ありふれた物語の森羅万象   作:RASっさん

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少し投稿が遅れました、すみません!

そして久々のギャグ回?


第二十六話 ダンジョンに出会いを求めているのは間違っている

 やっと色々落ち着いたところで、俺らはここからどうやって出るか相談していた。

 ここへの落下は迷宮の罠の一つであり、落とし穴への誘導トラップだ。ネアが錯乱していたこともあり、俺らはそこに見事落ちてしまったわけだ。

 

 ただ、底にいたサソリの魔物群は俺が片っ端から潰した。毒の状態異常も気合いで乗り越えて、結果底の魔物はほとんど倒してしまったのである。

 

 ネアの問題も解決したいま、一刻も早くハジメたちの元へ向かいたいのだが……

 

「つっても、ここからどう出るかが問題だよなぁ……普通にここの壁数十メートルはあるから登るのは不可能だし」

「ですね……それに、上層は多分、仕掛けがありそうで……」

『下手をすればここへ回帰だな。それに魔力も分散されるから森羅万象(ホロプシコン)は封印されている』

 

 3人、共通してここへ来るまでの罠の数々を思い出した。大体がどこぞの残念ウサギによって発動されていたが、起動スイッチが壁に隠されていてもおかしくない。

 

 それも、スライムが壁を流れ始めて俺らをまたそこまで落としたり?

 

 あるいは、この部屋を覆うくらい大きな鉄球が落ちてきたり?

 

 全部、ライセンだから可能そうなのがまた厄介だ。今のところその様なギミックに出会っているし。

 そして仕舞いには煽り成分マックスの文字が壁に現れるのだ。此方のストレスも天元突破間違いなしである。

 

 うーん、このままハジメたちの救出を待つ?でも、この深さの穴に引っかかるとは思えないし、あいつらなら普通に迷宮攻略に力入れるもんあぁ

 

「あれ、もしかしてこれ詰んだのか?」

『……まぁ、此方で生還したとて設計者はそのまま死んでもらいたいだろうな。迷宮とはそう言うものだ』

 

 アルタイルの心無い言葉は確かに的を射ていた。大迷宮のコンセプトは大いなる力を手に入れるためにそれ相応の力と覚悟を示さなければならないのだ。

 

 ここで朽ちたらそこまでである。そこになんの慈悲もない。

 

 だから、ここに来てしまった今、何とかして攻略しなければならないのだ。

 

「……イチノセさん、ここの魔物ってサソリですよね?」

「ん?あぁ、猛毒を備えてて普通にレベルも高いけどな」

『落下した時のネアなら一撃で死ぬだろうな』

「うっ……その節はお世話になりましたです……」

 

 ネアが何か思い出したようにサソリについて問いかけた。が、自分の行動でダメージを受けている。

 

 そんなに重く捉える必要はないんだって。

 

「気にするな……それで、何かサソリで言うことあったんじゃないのか?」

「あ、そうですね……サソリが食べる物って人以外にもありますよね?」

「サソリが何食うのかは見当つかないけどな……」

『あぁ、あれらは1年なら絶食もできるな。主食は昆虫だが、ネズミなども食べられるそうだ』

「何でそんなの知ってんだよ……」

 

 ……そうだった、こいつの博識、ウィキ超えてるんだった。伊達に世界最強を名乗っていない。知識量も膨大である。

 

 そんなことは置いておいて、だ。何かを考えているネアが確かめるように口を開いた。

 

「……ですけど、この迷宮に何千年も生きてるってことは、何処かから餌を貰ってることになるです?」

「確かに、人間の死骸以外にも生き物の死骸が転がってるな」

 

 周りの灰や粉は骨が何年もかけて腐敗した後だろうし……でもここってサソリが長らく生きられるような環境じゃないよな?

