ありふれた物語の森羅万象   作:RASっさん

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ありふれた職業で世界最強2期第3話視聴感想

フリードさん…笑。白竜に乗ってる姿がなんかシュールでしたね…ドラゴンを手繰るならドラゴンライダー見たいなサイズが良かったなぁと…まぁカッコイイには変わりないんですけどね。
そして黒龍のティオも登場!正直黒龍の方が断然カッコイイ!…だから諦めなフリードさん

お待ちかね、やべぇ奴らの登場ですぅ!



第十八話 ハウリア、ビフォーアフター!

 突然だが、人は人生で何回か電流が走るような感覚に襲われるらしい。勿論静電気の話ではない。

 

 それは人生の転機とも言えよう……全身に駆け巡る全く新しい感覚。これだ、と自分の心にストンと落ちていく何かとともに、新たな扉が開かれる瞬間が俺達にはあるのだ。

 それがいつ来るのかは分からない。テレビの映像で感じる時もあれば、現地のほんの数分出起こる可能性だってある。それもそうだ、偶然が巡り巡って起こる奇跡のような瞬間なのだから。

 

 俺はまだ高校生だし、ぶっちゃけ人生は自分なりに楽しんで生きているつもりだが、今ここでその瞬間は来たんじゃないかって思う。

 

 全身ビリッと来たし。目の前の光景に信じられない自分がいるし。

 ユエさんやシア、アルタイルでさえそうかもしれない。俺達は全員新たなステージへと足を進めるのかもしれない。

 

 ……今回の場合は進む気は全くないけどな!

 

 閑話休題!目の前の珍妙な光景に目を戻そう。普通にシアとの試合を終えて感想、反省点などを言い合ったあとハジメの所に行く話になった。

 ユエさんによるとシアを除く他のハウリア達の特訓をさせているとの事だからだ。

 

 ハジメの親切心?による彼らの特訓の成果を見たいし、シアも自分の結果を教えたかったのだろう。3人とも揃って彼の所へ行くことになったんだ。

 

 ……なぁ、俺の記憶では彼らは「温厚で柔和な、戦闘を好まない種族」だったよな?

 

『認識を改めた方がいいこともある……だが、これは如何ものか……』

「迂闊だった……シアという化け物が居るんだ、こいつらもその遺伝子持ってるんだから想定しておくべきだった……!」

「エッ!?私は普通の森のうさぎですよ!……って、言ってる場合じゃないですぅ!どうしたんですか皆さん!?」

 

 劇的、ビフォーアフター!!

 

 何と言うことでしょう!あれほどか弱そうで、だけど心優しかったハウリアが何と筋肉溢れるマッスルボディを手に入れてるのではありませんか!

 度重なる移動で出来た身体中の傷も、まるで歴戦をくぐり抜けた勲章のようにギラりと輝き、タレ目だった顔もキリッと獲物を逃がさないプレデターに大変身!

 足腰ヨボヨボだった姿とはおさらば!全員背筋をぴーんと伸ばして老若男女問わず現世を生きる兵士のように身体を上げている。

 

『え──っ!?これでたったの2週間!?』

「ん──!?しかも講習代無料!」

「そう、優秀なインストラクターと共に、貴方も理想の筋肉を手に入れてみないかい!?レッツ、魔改造!!」

「最後に魔改造って言っちゃってるじゃないですか!しかも最終的には何処かのトレーニング講習に変わっちゃってるですぅ!というかそれよりも父様達が知らないところでその餌食になっちゃってます!」

 

 シアの連続マシンガン突っ込み……この量を捌くとは中々じゃないか。

 

 ちょいと話を戻そう、他のハウリアについてだ。

 アルタイルとユエさんが若干キャラ崩壊までして行われたノリでコミカルに彼らの変貌を表していたが……実際の変わりようはもっと酷いものだ。

 

 例えばカム。ちょうどハジメに話しかけている彼はまるで1人の戦士のような風貌で佇んでいる。言葉遣いもそれ相応の男らしさが溢れており、傍から見れば何処かの893にでも所属してるんじゃないかと錯覚するレベルだ。

 

