ありふれた物語の森羅万象   作:RASっさん

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前書きに特に書くこと無いんだよなぁ…(すっとぼけ)…強いて言うなら今回は日常回ですね〜。

それじゃあ、どぞどぞ


第二十一話 それぞれの街ライフ

 ブルックの宿の一室で2つの光が放たれていた。輝く紅と蒼が部屋を照らすが、外からは気づく者などいない……

 

 ……因みにここの宿娘が屋根裏から見ている事も当時俺は作業に集中しすぎて気づいていないのだった。

 

 ハジメがマスケット銃に手をかざしている。生成魔法による銃のアップグレードは、耐久性の上昇と威力の増加らしい。生成魔法に対する理解が深まったからだと。

 銃から溢れる多数の魔法陣をよそに、俺も意識を目の前の武器に戻した。

 

 小さなフラグメントから形成されて行くのはハジメの使用しているドンナー……その弾丸だ。特殊な魔力を蓄えている弾丸はいちいち錬成するのに時間がかかる。

 なので俺の因子模倣で大量生産をしているのだ。ポンポンとコピーされていく銃弾。増殖マジックとでもいったらそれなりに稼げるかもしれない。

 

 やがて双方の光が収まる。俺は水分補給しながら目の前に広がる百を超える弾丸をチェックしていた。

 

 ……うん、全部性能はそのままだな。無事に量産は成功した。それなりに魔力は持っていかれたが、これくらい安い出費だ。

 ハジメもマスケット銃を片手に俺の方にやってきた。どうやらそっちも終わったみたいだ。

 

「ほらよ、無事にアップグレードはできたぞ……それで、これなら量産できそうか?」

「問題ないな……因子模倣、今更ながらやべぇ能力だな。魔力が続く限りお前の武器もストックし放題だ」

 

 ハジメに頼まれて試して見たが、効果はしっかりと反映されたようだ。

 これでもう弾切れの心配はないだろう。ハジメも出来上がった銃弾をみて満足そうに宝物庫にしまう。

 

 因みに、チートじゃないかと思われている因子模倣にも弱点はしっかり存在する。そのうちの一つとして魔力が関わっている。

 模倣する物体が複雑になるほど、つまり情報を多く含むほど消費する魔力量が多くなる。アルタイルの使用していたサーベルなどは少量に対し、ハジメのドンナー・シュラークはそこそこの量になってしまう。

 

 まぁ、これでも少ない方だろう。何せこっちの世界での銃はタール鉱石を使用した物で、鉱石自体が持っている情報はありふれている物だからな。

 弾丸も同じだから、相当な量を生産できる。

 

 因みに俺のマスケット銃は今のところ1番消費している。高火力にしてしまったが故、その分使っている技術も半端じゃない。

 ハジメも錬成に結構手間かけてくれたからな……その証拠に、性能が魔力量にしっかり反映されている。

 

 本当に親友には感謝しかない。

 

 ところで、男2人で武器のメンテナンスをしているのには理由ある。

 シアとネア、2人のハウリアを仲間に加えた俺たちだが、肝心の彼女たちの旅の装備がなかったのだ。ハジメの力で武器は作れても、衣服などの日常品は町で支給した方がいいという考えに至ったのである。

 

 ここのところ文明的なこともしていなかったので、久しぶりに羽を伸ばすことにした。

 なので今は別行動になっており、ユエさん筆頭女性組が買い物を楽しんでいる間、俺たちは宿で武器の新丁をしているのだ。

 

 まぁ、普通に別れるのは反対しない。役割分担はこの先円滑に進んでいくのに大事だし……

 

 ネアが俺らのパーティにうまく溶け込むなら、先ずは他の女子たちと一緒の方が心地いいだろう。

 そう容認しているのにも関わらず、俺がソワソワしているのにははっきりと理由がある。

 

 手からポリゴン粒子と化した因子のカケラを眺めながら、空っぽのポケットに物足りなさを感じた。

 

「アルタイルの奴、珍しく他のみんなに着いて行ったんだよな……」

「何だ、嫉妬でもしてんのか?」

「そんなんじゃねぇよ……ただ、何時も一緒にいた分、あいつも外の世界とかに興味あるのかと改めて思ったんだよ」

 

 いつも俺のポッケの中で過ごしていたらな……いくら俺が彼女を外の世界に連れて行こうとしても、人による偏りがどうしてもあったりする。

 