 それも、ここの迷宮から定期的に餌の供給をしない限り死んじゃうんじゃ──

 

『「「…………あっ」」』

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 狭い通路、永遠の暗闇……だが所々見える光は別の部屋から漏れ出した物である。

 辺りは迷宮とはまた一味違った雰囲気で、ピラミットのようなミステリアスさがある。

 

 そして周りに見える生き物。大抵は虫など小さな物だが、中には先ほどのサソリなども生息していたりする。

 

 当然、それらにも毒の尻尾が存在しており──

 

「ったぁ!やっぱりここにも魔物はいるよなぁ」

『数は少ないが、この狭さでは回避は不可能だからな』

 

 何とか手で潰しながら前へ進む。この通路は1.5メートルほどの小ささで、常にかがみながら進まなければならない。

 おまけに一方通行用の通路だから、敵が現れた時に簡単に脚技を繰り出せない。

 

 面倒な場所だな……だが、今はこの道を進むしかないのだ。せっかく見つかられた最高のルートなのだから。

 

「それにしても、よく見つけられたよなぁ……おまけに少し広いところから見るにあの部屋には他の物も流れるのか?」

『可能性は高いな。でなければ、ここまで大きく通気口なる物を大きくしないだろうからな』

 

 サソリの餌はどこからされているのか?その質問に対して答えは至ってシンプルだ。

 

 餌を流す口があってそこから流している。

 

 運よく、その出口はそこまで高くないところにあった。時間が経てばそこからネズミが流れてきており、本当にそこが通気口だと分かる。

 まさかそんなルートが隠されているとは、俺たちも驚いたものだ。

 

 まぁ、完全に裏ルート……いや、邪道ルート間違いなしではあるんだけどな。

 だが、何でも利用しなければ迷宮なんて生き残れない今、俺たちはこの通路を通っている。

 

 要するにダクト移動だ。時には近道、時には遠回りともなる。が、確実に目的地への移動ができる優れた戦法である。

 

 後ろをチラッと確認すると、しっかりとウサミミが見える。ネアは足を掻きながら移動しているようだ。

 そんなに掻くと変な出来物になるから程々にな〜。

 

「うぅ……ジンジンするです……イチノセさん、毎回この毒を喰らってたんです?」

「まぁ、何とかなったけどな……ネアも無理するなよ?幾らお前があのサソリ肉を摂取したからって完璧な毒耐性は得られないからな」

「だ、大丈夫です!これ以上足を引っ張りたくないですから」

 

 ふんす!と握り拳を作って奮起するネアは、ここに入る前にサソリ肉を頂いた。

 理由はもちろん毒耐性を得るためだ。しっかりと火を通して塩胡椒までした完璧の一品。

 

 なお、俺も食べてみたのだが味はちょっと腐ったエビのような味だった。まぁ、全然いけるけどな。

 

『……今度、本当のエビを食べさせてもらえ』

「食ったことあるんだが!?」

 

 ……とにかく、このようにして歩くこと数時間、途中の傾斜や前方から滑ってくる動物の死骸を見るに、間違いなくどこかに行き着くのは間違いない。

 このまま行けば、いい出口に到着するんじゃないか?

 

 すると、前方から開けた空間が見えてきた。やっと何処かに行き着いたみたいだ。

 

「……やっぱりか」

「ここは……何の部屋です?」

 

 背伸びしながら予想通りの展開に納得しているとネアが何かと質問してきた。

 そうだった、こういう展開は異世界ではあまりないだろう。

 

 今、俺らの前には大きな円柱が構えてある。その円柱周りに枝分かれの道があり、ここがまるで中枢地点であるかのようだった。

 そして円柱から時より聞こえてくる謎の音。異世界ではおなじみな音であり、それは魔法陣が現れる音だ。

 

 俺の代わりにアルタイルが説明を始める。

 

『恐らくは起動装置のようなものだ。この中央の軸が条件によって回転する……他の部屋にも似たようなところはあるだろうな』

「……だな。ってことはゴールが案外近いかもしれないぞ?」

 

 未だにピンと来てないネアにアルタイルが続けて質問した。

 

『ネア、この迷宮が悪さしている要点を挙げようか』

「え……ゴーレムとか……トラップも嫌らしいです」

『確かにそうだ。だが、何よりこの迷宮に拍車をかけている要素……それはこの部屋の移動だ』

 