 その後ろに待機している奴も獲物である魔物を片手に持ちながら隠しきれない快感を顔に出してしまっている。まるで狩りそのものが彼らの本能であるかのように……

 

 これが1人2人ではない。端から端まで、全ハウリアに起こった変化だ。もう怪奇現象かと思われるくらい彼らは……変わった。

 

 ……どう考えても犯人は一人しかいないけどな。

 

「ボス。お題の魔物、きっちり狩って来やしたぜ?」

 

 カム達は、この樹海に生息する魔物の中でも上位に位置する魔物の牙やら爪やらをバラバラと取り出した。

 そしてボスと言われた本人──南雲ハジメは当然のようにそれを確認する。冷や汗を書いているようにも見えるが気のせいだろう。

 

「……俺は一体でいいと言ったと思うんだが……」

「ええ、そうなんですがね? 殺っている途中でお仲間がわらわら出てきやして……生意気にも殺意を向けてきやがったので丁重にお出迎えしてやったんですよ。なぁ? みんな?」

「そうなんですよ、ボス。こいつら魔物の分際で生意気な奴らでした」

「きっちり落とし前はつけましたよ。一体たりとも逃してませんぜ?」

「ウザイ奴らだったけど……いい声で鳴いたわね、ふふ」

「見せしめに晒しとけばよかったか……」

「まぁ、バラバラに刻んでやったんだ、それで良しとしとこうぜ?」

 

 うっわ〜、不穏な発言のオンパレードじゃん。人格変わってるまであるんじゃねぇか?かつての記憶が間違っていたりするのか?

 全員、元の温和で平和的な兎人族の面影が微塵もない。ギラついた目と不敵な笑みを浮かべたままハジメに物騒な戦闘報告をする。

 

 一足遅く我に返ったシアが目を見開いてハジメに問い始めた。

 

「ど、どういうことですか!?ハジメさん!父様達に一体何がっ!?」

「お、落ち着け!ど、どういうことも何も……訓練の賜物だ……」

「いやいや、何をどうすればこんな有様になるんですかっ!?完全に別人じゃないですかっ!ちょっと、目を逸らさないで下さい!こっち見て!」

「……別に、大して変わってないだろ?」

「貴方の目は節穴ですかっ!見て下さい。彼なんて、さっきからナイフを見つめたままウットリしているじゃないですか!あっ、今、ナイフに〝ジュリア〟って呼びかけた!ナイフに名前つけて愛でてますよっ!普通に怖いですぅ~」

 

 樹海にシアの焦燥に満ちた怒声が響く。ありがとう、俺たちの感じていることまで全て代弁してくれた。

 

 先ほどのやり取りから更に他のハウリア族も戻って来たのだが、その全員が……何というか……ワイルドになっている。老若男女問わずして、身体の肉付きが逞しく育っている。

 

 シアは、そんな変わり果てた家族を指差しながらハジメに凄まじい勢いで事情説明を迫っていた。ハジメはというと、どことなく気まずそうに視線を逸らしながらも、のらりくらりとシアの尋問を躱わしている。

 

 その間にもハウリアはちょいと危なげなオーラを放ちながら、周囲への警戒を怠っていない。常に自分の身を隠している……気配遮断が得意な種族とはいえ、今の彼らはプロの暗殺者だ。

 

 ハジメ、絶対習わせたな……そしてこの感じ、間違いなく教育方針はハート○マン方式だな。

 

「……一之瀬、ハー○マンって何?」

「あぁ、簡単に言えば恐怖を主軸とした短期的かつ効果が高い教育方針だ。死ぬかもしれない恐怖、生への渇望、そんな感情を逆手にとって相手の精神、肉体を集中的に鍛える……この場合、大抵のパターンとして訓練生の精神が着いて来れなくなって壊れるのが多いが……」

『兎人族は仲間への絆意識が高い。故に南雲殿はその輪を材料にして訓練させたのだ。彼等は自らより家族を優先する種族。並の生物より高い精神力を備えているため、乗り越えられた訳か……フッ、それにしてもこれはまるで改造ではないか』

「……温厚な兎人族を利用した訓練……ハジメ、鬼?」

「『違いない』」

 

