようだ。代表して雫が声をかけてくる。

 

「一之瀬君、大丈夫?凄く苦しんでいるようだったけど……」

「あぁ……多分人生で二度と味わうことの無い痛みをこの短時間で実感したけど、平気だ……それよりもここは何処だ?」

「さぁ……私達も困ってるわ。全然知らない場所なのよ」

 

 雫がそう言いながら周りを見ている。その顔からは珍しく不安も読み取ることが出来、如何にこの状況がまずいか物語っている。

 

「まぁ、この状況からして間違いなくファンタジーが関わってそうだけどな……」

 

 言いつつ視線を移すと、そこは教会……のような場所だ。周りが白を基調とした大理石の壁でできており、更には目の前には見ろと言わんばかりの壁画が立っている。

 

 壁画の背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。

 傍から見りゃあルーブル美術館にでもある1枚だが、状況が状況だから素直に感心は出来ない。

 

 そして何でだろうな……すげぇ気味が悪いと思ってしまう。

 

 そして俺らがいる場所も、どうやら何かの台座の上で、クラス全員すっぽり入るほどの大きさだ。

 

 ってか、ん?待てよ。慌てて耳を触ると、そこには俺の耳があった……

 違う、イヤホンがない。だけど何で?さっきアルタイルの声が聞こえた気がするんだけど? 

 

「アルタイル?」

『どうした?』

「……何で脳内に話しかけているんだ? すっげぇ混乱してるんだけど」

『……今余は君の脳内に話しかけているのか?』

 

 お前もわかっていないんかい!まぁそっちも毎回充電切れになってるであろうイヤホンに普通に繋がってるのもおかしかったから今更ではあるけど! 

 

 と、俺の片方のポケットに入っている感触。手を突っ込んでみるとスマホがある……アルタイルのスマホだ。

 だがもう片方は?俺が俺用として買ったスマホが……無くなっていた。

 

「イヤホンや俺のスマホはあっちの世界にあるのか……だけどお前のスマホは何故かある」

『そうか……それは余が入っているからだろう。他の者が持っていないことを考えると合点がゆく』

「なるほどな……となると異世界だからお前と脳内会話出来る見たいのもあるのか」

『君は実際に喋っているからな……現状それは消去法に過ぎない。現実ではありえない空間の歪みと世界の垣根を越えた転移……現状では情報が足りない』

 

 すると奥から1人の老人が歩み寄ってきた。その人の後ろにも数人……いや待て、よく見たら台座の前にめっちゃ人いるじゃねーか。

 

 全員まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好でそこに居たのだ。

 

 法衣集団の中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。

 

 だがそいつの顔に刻まれた皺や老熟した目がなければもっと若く見える……多分先程そいつから感じるエネルギーらしきものが原因だ。こいつに敵対するのは不味いかもしれないな……

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。はっきり言って、胡散臭さが世界一だ。

 

 はーい、そして現在。十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に俺たちは通されていた。

 

 全員の着席を終えるとカートを押してきながらメイドさんが入ってきた……メイドさん……

 

 ……えっ? メイドさんじゃん!

 

 コスプレのようなフリフリメイドでもなければ、某聖地にいるようなエセメイドでもない。メイドの元祖、シンプルかつ露出少なめのビクトリア式をそのまま引用させた、ガチメイドがそこにはいたのだ! 

 

 これには思春期男子の我らは全員釘付けになっている……俺は違うけどな。

 

 あーいや、そりゃあさっき興奮した感じで言ってたけど、どう考えてもハニートラップなのだ。

 

 先程からメイドが一人一人に紅茶を入れているのだが、その動きが妙だ。男らにはさりげなく自身のナイスバディを震わせ、その思考を悪い意味で落ち着かせようとしている。

 

 そして同時に女子からの冷ややかな視線。これも男子何やってんだ……というこれまた1種の冷静を掴んでおり、同時に異世界……メイドさんの存在を違和感なく認知させているのだ。こんな光景見せられたら逆に落ち着いてしまう。

 