 それは俺とハジメら一向を分断させた時。彼らの魔力反応が遠く感じてきた時に発見した。

 

 この迷宮は、動いている。常に位置を変えながらトラップを仕掛けてくる厄介な場所である。

 

『この迷宮では指定の部屋が移動するトラップが仕掛けられいる。方向感覚は失うし、場合によっては最初の地点に戻されたりするな』

「あぁ……それはこの上ない嫌がらせですね」

 

 まぁ、ここまで頑張って最初に戻されるのは鬼畜以外の何者でもない。下手をすれば永遠ループであり、精神も体力も削られること間違い無いだろう。

 

 だが、今回分かったこともある。それがこの部屋だ。

 

「まぁでも、ちゃんと仕組みはあったようだぜ?部屋もしっかりと規則を持って移動している。いくつかパターンは分かれているが、到着地点も決められたところのようだ」

「うーん、なるほどです……でも、どうしてそれが全体の把握にまで繋がるのです?」

 

 だってこの迷宮には生成機能は存在しない。どれだけ面倒なシステムでも知らない場所がパッと現れたり、急になくなったりはしないのだ。

 

 全てそこにあるか、移動したかであってステージ数は同じである。この意味がわかるか?

 

『この迷宮では部屋の配置は変わらない。部屋の順序が変わろうとも、移動するよう設定されていない部屋は動かないんだ……迷宮の中枢神経であるここも含めて、だ』

 

 そしてここはダクト。ダクトは決まった場所へ物を送る通路なのだ。

 普遍の場所。変な移動もしなければ、嫌がらせもほとんどない。せいぜい、ここに生息する少ない魔物くらいだ。

 

 更にこのダクトには必ず出口がある。それは迷宮内の空気の通気口としての役割があるからだ。

 

「……つまり、ここの地図を完成させれば、ゴールの場所もわかるってことです?」

「あぁ、流石のこの迷宮もダクトの変化はできなかったようだな」

 

 やっと理解したネアの顔が明るくなった。ここから先はこの迷宮のダクトを探って、この迷宮の構造を解き明かす。

 

 そしてそのままゴールであるボス部屋まで最短のルートで進めるってことだ!

 こんなにイージーかつ面白い展開は中々ない。トラップにはもう飽き飽きだし、これはシンプルに楽しめそうだ。

 

「よーし、そうと決まれば早速マッピングだ。いいねぇ、こう言うのはゲーマーの血が騒ぐってもんだ!」

「げーまー……って何です、アルタイルさん?」

『……廃人とでも思っておけ』

 

 おい、アルタイル……意味合いが違うから。ネアの教育に悪いことを耳に入れるのやめなさい。

 

 ……まぁ、廃人の血が騒いでいるのは事実だけどな?

 

 そこからは3人でこの迷宮の構造を片っ端から埋めていく作業となった。

 時にはダクトの外から迷宮の部屋を覗き込み、配置を確認する。部屋の天井、通路の壁にマーキングしながら、アルタイルのいるスマホに簡易マップを作る。

 

 いいねぇ、この調子でどんどん埋めていこう。

 

 長い通路や短い傾斜。魔物の通り道にトラップの備品補充エリヤなど、通常ルートでは絶対に出会えないような場所もメモる。

 中々、この迷宮の装備が充実してるわけだ。この場所だけ生成魔法で罠の生成がされていた。

 

 流石に止めたら俺らの潜入がバレるので続けて探索する。

 

 

 そのまま探索して、マーキングして、メモして──

 

 タッタッタ……

 

 同じ道を通って、今度は違う分岐ルートに行って、同じようにメモして──

 

 

 タッタッタ…………

 

 

 念の為同じルートをもう一度通って、今度は見逃していない道を確認しつつじっくり通って──

 

 

 

 タッタッタッタッタ…………

 

 

 

「ゼェ、ゼェ……クオン、さん……もうゴールの位置って見つけましたよね?」

「あぁ、てかもう通り過ぎたぞ?序盤で見つけられてよかったな」

「なら……なんで!まだ、探索し続けてるんですか!です!」

 

 ん?そうか、そういえばネアはこういうイベントは初めてだったか。

 そりゃあ、迷宮の醍醐味を俺らが見逃すわけにはいかないだろ?しかも今回の挑戦は何千年も前からある「ライセン大迷宮」だぜ?