 3人で意見交換した後、再度ぶっ飛んだ光景に目を戻す。見るとシアが自分の父からサイコパス発言をされて愕然としているところだった。

 

 あっ、その場で四つん這いになって、シクシク泣いてる……自分の特訓の間に家族が豹変してたなんて夢にも思わないだろうからなぁ。

 

 そして事態はまだ動くようだ。茂みからハジメの方へ1人の少年が向かってきた。当然の、気配遮断を使いながらの登場だ。

 勿論、身長は少年でもその見た目は熟練の兵士を彷彿とさせる雰囲気だったが。

 

「ボス!手ぶらで失礼します!報告の上申したいことがあります!発言の許可を!」

「お、おう? 何だ?」

 

 若干どもるハジメ。軍人のように発言した少年はお構いなしに報告を続ける。

 

「はっ!課題の魔物を追跡中、完全武装した熊人族の集団を発見しました。場所は、大樹へのルート。おそらく我々に対する待ち伏せかと愚考します!」

「あ~、やっぱ来たか。即行で来るかと思ったが……なるほど、どうせなら目的を目の前にして叩き潰そうって腹か。なかなかどうして、いい性格してるじゃねぇの。……で?」

「はっ!宜しければ、奴らの相手は我らハウリアにお任せ願えませんでしょうか!」

「う~ん。カムはどうだ?こいつはこう言ってるけど?」

 

 話を振られたカムは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべると願ってもないと言わんばかりに頷いた。

 

「お任せ頂けるのなら是非。我らの力、奴らに何処まで通じるか……試してみたく思います。な~に、そうそう無様は見せやしませんよ」

 

 族長の言葉に周囲のハウリア族が、全員同じように好戦的な表情を浮かべる。自分の武器の名前を呼んで愛でる奴が心なし増えたような気もする。シアの表情は絶望に染まっていく。

 

「……出来るんだな?」

「肯定であります!」

 

 あります!時代遅れとも言える台詞がバンバン出てきやがる。

 

 最後の確認をするハジメに元気よく返事をしたのは少年だ。ハジメは、一度、瞑目し深呼吸すると、カッと目を見開いた。

 

「聞け!ハウリア族諸君!勇猛果敢な戦士諸君!今日を以て、お前達は糞蛆虫を卒業する!お前達はもう淘汰されるだけの無価値な存在ではない!力を以て理不尽を粉砕し、知恵を以て敵意を捩じ伏せる!最高の戦士だ!私怨に駆られ状況判断も出来ない〝ピッー〟な熊共にそれを教えてやれ!奴らはもはや唯の踏み台に過ぎん!唯の〝ピッー〟野郎どもだ!奴らの屍山血河を築き、その上に証を立ててやれ!生誕の証だ!ハウリア族が生まれ変わった事をこの樹海の全てに証明してやれ!」

「「「「「「「「「「Sir、yes、sir!!」」」」」」」」」」

「答えろ! 諸君! 最強最高の戦士諸君! お前達の望みはなんだ!」

「「「「「「「「「「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」」」」」」」」」」

「お前達の特技は何だ!」

「「「「「「「「「「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」」」」」」」」」」

「敵はどうする!」

「「「「「「「「「「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」」」」」」」」」」

「そうだ! 殺せ!をお前達にはそれが出来る!を自らの手で生存の権利を獲得しろ!」

「「「「「「「「「「Aye、aye、Sir!!」」」」」」」」」

「いい気迫だ! ハウリア族諸君! 俺からの命令は唯一つ! サーチ&デストロイ! 行け!!」

「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」」」」」」」」」」

「うわぁ〜ん……やっぱり私の家族はみんな死んじゃったんですぅ〜」

 

 ハジメの号令に凄まじい気迫を以て返し、霧の中へ消えていくハウリア族達。温厚で平和的、争いが何より苦手……そんな種族いたっけ?