 今のところ引っかかってないのは、オタク慣れしているハジメや、そんなハジメに集中している香織、そんな感情より焦燥の気持ちが大きすぎる愛ちゃんセンセーと平常心を保たせている雫くらいだ。

 

 あっ、ごめん。訂正する。正確に言えば何やらスタンドらしきものを浮かべた香織と、それを感じ取ってるハジメだ。やっぱりこいつはスタンド使いだったか……

 

『君はあの様な罠に騙されないのだな』

「まぁ……寧ろあのメイド達が少し可哀想って」

『ほぅ……?それは何故だ?』

「目が笑ってない」

 

 全力で御奉仕させていただきます! ……と笑顔で言っているようだけど、それはあくまでも仮面の1枚に過ぎない。

 彼女たちは無理やりやらされているのだ。その時点で大体は察せる。

 

 ここは……理由はともあれかなりのクソッタレな所だな。あんまり協力的な姿勢は出したくないところだ。

 

 だけどこの世界を何も知らないのも難点だ。俺らが果たして自分らの世界に戻れるのかも怪しい今、一先ずは相手の話を聞くしかないか……

 

 全員が落ち着いたのを見て、イシュタルは話を始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 そこから数分、じーさんの話は続いたのだが、要約すればこうだ。

 

 ここはトータスって世界。人間、魔族、亜人と3種類の種族が共存する世界だ。

 この内北一帯を占領する人間と、南一帯を占領する魔神族が何百年もかけて戦争しているとの事。

 

 魔神族は魔物を使役してそれぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのこと。しかも数が圧倒的。

 

 対してこちらは使役の魔法を使える者が少なく、制度も安定していない。

 要するに数は負けててピンチ! 

 

 だから人間は考えたのだ!数で負けたのなら今度は質やろ!って。

 

 なるほど、理にかなってるけど道徳的にどうなのか問い掛けたい。

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 神妙な様子、しかし興奮は隠せていないイシュタルの話を聞いて……はっきり言ってこっちはとばっとりもいいところだと思う。戦闘経験が全くない俺らに何をさせるつもりか。

 

 そんな考えを持つ保護者の目線である愛ちゃんセンセーも同じ考えで、イシュタルに声を上げて返した。小さい体から出るとは思えん程の大声でイシュタルに叫ぶ。

 

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 うんうん、その言葉には同意しかない。だがその後に来た言葉で絶望が降り掛かってきた。

 

「お気持ちは察します。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 ……ちっ。やっぱり片道切符か。こんなことを平然と異世界側がしているのを見るに、相手を呼んだことに対する罪意識はないようだ。

 

 と、阿鼻叫喚というのだろうか、周囲の生徒も騒ぎ始める。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ!なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

 騒ぎ出した生徒を見るランゴバルドの顔は明らかに俺らの事を静かに見ている。

 だがその表情には俺らに対する罪悪感ではなく、何故神に召喚されたのに喜ばないのだ……という疑問。その時点でもう終わってる。

 

 やっぱりこいつらとの協力はなしの方向で行く。アルタイルにも念の為相談しておくか。異世界系のプロだし。

 

 誰にも聞こえないくらいの声で虚空に語りかける。

 

「なぁアルタイル。俺はこんな話クソだと思うが、お前はどう思う」

『余も君の意見に賛成だ。神など傲慢で抽象的な存在を崇拝する輩の軍門に下るなど、滑稽以外に何と言おうか……しかしどうする?このまま出て野垂れ死にをするか?』

「まっさかぁ……暫くはここにいよう。事を見計らって出て行くとするか……1人で行動する方が早く帰れそうだし」

『ふふ……雫やハジメを置いて別行動をとるか。君も中々悪ではないか』

 

 そういうお前も充分悪そうだけどな……もう声からしてどんな表情をしているか容易に分かる。

 まぁ、ハジメ達を放っておくほど俺も冷酷じゃない。帰還方法が見つかったらみんなのところに合流して一緒に連れて帰るまでだからな。

 

 よし、となれば情報収集はこういう時の基本だよな。さりげなくイシュタルのじーさんに質問を……

 