 そのため、もしかしてユエさんについて行くことで違った視点で楽しみたい気持ちはあるのかもしれない。

 あいつ、ユエさんとの関係めっちゃ良好だし。てか、呼び方も殿付けからなんかするのに数日しかかかってなかったあたり、相性もよかったしな。

 

 俺も彼女が満足できるように努力はしてたつもりなんだけどな……

 

「今回みたいにユエさんやシアが傍にいれば危険はないだろう……そう考えればもっとあいつを自由に過ごさせることが出来るんじゃないかって」

「……」

 

 ハジメは少し目を見開いたあと、何故か呆れるような視線を俺に送ってきてため息まで着いた。

 ……何だよ、無性に腹立つな。挙句の果てには暖かい目で見ながら答えてきた。

 

「それは俺も同感だが、アルタイルさんはお前とが1番いいんじゃないかって思うぞ」

「ん?そりゃまたどうして?」

「そりゃあ、あの人がお前と一緒にいる時に1番心地よさそうにしているからだ」

「……ん?答えになってなくねぇか?」

 

 俺のところが……どういう?マジで……

 

 だがハジメは暖かい視線をやめない。腹たつ顔やめんか……

 

「あっ、話変わるけどよ、例のアレってどうなってる?」

「あれ?……って、あー、お前の新しい武器のことか」

 

 この前作ってもらったマスケット銃は今こうしてメンテナンスして貰っているが、他の武器も欲しくなってしまい依頼した。

 快く承諾してくれたので、アイデアだけ提供してハジメに任せっきりだったが、もう完成したらしい。

 

「出来てるぜ?お前の注文通りに作ったつもりだ」

「相変わらず早いな……いや、俺が因子模倣を使ってたから集中して1つの事には取り組めたのか」

「まぁな、お陰で性能は1発限りだとしてもなかなかだぞ?」

 

 その言葉でハジメがニヤリと笑みを浮かべる。相当自信があるようだな。

 と、同時に宝物庫から例のものを取り出してくれた。その出来といえば──

 

「おぉ……おお!」

 

 思わず目を見開いてしまうほどだ。確かなる会心の出来に語彙力も失ってしまう。

 

 俺が頼んでいたもの……それは大砲だ。

 

 近代の戦車砲みたいな機械らしさを感じられない、レトロな見た目。15世紀の西洋で流行ったようなデザインを感じるが、そのボディはメタリックに仕上がっている。車輪も小さめになっており、胴体が少し長めになっているのもファンタジーらしさを感じてとてもいい!

 

 シルバーの胴体に黄色、茶色の模様が見事なかっこよさを出しており、見栄えもバッチリ。

 ハジメも大変だったろうに……錬成て作った大砲の模様、その精巧な技術に脱帽だ。

 

 そして戦闘面でも申し分ない。大鳳の中で列車砲に分類されるその口径は驚異の85cm。発射原理はマスケット銃と同じだが、列記とした差が存在する。

 

 威力自体は少し下がっているが、威力の持続性は格段に伸びている。

 100キロは優に届く。その道中に周りの魔力を吸収するのだ。

 

 限界までの射程距離で発射された砲のの直径は2メートルを超える!人を丸々1人葬り去れるほどの範囲だ。

 

 唯一の弱点……それは移動性の低さだな。直線的な攻撃も相変わらずなので機敏性も皆無。

 

 だが俺の因子収納で距離問題は余裕で解決。つくづく法則をぶっ壊す森羅万象。

 まさに俺の第2の武器にふさわしい出来であった。素晴らしい!スマホがあったら連写しているところだ。

 

「これは……いい!めっちゃいい!最高にスタイリュシュかつネタに走りまくってるぜ!」

「フッ、言っただろ?お前の注文通りだ」

 

 ハジメもすごいドヤ顔だ。樹海でコツコツ錬成しては失敗を繰り返していたんだろうなぁ……今度飯でも奢らなきゃ。

 

 俺の無理難題を講師絵成し遂げられたのはハジメのオタクとしてのプライド……あとは元ネタがまたまた某魔法少女からだからだ。

 

 俺もメインウェポン以外のサブが欲しくなったのが始まりだが、そこで一体どのような武器が張り合えるのか三日三晩考えた。

 というのも、マ○さん銃、基マスケット銃の火力が高すぎて、腕の反動がある以外これといった弱点がないのだ。正直この武器一本でやってもいいとさえ思えてきた。

 