 少なくともここまで文面を埋めるほど活気盛んな奴らでは無かったことは分かる。あーあ、ハジメが優しい兎さんを魔改造しちまった。

 

 変わり果てた家族を再度目の当たりにしてしくしく、めそめそと泣くシア。心底同情する。ユエさんでさえそんな目をして彼女の背中を摩っている。

 

 いくらハウリアに戦う力を与えようとしたからと言って……正直、これはやり過ぎだ。過剰に越したことはないが、それでも人格変わるレベルは親族の同意って物が必要だろう……

 

 ってことで、問い詰めようか。魔力で当事者の周辺にマスケット銃を展開し、発砲寸前に待機させる。

 

 カチャリ……

 

「おら、キリキリ吐きやがれ。あんなに優しさ溢れるか弱いウサギがどうしてあんな戦々恐々としたヤバい暗殺集団に変貌してんだ、南雲」

「お前に苗字呼びされると益々怖ぇよ……いや、俺も初めはキレてたからよ。だってあいつらそこらにいる虫にも慈愛の念を持ってたからな?アイツらから強くなりたいって同意取れたのにその心構えがたるんでたから……」

『ふむ……では先程の激励も不可抗力の1つだと……それにしても言辞が達者であったな』

「……」

 

 目を逸らした。確信犯め……途中から自重しなくなったってことか。

 確かにもうすぐで俺らも出発するし、そう考えるとシアの不安を無くすための思いやり……だったのかもしれん。

 

 だが、ありゃあな……あーもう、どうやって責任取るんだよ!?フェアベルゲンの長老共が頭を抱える絵が直ぐに浮かばれる。

 責任……そういえば、あの集団そこら辺どうなってんだろうか。短期鍛錬で身も心も全てが超人になるとは思えないんだが。

 

「そういえばハジメ、あいつらの行った先には熊人族が居るんだろ?そこら辺線引きはさせてるよな?」

「……線引き?」

「ん?線引きだぞ、何が善で何が悪か〜みたいな。流石に路傍の虫までとは行かないが、あの熊野郎は殺しちゃ行けねぇだろ」

「あ──────………………」

「………………え?」

 

 ……ハー○マンの弱点の1つとして挙げられるもの。それは受講者の精神状態が極めて脆くなってしまう事だ。訓練での過程では勿論だが、大切なのは訓練後だ。

 

 自分の精神が肉体について行ってなければ何処かで必ずボロが出る。タガが外れて自分の行為を疑わなくなるのだ。そうなると自身が正しいと思うことが多少歪んでいたとしても強大な力でその考え諸共強制されてしまう。

 

 そう、命への重さを感じなくなったりもする……例えば、自分がどれだけ敵を殺しても、どれだけ無実な人を殺しても、自分の目的のためなら必要経費に過ぎない……そんな考えが芽生え始めたり。

 

 ……ヤバいじゃん。

 

 樹海に静寂が訪れる。誰しもがその本意に気付き、脳内が追いついていない状態だ。特にシアの顔が青ざめている……自分の親含める一族が非行に走ろうとしている可能性が高いのだ。ハジメの特訓以上にショックが大きい。

 

 彼らの精神状態が決壊していないのはハジメというボスがいるからであって、単独行動である現在、どのように羽目を外すのか分からない。

 気の所為か樹海を通り抜ける風が、遠くで起きている戦闘の音まで拾ってくれた気がした。あー、そして魔力反応も引っかかる。

 

『……はぁ、久遠。彼らの行先から他の魔力反応……急速に減少している』

「南雲?」

「……へい」

「やらかした事のケツ、拭おうか」

「……へい」

 

 ハウリア改造計画……どう転ぶのやら……

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 5人で向かった先は案の定悲惨な事になっていた。飛び交う影と共に中へ舞う首。血飛沫も定期的に飛びまくっており、緑豊かであるはずの地面も赤滲んでいる。

 

 だいぶ手遅れだな……だが最悪の事態までは至っていなかった。ちょうど目の前でカムがその熊人族の代表と対話をしている最中だ。

 

 とはいえ、その熊人族のグループも壊滅寸前だが。ドカっと地に着いたリーダーは既に戦機を失っていた。致命傷は何とか避けられているものの、周りの傷はそう浅くなくハウリアからの一方的な攻撃が伺われる。

 