 そう思った時だった。『バン!』とテーブルを叩く音が響く。その音の元に視線が集まる。叩いたのは天之河だった。彼は視線が集まるのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん?どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いも無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が張っている感じがするんです」

「ええ、そうです。この世界の者と比べ物にならないほどの力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように、俺は世界も皆も救って見せる!!」

 

 ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。

 そしてそれは悪手だ。今ここでその発言をするのは間違いなく相手の思うつぼじゃねーか。

 

 てかあのじーさんの話だけを真に受けるなんて、お前絶対詐欺とか会うタイプだ。間違いない……と、そんなことを考えている場合じゃない。

 

 絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけた様子。女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。

 

 あの顔だけの馬鹿に惚れてる女子共、お前らも何れ詐欺に会う、絶対に。

 

 これ以上喋らせたらやべぇ。仕方がない……俺もおもむろに立ち上がり、光輝の方を見る。

 

「はーい、天之川それ以上発言は控えましょうね……ってか今すぐその口を閉じろこのバカ」

「なっ……一之瀬か。なんで邪魔をするんだ!」

「何でって……責任の籠ってない言葉に他人を巻き込もうとするじゃねーよ」

「何を言っているんだ!これは世界の危機なんだぞ!」

 

 止めろよ…そこまで堂々と言われるとまるで俺が間違ってるみたいな言い方じゃねーか。

 

 ってか世界の危機がなんで俺の発言と矛盾するって決めつけるのか……まじでご都合主義だな。

 だけどここはしっかりと線引きをしなければいけない時だ。人の命が関わっているからな。

 

 天之川から目を離さず俺は続ける。

 

「世界の危機……じゃあ具体的にはどんな感じか言ってみろよ」

「それは勿論、魔神族から人間たちを守ること、そして人間の滅亡を防ぐことに決まっているじゃないか!」

「ほう? ではイシュタルのじーさん、相手の魔人族は名前の通りで行くと『人』なんだな?」

「……作用でございますとも。相手は人型であることは変わりませぬぞ」

 

 じーさんって言っちゃったけど、敬語入れると余計変だし勘弁してもらいたい。他のみんなからの視線もなんか痛い気がするけど、もう俺のスタンスを帰るつもりはねぇ。

 

 だけど、ふーん……使役するってことは知能もそれなりにあるんだろうし。魔人、何だよな? 

 

「つまりは……俺たちに戦争に参加させ、あまつさえ人殺しをさせようとしているわけだな?」

「なっ! 一之瀬!!」

「いやだってそうじゃん。魔人族という人と戦争を強いられてるってことだ」

 

 魔族とか、人外地味だやつら……ドラ〇エのゾ〇マくらいならまだしも、しっかりと意思疎通の取れる相手なら話は変わるだろ。

 となると思い出すのは過去の俺らが行った戦争。あんな事をしても結局人が死ぬだけで残るものも勝利か敗北の結果のみ。

 

 こんなことをしても無意味だと70年以上経った今でもその信念は続いており、俺らも学んだ筈なんだが……

 

 周りの生徒らは事の重大さを改めて理解したのか、顔を青くさせている。だが目の前のバカは違った。

 

「僕達はこの世界の危機を手伝うべきだ! 君も参加する義務があると思わないのか!」

「思わん。逆に聞くが参加して、お前は自分と同じ人型の、コミュニケーションも取れる野郎を殺すことが出来るのか?」

「そ、それは……話し合えば分かり合える! 僕がその人達を説得して──」

「はいはい、そんなに都合よく事が行ったらとっくのとうにこの戦争は終わってる。てか召喚すらされてねぇよ……」

 

 はぁ……取り敢えずこいつを何とか言いくるめたけど、あの発言その物は消せないな。1度表明してしまった物は神が絶対と考えてる世界じゃ取り消すことが出来ない。

 神に反したとか言われて全員ここで抹消されかねない。だから最低限の条件を設ける作戦にしよう。

 