 しかし、戦いには予想だにしないことが常に起きるものだ。俺のマスケット銃だって使えない時が来るだろう。

 そこで、できない場合を考えてみた。結果ひとつの結論に至る。

 

 もっと高火力かつ広範囲の武器が欲しいと。

 

「ったく、その論理を初めて聞いたときは心底、お前の頭を心配したぞ。あの銃以上の火力なんて、レーザーとかだぞ?」

「いやぁ、それほどマ○さん銃は素晴らしいってことだよ。でも、あの銃でも敵わない敵はいるからな」

 

 例えばオルクスでのヒュドラを上げてみよう。ハジメの銃が一切聞かなかったあの皮膚を果たしてマ○さん銃は倒せるだろうか。

 難しいだろうなぁ……そもそも範囲が精々首を一本吹っ飛ばす程度でしかない。威力は申し分ないが、それでも胴体にはそこまでダメージが入らないのではないだろうか。

 

 要するに、ヒュドラを倒せるくらいの武器はねぇかーってシミュレーションした際に脳裏に出てきたのだ。なので採用した。

 うん、俺もなかなかの想像力を持っているな。よかったよかった。

 

 何はともあれ、無事に俺の武器は完成したのだった。

 

「そういえば、あの2人の武器は何にしたんだ?ネアとかは特に」

「ああ、あいつの戦闘はこの目で見てねぇから、相性は二の次になるが。先ずはシアの……だ!」

「うぉ!」

 

 宝物庫からハジメが乱暴に取り出したのは……戦鎚か!俺らと同じくらいの大きさだ。何より重い。俺も両手がなきゃキツイぞ。

 だが、考えたな。シアの身体強化があれば余裕綽々で振るうことができるだろう。

 

「やっぱり戦鎚はいいな……思いっきり敵をぶっ飛ばせるからな」

「ああ、それに──これだ」

 

 ん?ハジメがとって部分のボタンを押して──

 

 ガシャン!ガコン!と機械的な音を出しながら戦鎚は形を変え始めたのだ。ハンマー部分となる側面がパカ利と開く。

 

 中から見えるのは……8つの細長いミサイル!

 

「うぉぉおおお!!可変式でミサイル出せるのか!これで遠距離もカバーできるってことか」

「そうだ、これで遠距離も対応できるロマン武器になったってことだ!」

「凄ぇな……マジで実現しちまってるな……あっ、それならお前が今作ってる四輪駆動車も──」

「あぁ、それは──」

 

 このあと、ハジメの武器製作のアイデア出しも交えつつ、俺らは思いっきりロマンを追い求めた。

 この異世界が舐めちゃいけない世界だとはわかっている。それでも、こんなふうにして羽目を外しながらバカやるのも楽しいんだよなぁ、これが。

 

 この後、思いっきり女性陣から呆れた眼差しを受けたのは言うまでもない。

 

 だがな、アルタイルにユエさん……これがロマンなんだよ!!アッハッハ!!

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「『っくしゅん』」

「あれ?2人とも同時になんて凄いですね!」

「ん……これは誰か噂してる?」

『まぁ、考えられるとしたらあの2人しか居ないだろうが……』

 

 現在、ユエ、シア、ネア、そしてアルタイルは町に出ていた。昼ごろまで数時間といったところなので計画的に動かなければならない。

 目標は、食料品関係とハウリア2人の衣服、それと薬関係だ。武器・防具類はハジメがいるので不要である。

 

 それにしても、と物珍しく街を見渡していたシアがふとスマホの方を覗いた。いつもは久遠のポケットに居るはずが、今回はユエの持つ手にスッポリ入っている。

 

「アルタイルさんが同行するなんて珍しいですね!てっきり一之瀬さんの所に居ると思いましたよ」

『余とて彼の傍に何時もいるのは窮屈だ、偶には外の世界を眺めたい……それにあの2人の事だ。羽目を外して何か作っているだろう』

「ん……ハジメも何か作るって言ってた」

「それ、任せてて大丈夫ですかねぇ……不安になってきました……」

「……」

 

 ネアはまだ2人のことをよく知らないが、3人が思い浮かべるのは彼らが自重せずに作り上げるロマンの塊。

 デメリットを超える高火力!たとえ命懸けのリスクでもロマンには変えられない物がある!と、2人が力説するであろう。戻ってきた時どう止めるか不安が募るばかりだ。

 

 道具類の店や食料品は時間帯的に混雑しているようなので、4人はまず、2人の衣服から揃えることにした。

 