「……俺はどうなってもいい。煮るなり焼くなり好きにしろ。だが、部下は俺が無理やり連れてきたのだ。見逃して欲しい」

「なっ、レギン殿!?」

「レギン殿! それはっ……」

 

 こいつレギンって言うのか、へぇ……彼の言葉に部下達が途端にざわつき始めた。レギンは自分の命と引き換えに部下達の存命を図ろうというのだろう。

 

 動揺する部下達にレギンが一喝した。

 

「だまれっ! ……頭に血が登り目を曇らせた私の責任だ。兎人……いや、ハウリア族の長殿。勝手は重々承知。だが、どうか、この者達の命だけは助けて欲しい! この通りだ」

 

 武器を手放し跪いて頭を下げるレギン。

 

 頭を下げ続けるレギンに対するカム達ハウリア族の返答は……

 

「だが断る」

 

 という言葉と投擲されたナイフだった。

 

「うぉ!?」

 

 咄嗟に身をひねり躱すレギン。しかし、カムの投擲を皮切りに、レギン達の間合いの外から一斉に矢やら石などが高速で撃ち放たれた。

 

 まぁ、敵ではあるからねぇ……だが──

 

「なぜだ!?」

 

 呻くように声を搾り出し、問答無用の攻撃の理由を問うレギン。

 

「なぜ? 貴様らは敵であろう? 殺すことにそれ以上の理由が必要か?」

 

 カムの答えは実にシンプルだった。

 

「ぐっ、だが!」

「それに何より……貴様らの傲慢を打ち砕き、嬲るのは楽しいのでなぁ! ハッハッハッ!」

「んなっ!? おのれぇ! こんな奴等に!」

 

「……リニューアル──」

 

 クオン・リニューアル──爆踵落とし

 

 矢、石……飛び道具が振り注ごうとする中、カムとレギンの間に踵をお見舞する。久々に威力全開ではなった一撃だ。

 

 地面が陥没し、攻撃で風圧も生まれる。空気が自然とそのエネルギーに猛烈な移動を開始する。

 その結果、二人の間に出来た風が飛び道具を全て吹き飛ばした。

 

「は?」

 

 おっと、レギンさんよ。そんな間抜けな顔してちゃあ、リーダーの面が格好悪いぞ?

 そんな事はどうでもいいんだがな。

 

 残りの3人もゾロゾロと茂みから出る。俺らに気づいたカムは一瞬驚くものの、直ぐに仕事の顔へと戻り、レギンを睨みつけながら口を開く。

 

「……一之瀬殿、そこをどいてもらいたい。それとも我らの敵に与するつもりですか。返事によっては──」

「いや、正直殺してもいいと思うぞ?」

「「「良いのかよ!?」」」

 

 うるさいなぁ、今大事な話してんのよ……するとシアが続いて怒号を彼らに浴びせる。

 

「そりゃあ、お前らから仕掛けてきたんだし、殺される覚悟だってある筈だろ?……問題はそこじゃねぇ。カム、お前は今本当にカム・ハウリアで居られているか?俺から見ればまるで別人なんだがな」

「そうですよ!父様も皆も、いい加減正気に戻って下さい!」

「む?理解に苦しむな。シアも、一体何故我らを止める」

 

 カムが尋ねる。ハウリア族達も怪訝な表情だ。何がいけないか分かってねぇのはかなりの重症だな……どうしてくれたんだ、ハジメさんよぉ。

 ……当の本人は目を逸らした。現実から逃げんじゃねぇ!!顎をガっと掴みシア達の方へ戻す。

 

「そんなの決まってます!父様達が、壊れてしまうからです!堕ちてしまうからです!」

「壊れる?堕ちる?」

 

 訳がわからないという表情のカムにシアは言葉を重ねる。

 

「そうです!思い出して下さい。ハジメさんは敵に容赦しませんし、問答無用だし、無慈悲ではありますが、魔物でも人でも殺しを楽しんだ……ことはなかったはずです!訓練でも、敵は殺せと言われても楽しめとは言われなかったはずです!」

「い、いや、我らは楽しんでなど……」

「今、父様達がどんな顔しているかわかりますか?」

「顔?いや、どんなと言われても……」

 