 

 

 やってみたくなるよなぁ……完全攻略。

 

 

「いや、仮にも迷宮だぞ?もしかして全ルート解放したら特別ステージに連れて行ってくれるかもしれないし──」

『当時の解放者にそのような洒落を入れるとは思えないのがな……』

「それに、このマッピングの結果を見ろよ……中々、芸術的な形だぜ?立方体に見える迷宮だが、その実、八面体が中にすっぽり入ったような通路で──」

「〜〜〜〜〜〜っ」

『ネア、ノックダウンは悪手だぞ……君が遅れをとると彷徨う羽目になる』

 

 ネアの目がグルグルし始めたがさすがアルタイル。ピシャリと言葉をかけることで彼女の目を覚ます。

 

 こういう時の彼女の言葉はいい薬になるからな。俺も徹夜でダウンしかけた時は助けられたもんだ……

 

 3度のエナドリより姫の一声。これ、新しいことわざに入れてもいいレベルだ。

 

「はっ、私は一体……じゃないです、クオンさん!このままじゃあ南雲さんやシア姉さんに置いていかれますです!」

『というか、既に5日はここに居座っているぞ……幾ら大迷宮であれ、余も彼らと合流をお勧めするがね』

 

 ネアはともかく、アルタイルにまで言われるとは……てか、いつの間にかそんなに時間が経ってたのか。

 俺らも探索に時間をかけすぎたみたいだ。スマホに書かれた地図を見るとかなりの対策となっている。

 

 至る所に張り巡らされた通路。だがよくみてみると、中枢部屋を中心に綺麗で神配置な構造を作っている。

 最早この迷宮を作成した製作者には脱帽しかない。この不規則に見えた迷路は実はとても綺麗な形で保っていたのだ。

 

 そんな迷宮はしかしまだ8割。あと少しで完全体の姿が拝められる。

 しかし告げられるタイムリミット。確かに3人の安否は心配だ。どうする……ここが一大事なところだぞ……

 

「……親友とマッピング……今、俺は究極の選択を迫られている……!」

「そこまでですか!?アルタイルさん、この人絶対におかしいですよ!」

『やっと知ったか……まぁ、彼の集中力……この場合は執着か?それがなければ森羅万象(ホロプシコン)の理解もできなかっただろうからな』

「ここを出れば、恐らくボス戦……しかもよくあるルナティックモードのもう戻れない系のパターン……そして空白が残された地図!」

 

 そこから求められる俺の行動は──

 

 ピコン!!

 

「すまん、ハジメ。お前もきっと理解して──」

「待ってくださーい!!絶対に南雲さんは直ぐにでも来て欲しいと思いますから!」

『……いや、あの者も久遠と似た趣味は持っているからな。よく2人揃って徹夜して素材集めを……』

「アルタイルさんはどっちの味方なんですか!?」

 

 ギャーギャー叫ぶネアは置いておいて、俺は次のルートを考えていた。メインのところはもう攻略しきったから、残りは細いルートだな。

 

 それじゃあ、最初はこの通路をもう一度──

 

「クオンさん……私、早くシア姉さんと再会して、謝らなければならないです」

「ん?あぁ……なるほど、そういやまだ秘密にしてるんだったな」

「はい……」

 

 急にネアに呼び止められたが、思い出した。そう言えばまだ彼女は秘密にしていたのだ。

 

 自身の行動で一族を追い込んだ罪……それを1番責任感じているのは現状、シアのはずだ。自分という魔力持ちがいなければこの問題にはならなかっただろうし……

 

 だからこそだろう。ネアのシアに対する違和感の数々はシアへの罪悪感だった。

 

 それを彼女は今度こそ正直に謝らなければならない。

 