 オバチャン改めキャサリンさんの地図には、きちんと普段着用の店、高級な礼服等の専門店、冒険者や旅人用の店と分けてオススメの店が記載されている。やはりオバ……キャサリンさんは出来る人だ。痒いところに手が届いている。

 

 一向は、早速、とある冒険者向きの店に足を運んだ。ある程度の普段着もまとめて買えるという点が決め手だ。

 

 その店は、流石はキャサリンさんがオススメするだけあって、品揃え豊富、品質良質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという期待を裏切らない良店だった。

 

 ただ、そこには……

 

「あら~ん、いらっしゃい♥可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」

 

 化け物がいた。身長二メートル強、全身に筋肉という天然の鎧を纏い、劇画かと思うほど濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めている。

 動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組み、くねくねと動いている。服装は……いや、言うべきではないだろう。少なくとも、ゴン太の腕と足、そして腹筋が丸見えの服装とだけ言っておこう。

 

 ユエとシアはその異質な姿に硬直する。アルタイルも思わず電源を切ってしまうほど。シアは既に意識が飛びかけていて、ユエは奈落の魔物以上に思える化物の出現に覚悟を決めた目をしている。

 ただ1人、ネアはシアの後ろに隠れて一切目を合わせようとしていなかった。未来視でも開花したのか、奇跡的に被害を現在受けていない。ただ彼女の第六感の警報が鳴り響いているだけだ。

 

「あらあらぁ~ん? どうしちゃったのみんな? 可愛い子がそんな顔してちゃだめよぉ~ん。ほら、笑って笑って?」

 

 どうかしているのはお前の方だ、笑えないのはお前のせいだ! と盛大にツッコミたいところだったが、ユエとシアは何とか堪える。人類最高レベルのポテンシャルを持つ二人だが、この化物には勝てる気がしなかった。

 

 しかし、何というか物凄い笑顔で体をくねらせながら接近してくる化物に、つい堪えきれずユエは呟いてしまった。

 

「……人間?」

 

 その瞬間、化物が怒りの咆哮を上げた。

 

「だぁ~れが、伝説級の魔物すら裸足で逃げ出す、見ただけで正気度がゼロを通り越してマイナスに突入するような化物だゴラァァアア!!」

「ご、ごめんなさい……」

 

 ユエがふるふると震え涙目になりながら後退る。シアは、へたり込み……少し下半身が冷たくなってしまった。その影響でネアの後ろ盾が居なくなり、彼女も目にすることになる。

 

 一瞬だった。目にも見えぬ早さで店内に展示してあった服のディスプレイの裏に隠れた。本能が叫んでいたのだ。「あの人は無理」と。

 

 ユエが、咄嗟に謝罪すると化物は再び笑顔? を取り戻し接客に勤しむ。

 

「いいのよ~ん。それでぇ? 今日は、どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」

 

 2人が進行不可能な状態なので、ユエが覚悟を決めてシアの衣服を探しに来た旨を伝える。シアは、もう帰りたいのか、ユエの服の裾を掴みふるふると首を振っているが、化物は「任せてぇ~ん」と言うやいなやシアを担いで店の奥へと入っていってしまった。途中で隠れていたネアも呆気なく連れ去られる。

 

 残ったユエは静かに端末の電源をつけた。かじられたリンゴマークの後、画面に映ったのはスクリーンの方を向こうとしない軍服の姫君。何故か正座をしており目も一切開けるつもりがない……が、ユエに気づいたのか直ぐに体裁を整えた。

 

「……アルタイル、2人は平気?」

『……紹介主がキャサリン殿なら問題は無いのだろう。2人の服もしっかり繕ってくれるはずだ』

「……アルタイルは平気?」

『……些かキツイ。あれは本当に人か……?構造がまるで人間の概念を超えている。あのような敵は絶対に対面したくない……』

 

 心做しか、スマホのバイブが彼女の身震いを体現しているようにも見える。世界最強の姫君に新たな弱点が浮上したのだった。

 

 結論から言うと、化物改め店長のクリスタベルさんの見立ては見事の一言だった。店の奥へ連れて行ったのも、2人の着替える場所を提供するためという何とも有り難い気遣いだった。

 

 3人は、クリスタベル店長にお礼を言い店を出た。その頃には、店長の笑顔も愛嬌があると思えるようになっていたのは、彼女? の人徳ゆえだろう。

 

「いや~、最初はどうなることかと思いましたけど、意外にいい人でしたね。店長さん」

「ん……人は見た目によらない」

「……(コクコク)」

 