 シアの言葉に、周囲の仲間と顔を見合わせるハウリア族。シアは、ひと呼吸置くと静かな、しかし、よく通る声ではっきりと告げた。

 

「……まるで、私達を襲ってきた帝国兵みたいです」

「ッ!?」

 

 ……人を道具としか思わず、快楽以外の何者とも考えていない……今回のこいつらは人殺しに対する価値観を謝ってしまったのだ。それに気づいたカムは衝撃を受けているようだった。

 他のみんなも冷水を浴びたかのように硬直する……まさか自分達があれほど嫌悪していた存在になりかけていたとはな。

 

 愛する娘の一言はジーンと効いてくれたようだな。危惧していた一線はギリギリのところで、守られた。

 

「はぁ……テメェら一旦1列に並ぼうか。あっ、ハジメこいつら見とけ」

「っ!?」

「熊人の奴らもしっぽ撒いて逃走〜とか許されると思ってねぇだろうな?」

 

 そそくさ逃げようとしていた熊人族をハジメ達に任せ、改めてハウリア達の方へ向ける。シアのいたーい言葉を受け取ってスッカリ暗くなっている。

 

 この歳で説教なんて柄じゃねぇんだが……乗りかかった船だし仕方がない。目の前の力をどう扱うかはこの先必要な事だ。

 

「お前らは短期的に強くなった……それはハジメの特訓の成果であるかもしれんが、何よりそれに順応できたお前らの成果だ。それは褒められる事だな」

 

 その言葉に全員顔を上げる。俺の話に聞く耳はあるみたいだな。そのまま声をはりあげた。

 

「だが、気に食わねぇ所はそれに胡座をかいてる所だ。たかが数週間で何処まで舐め腐ってんだよ、ぁあ?お前らは最近まで生き物全てに慈悲を持ってたアマちゃんなんだぞ?そんな奴らが少しの期間で人をまともに殺せるわけねぇだろうが!テメェら命に対する覚悟くらいちゃんと見合わせとけ!」

 

 命は本当は重い。想像の何倍、何十倍も重い。異世界転移をした俺らはそれをよく知っている(何名かは除いて)。

 逆に言えばこの世界では弱肉強食が激しいので上に立つものの命に対する価値が軽くなっているのだ。帝国兵が獣人をぞんざいに扱うように。

 

 今回ハウリアは愛でたく種族のプレデターへと昇格した。そのため命に対する価値が変化したのも無理もない。でもこいつらはそうやって羽目を外すべき奴らじゃない。

 その証拠に、シアの言葉を真に受けるくらいの良心は残っている。彼女の言葉を聞ける段階で1度はきつく言わなきゃならん。

 

「お前らがタガを外したら全てを失うんだぞ……お前らが心として決めていた目標の一つだ。お前らのボスが与えた力の本質を思い出せ。その力はお前ら自信に委ねられた物だ。最終的にはお前らが自分で使い道を決めるんだ……その時胸張って力を使いこなせるか?自分の本心を超越する力に溺れる可能性は考えなかったのか!」

 

 ……あー、このまま叱り続けるのも問題だな。別に力を手に入れることが悪いってわけじゃねぇし。こんな時は……漫画の言葉を引用しとくか。

 

 例のアメコミスーパーヒーローの叔父の言葉。

 

「大いなる力には大いなる責任が伴う……俺らが手にした力も成すためにバンバン使ったりしてるわけじゃねぇ……それに伴う事全てに責任、覚悟を持って挑んでいる。お前らも自力で手に入れた力なんだ。溺れず飼い慣らし、そして責任をもって奮うことだ……良いな!」

「「「っ!……Yes Sir!!」」」

 

 ……うん、目が元に戻っている。流石に今回みたいな暴走はしないだろう。後で責任者さんにはキツーく言っておかなければ。

 

 あっ、そういえばこの原因となった奴らにも話を付けておくか。振り向くと途端にビクッと反応した。俺別に何もしてないんだけど?……まぁいいか。

 確かレギンだったな……そいつの前にしゃがみこみ顎を掴んで無理やり目を合わせる。

 