「クオンさんに言われた通り、私のやるべきことは決まりました……でも、シア姉さんだけにはどうしても謝らないといけないです。この先も一緒に旅をしていく上で、尚更……」

 

 その顔からして、シアのことを思い出しているのだろう。本当の姉に思えた存在を裏切ってしまった自分。

 

 そのことに今は向き合わなければいけない。そのために会ってちゃんと謝らなければいけない。

 

 ……あいつなら笑顔で大丈夫ですよーってネアをハグしそうだけどなぁ。ってか、本当に気にしているかすら怪しい。

 

「てか、あのハウリアはこうなった原因すら忘れてそうだもんなぁ」

『今では青春真っ定中の恋愛兎人族だからな』

 

 ハジメへの猛烈なアタックと、めげないスタンスは唯我独尊のあいつらに着いていくくらいだからな。

 ……それでも、どこかで一族への責任を感じているのも事実なはず。ネアもそれを理解しての言葉だ。

 

 ……仲間の言葉とあれば、流石に無理強いはできないな。

 

「ふむ……了解した」

「ありがとうございます……では──」

「あぁ、ひょいっと」

「ふぇ?」

 

 彼女の腰に手を伸ばし、低姿勢でダッシュの構え。俗にいう、配達員さんの構えだ。小柄なネアが故に可能なこの運び方。

 変な声を出す彼女はさておき、急いで俺は出発した。向かうのはまだ探索しきっていない通路。

 

「直ぐに終わらせてやる、マッピングをな!」

「何でそうなるですかぁ!!!」

 

 手元からの絶叫。おっ、だいぶ感情を表に出すようになったじゃん。

 信じられないような顔でネア俺に叫び続けている。

 

「私、結構真剣な理由話しましたよね!?シア姉さんに早く会いたいって!それなのに無視ですか!?メンタルどうなってるんですか!?」

「ん?もちろんお前の話は心に響いた……だからこの際仕方がないが、超速攻でこの通路の地図を完成させるって」

「地図より優先することあるでしょうですぅ!!」

 

 んー?でも、俺は言ったはずだ。ここは多分、ボス部屋に行き着いたら戻れなくなってしまう。

 

 そのままにできるか?この美しい迷路を、未完成のまま旅を終わらせてしまうのか?

 

 否……否!否!否ぁ!!

 

 全てをコンプリートし、最高のコンディションでボス戦へ挑む、それが真の探索者である!

 

 だからこそ、ネアのご期待に応えて最速で終わらせよう。ここからはタイムアタックも兼ねての挑戦だ!

 

『ネア、残念だがこれが落とし所だろう……寧ろ催促できただけ上出来だ』

「……本当はもう少しじっくりやりたいんだけどなぁ……背に腹は変えられん、みんなとの合流を優先するためにダッシュするぜぇ!」

 

 諦めたようなアルタイルの声を無視して俺は走り続けた。さて、先ずはここのルートから行ってみよう!

 

「うぅぅぅぅ、クオンさんの、ばかぁぁぁぁぁ!!!」

 

 狭い通路にネアが今までで1番響き渡った。

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 そして、その後……アルタイルが言うには10時間後。狭い通路に何故か大きな四角い空洞がある。

 

 もちろん、ここはマッピングしている。そしてどのような場所かも分かっている。

 ここがボス部屋のひとつ前の部屋だ。ここから通れば正式にボス戦へと移れるだろう。

 

 ってことで、ジャーンプ!これくらいの高さならダメージは少ないだろう。

 次いでに着地ポーズを決めつつ〜

 

「と────う・ちゃく!!」

「うごはぁ!」

 

 地面に──……いや、人の上に着地成功した。何かうめき声のような音も聞こえたが、今はヒーロー着地の余韻に浸る時間だ。

 

 決まった。私が、アイ○ンマンだ

 

「っ!?ハジメ!……イチノセ!」

「イチノセさん!無事だったんですね!?」

 

 と、背後から聞き覚えのある声が。振り返るとそこには少し怒ってるユエさんと驚いているシアがいた。

 