 続いて道具集めだ。回復薬、魔力ポーションなどを必要とするのは当然だが、最近彼らの消費はかなり増えていた。

 それもそのはず、パーティが2倍に増えたからだ。シアやネアはハジメ、久遠のように無傷で戦いを終わらせるのも難しいし、ユエのような反則的回復もできない。

 

 そのためここまでの道中は神水を水で薄めた回復薬を使っていたのだ。神水も有限なので極力消費を避けたい時、街にあるポーションの必要性が増した。

 

 町は非常に賑やかで喧騒に包まれていた。雑貨を始めとして、主婦や冒険者らしき人々と激しく交渉をしている。

 飲食関係の露店も始まっているようで、朝から濃すぎないか? と言いたくなるような肉の焼ける香ばしい匂いや、タレの焦げる濃厚な香りが漂っている。

 

 4人は円滑に買い物を進めるためユエ・シアとアルタイル・ネアの2組に分かれることになった。

 

 基本的に個々の力は十分にある3人なのでそこまで心配することなく買い物と向かった。ネアは魔力ポーションと魔法に関する本を幾つか任された。

 必要なお金をポッケに、彼女は速やかに動いた。幸い、ポーション売り場はすぐに発見できたのでそこで買い物を済ませる。

 

『魔力ポーションは効果が最も高いので良いようだな。後、ユエなら幾つか魔導書も欲しいだろう』

「……分かりました」

 

 アルタイルの指示の元、淡々と物品を手に取るネア。お金の心配は要らないため、こうした追加も購入出来る余裕がある。

 

 アルタイルはそんな彼女を静かに見ていた。特に話すことが無いからでもあるが、内心は注意深く観察していた。

 

(ネア・ハウリア……余らの勧誘に着いてくるあたり、集落から抜けるつもりだったようだが……未だに意図が掴めない)

 

 樹海の時から行動が怪しかった彼女だが、その真意はアルタイルでさえ分からずにいた。

 何かを隠しているのは確かだ。しかしそれをひたすら隠している。無理に問い詰めると何をしでかすか分からない……

 

 何故自分がわざわざ1人の獣人にこんなに頭を悩ませなければならないのか……そう悪態を付きながらも軍服の姫君は考える。

 兎人族も人間と似た価値観を持ち合わせている。それは仲間意識だったり、家族だったり……

 

 と、なるとやはり贖罪か……何が原因となる出来事とすれば……

 

 ……あぁ、そういえば──

 

 ちょうどその時、一瞬だったが、ネアの目が止まった。今まで黙々と買い物を遂行していただけに、アルタイルも現実に戻るくらいだ。そこには鮮やかな花の髪飾りがあった。

 

 どうやらアクセサリー屋のようだ。樹海は緑青色の植物や、赤、桃色を初めとする花が盛んだ。

 

 同じくそれに気づいたアルタイルも、それに反応した。

 

『それが欲しいのか?』

「……いえ、別に」

『まだ持ち金は残っているでは無いか。久遠もそれくらいの出費は許してくれると思うだろう』

「だからいいですって──」

「おっ、嬢ちゃんそれが気に入ったのかい?」

「……」

 

 頑なに否定でしていたがその声が大きすぎたか。売り子のおじさんに気づかれてしまった。アルタイルが特異である以上、彼女1人で対応しなければならない。

 ネアの思考をよそに、店主は例の花飾りを薦め始めた。

 

「そいつはエリセンの所で拾ってきた奴でね、ここの周辺では見られないから珍しいだろ?」

「……はい、そうですね」

「色も様々だが……嬢ちゃんなら赤色が似合うんじゃねぇか?」

 

 このまま薦めてくるおじさんに対し、ネアはそのまま帰ろうとしたが、その足を止めた。彼女の行動に思わず隠れているアルタイルも眉を顰める。

 

 暫く彼女はそこから動かずに目を瞑っていたが、何を考えているのかはわからない。

 やがて、おじさんも一押ししようと口を開こうとした時、ネアが先に判断を下した。小さな声で、しかしはっきりと。

 

「……買います」

「本当か!そんじゃ、嬢ちゃんには少しばかり値段をまけておくぜ」

「ありがとうございます……」

 

 お金と引き換えに花飾りを受け取り、彼女はそそくさとその場を離れた。そのまま路地裏に入り、こっそり髪に取り付る。赤色の花が紺色の髪に、さながら夜の海に浮かんでいるようにも見える。