「お前らの処分だが……結論からして殺しはしない。必然とはいえ、ハウリア共に良も悪くも充実的な経験を与えたからな……あぁ、だが帰ったらフェアベルゲンの長老どもに言っとけ」

「な、何を──」

 

 あ?まだ理解していないようだな。それならはっきり言ってやろうじゃねぇか。

 

「『貸一つ』だぜ?」

「っ!……それは──」

「当たり前だろうが。元はと言えばお前らが攻め込んできたのが悪い……命有るだけでもマシと思え」

 

 ……そもそもこいつらは熊人族の長が俺たちに対して強硬手段を取ろうとしたのが始まりだ。ハジメの行動も過剰防衛という名の正当防衛だ。

 そして長老達からの力を借りない代わりに危害も与えない、1種の休戦協定まで結んだのだ。よってこいつらがハウリアを狙おうとしたのはその協定を破ったにも等しい。

 

 勿論、これくらいで攻めたりする気は全くないんだが、白紙にする訳にも行けないしな。こうして貸一つにしておくのがいい。

 

 ついでに言っておくか。持つ手を離しながら俺は声を張り上げる。

 

「テメェらも同じだが、兎人族も熊人族も元は1人の生命体に過ぎない。皮膚を切れば同じ血が流れるし、腕を切れば同じ痛みを味わう……だからたかがパーツの違いや色の違いでギャーギャー騒ぐんじゃねぇ!」

 

 地球も同じだが、人は直ぐに差別化をしたくなる……本能だし仕方がないことだが、酷く滑稽な事だといつもながら思うぜ……

 

 ここで力説するのも面倒いし、スッキリしたからいいけど……今後もこんな下らないイザコザを始めて欲しくねぇ。

 もう一度レギン達の方へ目を向けると、未だに敵意を捨てきれていないようだった。種族の差を下らないと言われて内心ムカついているのか……もうちょいお灸を据えておくか。

 

 森羅万象でマスケット銃を2丁召喚する。虚空から現れた初めての武器をもの不思議そうに見る奴らだったが、デモンストレーションがてらでそこら辺の岩に1発ぶちかます。

 

 ズドンッ!!

 

 その1発で岩が粉々に崩れる。ついでに俺の腕も骨が折れる……痛てぇ。

 

 こっそりと腕を治療しながら、そのままもう一本をギルの頭に突き立てる。銃口を向けられた彼らはきっと感じただろう。俺らもあの岩のようになる、と。

 

「お前らが先に仕掛けてきたんだしな……それとも今度は総勢で俺らを襲うつもりか?あんまりオススメはしない方法だけどな。俺やハジメが気分で前線に赴くかもしれねぇしな」

「グッ……」

「なんなら今から攻め込むか……よし、後10秒ここに居たら敵とみなす。俺たちと全面戦争だ。ハウリアでこのザマなんだ、流石に脳ミソは正常だろう?」

 

 途端に熊人族の顔が真っ青になった。口で言うならタダだし、こういう時に思いっきり脅しておくのが良いのだ。トリガーに指を引っかけながら

 

「ほらほら、迅速な判断しなきゃお前らの故郷も終わるぞ?10〜、9〜、は〜──」

「わ、わかった!我らは帰還を望む!」

「それでいい、長老らにも正しい判断をするように伝えておけ……最もお前らがどう解釈しようが俺らの盤面では何も変わらない……精々──」

 

 殺気ををさらに出すと辺りの森林までもが反応した。殺気も大物が出せば物理的な影響が及ぶらしい。

 もう顔面が青から白色まで変わっている奴らを見ながら一言。

 

「一つの集落の有無が変わる程度だからなあ?」

 

 ……霧の向こうへ熊人族達が消えていった。あれ、俺の台詞最後まで聞いてくれなかったか?