 よかった、2人も無事なようだな。迷宮で長い間離れていたから流石に心配だった。

 ……まぁ、マッピングは譲れないけどな。

 

「……おい、早く俺から降りろ……出なければケツにオルガンブッ刺すぞ」

「ん?うおっと、すまん。ハジメも無事で何よりだ」

「この状況でよく言えるな、あん?」

 

 そして俺の下敷きになったハジメも同じく無事のようだ。立ち上がりながら恐ろしい殺気を俺に向けているが、これはよくあるグリーティングみたいなものだろう。

 

 威圧も社交辞令の世の中だぜ。

 

 と、シアが今度はキョロキョロと辺りを見渡した。きっと彼女のことを探しているのだろう。

 

「えっとイチノセさん?ネアちゃんはどこに行ったんです?まさか、トラップに──」

「いやいや、心配ない、あいつなら今頃──」

「────────ぁぁぁ」

「「「ん?」」」

 

 3人同時に声のする方向へ見上げる。そこには何も見えない暗闇から大きくなってくる叫び声が聞こえてきた。

 

 そろそろ到着するかな?流石に耐久はまだ高くないから……落ちてくる彼女の体をキャッチし、回転しながら勢いを殺す。

 

「ぁぁぁぁあああ!!っ……はぁ、はぁ……死ぬかと思ったです……」

『今の落下に気絶しないか……精神の方は順調だな』

「お褒め預かり光栄ですぅ……全然嬉しくないですけど」

 

 いや、アルタイルから評価されているだけでも十分すごいんだぜ?実際、ここまで十メートルくらいはあるし

 抱き抱えられたネアはため息をつきながら俺の方を見た。睨みつけるって言い方の方が正しいか?

 

 精一杯のジト目が俺に突き刺さる。

 

「クオンさん、私だけすっぽかして先に行くのはどうかと思うです……こんなに伸ばして置いて……」

「いやぁ、悪い……ついついノリノリになっちゃったからな。あーいうの俺大好きなんだよ」

 

 ……今になって思い返してみれば少しアホすぎたかもしれないけど。まぁ、ちょうどいいタイミングでハジメたちと合流できたからよしとするか。

 

 すると、ハジメらがキョトンと俺ら2人を見ていた。何だよ、何かあるなら言えよ。

 

「ん?3人共々どうかしたか?」

「ん……何というか……仲良くなった?」

「ですです!というかネアちゃん、何か変わりすぎじゃないですぅ!?キャラも戻ったような……?」

「ってか、お前……こいつに一体何やった。この反応はまるで──」

「あー、何があったかは一から話すから……取り敢えず──」

 

 説明やら、謝罪やら、色々話すことはあるが先ずはみんなのところに戻れたことを噛み締めたい。

 

 俺らも顔を見合わせてみんなに応えたのだった。やっと戻ってこれたしな。

 

「「『皆、ただいま!』」」




ちょいと補足…

一之瀬久遠
→迷宮などは全クリのスタンス。早く効率的に、よりかはじっくり確実に行くタイプ。特にダンジョン系は全クリまで隈なく探索し続け、攻略本も使わないガチっぷり。ここまでくると面倒臭いレベルだとスマホの彼女からは呆れられている。彼の執着癖は他にも色々な面でも出てくるので、乞うご期待。

ネア・ハウリア
→今回の騒動で久遠への認識がだいぶ変わった。ただの「変態不審者さん」ではなくなり、「普通にやべー恩人」へ。いつの間にか久遠への敬称が「イチノセさん」から「クオンさん」へと変化しており、親密度の変化も現れている。尚、この変化に久遠は気付いておらず(主人公)、アルタイルは別に気にすることもないため黙認している。

めっちゃ久しぶりにギャグだけ考えて書いた気がする…迷宮の醍醐味って全クリですよね!実は隠し部屋があったとか、このルート忘れてたとか、あるあるだと思います。

さて、次回からはついにあのウゼー解放者が登場するぞ!

ニアさんの設定はどっちに寄せる?

  • 原作(茶髪、メガネなし、小顔)
  • 今作(橙色、メガネあり、インテリ風)
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