「イシュタルのじーさん。ここに居るやつらは戦闘経験もないただの一般人だ。この世界みたいな殺伐したところでの戦闘経験は皆無で、蝶よ花よと鳥籠の中で育った雑魚だ」

「ほう……」

「確かに力は感じている。経験などそちらのルールで積めば即戦力くらいにはなるのかもしれない。だけど精神はそう簡単に変えられるもんじゃないだろう?」

「……そうですな。確かに精神は肉体に比べ遅れる事はある」

 

 よし、流石に精神崩壊しても戦え的な、人に対する隷属システムはこの世界にない。それなら──

 

「心が脆いものは間違いなく自分のパフォーマンスをすることが出来ない。場合によっては死ぬ」

「一之瀬! 死ぬとか物騒なこと言うな!」

「いーや、今だからこそ言うぜ。俺らは簡単に死ぬんだよ……精神的にトラウマを植え付けらるのも、この世界に殺されたも同然だ」

 

 自らの手をちに染める……その重さが分かってないこいつらがこの世界で生きていくのには相当の覚悟が必要になってくる。

 だから安易に戦争に参加すると退場者が続出する未来は目に見えているのだ。それだけは避けなければならない。

 

「だからイシュタルのじーさん……せめてこの世界で戦って行くか……それとも参加せずに裏方としてやって行くか。その選択権くらいは貰いたい。戦争の貢献をするのは間違いないからな」

「……」

 

 暫く黙りこくっているじーさん。さて、どうなる? 出来ればイエスは貰いたいんだけど……周りも静寂で包まれる中、じーさんは顔を上げて答えを出した。

 

「良かろう、その約束を守りましょう」

「サンキュー……出来れば契約書みたいなものが欲しかったが……その言葉はこのクラス全員が聞いてた。みんなも言質とったな?」

 

 ギロリと周りを見渡すと、全員気圧されながらも頷いた。よし、これなら最低限の保証も手に入れられた……別に誘導はしてないよ?

 

 よーし、じゃあ俺はここで出番終了! 

 

「っし、じゃあ出しゃばって悪かったな。もう一度言うが、天之川は自分の言葉に気をつけろ」

「……」

「あっ、メイドさん。紅茶お代わり良いか?」

 

 もう話は終わった。天之川の主人公発言も今の状態なら最悪のルートへは行かなくて済む。

 継ぎ足された紅茶を啜りながらこれからのことを考えていると、脳に先程まで黙っていた彼女の声が響く。

 

『君はヘイトの誘導が得意なようだな』

「……うっせぇ」

『相手からの印象は良くも悪くも付けられた、君もここから出ることが難しくなったようだぞ? 先程の計画も幾らか調整が必要そうだ』

「……うっせぇわい……」

『だが君は周りが流されて行く未来だけは止めておきたかった。だから自分を犠牲にして選択の自由を取らせたわけだ……見かけによらず優しいではないか』

「止めてくれ……それ以上いじると俺のSAN値も限界きてる……恥ずかしいから止めてくれ……」

 

 何はともあれ、分かったことがある。

 

 この異世界……中々にぶっ壊れとる。




ちょいと補足

一之瀬久遠
→敬語表現は苦手。本当に尊敬する人にしか敬語は使わないスタンス。尚、愛ちゃんせんせーは「背伸びしてるティチャー」なので一応敬語。

アルタイル
→「余が?敬語を?そもそも余の隣に並ぶのは余の創造主であり、盟友であるセツナだけだ」…と、誰かに対して畏敬を抱かない。しかし久遠に対しては本来の態度が軟化しており、口調も若干柔らかめ。
 決して私の言葉のセンスが壊滅的だからでは無い、うん。

創造主
→物語を作る我々を指す。

被造物
→我々によって作られたキャラクターを指す。

 簡単に言えば、私(筆者)=創造主、一之瀬=被造物と考えれば良い。

 第2話投稿しました…今回で一之瀬久遠の大まかなキャラは書けたかなぁって思ってます。それでは次回また頑張って書こーっと!

Re:CREATORSは皆さんどのくらい知ってますか?

  • 全く知らん
  • 名前くらいなら…
  • 水篠 颯太はクソメガネ(=知ってる)
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