 これにはアルタイルも本音の賛辞を送るのだった。

 

『似合っているじゃないか』

「そうですか?……まぁ、はい。ありがとうございます……」

 

 ……表情にはあまり出ていないが、声色からして嬉しそうだ。こんなふうに接していると、彼女がまた1人の女の子だと認識するのだ。

 

 初めて、彼女と会話らしい会話をできた……そんな感想をアルタイルは思わず抱いてしまう。

 心の中でため息をつきながら無駄な詮索をやめることにした。

 

(……もういい。彼女の秘め事などその内ボロが出る。それより──)

 

 彼女を連れて行くことにした当初の目的は、その潜在能力があったからだ。

 

 彼女の素性がどうであれ、この先の旅であっさり死なれては困る。彼女が路傍の石程度の存在であったらそれでよかったのだが……それはアルタイル自身のお眼鏡にかなってしまった。

 久遠やハジメのペースで行ってしまうと、ネアは大迷宮……いや、そこへたどり着く間も無く死んでしまうのではないだろうか。

 

(彼女の能力……いや、先天的な何かは必ず余に面白い結果を残してくれる。だが久遠はともかく、南雲殿へ押し通してまで旅の中断は些か我儘が過ぎるか……)

 

 となると、ハジメが他のハウリアへ行ったハー○マン強化合宿に似た訓練を課さなければ間に合わない。しかも彼らの旅と並行して、だ。

 彼女の中で計画が組み立てられていく。無限に等しい被造物の経験、能力をもとにし、これにネアの基礎能力を掛け合わせて──

 

『……時に、ネア・ハウリア。君は強くなりたいか』

「え……」

 

 いきなりの言葉にネアは聞き返そうとするが、アルタイルは淡々と言葉を続ける。

 

『このままの状態でいいのか聞いている。この旅に対する君の姿勢が他に大きく劣っていると思ったからな』

「……まぁ、半ば強制的に連れて来させられたので……」

『……』

 

 それは確かに……というか、元々彼女を連れ出したのは自分だったことに気づいた。

 だが、そんなのはスルーだ。

 

『経緯など関係なく今の君には生きるべき力が足りていない。余らから自立したとて、この世界で生き延びることなど不可能だろう』

「あ、無視です?……でも、はい。皆さんとても強いです」

『そうだ。久遠もそうだが、この旅路は険しい。早い内に彼らへ追いつく算段を立てることを勧めるがね』

 

 彼女の言葉は確かに真実であった。ネアは才能はあれど逸脱者とまではいかない。それにメンバーは奈落を攻略した化け物に世界最強の吸血鬼、物理長特化ウサギとくればその差も歴然だ。

 

「南雲殿を始め、ユエ……それにシア殿もこの度に磨きをかけている。君だけが取り残されることになるぞ?」

「……」

(……「シア」に反応するか。ふむ……)

 

 ピクリとウサミミが反応し、彼女の目つきが少し変わる。やはりこの少女はシアへ想うところが何かある。

 その何かがわからないのは痒いところだが……ひとまず今日は成果を得たことにしようと考えるのだった。

 

 ……最もの成果は新たな遊び道具を手に入れたからだが。

 

「……やります。私も、皆さんについて行きたいです」 

『そうか。では余が直々に先頭の作法を教えようではないか』

「……はい、おねがいします」

『言質はとったからな?ああ、明日から楽しみが増えた』

「……」

 

 何故かスマホに映る彼女の笑顔に恐怖を感じたネアであった。




ちょいと補足

アルタイル
→実は育成好き。久遠のやり込みゲー気質の影響を受けているのかもしれないが、スマホに入れているゲームも育成ゲーが多い。元々の設定ではセツナの温和な性格が反映されており、本来は母性という形で表れる筈だったが、今の歪んだ彼女からはドS畜生のそれしか感じられない…

ネア・ハウリア
→もっと重い過去を持っているかもしれないハウリア。戦闘力は現パーティの中でも最弱なので、アルタイルの申し出を受け入れた。これで強くなれるなら何か変わるかもしれないと思ったから…しかし何故だろう。軍服の姫君を見ていると非常に嫌な予感がする……

あれ?なんか最後の投稿から半年以上も経とうとしてる…これは、夢?(現実逃避)

ニアさんの設定はどっちに寄せる?

  • 原作(茶髪、メガネなし、小顔)
  • 今作(橙色、メガネあり、インテリ風)
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