 これでしばらくは邪魔が入らないといいが……フェアベルゲンの未来はあいつらに掛かってる訳だ。正しい判断を期待している。

 

 と、これで一件落着かな。あー……疲れたぁ〜……

 

「あー、俺らしくもねぇ事した……あんまり矢面には立ちたくなかったんだけどなぁ」

『……』

「ん?どうしたアルタイル……いつもならそれなりに茶々入れてくるだろうが。ほれ、そのドSっぷりで俺を煽れ煽れ」

『誰がドSだ、余はただ事実を並べているに過ぎない……まぁ、今はその気分じゃないだけだ……だから早く次へ行け』

「……なんで照れ隠しみたいな反応してんだよ」

 

 分からん……最近のアルタイルの感情が分からん……えっ、そんな反応になる要素どっかにあったか?俺ただハウリアを叱って、熊人を叱っただけだぞ。

 ……はっ!?もしやそれか?俺が人を叱りつけるドSっぷりを評価されたのか!?うわぁ、だったら嫌な評価だなぁ……

 

 そうだ、元凶といえばこの人にも謝ってもらわねば。ハウリアがまだ居残っている今、ハジメを前に出させる。

 ハウリアがボスに注目する中、ハジメも流石に意を決したようだ。

 

「おい、お前も一言くらい謝罪しとけ」

「あ~、まぁ、何だ、悪かったな。自分が平気だったもんで、すっかり殺人の衝撃ってのを失念してた。俺のミスだ。うん、ホントすまん」

 

 うーん、何か最後らへん雑になった気もするが、少なくとも反省はしたようだ。これでハジメもまともな育成をしてくれることを切に願う。

 

 ポカンと口を開けて目を点にするシアとカム達。まさか素直に謝罪の言葉を口にするとは予想外にも程があったので、すぐに顔色を変えて──

 

「ボ、ボス!? 正気ですか!? 頭打ったんじゃ!?」

「メディーック! メディ──ク! 重傷者一名!」

「ボス! しっかりして下さい!」

 

 と、そういう反応に。思わずハジメの額に青筋が見えた。あーあ、これは知らねぇぞ。

 ハウリアは未だに焦っておりハジメの変化に気づかない……唯一シアがいち早く察知して逃げようとしているが──

 

 ドパンッ!!

 

 一発の銃弾が男の股下を通り、地面にせり出していた樹の根に跳弾してシアのお尻に突き刺さった。

 

「はきゅん!」

 

 ワオ、多角ショットか……オセ〇ットを彷彿とさせる弾のバウンドがシアの尻に直撃した。一同、痙攣しながら脱落しているシアを見やり、ハジメに移す。

 ここでようやく、みんなのボスがお怒りと気づいたみたいだ。ハジメは笑顔のまま、しかしトリガーに指を置きながら彼らに答えた。

 

「取り敢えず、全員一発殴らせろ!」

 

 わぁああああ──!!

 

 ハウリア達が蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出す。一人も逃がさんと後を追うハジメ。しばらくの間、樹海の中に悲鳴と怒号が響き渡った。

 

「……何時になったら大樹に行くの?」

 

 うん、ユエさんの感想はご尤もだ。




一之瀬久遠
→人種差別ならぬ種族差別を嫌う。人間が各々で優劣を付けたがるように、種族間の壁もその優劣を付けるが故の1つに過ぎない要素と考えており、種族関係なく等しく接するスタンスを取っている。

アルタイル
→実はこの世界での差別意識に己の人間に対する過去の悪感情を照らしており、久遠が怒りを表していることに内心驚いている。彼女からしては人は等しく愚かで勝手な生き物と認識が抜けていなかったので、改めて久遠の所に行き着いて良かったと思っている。

 はい、お久しぶりです…前回でも似た下りをしたような…?機種変更で間違えてバックアップの取得を失敗した…と言えば分かるでしょうか。
 メンタルズタボロのメテオインパクトを受けて鬱になってました。すみません。業界に出てるガチ作者はその辺乗り越えてるから…自分も乗り越えなくちゃね…

 ハウリア暴走回は如何だったでしょうか。初めは久遠との関係は薄くしようと思ったのですが…ハウリアの認識としては 久遠<ボス なのでハジメ1番は変わりませんが、久遠の立ち位置は 裏方+みんなの兄貴みたいな…暴走ストッパーでもありますね。

さぁ、次回は出発しますよー

ニアさんの設定はどっちに寄せる?

  • 原作(茶髪、メガネなし、小顔)
  • 今作(橙色、メガネあり、インテリ風)
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